388 名前: 371 投稿日: 2006/08/07(月) 00:55:00

 玄関先にドン、と一つ、大きなトランクが置かれていた。

「……なんでさ」

 なんとなく、周囲に目をやる。
 右確認、左確認。辺りに人影は無し。
 これの持ち主がすぐ傍にいるわけではなさそうだ。
 ……ということは、いよいよ持って理解に苦しむ。
 何故に、このトランクはこの衛宮邸の目の前に置かれているのでしょうか……?

「しかし……」

 箒を壁に立てかけて、地面に置かれているトランクに触れてみる。
 トランクと一言で言っても、そこらの旅行者が使うような取っ手が伸びてカートに早変わり、などという代物ではない。

 言うなればアンティーク、だろうか。
 焦茶色のトランク本体、角の部分と鍵穴、取っ手の部分が金属で補強してあり、その金属部分に施された細工は俺が見ても見事だと思わされる意匠だ。
 遠坂がロンドンに渡る時に用いたトランクがあったが、アレよりも確りとした造りで、古さと質の良さを兼ね備えた逸品、といった感じだ。

「誰かがうっかり置いていったのか……?」

 遠坂じゃあるまいし。
 と、本人の前で言ったら捻りの効いた拳の一つももらえそうなことを頭の中でだけ呟いて、トランクを持ち上げて見る。

 ……結構重たいな。

 持ち上げてみると、確かな手ごたえを感じる。
 トランクの中は空っぽ、という訳では無さそうだ。

「ん?」

 そのとき。
 トランクから滑り落ちるようにひらひらと、一枚の紙が地面に落ちた。
 何気なく拾い上げ、裏側を見てみると、そこには……。

α:「危険物につき取り扱い注意」と書かれていた。
β:「PM11:00、港にて」と書かれていた。
γ:「まきますか? まきませんか?」と書かれていた。

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最終更新:2006年09月03日 17:04