ふと、数か月前のあの日のことを思い出した。
今日も散歩中だ。 ただ単純に散歩がしたいなあ、と思っただけで深い意義はない。
あの猫は今頃どうしているだろうか。
「にゃあ」
猫の鳴き声がした。 あの日と同じ路地のそばだ。
「なんだ、またここにいたのかい?」
と言いながらのぞいてみると、そこには─
「く、九曜さん!」
「にゃあ」
「にゃあ、じゃないよ。 何してるの?」
「──野……宿──」と言いながらVサインをしている。
「ああ、もういいからうちに来れば? というか来て。 とりあえずお風呂に入らないと」
「にゃあ」
「だからその『にゃあ』って何。 猫と一緒に過ごしてたの?」
九曜さんはほんのかすかに顎を引いた。
最近は九曜さんの微妙な動作が分かるようになってきた。
それから、人形みたいに細い九曜さんの手をひっぱりながら思った。
自分は結構こんな日常でも好きなのかもしれない、と。
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最終更新:2009年10月09日 20:15