865 名前: 371@銀剣物語 ◆snlkrGmRkg [sage] 投稿日: 2006/11/12(日) 00:34:04


 朝食後、先に出かけた桜と遠坂を見送った俺は、氷室と二人で話し合った。
 話し合った、と言っても、昨日の顛末について俺がほとんど一方的に説明していたようなものだが。
 その結果、雛苺との契約は失われたこと。
 そして、昨夜水銀燈から聞いた、アリスゲームのこと、ローザミスティカのことを順番に話した。

「ローザミスティカ、か。
 こうして雛苺が生きている以上、信じざるを得ないな」

 セイバーとライダーが自室に戻り、水銀燈がどこかへ立ち去って、俺と氷室と雛苺だけになった居間。
 湯飲みを両手で持ちながら、氷室はふう、とため息をついた。

「雛苺のローザミスティカはまだ存在してる。
 それを狙って、他のドールがやってくる可能性はあると思う」

「……確かにな」

 傍らで座っている雛苺を、そっと撫でる。
 撫でられた雛苺は、不思議そうに氷室の顔を見上げた。

「衛宮、頼みがある。
 雛苺は、衛宮の家で預かってもらえないだろうか」

「え……」

「鐘っ!?」

 その言葉に、俺以上に驚いたのは、雛苺だった。

「どうして!?
 雛苺は鐘と一緒がいいのに!!」

 氷室の袖を握り締め、全身で離れないことをアピールする。
 俺も、てっきり雛苺は氷室と一緒に帰るものだと思っていたのだが。

「雛苺……確かに、一緒にいてやるという約束だったな。
 ああ、私もお前と一緒に居たい。
 だが、今の私たちには、お前のローザミスティカを守る術はない」

 確かに、契約が失われた今、雛苺は氷室の力を使う事が出来ない。
 ミーディアムを得たドールと戦えば、まず間違いなく負けるだろう。

「ローザミスティカを奪われれば、もう二度と会えないだろう?
 永遠に離れ離れになってしまうより、少しだけ離れても、一緒に生きていたい。
 ……頼む、わかってくれ、雛苺」

 一緒に生きていたい。
 これが雛苺ではなく、他の男への言葉だったら、俺は愛の告白かと勘違いしたかもしれない。
 それくらい、氷室の説得は真剣だった。
 ……む、嫉妬、してるのか? 俺?

 その真剣な眼差しに、雛苺はしばらく俯いていたが、やがて。

「……鐘、雛苺に会いに来てくれる?」

 と、すがるように言ってきた。
 氷室はそれに、優しい顔で頷く。

「ああ、なるべく様子を見に来てやる。だから、頼む」

「……わかったわ。雛苺はシェロゥの家にいる」

 頷き返して、俺のほうを見る雛苺。
 あわせて氷室も、俺のほうに向き直る。

「頼めないか、衛宮?」

「俺は全然構わないが……いいのか?
 水銀燈なんかは、まだローザミスティカを手に入れるつもりみたいだぞ」

 そこに雛苺を預かったら、まさに猛獣の檻に肉を投げるようなもんだと思うんだが。

「今すぐに奪うつもりでもない様子だが?
 私の家でも危険なのは変わらないのだし、他に頼めるところもない。
 まさか蒔の字や由紀香に頼むわけにもいくまい」

 どちらも危険ならば、ウチのほうがまだ助けられる可能性が高い……か。
 さすが氷室、ちゃんと考えているんだな。

「それに……後ろ向きな考えだが。
 どうせ奪われるなら、水銀燈に奪われたほうがいくらかましだと思ったのだ」

 最後に、氷室はそう冗談めかして笑った。

 こうして、雛苺は衛宮邸で預かることになり、氷室もまた、ここを訪ねてくることを約束したのだった。

866 名前: 371@銀剣物語 ◆snlkrGmRkg [sage] 投稿日: 2006/11/12(日) 00:35:25




 その後、いい加減に時間が迫ってきたので、学校に行くことに。
 氷室はと言うと、もう少ししたら帰る、とのことなので、後でセイバーに送ってもらうように頼んでおいた。

 ……さて、登校したら、まず真っ先に……。


α:蒔寺と三枝に、氷室の無事を知らせよう。
β:今日の一時間目は葛木先生だった。教室に直行。
γ:なんの気まぐれか弓道場に顔を出してみようか。

投票結果

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2006年11月12日 02:49