364 名前: 371@銀剣物語 ◆snlkrGmRkg [sage] 投稿日: 2007/04/17(火) 01:14:20


 赤い薔薇と、紫の水晶。
 吹き荒れ、ぶつかり、砕け散る二つの意思は、それ自体が映像であるかのように、強烈に流れてくる。
 故に、その出所を探るのは、俺ごときにでも出来ることで……。

「――あそこだ!
 水銀燈、あそこに扉が!」

 その場所――と言っても何もない虚空なのだが――を指すと、水銀燈がその方向へ手を翳した。
 何かをなぞるように指を滑らせると、なるほど、とでも言うように頷いた。

「確かに……アソコね」

 そう言って、翳していた手をさっと翻す。
 すると、何もなかった空間から、まるでガラスにヒビが入るかのように、ギシィッ、と裂け目が現れた。

「あれが扉なのか……?」

「ええ。さあ、行くわよ」

 先行して扉へと降りていく水銀燈。
 その動作が余りに自然だったから……ここが虚空の中だということに気がついたのは、水銀燈の後を追いかけて扉まで降下した後だった。
 どうやら、この空間では、本人の進みたいという意思に従って身体を移動させられるらしい。
 ……なるほど、これが『渡り手の無意識』、ってことか。

「……居たわ」

 と、早くも扉に到着していた水銀燈は、その中を覗きこんで呟いていた。
 遅れて俺も、扉の中を覗き見る。

「あれは……」

 ガラスの裂け目の向こう側は、薔薇の花が咲く庭園だった。
 一面に咲く赤い薔薇の花たち。
 その上で舞い踊る、ひときわ赤い大輪の薔薇。
 いや、薔薇のように鮮やかな、赤色のドール。

「……全く。
 いきなり押しかけてきて、無礼なお客ね。
 あまつさえ、居間をめちゃくちゃにするだなんて。
 せっかくのお茶の時間が台無しだわ」

 赤いドレスに、赤い帽子。
 その長髪は金細工、瞳は空の色だろうか。
 真剣に前方を見据えるその表情は、凛々しさと上品さを兼ね備えた、貴人と呼ぶに相応しい風格を持っていた。

「一体何の用事なのかしら。
 私は、あなたのようなお客を招待した覚えはないのだけれど?」

 その言葉は、水銀燈に向けられたものではない。
 おそらく、相手はまだ水銀燈に気付いてすらいないだろう。
 だが、それでも。

「……真紅……」

 応じるように囁いたその声は、憎悪か歓喜か。
 水銀燈のその呼びかけに、あのドールこそが真紅……薔薇乙女《ローゼンメイデン》第五ドールなのだと、確信した。

「あれが真紅か……想像してたよりも、なんか……」

 薔薇乙女、第五ドール……真紅。
 彼女に対して、俺の抱いた初印象は……。


α:水銀燈が言っていたほど、悪い奴じゃなさそうだけど。
β:なんか苦手だ。あまり赤い奴とは相性良くないし、俺って。
γ:真紅? そんなのよりも相手の眼帯ドールが気になるぜ。
δ:いやまて、アーチャーはどこ行った?

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最終更新:2007年04月18日 05:14