サガラ

「我らは永遠に蔓延る者。空を越えて茂る者。古き民に変革を促す者であり、或いは、ただ単に『蛇』と呼ばれたこともある」

【名前】 サガラ
【読み方】 さがら
【俳優】 山口智充
【登場作品】 仮面ライダー鎧武/ガイム
【初登場話】 第1話「変身!空からオレンジ」
【分類】 不明
【モチーフ】 ロキ?、ラタトスク?、聖書の「蛇」?

【詳細】

『鎧武』に登場する神出鬼没のトリックスター。
過去作におけるスマートレディや洋館の男女のように人間に酷似した姿形をしているが、相手を金縛りにして動きを鈍らせる念力、他人の怪我の治癒、さらには何の変哲もない果実をロックシードに変えてしまうなど不可解な能力を行使する描写があり、少なくともこの世界の人間ではないのは確か。

物語開始当初は、沢芽市で配信されている海賊インターネットラジオ『ビートライダーズホットライン』のパーソナリティを務めるDJとして登場(公式でも「DJサガラ」という名称で呼ばれているが、中盤以降はDJという身分ではなくなっている)。
彼がサイクリングウェア姿で狭いブースから発信する番組は、「海賊ラジオ」でありながら街の至るところで老若男女が携帯端末で閲覧するほどの視聴率を得ており、住人の中で彼のことを知らぬ者はいない。
とくにその軽快なノリから来る話術は、市内の若者「ビートライダーズ」たちを魅了し、彼らの間で流行している「インベスゲーム」の人気に火を着けた。

その正体はユグドラシルの内通者で、「プロジェクトアーク」に携わる主任貴虎の命令で市内の情報統制を任された身。
「インベスゲーム」でビートライダーズたちの抗争を煽っていたのも、全ては計画の初期フェーズである「試作(戦極)ドライバーのデータ収集」を促すためだった。
しかし、真の意味では完全なユグドラシル側の人間ではなく、彼らがクラックの大量発生による緊急事態の責任をビートライダーズたちに押し付けようとした際は「ガキだと思って甘く見ない方がいい」と忠告したり、無断で番組配信してビートライダーズたちの汚名返上のライブに一役買ったりと、時折組織の意に反する行動を起こす。
さらに紘汰が捕虜になった際には、凌馬の研究室から勝手に拝借したツールを託してジンバーレモンへの変身能力を与えて脱走の手引きをし、逆に彼らがユグドラシルへの侵入の手立てが無く袋小路に掛かっていた際には、新型ロックビークルを渡すなどビートライダーズ側を影ながら支援している(そのことについて本人は「そもそも俺が『ユグドラシルの人間』っていうのが間違い。俺はただ戦いの行く末を見守るだけだ」と紘汰に語っている)。

前述の捕らわれた紘汰と初めて邂逅した時の会話から彼の戦う動機に一定の興味を抱いており、後にプロジェクトアークの真相と自分が倒したインベスの正体を知ったことで絶望して戦意を失った彼の前に現れては、オーバーロードの存在を教えてカチドキロックシードをプレゼントし、「犠牲を必要とする世界を拒むなら、お前自身が世界のルールを壊せ」と奮起を促した。
鎧武を再び闘争の地へ招いたことに謎の少女(本人は「始まりの女」と呼んでいる)に咎められているが、そこでも本人は「闘争の果てを見届けたいだけ」とあくまで自分が傍観者であり、それ以上の目的はないと主張した。

実は上記のユグドラシル側の人間というのも仮の姿であり、戸籍も人間世界で活動するための偽装で、凌馬たちが彼への不信感を抱いた頃には一切手を付けていなかった報酬を残して連絡を断った。
本人曰く、闘いを見守る傍観者としては「不利な者を応援したくなる」らしく、ユグドラシルを離反してからは紘汰だけではなくユグドラシルの凌馬に彼の「神話起源説」を裏付ける「禁断の果実」の存在を肯定しながらその手掛かりを告げたり、果てはデェムシュとレデュエの前にも現れて紘汰たちの存在を「油断大敵」と警告している(その時に「相変わらずだな。お前たちも」と呟いていたことから、既に彼らとも面識がある様子)。
なお、これ以降はマフラーとポンチョを合わせたような民族衣装を纏っている。

さらに「禁断の果実」を隠し持っていたロシュオを説得してその実から作り出した極ロックシードを受けとり、紘汰に前に現れては「世界を救いたいならお前自身がオーバーロードになれ」と言い放ち、彼の覚悟を見届けた上でそれを託した(この事から、実は鎧武のパワーアップ形態、ジンバー、カチドキ、極の全てに関与していたことになる)。

そして再びロシュオと彼の元に捕らわれていた舞の前に姿を見せると、極アームズ(オーバーロード)と化した紘汰の残酷な未来を語った。

実は彼の正体は人間や怪人などという「個」という範疇に収まるものではなく、「ヘルヘイムの森」そのものの意思が滅びゆく種族へコンタクトを取るために象った1種のインターフェースやアバターのような存在。
幾多の宇宙で「ヘルヘイム」として訪れた先の種族を滅亡の危機に追い込んでは、種族の中から「黄金の果実」を得た者を「勇者」として選別し、種族に新たな「進化」を齎す、という「創造」と「破壊」のサイクルを繰り返して永遠と長い時間を彷徨っていた。
ただし「進化」を促すためには、まず種族の雌(女性)1体を黄金の果実と同化させて「始まりの女」に昇華、さらにその「始まりの女」自身が選んだ唯一の存在を真の「勇者」と認め正規の「黄金の果実」の所有者にするという段階的な手順を踏まなければならない(これは「種族の神話になぞっていなければならない」というサガラ自身の意思)。
彼という存在そのものに「悪意」は無く、ただ純粋に試練を与えられた種族が見せる「進化」を見届けたいという行動原理に基づいている。
42話でロシュオに「黄金の果実」を託された舞を今回の「始まりの女」に選び、本格的に彼女と黄金の果実を融合させようとする。

第45話で死闘の末にバロンに辛くも勝利した鎧武が「始まりの女」の舞から「知恵の実」を授かって「始まりの男」に昇華した機を見計らって姿を現して彼の望みを聞き届けようとするが、「この世界の変革を拒む」という主張に対し、自身の「ヘルヘイム」としての存在意義が否定されてしまうからか、やや困惑する。
しかし、最終的に紘汰が開いたクラックでインベスやヘルヘイムの植物が未開の惑星に転移されると、今回の自分の役目を果たしたと悟り、次に自分たちの標的となる種族のことを案じながらその場を去って行った。

【余談】

キャラクターの元ネタはおそらく、『北欧神話』におけるトリックスター「ロキ」、もしくはユグドラシル内を駆け巡って根元の蛇「ニーズヘッグ」と樹上の鷹「フレースヴェルグ」の会話を中継しつつ両者を煽って喧嘩を促す栗鼠「ラタトスク」(とくにラジオのDJというスタイルと、ビートライダーズ、ユグドラシル、そしてオーバーロードの三つ巴の陣のどれにも顔を出して闘争を煽る姿は後者に近い)。
また『旧約聖書』ならば、アダムとイヴにエデンの知恵の実を食べるように促した「蛇」が妥当と言える(と言うより、凌馬の「神話起源説」で世界神話がヘルヘイムと繋がった事実である点や、自身が「蛇」と呼ばれていたという自ら語っていることから、彼こそがその「蛇」自身なのかもしれない)。

演じてるのは「ぐっさん」の愛称で知られる芸人山口氏。
従来の平成ライダーシリーズでレギュラー出演していた芸人は、やなぎ氏や田中氏など、どれも三枚目の善人キャラクターを演じているが、謎めいた役を演じるのは珍しい。

最終更新:2014年09月21日 23:50