69-519「佐々木さんのキョンな日常 学園祭その13~」

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『生徒会・生徒会長&喜緑書記に決定しました!』    ・・・・・・一気に気が抜けた。  どこかで『出来レ-スだ!』という声が上がったが(その声が谷口に似ていたような気がするが)、まああの二人 なら知名度抜群だし、順当な所ではないか。そういえば、あの生徒会長の傍には必ず喜緑さんがいるような気がする。  『続きまして、特別賞の発表に移ります。特別賞は、文芸部推薦・佐々木&キョンペアに決定しました。  校内放送で、自分の間抜けなあだ名を、佐々木とセットで呼ばれ、少し経ってから俺達は我に返った。  「え、俺達?」    『30分後に授与式を行います。今回選ばれた方は、至急実行委員会本部までお集まりください』  「すごいよ、キョン君、佐々木さん。特別賞に選ばれるなんて!」  長門が興奮気味に話す。  「しかし、特別賞なんてあるとは意外だったね。そんなものがあるなんて、用紙には書いてなかったけど」  確かに佐々木の言うとおりである。何か裏がありそうなきがするが。  「せっかくだから受け取りに行こうじゃないか。その特別賞とやらを」  何故か佐々木の目が生き生きと輝いているように見えるのは気のせいか。  まあ、俺も佐々木とペアで何か賞をもらうというのは悪い気分ではない。どんな内容かはわからんが。  「なら、長門。また後でな」  「うん。また後でね」  長門に手を振って、俺達は実行委員会本部へ向かった。  実行委員会とは要は生徒会のことであり、その本部とは生徒会室である。  「よく来てくれた。キョン君に佐々木君とやら」  自分たちが主催した行事に出場し、自分たちで優勝してしまった生徒会長は、偉そうにしているが、かなり上機嫌 だった。  その横で喜緑さんは静かに微笑んでいる。  「ペアコンテストの優勝者は公正な投票の結果、我々に決まったが、その次に得票が多かったのが君たちだ。投票 用紙に書き込まれたコメントにもかなり君たちを推す声が強かったのでね。特別に賞を授与することにしたよ」  一体なにをもらえるんですかね?  「優勝は我々だったが、それだと特別予算は生徒会に入ることになり、出来レ-スといわれるがオチだ」  すでに言っている奴がいたが。  「こう見えても、私は公正明大と実力主義という言葉が好きなんでね」  そういうふうにはあまり見えないが。  「特別予算は次点であることを考慮し、2割減額の上、文芸部に支給する。それは授与式において正式に表明する」  ほう、なかなか公平じゃないか。どうやら出来レ-スじゃないのは事実のようだ。  「それについては少し面白い余興を考えている。是非、君たちに協力してもらいたい事があるのだがね」 ---- ・・・・・・しかし、高校生の時点でこんなものを着る羽目になるとは思わなかった。余興にしても少し乗りすぎじゃ ないのか、生徒会?  「僕としてはかなり気分がいいのだがね。自分の未来の予行練習のような気持ちだよ」  そりゃ、お前のその姿は誰の目にだってきれいに見えるさ。俺だって見とれてしまうよ。  薄い白銀色のベ-ルに顔を包まれたウエディングドレスの花嫁姿の佐々木。  喜緑さんがばっちりメイクまでしてくれたその姿は、本当に綺麗だった。  しかし、その相手が俺で良かったのかね。一応白のタキシ-ド姿の花婿姿。髪は何とか整えたが、釣り合わないん じゃないか。  「何言ってんだ、キョン。僕ら二人だからこそ選ばれたんだよ。自身を持って行けばいい。言っただろう?君と 組むなら負ける気はしないと」  生徒会=実行委員会の余興とは、優勝者に花嫁・花婿衣装を着てもらうことだったらしい(同性同士だったら どうなっていたんだ?実際、出場者に何組かいたぞ)。  本当なら、生徒会長と喜緑さんが着るはずだったのだが、それでは面白くないと判断したらしく、俺たちにお 鉢が回って来たのだ。  「それじゃ、行こうか。二人とも」  生徒会長が声をかけて来る。  「さあ、キョン。よろしく僕をエスコートしてくれよ」 ---- 「それではベストペアコンテストの優勝及び特別賞の授与式を行います」  実行委員の司会で授与式は始まった。  「優勝者は投票の結果、生徒会長&喜緑書記のペアに決定しました。おめでとうございます」  いささか 会場に白けたような空気が流れているのは気のせいか。  生徒会長が司会からマイクを受け取り、喋りはじめる。  「投票でベストペアに選ばれて、喜緑君共々光栄に思う。だが、この結果では特別予算を組んだ意味はなく なる。生徒会及び学園祭実行委員会としては、祭りには多くの生徒が参加し楽しむことに意味がある、と考え る。そこで、投票結果を尊重し、次点のペアを特別賞として表彰し、所属するクラブに予算を支給することに した」  生徒会長の言葉に、会場がざわつく。  「特別賞・文芸部推薦、佐々木&キョンペア」  佐々木の右手を引き、講堂のステージに俺達は立った。  見渡すと、講堂内が大いに盛り上がっているのが解った。  喜緑さんが、花束のブーケを佐々木に渡す。  ベールの下で微笑む佐々木の横顔は本当に綺麗だった。完璧な花嫁姿だ(ドレスのサイズが少々大きすぎたので 、締め付けてはいるが)。  最初はこの姿で人前に立つのは恥ずかしいと思ったが、今は佐々木と並んでこの場に立っているのが、むしろ 誇らしく感じられる。  「全く二人とも良く似合っている。特別賞にふさわしいペアだ」  生徒会長が満足げに頷いた。  「佐々木さん、その花束を会場に向かって投げてみて」  喜緑さんが佐々木に耳打ちする。おいおい、結婚式じゃないんだが。  佐々木は輝くような笑顔を浮かべて、思いっきりブーケを会場に向かって高く投げた。  -----------------------------------------------------------------------------------------------------  『ただいまより、最後のプログラム、創作ダンスを行います。参加される方はグラウンドへお集まりください』  学園祭のトリを飾るのは、体育祭の時にはへたれて、全高生徒の前で踊るのを拒否した創作ダンス部によるダン ス、それと参加生徒によるダンスだ。  体育祭の時に、軽音楽部の生演奏で踊った全高生徒のダンスが大好評で、学園祭でもう一度やることを実行委員 会は決めたのだ。  「楽しい時間ももうすぐ終わりだね」  創作ダンス部の演舞を見ながら、佐々木はそうつぶやく。  俺達二人はウエディング姿は脱いでいたが、佐々木にはまだ余韻が残っている様だった。  「それにしても、あのブーケ、まさか涼宮さんが持っていくとは思わなかったよ」  佐々木が投げたブーケは、綺麗な放物線を描き、会場の見物人の中に落ちていった。  そのブーケの落下地点にいたのが、何故か涼宮だった。  まるでひったくるかのような勢いで手を伸ばしてブーケをつかみ取った涼宮の横には、古泉の姿があった。  創作ダンス部の演舞がおわり、割れんばかりの拍手がおこる。素晴らしいダンスだった。  そして、最後の、学園祭を締めるダンス。  「さあ、行こう、キョン」  俺の手を握り、佐々木は駈けだす。  参加する生徒達が輪をつくる。その中には、文芸部の皆、SOS団の団員、それに中河と周防の姿があった。  朝倉が中河に踊り方を教え、周防には谷口が付いていた。  橘の姿は見えなかった。ひょっとすると、橘は帰ったのかもしれない。  古泉の横には涼宮がいた。  軽音楽部の演奏とともにダンスが始った。アップテンポなダンスミュージックにのり、参加生徒が踊る。  俺も佐々木も、涼宮も古泉も、国木田に鶴屋さん、長門に朝比奈さん、朝倉に中河、谷口に周防も踊り 出す。  高校一年生の、今の時にしか体験できない、かけがいのない、佐々木と共にいる時間。  つないだ手に、佐々木の温もりを俺は感じていた。

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