71-640「お片づけ」

「この笹はどこに持っていくんだ?」
「ああ、それはつきあたりのスペースによろしくね」

 ここは公民館。 何をやっているかというと、昨日の七夕祭りに使った笹を展示スペースへ移している最中。
 お隣が祭りの実行委員で手伝いを頼まれていたのだけれど。 たまたま駅近くをぼんやり歩いていた彼に出会い誘えたのは僥倖というべきか。


「みんなこれに参加してたんだな。 あいつらも一緒だったのか?」
「ああ、橘さんと九曜さんも皆浴衣で参加したんだ。 二人共なかなか似合ってたよ。」
 ほう、とキョンは何かを思案するように周りを見る。
「その絵ヅラも見てみたかったな……ん? その二人はどうした?」
 九曜さんは一時間食べ放題祭りとかで商店街のカレー屋へ涼宮さん・長門さん・朝倉さんとお出かけ。 橘さんはオイタが過ぎて自宅謹慎中。
「という訳で二人共片付けには参加してないよ」
「それで団活中止になったのか。 店潰す気かあの四人娘は…… で、橘は今回お前に何したんだ?」
 僕に飛び掛るのは毎度のことなのだが、今回は岡本さんも犠牲になった。
「小さい子も見ているのに三人とも浴衣がはだけて大変だったよ」
 私が苦笑いすると急にキョンは壁に頭突きをはじめた。 どうしたキョン?
「なんで!俺は!その場所に!! あぁぁぁぁぁもぉぉぉぉ!!」
 心の叫びとでも言わんばかりに壁に頭突きしながら言葉を紡ぐ彼。 周りは何事かとこちらを遠巻きに見ている。
「何を後悔しているか知らないが、程々にしないと額から血が出てるし岡本さんたちも驚いてるよ」
「ん、スマンな。 よし、続きやってくる」
 何事もなかったかのようにキョンは作業に戻る。 切り替えの早さは相変わらずだな。

 さてと、こっちも続きをやろう。 あ、岡本さんごめんね、騒がしくして。
「相変わずね、キョン君って。 それにしても、せっかく連絡したのになんでお祭りに参加しないかなー」
 怒りながらもどこか楽しそうな彼女。 ふくれっ面も美人だと可愛く見えるものだ。
「岡本さん、そう言わないで。 キョンも色々大変みたいなのよ。」
「はーい。 ふふ、佐々木さんも彼のお世話大変ね。 あ、そうでもないのか」
 急ににやける彼女。 別に世話と言うほどのことはやってない、キョンのあれは見てるだけでも楽しいものである。
「うーん、それは同感かな。 ホント変わらないね、彼。 でも来なかったのは事実だからこき使ってやろ」
 程ほどにね。 彼女の性格からして本気ではないだろうが。
「それより須藤から連絡が来てなかった、って電話あったけど。 岡本さんメールしなかったの?」
 あ、と一言声を上げてこちらを向く彼女は
「連絡先が消えてたの忘れてた。 あちゃー、佐々木さんから謝ってたって言っておいてくれる?」
 須藤にとっての爆弾発言をした。 そこは彼女が連絡したほうがいいのだけれど。 とは言えバツが悪いだろう、まぁ、仕方ない……須藤ドンマイ。
「ところでさ。 佐々木さん、キョン君とはどこまでいったの?」
 急に話題が変わる。 私が言うのもおかしな話だが女性特有の会話の展開はついていくのが大変だ。 ところでどこまでとはどういうことなのか。
「いや~ん、とぼけないで。 ね、どこまでいったの?」
 嬉々とした表情で聞いてくるのだが、はて、彼女は何を言いたいのやら。 一番遠いのは中三の時に受験祈願で行った○○神社だろうか?
「……いや、そういうことじゃなくて……まぁいいわ、後でキョン君に聞くから」
 ふむ、どうやら満足できる回答ではなかったらしい。


「ふぃー、やっと全部運び終わったか」
 どっこいしょと座り込む彼。 相変わらず、所々で年寄り臭いなこの男は。 彼らしいと言われればそうなのだが。
「お疲れー、はいお茶」
「お、サンキュ岡本。 それにしても笹多くないか?」
 臨時展示室の三面にそれぞれ笹が2本づつちょっとした装飾と一緒に飾られている。 特に仕切りはなく見る人は触ることができる。
「ああ、委員長が張り切ったらしくてね、10歳以下、10代、20代、3~40代、5~60代、それ以上で分けて願いを吊るしたんだよ」
 実行委員長のお爺さんは実に嬉しそうに笹を見ている。 ああいう顔されると文句も言えまい。
「一本一本はそこまで大きくないけどそれでもすごいよね」
 岡本さんが見回しながら言うと、キョンは少々うんざりした感じで
「何考えてんだあの爺さん。 そんなに人いないだろ」
 ため息交じりの言葉を吐く。 手伝いを承諾したときはここまでの数とは思ってなかったのだろう。
「若い男性はほとんどいなかったけど、それでも結構な人数だったよ。 そうだ、せっかくだからみんなの願い見てみないかい?」
 二人を見ながら言ったつもりだったのだが
「そうだな、これで帰るのもなんだし見ていくか。 岡本も見ていくだろ?」
 キョンの発言に岡本さんは驚きとも戸惑いとも言える微妙な表情で私を見る。
「佐々木さんいいの?」
 何故私に許可を求めるのか。 高校に入って更に明るくなった彼女と話すのも楽しいから私は一向に構わない。
「あ、う、うん。 佐々木さんがいいなら……」
 どうにも挙動不審な岡本さん。 どうしたんだろ?


「まずこれは……70歳以上のか。 意外と多いな」
「うん、近くの老人ホームの入居者の方々も招待したんだ。 私たちが代筆したものもあるわよ」
 人によっては歩くことも話すこともままならないご年配の方のお世話は予想以上に大変ではあったが、見た感じ楽しんでいただけたと思う。
「やっぱりこの世代だと自分よりお孫さんのことが多いみたいだね。 あとは世界平和か」
 この世代の方々が世を憂うのは心苦しいものがあるね。

「次は……5~60代か。 これも結構あるな」
「この年代の人たちが立案者だからね、近所付き合いも多い世代だし」
 自分たちの親より少し年上の世代だが、女性は何かとパワフルである。 実際彼女らが中心だったと言っても過言ではないだろう。
「ここは自分・子供・孫と対象が様々だね」
 まだ働きたい、退職してからの第二の人生、子供の就職、孫の健康等……色々考えさせられるね。


「で、これは……3~40代か。 ちょっと少なくなったか」
「そうね、家事やってて来ることできなかった人が多いのかな?」
「ちょっとヘビーなのがちらほらあるね。 再就職やローンの話題はちょっと生々しくないかな」
 人によっては子供も大きくなったり親御さんの世話とか、この世代が一番お金がかかるのだろう。 ん? これは……
   『嫁さんくれ 贅沢言わんからくれ』
「……」
「……」
 何とも言えぬ表情で黙り込む二人。 ちょっと切実すぎる。
「こういう人もいるか。 かなり追い詰められてるね。 是非頑張っていただきたい」
「佐々木ってこういう時ドライなのな」

「それでこれが……20代か。 少ないな」
「ここが一番少ないよね。 あまり興味ないのかしら」
 会社や知人との付き合いが増えて、結婚していればお子さんが幼い人も多いだろうからね。 地元から出ている人もかなりいるのかもしれない。
「それでも就職関連が多い、か。 そんなに先でもないから他人事じゃないんだろうけど。 あとは物欲も。 欲しいモノが多い時期なのかな?」
 そう遠くない未来を考えつつ見ていく。 あ、これは……
   『彼氏募集 我侭言いません』
「これは……」
「さっきの人ダメなのかなぁ」
 二人も同じこと考えたようだ。 しかし
「名前や住所を書いてるわけじゃないから難しいね。 縁があればもしかすると……」
 それでも厳しいだろう。 いくら他の地域に比べ近所付き合いがあるとは言え、さすがにそこまで親密な関係でもないし。
「織姫・彦星の喜びのおすそ分けに期待だな」
 キョンのつぶやきに彼女と二人して驚愕の表情で彼の顔を見る。 これは驚いた。 キョンにしてはなかなかロマンチックなこと言う。
「そりゃ繊細な心を持つこの俺だか「次は私たちの世代だね」
 そうね、次行きましょうか。
「泣いていいか?」
 やはりキョンはキョンだったようで安心した。 彼女もよくわかっている。


「10代か……さっきよりは多いな」
「私達で声かけまくったからね~」
 岡本さんが胸を張る。 また大きくなったようで羨まし……いや、なんでもない。
「それじゃ須藤も来たのか。 あいつなら岡本が声かければ来ただろ」
 キョンの発言に岡本さんはバツの悪そうな顔をする。
「あ、それがね……」
「須藤には連絡しそこなったらしい。 岡本さんのアドレス一覧から消えてたそうだ」
 須藤の想い人であろう女性を知っているだけにキョンも私も苦笑いするしかない。
「Oh……じゃあ今日呼んでやりゃよかったじゃないか」
「あ」
 岡本さんと顔を見合わせる。 言われてみればそれもそうだ。 そこまで考えが及ばなかったな。
「それもどうよ……須藤ドンマイ」
「あははー。 ま、いいじゃない。 あれ? キョン君の名前書いてる人がいる」
「は? なんだそりゃ」
 ほう、それは興味深い。 どれ……これは、くっくっ、なるほどね。
   『キョンくんたちとずっといっしょにいられますように』
「キョンの妹さんだね」
「だな。 ったく、あいつこんなところまで人の変なあだ名広める気か」
 うそぶく彼だが、口元がニヤけてるのはどうにも隠せないらしい。 相変わらず仲のいい兄妹だ。
「へぇ~、キョン君妹さんいたんだ。 かわいい~」
 キョンに似ない、素直でとてもいい子だよ。 春先にも会ったが、あの天真爛漫さには癒される。 
「でもなぁ……」
 キョンが少し顔をしかめる。 どうかしたのだろうか。
「あの年齢でこれ、いいのか?」
 確かに来年中学生だと考えると心配になるのも分からない事もないね。 でも
「大丈夫じゃないのかい? 女の子って無邪気なように見えても結構精神的には大人びてるものだよ」
「内心ではドロドロしたもの抱えてたりしてねー、男女関係とか」
 どう聞いても冗談とわかる岡本さんの言葉にキョンの顔が青くなる、おまけに涙目だ。 大丈夫かこのシスコンは。
 ……それより同じ場所に結び付けられている短冊の方が気になる。 二人は気づいてないようだが。
   『妹ちゃんとお兄さんとずっと仲良くいられますように』 


 岡本さんと私のフォローにより、数分後やっとキョンが元に戻った。
「ねぇ、キョン君。 私達の短冊どれか分かる?」
 ふむ、当ててもらうのも面白いかもしれないね。
「じゃあ私のからね」
「ん~、多いからなぁ。 え~っと……ん?……あ、これか」
   『全国大会優勝 できれば視力回復も』
「え~、もう見つかったの~。 早くない?」
 ということは正解か。 凄いな、どうして分かったんだい?
「岡本、新体操うまかったろ。 でも県大会で怪我して全国無理だったんだよな。 それでも高校でまだ続けてるみたいだしな」
「あ、覚えててくれたんだ。 いが~い。 だけどなんか嬉しいな」
 岡本さんの笑顔にもキョンは微妙な表情を見せる。
「そんなに薄情に見えてたのか俺は。 まぁいい。 あと岡本ってかなりの近眼だったろ、今はコンタクトみたいだけど」
 今度はキョンの発言に驚く彼女。 彼女は表情がコロコロ変わって面白い。
「そんなことまで知ってたの?」
 そりゃあれだけ至近距離で話しかけられ続ければ勘違いしない限り分かるというものだ。
「え、なんのこと?」
「無自覚かよ。 あのな、岡本は話し掛ける時異様に距離が近かったんだよ。」
「そっかなー?」
 どうやら本当に無自覚だったらしい。 彼女らしいというべきか、真面目ながらもそういうところは抜けていた気はする。
「そうよ。 鼻先の距離なんて握りこぶし2個分もなかったし、人によっては髪の毛当たってたわよ」
「今だから言えるけどな、あれ男連中は結構大変だったんだぞ」
「なんで?」
 知らない男子からすれば美人に近距離で話しかけられれば動揺する。 男子皆して目が泳いでいたのに気がつかなかったのだろうか。
「岡本はただでさえ美人でスタイルいいからな、近眼のこと知ってる俺でも動揺して目のやり場に困ってたくらいだ」
「う、あ、ありがと。 そっかー、エヘヘ」
 キョンの言葉に頬を赤くしてはにかむ彼女。 これは反則だ、女性の私でもドキっとする。
「今の状態でやられたら男子や橘さんみたいな子なら皆堕ちるわよ。 ねぇキョン」
「え、そうなのキョン君?」
 橘の言葉に少し反応するも気にはしていない模様。 そういう子に慣れているのかもしれない。
「否とは言えんな。 悲しいけど俺だって男なのよね」
 キョンの言葉に彼女の耳まで赤くなる。 キョンもなかなか言うようになったものだ。 特に格好よくもないが。
「でも絶対そういうつもりで言ってないわよね」
 岡本さんが私に耳打ちする。 彼女も中学生活を一緒に送った仲である、それなりによくキョンを理解している。
「キョンだからね。 人間観察には長けているかもしれないけれど、それには同意せざるを得ないわ」
「なんか俺を馬鹿にした内緒話をしている気がするのだが、聞いたらマジ泣きするかもしれんからやめておこう」
 そういうわけではないのだが、それが賢明だ。


「さ、次は僕の分だね」
 気をとりなして次は私の分だ。 と、キョンはすっと迷うことなく一枚の短冊を手にする。
「これだろ、お前の」
 早過ぎないかい? しかも正解だ。 岡本さんも目を丸くしている。
「いや、さっき岡本のを探してた時に見つけてな。 こんな願いはらしくないかもしれんが、ある意味お前以外に思いつかん」
 確かに普段の私からすればこういう願いは似合わないだろう。 だからこそ見つけられないと思ったのだが。
「あとな、お前字の癖が中学の時と変わってないじゃないか。 それが決定打だな。」
 岡本さんも私も首をかしげる。 そこまで癖のある字には見えないと思うのだけれども。
「佐々木さんの字って確かに綺麗だけどそこまで癖あるかな?」
 やはり彼女も同じことを思ったらしい。 どう見ても普通の字である。 凝視せどもこれがどうやって決定打になり得たのか思案に余る。
「事あるごとに佐々木からノートを借りてたのは伊達じゃないぜ? 加えて自分の癖は本人には分かりにくいしな」
 胸を張るが決して褒められるものではない。 岡本さんも少々呆れ気味だ。
「なーんだ。 何か不可侵の通じ合ってるものがあるかと思ったのに、期待ハズレだな~。 キョン君だから仕方ないか」
 キョンだからね。 そういうのは期待するだけ無為というものだろう。
「どうやらお前ら本気で俺を泣かせたいらしいな。」


「そうして最後が10歳以下か ここも多いな」
「大変だったよねぇ。 私保育士は絶対無理だわ」
 確かに。 ただでさえ大勢で大変なのに自分の子の面倒も見ずにおしゃべりしてる母親もいたからね。 ああはならないようにしよう。
「あー、そういう母親俺も苦手だな。 ハルヒだと怒鳴りに行くかもしれんな」
 そこまで傍若無人でもあるまい。 たしなめに行くくらいはしそうだけど。 おや? 岡本さんの様子がおかしい。
「ハルヒってあの涼宮ハルヒさん? キョン君と同じ部活の」
「なんだ、岡本まで知ってるのか。 あいつの悪行どこまで広まってるんだ? おまけに俺も一緒だってことも知ってるのか」
 頭を抱えるキョン。 ご愁傷様と言いたいが、君も楽しんでるようだし仕方ないね。
「そうじゃなくて。 キョン君に聞きたいんだけど」
 真面目な顔になる岡本さん。 キョンも聞く姿勢になる。 一体どうしたというのか?
「キョン君、涼宮さんと付き合ってるの?」
「ねぇよ」
 聞く岡本さんもそうだが、即答するキョンも大概である。 さすがに涼宮さんが可哀想だ。
「本当に? 絶対?」
「ない」
 食い下がる岡本さんと引きながらも答えるキョン。 もしかして岡本さん、キョンのこと……と思ったら彼女はこちらを向いて微笑んだ。
「よかったねー佐々木さん。 浮気してないって」
 ああ、そういうことか。 卒業から1年強経っているというのにまだそれ続いていたのか。
「どういう事だ、佐々木。 浮気ってなんのことだ?」
「ああ、中3の時のあれだよ。 彼女たちの中ではまだ納得していないらしい。」
 私とキョンが付き合っているという噂。 思春期真っ只中の子供はそういうのに興味津々である。 それがまだ続いているとは……
「そういや国木田や中河も相変わらずだったな。 どうすれば諦めるんだあいつら」
「だってどう見てもそうじゃない。 あれで付き合ってないって誰が納得するのよ」
 当事者二人が認めていないのになぜ周りが納得しないのか。 語る言葉はもう卒業時点で枯渇している。
「もー、どうすれば二人共認めるのかな」
「そっくりそのままお前に返したいんだが」
「返品は受け付けておりません」
「世の中にはクーリングオフというものがあってだな」
 なかなか息が合ってるみたいだね。 いっその事二人が付き合えばいいんじゃないか?
「え~」
「おい、そこまで嫌か! そんな眉間にシワが大量によるほど嫌か!」
「だってキョン君だし~」
「本気で凹んできた。 もう帰る」
 そろそろやめてあげなよ。キョンがまた涙目になってる。
「そだね」
「やっぱりか! やっぱり二人共グルか! そんなにか弱い高校男子の心えぐって楽しいか!」
「でもキョンとは普通より話しやすい位の友人よ。 それは今でも変わらない。」
「ん~、頑固だなぁ二人共」
 もうその話題はやめてそろそろ短冊見に行こう。
「あ、忘れてた。」
「ねぇ、無視だけはやめてくんない? ヒートアップしてる自分が虚しくなる」


「改めて10歳以下の笹か」
「やっぱり立ち直り早いよね」
 そこが彼のいいところだ。  SOS団で更に鍛え上げられたみたいだけどね。
「読みにくいな」
「それは仕方ないよ。 子供らしくていいじゃないか」
「そうよね。 達筆な幼児って嫌じゃない?」
 やはり無邪気な願いが多い。 心洗われるというか、この順番で良かったらしい。 ん? これは……
   『あんていしたしゅうにゅうがほしい』
   『ろうごもぜいたくにくらしたい』
「」
「」
「」
 これは……達観しているとかいうレベルじゃないな。
「そう言えば橘さんが小さい子に書き方教えていたわよね」
「あのグドンの餌ァ! 子供に何吹き込んでやがる!」
 橘さんお仕置き追加だね。 あれ? ここにも一枚残ってた。子供にしてはずいぶん高い位置に……
   『カレーは飲み物』
「……九曜か」
「随分きれいな字ね。 明朝体? 九曜さんって電波系なの?」
「ごめんなさい。 彼女は悪気無いのよ。 教えてなかった私のミスだわ」
「九曜なら仕方ないか。 あれ? 裏にも何か書いて……」
   『鳥バード』
「……」
「そういやこの間長門の家で『ガ○使の年末特番を最初から全部ぶっ通し鑑賞会』をしたって言ってたな……気に入ったのか」
「これもきれいな字ね。 草書体?」


「疲れたな……」
「うん、最後にね、ちょっとね」
 あの二人にはちゃんと言っておくとして、お疲れ様。 そろそろ帰るとしよう。
「あれ? 佐々木さん、向こうで委員長さんが呼んでるよ」
「ちょっと行ってくるわね。 少し待ってて」
「うん、行ってらっしゃい」

「ふう、いつの間にかこんな時間か」
「ねぇキョン君。 佐々木さんの短冊、あれどういう意味?」
「ああ、あれか。 佐々木もエンターテイメント症候群にかかったってことだ」
「?」

   『楽しくも不思議な出来事がもっと起こりますように』

おわれ


お ま け
「ところでキョン君。 佐々木さんとはどこまでいったの?」
「は? どういう事だ」
「とぼけないで。 で、どうなの」
「う~ん、そうだなぁ」
「うんうん」
「一番遠いのは中三の時に受験祈願で行った○○神社だな」
「予想通りすぎるよ」


お ま け 2
「ところでキョン君」
「なんだ、まだ何かあるのか?」
「こういうのがあるんだけど」
「スマホ? な!? こ、この写真は!」
「そう、浴衣がはだけた佐々木さんの写真よ」
「いくら必要だ?」
「慌てないで、これは数枚あるうちのほんの一枚に過ぎないわ」
「なん……だと」
「当日も少し手伝いがあったから着替えはその後事務所でやったのよ。 ショーツは履いたままだったけどブラは専用の下着に替えたわ」
「ナニィ!!」
「その時の着替えの写真データが10枚あるの」
「よくバレなかったな」
「橘さんと九曜さんが手伝ってくれたわ」
「GJ橘・九曜!!」
「で、交換条件だけど」
「おう、定期預金の解約準備は万端だぜ」
「佐々木さんとキョン君、二人の仲を認めちゃいなYO」
「」
「それか夏休みに私と買い物・遊園地etcデート一週間」
「そっちで」
「即答!?(え?ウソ?)」
「要は荷物持ちと遊び相手になれってことだろ?」
「うん、分かってた。 多分そーだろーなーって思ってた」
「? 取り敢えず契約成立な」
「ま、いいか。 キョン君となら楽しそうだし」

「ふーん岡本さんとキョンでデートねぇ」

「」
「」
「仲良さそうでいいことだ。 うん」
「あ、いや、その、佐々木さん、そういうつもりじゃないのよ?」
「」
「何を慌ててるんだい? 遊びに行くんだろ? 別に僕は関係ないよ」
「あれー、佐々木さん喋り方が変だー」
「いや、遊びに行くのは本当にどうでもいいんだ」
「え? いいの?」
「うん、ただね」
「うん」

「写 真 は 消 し て ね」

ジャンピング土下座したその時キョンと岡本は思った「ああ、微笑みで魂抜けるってこういうことか」

ほんとにおわれ

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2013年09月04日 23:56
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。