69-204「ふたりぼっち」

※軽度な鬱注意

「生きていくうえで、誰しも皆、ひとりぼっちなんだろうね。」
「そりゃそうだろ。」
俺は相槌を打つ。……所詮はそんなもんだろう。最後に頼りになるのは、自分しかいねぇわけだからな。
半裸の佐々木が身を起こす。
「キミと僕も、一緒にいてひとりぼっちの寂しさを癒しているように思えるよ。」
「一夜の宿かよ。都合のいいこった。」
「くっくっ。」
俺と佐々木がこうなったのは、一月位前。恥ずかしい話になるが、俺は涼宮達に誤解がもとで虐めを受けてな。
全部片付けて、その後にたまたま再会した佐々木と、こうした関係になっちまった。
「俺はお前を使って、喪失感を埋めているつもりはないが。」
「僕もだよ。まぁ、ヤマアラシのジレンマだね。お互いに。」
良くも悪くも、佐々木と俺は近すぎた。近すぎただけに、お互いにわかってしまう。お互いが、どんな状況でひとりぼっちになったか。
そこはお互いに触れられない。
「キョン。もう一度するかい?」
「そうだな。」
お互いに触れている時間。それが最も癒されるが、最も傷付く時間だ。
俺はハルヒに惹かれていたし、まだ未練はある。戻れるならまた戻りたい。
佐々木は、俺を真っ直ぐに見ているからこそ、俺の思いに傷付く。
近くにいるのに、こんなに寂しい。

「いつか、時間が癒してくれるさ、お互いに…。」

SOS団は、現在も存在はしている。但し、長門は力を失い、朝比奈さんも未来に帰られず、古泉も能力を失った。
涼宮は鍵が無くなり、能力が消えた。
最後の願いが、SOS団との繋がりだったのだろう。鎖に縛られた長門、朝比奈さん、古泉を哀れには思うが、俺には関係ない話だ。彼らは、俺を仲間だと思っていなかったわけだしな。鎖を解いてやる理由は、何もない。
涼宮は、俺をSOS団に戻そうとしているが、答えは絶対にノーだ。もう付き合いきれん。

結局皆、ひとりぼっち。それだけの話だ。


佐々木は、執着された男から嫌がらせを受けた。
橘達がいなくなり、精神的に一番傷付いた時だったので、かなり堪えたようだ。
再会したときの俺達は、まさにボロボロだった。お互いに涙を見せはしなかったが、一目見て理解しあった。傷付き、疲れ果てている、と。
結局は、お互いに暖かさを求めて、お互いに優しさを求めた。だから、佐々木はお互いのエゴイズムについて、ひとりぼっちだと言ったんだろう。
そうした意味だと、皆、ひとりぼっちなんだろうな。
今は不甲斐ないが、いつかお前に言わせてみせるさ。

「キョン。ふたりぼっちだね。」

とな。

寝息を立てる佐々木の髪を撫で、俺は佐々木にそう誓った。

END

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最終更新:2013年03月03日 04:17
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