41-647「Brake Time - 『ねこ』 のかなり後日談」



 ふと、数か月前のあの日のことを思い出した。
 今日も散歩中だ。 ただ単純に散歩がしたいなあ、と思っただけで深い意義はない。
 あの猫は今頃どうしているだろうか。

「にゃあ」
 猫の鳴き声がした。 あの日と同じ路地のそばだ。
「なんだ、またここにいたのかい?」
 と言いながらのぞいてみると、そこには─
「く、九曜さん!」
「にゃあ」
「にゃあ、じゃないよ。 何してるの?」
「──野……宿──」と言いながらVサインをしている。
「ああ、もういいからうちに来れば? というか来て。 とりあえずお風呂に入らないと」
「にゃあ」
「だからその『にゃあ』って何。 猫と一緒に過ごしてたの?」
 九曜さんはほんのかすかに顎を引いた。
 最近は九曜さんの微妙な動作が分かるようになってきた。
 それから、人形みたいに細い九曜さんの手をひっぱりながら思った。
 自分は結構こんな日常でも好きなのかもしれない、と。


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最終更新:2009年10月09日 20:15
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