65-925 ささきと!-5


『僕達も、いつかは大人になっていくんだね』
 そりゃそうだ。時間が立てば、嫌でも大人にならざるを得んだろう
『僕は今という時間をとても気に入っているんだ。君はどうだい?』
 悪くは無い。俺はもともと、ぼーっとしてるのが性に会ってるんだろうさ
『こんな毎日が続くことが、一番の幸せなのかもしれないね』

 懐かしい夢だった。
 中学時代のいつだったかの、佐々木との会話。
 実際、夢に見るまで忘れていたし、あまり覚えていない。
 うっすらと意識が覚醒していく。あの時の佐々木の表情を探しながら。
………………………………

「……ここは?」
 目覚めた世界は、昨日までいた世界とも、『元の世界』とも違う、灰色の世界だった。
 流石に何度か体験しているだけあって、自分の落ち着きぶりに驚く余裕があるくらい冷静だ。

 この世界を作りだした人物。
 まず長門ではない。昨日の様子では、あいつも巻き込まれた側だ。
 そして、ハルヒでもない。あいつの世界は、感情の爆発をそのまま図にしたような、もっとエキサイトしたものだ。
 この世界の落ち着きぶり、そしてその前後の世界改変。となれば、俺の知る限り、こんなことができる人間は一人しかいない。

「お前だな。佐々木」
「流石だね。キョン」
 この世界の創造主。ここ数日を共に過ごしたあの「小さな佐々木」ではない。
 よく知った姿で俺の前に現れた。

「御明察だよ」
 くっくっ、と懐かしい笑みを浮かべながら。

「君には、最後まで付き合ってもらうよ」
………………………………

『もしも』という過程には意味は無い。
 そんなことを考えるのは時間の無駄だし、合理的ではない。
 それでもあの時の僕は、毎日『もしも』と考えていた。

 もしも、時間が止まったら。

 今になって気付いたんだ。それが祈りだったことに。
 そして時間は残酷で、どんなに祈っても止まることは無い。
 僕は後悔したよ。やっぱり、こんな思いは無駄なんだなって。

 中学を卒業して一年、僕達は別々の時間を過ごした。
 その間も、一応楽しいことはあったよ。
 でもね。ふと気付くと、あの時の日々を反芻している自分がいるんだ。
 情けないことに、知らずのうちに泣いている時もあった。

 僕はそんな自分を君に見せたくなかった。
 あの頃と変わらず、ゆっくりでも、大人になるべく進んでいる聡明な君に。
 立ち止まってしまった、どうしようもなく幼い僕を。

 そして僕は『力』を手に入れた。

 どうしたって時間は止まらない。
 それは、中学時代に身に染みて解っている。
 それでも、時の流れを緩やかにすることはできるのではないかと僕は考えた。
 ゆっくりと毎日を刻む。幼い僕と、大人の君とで。

 それが僕の望んだ世界。
………………………………

 佐々木の感情が、ダイレクトに頭に響く。三半規管が狂ったような目まいを感じ、その場に膝をつく。

「ごめん。無理をさせたね」
「……やれやれ。少しは手加減してくれ」
「知っておいて欲しかったんだ。君の知らない僕のことを」
「驚いたぜ。佐々木」
「引いてしまったよね」
「いや、そんなことはないがね」

 すっと息を吸い込む。

「お前は俺のことを買いかぶり過ぎだ。俺はそんな大した人間じゃない」
「それにだ。お前は難しく考えすぎだ。話くらいならいつでも聞ける。ため込むのは悪い癖だぞ」

 一気にまくし立てる。言ってから少し恥ずかしくなった。
 恐らく、俺の顔は今かなり赤くなっているだろう。
 そんな俺の、三倍は赤くなったであろう顔の佐々木。

「……この世界を終わらせようと思った理由だけどね」
 ぽつぽつと、俯きながらも佐々木が話しだす。

「自転車を買ってもらったときにね。あの頃、塾に通っていた時を思い出したんだ」
「近くで見守ってほしい。それが僕の願いだって思ってた」
「でも違うんだ。僕は君のそばで、君と支え合う関係でいたい」
「勿論、時々は甘えたいけどね」

「ええっと、つまりね」

「僕は、君が好きなんだ」
………………………………

数年後
キョン「」クー
?「とーさんおきろー!」ズシ

キョン「ぐぅ!?」
佐々木「もう少しやさしく起こしてあげたら?」
佐々木「でも、キョンがいつまでも寝てるのが悪いか」
?「さすがかーさん!かーさんはいいことをいう!」

キョン「休みくらいゆっくり寝かせてくれ」
佐々木「君が寝坊するのはいつものことだろう?」
キョン「なぜ同じ仕事をしていてお前は起きられる?」
佐々木「翻訳家っていうのは自律が第一だよ」
?「こんにゃくやはじりつがだいいち!」

キョン「やれやれ。腹が減ったな」
キョン「よし。今日朝飯は俺がつくるか」
佐々木「ほんとかい?」
?「とーさんのりょうり?きょうはとくべうなひですか!?」



佐々木「毎日が特別な日だよ!」
おわり!

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最終更新:2012年03月12日 02:20
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