211 一時期あった部タコ① [sage] 2010/01/30(土) 22:01:52 ID:IpCA1Mz6 Be:
よくあることだ。自分の知らないあいだに友達の関係が進展していたりするなんて。
だけど、それが決定的に傷口を広げた。
痛い……もうどうにも立っていられない。私があげたものすべてが、咲ちゃんとの思い出に塗りつぶされていく。のどちゃんの中から私はいなくなるんだ。
だからその日も、曇り空だった。
「咲さん、また泊まりにいってもいいですか」
「……うん」
のどちゃんの指が咲ちゃんの指に重なる。
いつか自分にも向けられていた、あの期待させておいて見透かすような表情をしているのだろうか。確認する勇気はないが。
「お前、最近元気ないぞ。ちゃんとタコス食ってるのか?」。
「タコスぢからじゃどうにも治らないんだじぇ……」
「お前が元気ないと、なんか調子狂うんだよ……」
京太郎はやっぱり優しいやつだ。こいつと関係をもってしまえば、のどちゃんを忘れることができるのだろうか。
それが、まやかしでも。
そんな吐き気をもよおすような思考に至ったとき、高い場所が好きな人からの呼び出しで引き戻された。
「優希、ちょっとベランダにこない?」
◇
「なんだー」
「腐ってるから日光浴」
「いまのウチには届かないんだじぇ。もう構わないで欲しいじょ」
「嫌よ。 ……だってあなたは、私そっくりだから」
理解追いつかず。
「あら、やっぱりそういう顔するのね」
なおも部長は私に攻め込んでくる。
「いつも空元気だったわ。寂しがり屋で、まこがいなかったら多分どこか変になってた」
……。
「私にはもう誰もいない」
「私は、あなたと寄り添いたかったわ。出会ってからずっとね」
「そういうのやめてくれ……あんたの大事な人は染谷先輩だろ」
「大切よ。だけどあなたへの気持ちとは違う」
言わないで。
「優希! あなたの痛みを分かち合いたいの!」
「メンバーにはなる! 全国大会にはちゃんと出るから! 部長、もうやめて……」
感情が、涙が溢れてくる。私、子供だ。
「……少し、勘違いしていたわ」
額に、やわらかい感触。心の距離を図るようなキス。
「あなたの強情は私以上ね」
「……部長のこと嫌いじゃないけど、まだのどちゃんに愛されたい」
「わかってる。でも、少しでもそばにいさせて」 そんなの、部長だって苦しいのに!
「そして――絶対に和了ってみせるわ」
雲間から光が差し込んでくる。あたたかい光が。
最終更新:2010年02月23日 07:36