526 :名無しさん@秘密の花園 2012/07/06(金) 02:39:49.80 ID:1ms5bhax
527 :名無しさん@秘密の花園 2012/07/06(金) 02:40:42.95 ID:1ms5bhax
528 :名無しさん@秘密の花園 2012/07/06(金) 02:41:59.74 ID:1ms5bhax
SS。2レス。アコシズ。時制としては阿知賀アニメ12話ED前。ポエムっぽい。


いつ頃からだったかな。
人の言葉や行動の、裏とかを勘ぐったりするようになったのは。
中学行って、あたしは一人で生きて行くんだって思った時からかな。
それとも大人たちのおべんちゃらを毎日聞いてたからかな。
いや、ハルエの快進撃の時と負けて帰って来た時の、大人たちの反応を観てからかも。
うぅん、やっぱり…

だから私は、たった一つの例外を除いて、誰ももなにも信用しない。
ハルエもお姉ちゃんも。自分も才能も未来も時間も。
今が良ければそれでいいってわけでもないけど。
でも、今より先の事なんて考えられないし、信じてられない。
だって全部を犠牲にしてでもと思って、ここに来たんだから。
そしてたどり着いたんだ、全国に。準決勝の舞台に。

自分の力を試したいとか、もっと言えば虚栄心とか、将来の為とか。
色々と自分の中にあったのも確かだ。
でもそれだけじゃここに居ない。
だったらもっと確実な道がある。
ここに居るのはそんなんじゃない。

中学時代。
あたしに罰があたった。
それまでの六年間で一番大事にしてきたものを裏切ったから。
もうあんな思いはしない。
誓ったんだ。
二度と裏切らないって。

なのに。

 「なんで…ここに居るんだ…」

シズの興奮した声が響く。
こんなに狼狽しているシズの声を聞くのは、本当に久しぶりだ。
いや、そんなに前じゃない。
あの暑い夏の日、数年ぶりにケータイ越しに聞いた。
あの声。
それとおんなじだ。
っていうかそのまんまだ。
心がざわめく。立ち止まる。振り向く。

やっぱりだ。

前年度インターミドルチャンピオン。
現清澄高校麻雀部副将。
原村和。
和。

どんなに傍に居たって、どんなに尽くしたって、全てを投げ打ったって。
絶対にかなわない。
シズの心の真ん中に居る人。


一度和と会ってしまったら、もう二度とシズは戻ってこなくなるんじゃないかって。
時々そう考えちゃって、ベッドの中でうずくまって、忘れようとわーわー騒いだけど。
全国大会開催の地である東京に来た夜、シズに確認までしちゃったけど。
そんな心配が今、目の前に形となって、一人の人間としてそこに居る。

 「ハハ…さすが有名人…」

口から出るのは本当にオートメーションで、あたしの心からではなく本当に条件反射で出た言葉でしかない。
自分でも何を言ってるのか分からない。
多分当たり障りのない事を言えてると思うけど。

条件反射。

そう、頭は飽和状態で何も考えられない。
だから身体が、肩が、腕が、指先が。
体中が叫んでいた。

 『行かないで!』

だからあんなにも誓っていたのに。
そんなことあるはずないって思ってきたのに。

手を
伸ばしてた。

シズが行ってしまわないように。
シズがあたしを捨てて行ってしまわないように。
あたしがあの時、シズを捨てて阿田中行ったみたいに。

でもシズは立ち止まってくれてた。
ここに立ち止まってくれてた。
和に決勝で会おうって言ってくれた。
あたしと一緒に戦ってくれるって言ってくれた。

シズがそんな奴だってことくらい知ってた。

計算出来なくて向こうみずで、でも奔放でどこにだって行って。
走り出したらすごく速くて、どこに行ったのか分からないくらいなのに、あたしが来るまで待っててくれて。
そんな奴なんだ。

シズは純粋で、傷つきやすいくせに人を疑う事を知らなくて。
だからその分、あたしが疑ったり吟味したり考えたりしてあげなきゃって。
シズの隣には、いつだってあたしが居なくちゃって。

でも逆だ。
シズが隣に居ないと、あたし駄目だ。
だって…

シズが振り向く。
そして手を差し伸べる。
あたしに。

 「頑張ろう、アコ!」

だからあたしもシズの手を握る。
さっきシズを引き止めようとした手で、今度はシズと一緒に戦うために。

 「うん、決勝へ! 和の待つ決勝の舞台へ!」

大好きなシズの為に!  (了)

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最終更新:2012年07月19日 02:26