2001年  初夏
山と海に囲まれたのどかな地方都市
この季節になると時折海からの風が吹き付ける
そんな場所に『薔薇女学園』は立っている、
自由な校風の割に、受験者数は伸び悩んでいた。
「はぁ~委員になんかなら無ければ良かったわ、
全く休みの日まで学校に来るなんて。」
彼女の名は真紅、金髪の髪にツインテールが特徴の少女、
1学期に些細な事から問題を起こし、罰として夏休みまでの間クラス委員をさせられていた。
「おーい。 真紅もう帰っていいぞ。」
真紅はこの声を待っていたように荷物をしまい足早に教室を後にした。
校舎を出て、校庭の中ほどに差し掛かった頃、校門の辺りに大きなリボンが揺れているのが見えた。
(雛苺ね、全く何をしてるのかしら)
「あ~っ!しんく~お疲れなの~。」
駆け寄ってきた少女の名は雛苺、金髪に大きなリボンが特徴で
真紅のクラスメートそして幼馴染だ。
「雛苺、あなたなぜ学校に来てるの?」
「ヒナはウサギの餌やりなの~。」
「ウサギ…。それより、あれは回収してきたの?」
「あれって?」
「先週あなたが楽器屋さんで出した…!!
もしかして、まだなの?」
「うん、だって真紅が一緒に行くって言ってたの~。」
「私はそんな事を言った覚えは無いわ。」
「真紅のウソつき~言ったもん。」
「だれが嘘つきなの、そんな約束はしていません。」
少し怒った顔をする真紅。
「ぶ~。真紅すぐ怒る、あんまり怒ると良くない事が起こるの~。」
「怒ってなんか、 きゃぁ!」
不意に吹いた風が真紅のスカートを持ち上げる。

Illust 845 氏

「あ~くんくんだ~真紅くんくんはいてる~。」
真紅は少し頬を赤らめながら。
「雛苺あなた見たわね。」
真紅は雛苺のスカートに手を伸ばすと、
「あなたも見せなさい!!」
捲られないようにスカートを押さえる雛苺
「いや~なの~。 痛い、いたい。」
雛苺のスカートからピンク色の下着が覗く、
それは、真紅のキャラクター物とは違う大人物の下着だった。
「お、大人だわ….。」
呆然とする真紅。
「も~真紅きらい。」
(あ、あり得ないわ、この娘が大人で私がくんくん?)
「....んく~、ね~真紅ってば。」
真紅が我に返ると、雛苺の顔が目の前にあり心配そうに覗き込んでいた。
「ね~真紅~、大丈夫?」
「大丈夫に決まってるのだわ、貴女に下着で負けたからって、
それに…そう!洗濯中でこれしか無かったのだもの。」
動揺を隠せない真紅、
「う~そんな事、聞いてないの~、楽器屋さん行かないと
間に合わなくなるの~。」
「そうよ!! 早く行かないと大変な事になるのだわ、
いくわよ雛苺。」
「あ~ん、まってよ~。」
先に歩き出す真紅に、後を着いていく雛苺。
「いい雛苺、下着の事は忘れるのよ。」
「うん、真紅はくんくん!!」
「あ、あなた….。」
二人は駅の方へと足早に歩いていった。

                    *

真紅達が電車に乗り目的の駅に着く頃には
空の端に黒い雲の塊が現れていた。
「一雨来るかもしれないのだわ、急ぎましょう。」
「ふえ~ヒナ傘もって無いの~。」
「雛苺、楽器屋さんはどっちなの?」
駅前にあるひときわ大きなアーケードを指差す雛苺
「あっちなの~。」
駅を降りアーケードに入った所に雛苺行きつけのお菓子屋さん
『不死屋』がある。
「あ~うにゅだ~、真紅うにゅ~買って。」
「今日は買い物をしに来たのではないのよ、それに貴女に買ってあげる義理は無いのだわ。」
先を急ぐ真紅
「も~真紅のケチ~」
雛苺は頬を膨らませている。
しばらくして真紅は、あるお店の前で足を止めた。
「チョット待って。」

Lingerie Shop Sakura

「今日買い物はしないって、真紅が…」
雛苺の言葉を半ば無視して店内に入っていく真紅、

店内には色とりどりの下着が並んでいる、
その中から気に入ったものをより分けていく。
『これなら、あの子にも負けないわ。』
商品を手にレジに行く真紅、
「すいません、これ下さい。」
黒ぶちの眼鏡をかけた愛想の無い男性店員が慣れた手つきで紙袋に入れ商品を渡す。
「まいどー800円です。」
商品を受け取り雛苺の姿を探す真紅、
「雛苺、何を見ているの?」
「あ~真紅、見て見てこれ、チョウチョ。」

Illust ID:oejIpN/R0 氏(48th take)

『な、なにこれ下着なの?前も凄いけど後ろなんて殆ど紐じゃない…この娘これを買うつもり?』
「ね~真紅これ似合うかなぁ~」
(だ、だめだわこの娘の下着センスは破壊的すぎるわ。)
「そうだわ雛苺、さっきのお店で貴女の好きな苺大福を買ってあげるからその下着からは、手を引きなさい。」
「1個?」
「2個でも3個でも買ってあげるから早くそれを元に戻しなさい。」
「じゃあ、3個!!」

商品を元に戻し、真紅の手を引き来た道を引き返していく雛苺。
「ハァ~貴女と居ると出費がかさんで大変だわ。」
真紅は財布を見てため息をついた。
「わ~い、うにゅ~なの、いただきますなの~。」
雛苺は買ってもらった苺大福に手を付けている。
先ほどの下着屋の前を通りすぎる頃、雛苺は一つ目の苺大福をお腹の中に仕舞い込んでいた。
「真紅にも、うにゅ~あげる。」
雛苺が苺大福を真紅の方に差し出す、
「あら、優しいのね、でも今はいいわ。」
「ふぇ~いまいいて、いついるの~。」
「とにかく今はいいの、それより貴女が言ってる
楽器屋さんってあれなの?」
口いっぱいに二つ目の苺大福をほおばりながら雛苺は首を縦に振っている。
楽器屋はアーケードを抜けて、大道りの向こう側に小さく見えた。


最終更新:2006年07月20日 00:46
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