70-179『The time of the oath』4

長門は、同期先から送られた天蓋領域のプロトコルの解析を行っていた。
解析中に思う事。それは。
同期先のシーケンス。

天蓋領域に手も足も出ず、ひとり、またひとり、戦闘不能に追いやられていく。
古泉が、みくるが、そして、彼が。

佐々木の改変が成功し、天蓋領域は去っていく。戦闘の継続は無意味だと判断した天蓋領域のインターフェース。
自分は迷いなくその首を捩切った。

『エラーエラーエラーエラーエラーエラーエラーエラーエラーエラーエラーエラーエラーエラーエラーエラー』

この感情に、名前をつけるとしたら。それは、激しい怒り、そして哀しみ。
天蓋領域のインターフェースを灰塵に帰し、自分は彼の家に向かう。
そこにあったのは、彼の脱け殻。そして罪悪感に泣く佐々木の姿。
佐々木を迷いなく戦闘不能にし、自分は言った。

『あなたを殺さない。代わりに。
……あなたがしたように、あなたの中の彼に、死を与える。』

佐々木の目が絶望に染まる。

絶望に彩られた絶叫。
やがて動かなくなる佐々木。次に目を覚ました時、彼女は彼を完全に忘れている。

情報操作をし、あの春の事件は橘、藤原、周防がハルヒの力を狙った事に摩り替えた。

『キョンが記憶喪失ですって?』
彼を一番甲斐甲斐しく介護したのは、ハルヒ。
『有希、そんなもんはね、なけりゃ新しいもんで埋めればいいのよ!』
その言葉通り、彼は再び『彼』に戻った。そして、彼はハルヒの手を取った。
それは、ハルヒの願望などでなく彼自身の意思で。

彼女のささやかな抵抗は、結局何の意味も成さない無意味なものに過ぎなかったのだ。

しかし、何故同期先の自分は、このシーケンスパターンを送ったのか。

対策としては、時期の引き延ばしなどがあるが、全て気休めだろう。
プロトコルの解析があり、自分がキョンの監視を行うのは不可能だ。
また、佐々木とキョンが接触しない可能性などそれこそ万にひとつもない。
未来、機関を深く関わり合わせては、最悪で古泉、みくるを殺害される可能性が出る。
それ故の独自行動である。
それに天蓋領域が関わる以上、これは情報統合思念体で解決すべき問題だ。
だが、独自行動の結果、このシーケンスパターンにならない可能性。再修正の確率は、0.00001%。
痛し痒しという念に駆られるが、それでも長門は可能性を探るしかなかった。

「……私は、彼を守る。今度こそ。」

To Be Continued 『HIDE & SEEK』

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最終更新:2013年04月29日 13:35
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