408 名前: 371 投稿日: 2006/08/07(月) 16:42:29

 こんなものを一般人がいる場所に放っておくわけにはいかない。
 俺はトランクを引っ掴むと、慌てて玄関の奥に引っ込んだ。
 居間……は拙い、今の時間は藤ねえが溶けてバターになっている可能性が……!

「そうだ、土蔵——!」

 土蔵ならば、このトランクがあっても全く不自然ではない。
 なにしろ鉄板焼き用の鉄板からペンギン型カキ氷機まで、なんでもござれのガラクタ置き場だ。
 ついでに俺の魔術も気兼ねなく使える絶好のポジションだ。

「……よし」

 そうと決まれば、玄関先から土蔵まで移動である。
 俺は他の住人、特に藤ねえに気を配りながら、中庭に続く渡り廊下を通り抜ける。
 ステージ1とは打って変わって、ステージ2はスニーキングミッションだ。
 居間に面する廊下を避けて、離れの大外回りを迂回する。
 これならば、ちょっとやそっとのことでは目に付くまい。
 もっともセイバーやライダー相手には一発で見つかってしまうのだが。

「……ふ、良好だ大佐」

 思わず口から潜入捜査官っぽい台詞がこぼれる。
 いやまあ、別に藤ねえ以外の住人には見られても一向に構わないというか、むしろ遠坂あたりには一度尋ねてみるべきだと思うのだが。
 正義の味方としては……というより男の子としては、こういう仕事というか任務というか、そういうものにも憧れるのだ。
 そのまま離れを回り込み、何事も無く土蔵まで到達することが出来た。

「よっ、と」

 土蔵の重たい扉を片手で——もう片方の手にはトランクが握られている——開けると、土蔵特有の冷たい空気が漂ってくる。
 その中に身体を滑り込ませると、返す腕で扉を確りと閉める。
 ごとん、という重い音とともに、土蔵は外界と断絶した。

409 名前: 371 投稿日: 2006/08/07(月) 16:44:49

「……ふう」

 一度大きく息を吐いて、緊張していた身体を弛緩させる。
 別に疚しいことはしていないはずなのに、額から冷や汗が一筋、流れ落ちる。

 さて。
 いよいよこの謎のトランクの正体を暴く時がやってきた。
 今度はゆっくりと慎重に止め金に触れる。

 かちん。

「っ、開いた」

 先ほどまで堅固に施錠してあったとは思えないほど、トランクはあっさりと口を開いた。
 ゆっくりと開いていく蝶番。
 その中には、純白の布が敷き詰められていて、中央には『何か』が鎮座している。
 その『何か』は、薄暗い土蔵の中で、真っ暗なトランクの中から、徐々に姿を現した。

「人、形?」

α:黒い翼を持った人形だった。
β:黄色い洋服を着た人形だった。
γ:翠のドレスを纏った人形だった。
δ:蒼い帽子を被った人形だった。
ε:紅い服を着た美しい人形だった。
ζ:ピンクのリボンを結んだ人形だった。

第七が入ってないのは仕様です。

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最終更新:2006年09月15日 06:04