639 :虎の寓話 序 2012/01/15(日) 17:43:24.63 ID:HuXaZa5u
640 :虎の寓話 ① 2012/01/15(日) 17:48:29.99 ID:HuXaZa5u
641 :虎の寓話 ② 2012/01/15(日) 17:53:31.32 ID:HuXaZa5u
642 :虎の寓話 ③ 2012/01/15(日) 17:58:29.80 ID:HuXaZa5u
643 :虎の寓話 ④ 2012/01/15(日) 18:03:31.04 ID:HuXaZa5u
644 :虎の寓話 ⑤ 2012/01/15(日) 18:08:29.95 ID:HuXaZa5u

あけためでたで早二週間、びっくりしつつも今更サラサラ新年初かきこー
えーと、うーん、前回つまらなかったですか…… ごめんなさいっす
あ、617 さん、超亀で恐縮ですがホントに乙です カッコイイとはあなたのような人のこと

さておきまして 亀は承知で、ここんとこ2ヶ月分の思いのたけを、どーんっとな

まずは本編、咲ちゃんドカンとリンシャンだー! 照おねえちゃん見てたー?
さあ皆さん、いま万感の思いをこめて、咲ちゃんのテーマを高らかに歌おう!
さんはい、♪ よしカンカンカン ツモロンロンローーン ♪ ヒャッハー

いやー大将戦も目が離せませんな 姉帯さんこわかっこカワイイし でもわしは気づいたのです
豊音ちゃん、霞さんの方をチラチラ見てるでしょ このきょぬー好きめw
まあ気持ちはわかります あれ?ひとり大人が混じって……なんだ霞ちゃんかーって感じじゃな
いですか あれは見ちゃいますよ 凄い色気ですなあ ふんふむけしからん! すばら!

それにしてもですよ、
「ふふっ……うち、この大将戦無事に終わったらな、漫ちゃんにプロポーズするんや……」
なんて言ってそうなくらいに末原先輩ピンチだし! 頑張れー漫ちゃん見てんでー

そしておもち、じゃなくて阿智賀編、待ってましたー! 覇王てるてる降臨だーっ!!
人ならざるもの、超越者の冷たい視線、ああーやっぱ良いわーてるてる 菫ちんは美しいしー
そりゃ後輩の皆さんも、最敬礼しちゃうってなもんです しびれるーハフー

でも営業スマイルって、おねえちゃん大人! 西田女史にはそっけなかったのに
はっ、そうかやっぱり、あのときは迷子で半泣きだったのか! 菫ちんも大変だーニヨニヨ
とにもかくにも、てるてると菫ちんに待望の出番がきて、感慨無量でございます

そしてそしてああ、宥ちゃん玄ちゃん、そっか、おかあさんが……
きっと二人で支え合ってきたのですねぇ ううう、ええ子や ええ子たちやー!
大丈夫やで おかーちゃんは二人ががんばっとるの、絶対見守ってくれとるからな

モンプチ団の次はモモちんとワハハ登場! 妙に嬉しかったりするのは何でじゃろ
おやっ? 蒲原さん、少し太っ……ゲフンッ、いえ何でも。
さては、おばーちゃんに甘えまくりでちっとぷっくり化したな フフフかわええw

ああそだ、埼玉の玉子ちゃん! あなたインハイ・ユーモア部門インパクト賞の最有力候補です
さすが彩の国さいたまw でも岡山の那岐ちゃんもすごいし、どうしよう …何が?

おっと、また長くなり申した 話は尽きねど、さても懲りずにSS投下でございます
新年一発目、これでもかっ、と頭わるーいお話です ある意味おめでたいです
てるてると菫ちんが、マンガではじめてしゃべったよ記念!

496の続きです 読んでないとイミフなところが多いかもしれませんフヒヒ
ずらっと並んだ白糸台麻雀部員の皆さんを見てたら、書きたくなっちったのです
5~6レスれす どぞ

出 演:虎姫隊と、宮永照FC連盟エキストラの皆さん
百合分:あほゆりだよ エロ:がんばったよ ばか:どうすればいいのやら
「雲の色、向日葵の色」 の続きです 仮の名前な彼女たちです 白糸台あほの子軍団ふたたび
女子三日会わざれば刮目して見よ! うん、相変わらずで何よりだ
*****************************
「 ゆめの語り部、おとぎばなし 」


純白の制服に身を包んだ小柄な女の子が、早足で廊下を歩いている。ゆるめに編んだおさげが、
ぴょこぴょこ肩の上ではねている。その子がふと、廊下の端に友達の姿を見かけて歩み寄った。
「美術子ー、今度の照さま見守り隊の会合の場所……っとぉ」
美術子(仮名)に声を掛けた文芸子(仮名)がくるりと方向転換して、その場を去ろうとした。

ここは白糸台高校、第二校舎3階の廊下である。今はお昼休みだ。開いた窓から陽光が降り注い
でいる。夏休み気分もようやく抜けて、気候も過ごしやすくなってきたが、時折窓からそよぐ風
の中に、少し冷たさが混じり始めてきたようにも感じられる。

「ちょっと文芸子! 何?」 美術子が大きな目をくりくりさせて、慌てた様子で引き留めた。
「あーいやー、あはははー、おじゃましちゃったかしらん」
壁の角の陰になって気づかなかったが、美術子とおしゃべりしていた人物がいたのだ。
すらりと背の高い、短髪の美しょうね…ゲフンッ、もとい美少女、バレー子(仮名)である。

「あなたね、変な勘違いしないでよねっ」 「勘違い? いやあ、べつにそんなこと~」
「ばっバレー子さんとは、さっき偶然そこで会って」 美術子真っ赤っか。
「はーぐうぜんですかそぉですかーはいはい、んじゃ後は若いお二人で、ごゆっくり~」
へらへら笑ってその場を離れようとする文芸子。何か小憎らしい。

「もー! 何ようそれー!」 美術子が文芸子の襟を掴んで、ガクガクと揺さぶった。
「私は照さま一筋なんだからー!」 「あややややめやめやめ、わわかった、わかったから」
「あはは、そーだよ文ちゃん、変に勘ぐらないで」 クスクス笑いながら、バレー子が言った。
「ちょっと近況を報告し合ってただけだよ。照さま情報とかね」
「いや、どうしてどうして」 三人の後ろから、剣道子(仮名)がひょいっと現れた。
「なかなか良い雰囲気だったぞ、うん」 きりっとした顔が、少しによによしている。

「もー剣道子さんまで!」 「はは、こりゃ分が悪い、退散するよ。じゃ美っちゃん、またね」
微笑みつつ、軽やかに歩き去っていった。「はい、また」 美術子の頬がほんのり朱に染まる。

「うーむ、相変わらず無駄に爽やかな奴だなー」 感心したかのように、剣道子が呟いた。
「”美っちゃん”だってー、むふふふふふふー」 文芸子によによ。
「な、なによう、あなただって文ちゃんって呼ばれてたでしょっ! もう、知らないっ!」
むくれた美術子が、スタスタ早足で去って行った。文芸子と剣道子が顔を見合わせて笑った。

「あはは、……さてと、ときに文芸子先生、例のモノはどんな具合かね」
「ああ、ここで剣さんにお会いできるとは僥倖でした。ふふ……出来立てホヤホヤ、ここに」
ニヤリと笑った文芸子が、ポケットからA5版くらいの冊子を取り出した。コピー誌のようだ。
「おお、待ちかねたぞ! ”輝と楓”シリーズ最新巻!」

”輝と楓”シリーズ――。
文芸子の手によるオリジナル同人百合小説である。発行は、既に5巻を数える。とある女子高校
の麻雀部を舞台に繰り広げられる、愛と感動のゆりゆり大冒険スペクタクルだ。何だそれ。

お察しの通り、モデルは照と菫だ。白糸台の生徒なら誰でも、読めばすぐそうと知れるだろう。
もちろん照と菫の許可など取っていようはずもない。さすがに大っぴらにはできずに、宮永照フ
ァンクラブ連盟の中でも、そうした趣向に理解があって、尚且つ秘密を守れる一部の者達の間に
だけ、密かに配布されている。

初めて配布を受ける者は、あくまでもフィクションであることを肝に銘じ、作中の人物と現実を
重ねて、まかり間違っても照と菫に迷惑をかけるようなことがないように、と、念を押される。
少々後ろ暗いが、こうして秘密を共有するのがまた妙に楽しかったりするのだ。困ったもんだ。

「しっ、お静かに」 周囲に素早く目配せをして、窓辺に剣道子を引っ張っていき、小声で文芸
子が囁いた。「今回のお話は、配布を更に限定します」 「ん? 何で……はっ、まさか!」

「ふっふっふ、そう、今回は初の”18禁”ですっ!」 「おお! ついにやったか、先生!」
「フッ、今回は、お子様に見せるわけには参りません」 (※文芸子は15才です)
「うん、バレー子や美術子には刺激が強すぎるだろな」 (※剣道子は来月17才になります)

――……「あ、」 楓が輝を少し乱暴に押した。輝はそのままベッドにうつ伏せに倒れ込んだ。
 「楓? あ、痛」 そのまま輝の背中に覆い被さり、シュルッと自分のスカーフを解く。
 「……輝、お前がいけないんだ」 輝の耳元で囁きながら、素早くその手を縛り上げた。
 「ん、痛っ……あん」 「もう我慢できない……許してくれとは、言わない」 ……――、

「ぉおおおーー! これは!」 「ふっふっふ、禁断のSでMな要素を取り入れてみました!」

――……「輝……」 静かに囁いてから、楓は輝の耳朶を、少し強く噛んだ。
 「んっ……あ」 ぴくんと輝が震え、桜色の小さな唇から、吐息が漏れる……――、

「わわっ、わー、文っ、これっ、きゃー!」 「ふははは、思い切りましたよー! きゃー!」
まあこのスレの紳士淑女の方々からしてみれば、他愛のない微エロなのでしょうが、彼女たちに
してみれば、大冒険なのです。 「「きゃーーっ!」」 やかましい。

「なに騒いでるの?」 「どわっ!」 「ぅわぁっ!」
二人の背後に、いきなり美術子が現れた。と、慌てて隠そうとした剣道子の手から冊子がポロッ
とこぼれ落ちて、風に舞いながら窓の下へと落ちていった。「「わーーーっ!!」

「しまった! やばいっ!」 剣道子が窓から身を乗り出す。
「? な、何? 何か落とした?」 美術子ちょっとびっくり。

「あ、ああいやその、えっと、何でもないない! それより、何か用?」 文芸子アセアセ。
「ああ、言い忘れてたの。次のお茶会……じゃなくて会合、美術室使えるから」
「そ、そう、ありがと! えと、んじゃ急ぐから!!」 呆気にとられる美術子を置き去りに、
剣道子と文芸子が猛ダッシュ。「? 廊下走っちゃダメよー……、変なの。何あれ?」


「ないっ! ぐぬぬ、文っ、そっちはどうだ?」 葉っぱまみれになりながら、植え込みの中か
らガサッと剣道子が顔を出した。「こっちにもないですー」 文芸子がふらふらと立ち上がる。
「……風で結構飛ばされたとしたら、裏庭の方かもしれん!」 急ぎ向かう。

ダッと裏庭に駆け込むと、ベンチに一人でゆったりと座っている先客の姿があった。
「あ、あのー、ここら辺でこのくらいの冊子を……はっ!」 「! て、ててて、照さまっ!」
照が静かに顔を上げる。「あの、照さ……宮永先輩、このくらいの冊子を……ああ、それっ!」
照の手に、冊子があった。ページの中程を開いている。どうやら読んでいたようだ。

「ああああの、先輩、それは」 剣道子がおずおずと声をかけた。
「……君、名前は?」 いつもの無表情のまま、照が訊いた。
「へ? あ、いや、はひっ、けけ、剣道部二年! 上泉剣道子ですっ!」

「上泉さん……これ、君の?」 照が冊子を掲げる。
「はっ、そうであります! あ、いえ、書いたのは、こっちのちっこいのですっ!」
文芸子を無理矢理前に押し出した。「わわっ、ちょっ、剣さん!」

「君が書いたの?」 「はっ、はは、はいっ! そうですっ」 ピキッときをつけっ。
…ああやばい、照さまきっとお怒りだわ! 勝手にモデルにされてるってだけでもアレなのに、
よりによって、あの冊子にはあんなコトやそんなコトが、てんこ盛りだというのにっ!

「これ……楓ってコ、もしかして、菫?」 「あ、はい、ああいや! あの、そのですね」
「……菫って、すごく優しいんだよ」 「? はぁ……あ、いえ、そ、そうなのですか?」
「うん、そう」 こくっと頷いてから、諭すように照が言った。

「だからね、こんないじわるなコト、しないと思う。相手の子、ちょっと痛そう」
なんと、”輝”が自分のことであるとは、気づいていないようだ。
「な、なるほど! 申し訳ありません、べ、勉強になります!」 文芸子カッチコチ。
「ん……ね、これ貸してくれる? 読み終わったら、返すから」 剣道子の方へ冊子を掲げる。

「はいっ、どうぞ! 光栄ですっ!」 「ありがと。……じゃ、またね」
ふらりとベンチから立ち上がると、静かにその場から立ち去っていった。残された二人は、ただ
呆然と見送るのみであった。照の姿が見えなくなってから、ゆっくりと顔を見合わせる。
「「……きゃーーーーっ!!」」 とてもやかましい。

「てってっ照さまと、おしゃべりしちゃったー!」 バタバタ足踏み剣道子。
「なんて素敵なお声……ああ、こんなお近くで生声を拝聴できるなんて」 文芸子ぽわわ~ん。
実は結構やばげな状況なのだが、そんなの消し飛ぶくらいの思わぬ幸運に、酔いしれる二人。
後にまさかあんなコトになるなんて、このときはまだ、夢にも思っていなかったのである。

* *


「うん、たまには紅茶も良いものだな」 ティーカップを口元に運んで、菫が呟いた。
ここはいつものチーム虎姫専用ルームである。まったり優雅な午後のお茶の時間だ。
「んにょわー」 部員猫のカテリーナが、出窓に寝そべって、あくびをしている。

「ん? 照、何読んでるんだ?」 「ん……小説。剣道部の子に借りた」
「……それ、コピー誌ってやつですよね」 紅茶のポットにお湯を注ぎつつ、尭深が呟く。
「へえ、手作りかー。面白いっすかー?」 棚の資料を整理しながら、誠子が訊いた。

「うん、まあ……でも、よくわからないところがあるんだ。……ねぇ、菫」
「んー?」 微笑みながら紅茶を飲みつつ、返事をする菫。

「あのさ、【自主規制】って、なに?」

菫がブハッと盛大に紅茶を吹いた。誠子がこけそうになって資料がドガラッシャンッと崩れた。
尭深の手元で、ポットからダバーッとお湯が溢れた。猫様びっくり、しっぽがぶわっと膨れた。
「げーっほ、げほっ、ごほっ、ハ、ハァッ、て、ててて、てるっ!?」

「? なに? あ、あと、【自主規制】を【自主規制】して【自主規制】するって、なに?
どういう状況なんだろうか、これ」 ピュアっ娘てるてる。

「ちょっ、せ、先輩、何読んでんすかー!?」 誠子びっくり。
「……実に、興味深い、ですね」 クィッとメガネを押し上げる尭深。
「~~っ、てるっ、ちょっとそれ見せろ!」 菫が冊子を引ったくった。「あ、まだ途中……」

パラパラと菫がページをめくる。菫の肩越しに、誠子と尭深も覗き込む。
「……!」 見る見る菫の顔が紅潮してきた。「うわ、何かえっちぃっすねー」 誠子も赤面。
「この登場人物の二人って……ほう、これはなかなか」 尭深メガネキラリン。
「? なんだ? どうしたの? みんな」 照キョトン。


「ふんふん、よしまいまいま~い♪ っと、淡ちゃん、登場ー! って、ひゃわっ」
淡が部室のドアを開けた途端、ヌッと菫が出てきて、そのままズンズンと歩き去って行った。

「? ど、どしたんですかー菫先輩、怖い顔ー」
「はは……、どうなるかなー。知ーらね」 誠子がため息混じりに呟いた。
「……アレの入手方法は……おそらく先輩のFC絡み……」 尭深ブツブツ。
「まだ途中なのに、……もう」 照がふらりと立ち上がって、部室から出て行った。

「あ、照せんぱ~い……、行っちゃった。何かあったんですかー?」
「ん? あー、淡にはまだ早いかな」 「……おそらく、既刊もあるはず……ブツブツ」
「えー、ないしょ話ですかー? ずるーいっ!」 ほっぺたぷくー。


「上泉とは、君か」 剣道場に菫が立っている。道着姿の剣道子が対峙している。
(ううう、美人が怒るとおっかないって、ホントなんだなぁ) 剣道子は直立不動である。

「コレの作者は誰だ?」 例の冊子を掲げて、菫が訊いた。
「うう……くっ」 ダッと道場の端へ駆け、置いてあった竹刀を手に取り、剣道子が構えた。
「……何のつもりだ?」 「い、如何に弘世先輩といえど、友を売るわけには参りません!」

「ふん、見上げた心がけだ。その意気やよし!」 ゆらり、と菫が腕を上げる。
「しからばごめんっ! きぇいりゃあーーっ!」 裂帛の気合と共に、剣道子が打ちかかった。


「ふんふん、なっぞっはパーラレッルーいーみしんパーズルゥー♪ っとー」 文芸子が鼻歌
交じりに、部の月刊誌をホチキス止めしている。ここは旧校舎1階、文芸部の部室である。

突然、ガラリとドアが開いた。戸口に立つ人物を見て、室内にいた数人の部員が全員固まった。
来訪者は、菫であった。「……芥川文芸子、いるか?」 なんと剣道子を脇に抱えている。

「ぶ、文芸子っ、逃げろぉ……」 ぐったりとした剣道子が、苦しげに呻いた。菫のくすぐり
攻撃が、防具をすり抜け炸裂したのである。その威力は、あの照でさえ笑わせる程なのだ。

「わっわわわ!」 ガタッと椅子を鳴らして、文芸子が立ち上がった。「……君か」
「ひぇええっ!」 ぴゃっと逃げ出す文芸子。このとき、美術子をして、”ちょこまか小動物”
と言わしめる文芸子のすばしっこさが発揮された。窓から脱出したのである。1階でよかった。
「待てっ!」 菫が窓に駆け寄って外を確認後、部屋のドアから出て行った。「逃がさん!」


「イチ、ニィ……あれ? 文ちゃんじゃんか。どしたのーそんな慌ててー?」 体育館脇の通路
で素振り練習中の卓球子(仮名)が、息せき切って走ってくる文芸子に気がついた。
「ハァ、ヒィ、た、卓球子さんお願いっ、菫さま、止めてぇ!」 「えー? ……おお!?」
走り去る文芸子を目で追ってから、来た方を振り向いた。ズンズンと菫が早足でやって来る。

「おねが~~ぃ……」 「え? え? えええ?」 戸惑う卓球子。怖い顔した菫が迫る。
咄嗟にラケットを握り直し、身構えた。「さ、サーーーッ!」 構えた卓球子の横を、菫が通り
過ぎて行った。「……ま、そりゃそーだよねー」 うははっと笑った。


(やばい、やばいやばい、どうしよう! 菫さま何か怒ってた。府中無双って呼ばれる剣さんが、
あんなにぐったりして……やっぱり、あの噂は本当だったんだ! 菫さまが一年生のとき、麻雀
部にいた悪者三百人を、たった一人でやっつけたって!) ものっそい尾ひれが付いていた。

(でも、なんで……はっ、まさか、輝と楓? お読みになられたのかしら!?) ビンゴ。
(わー感想お聴きした……じゃないっ! どうしよっ……、ぅわっ) ズテッと転んだ。
すばしっこいけど、基本的に運動音痴で、肝心なところでトロいのだ。複雑な乙女なのだ。

いつの間にやら、昼に照と会った裏庭までやって来ていた。
「あいったたたた……」 「大丈夫か?」 すっと手が差し伸べられた。
「あ、どうもありが……ひょわぁあ!!」 はい、お察しの通り、菫ちんなのでした。
「君の書いたこの小説について、二、三問いたいことがある……って、お、おい」

「う、ぅうう~、ご、ごめ、ごべんなざ~いっ」 うぇええ~ん、と文芸子が泣き出した。
「こ、こら泣くな!」 「ひっぐ、ぇぐっ、ぅっく、い、い、いのちばかりは~」
「なっ、人聞きの悪い! ほら、泣くなっての、ああもう」

「……なに泣かせてるの」 二人の背後に、照が静かに佇んでいた。


「イヤしかしだな、私たちのことをこんな」 「? 私たち? ……ああ、輝って私なの?」
「そうです……あの、本当にごめんなさい」 消え入らんばかりに縮こまる文芸子。
「ふーん……ね、それって、菫は嫌なの?」 「へ? いや、嫌とか言う以前にだな」

「作り話じゃない。それに楓って、菫のことでしょ? だったら私は、別に嫌じゃないけど?」
「! ……そっ、おま」 あうあう絶句する菫。きゅーっと真っ赤な顔になる。湯気出そう。
「ほら、一年生いじめちゃダメだよ。戻ろう、菫」 照がそっと菫の手を取った。「あ……う」

「……私の妹もね、お話し作るの大好きなんだ。昔、よく話して聞かせてくれたっけ……。
咲がお姫さまで、私が王子さま、とかね。ふふっ」 少し遠い目をして、照が呟いた。
「君と気が合うかも、ね」 ふわっと笑った。「は、はい~……」 ぽーっとのぼせる文芸子。

全国大会以降、照は下級生、殊に一年生に対して、とても優しくなったように感じられる。
愛する妹と白糸台の一年生達を、重ねて見ているところがあるのかもしれない。ちなみにこの夏
照に新たな異名が付け加えられた。”妹大好き無敵のおねえちゃん”である。シンプルだ。

強くなければ、妹を守れない。優しくなければ、姉である資格はない。だからおねえちゃんは、
優しくって強いのだ。大阪の姉も奈良の姉も、そうした意味で、立派におねえちゃんだった。

「ああ、そうだ、訊こうと思ってたんだ。ね、教えて。【自主規制】って、なに?」
「あ、えと、実はその、私も詳しくは知らないのですが、愛し合う二人がですね、こう……」
「せせ、説明すんなあっ!」 なんかもう、真っ赤な上に涙目になっちゃう菫ちんなのだった。


「やー、よかった。無事に収まったみたい」 桜の大木の枝の上で、双眼鏡を手にした少女が
ほっとため息をついて微笑んだ。バードウォッチング同好会の一年生、鳥子(仮名)である。
文芸子と菫の追いかけっこを、追跡観察していたのだ。「うん、状況、オールグリーン」

「鳥子ー、あんたまたそんなトコ登ってー。降りて来な、見えちゃうぞー」 あきれた先輩が、
下から声をかけた。「ぅえっ? わっあわわ」 危うく転落しかける鳥子なのだった。


件の18禁本は、あえなく発禁処分となった……筈である。
輝と楓シリーズは、反省しきりの文芸子により人物像に手が加えられ、よりフィクションとして
の色を濃くして継続が許可された。しかしながら、姉に恋する輝の妹タキ、タキに恋するほのか
という新キャラ達を加え、カオスな展開となっている。FC連盟内では、概ね好評のようだ。

新展開を迎えるに当たっては、強力なアドバイザーの存在があったらしい。その正体は不明だが
極めて少数の関係者の間では、”レディグリーンティー”と呼ばれている、との噂である。
……誰だろう。謎だ。
実は新聞部の特命取材班が、ある噂を調査中、匿名を条件に彼女との接触に成功している。裏付
けが難しく結局記事になることはなかったが、以下は彼女へのインタビュー記録の一部である。

――特定の生徒をモデルに、えっちなお話しの本が配布されたとの噂があるのですが。
「……さあ、知りませんね。そんなのあっても発禁でしょう。先輩が許す筈もない」

――あなたは、それに関わってはいないと?
「ええ……もしそんなものがあっても、一般に出回ることはないでしょうね」 メガネキラリ。

…… 一連の状況に関して、照は大して興味なさげで、我関せずといった感じだ。
「照が気にしないって言うなら、まぁ……」 いつもの通り、気にしないことにしたものの、
ちょっと複雑。超有名人の辛いところだ。弘世菫の心労の種は尽きない。

**********************
以上 読了感謝  である

645 :虎の寓話 後書 2012/01/15(日) 18:13:32.64 ID:HuXaZa5u
はい、お疲れ様でした ありがとうございました
身近な人を無断でまんまモデルに創作とか 大体おこられます多分 真似したらあかんです

オリキャラ全開でごぬんなさい

美術子・ちょっと勝気なちゃちゃのん、文芸子・胡桃ちゃんサイズの少し根暗なハッちゃん
バレー子・草食系の純のアニキ、剣道子・気の強いむっきー 卓球子・ぽけーっとしたワハハ
鳥子・おとなしめな池田ァ  …てなイメージで再生していただければ、幸甚に存じます

ああ、ばかだなー… でも気にしない 反省もしない ふへへ
ふふふこの後の投下話のばか具合が薄まって見えるというものよ
計算なのですよ計算、ふははははは  はぁ

次はシリアス? 今年も好き勝手するつもりです ではまた  あ、ことよろ

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最終更新:2012年07月18日 00:54