661 名前: 371@銀剣物語 ◆snlkrGmRkg [sage] 投稿日: 2007/05/18(金) 01:36:47

「……なんかあの男、士郎に似てなぁい?」

「は?」

 水銀燈の言葉は、俺にとっては意外で、予想外で、そして心外だった。

「……なんでさ。
 俺はあんなにキザじゃないし、捻くれてもいない。
 高いところが好きでもないし釣りで大人気なくなったりもしないぞ。
 一体どこが似ているって言うんだ?」

 まったくもって不本意だ。
 アイツはあくまで俺が将来的になりえる可能性の一つであって、確定した俺の未来予想図2ではない。
 しかし、水銀燈は俺の抗議を受け入れてはくれなかった。

「だって、士郎もあの男も、同じ武器を使ってるじゃない」

「ぐっ……」

 分かりやすい類似点を挙げられて、思わず言葉に詰まる俺。
 そ、そりゃまあ、アーチャーの使う干将莫耶は俺にとっても使いやすいのは道理なわけで、俺が愛用するようになるのも必然なんだけど。

「ぶ、武器ぐらいは似ていてもだっ。
 それ以外のところじゃ、俺とあいつとは絶対に相容れないぞ!」

「なに、ムキになっちゃって……逆に怪しいわぁ」

「怪しくなんかないっ!
 そんなこと言ったら、水銀燈だってあの真紅って奴にそっくりじゃ……」

「ふざけたことを言うのはこのお口かしらぁ?」

「ほ、ほほをふえうはっ!!(頬をつねるなっ!!)
 りふいんらぞ!?(理不尽だぞ!?)」

 速攻で水銀燈に顔面引っ張られる俺。
 ……あれ、でも、このリアクションから察するに、似ているってところは案外図星だったのか?
 って、今はそれどころじゃなかった!

「ほ、ほんなころおり、いははあっちおようふを……!(そ、そんなことより、今はあっちの様子を……!)」

「む……そうだったわね」

 なんとか俺の頬がオープンゲットする前に、引き伸ばす手を離してもらえた。
 そして再びいそいそとアーチャーたちの観察に戻る。
 でも水銀燈、よく俺の言いたい事がわかったなぁ……以心伝心って奴か?

「それで、真紅。
 まさか、まだ心が揺らいでいるなどというのではあるまいな?」

 向こうの三人の立ち位置は、先ほどと変わらず。
 しかしアーチャーに尋ねられた真紅の表情は、最初と同じ平然としたものに戻っていた。

「アーチャー、貴方に言われるまでもないのだわ。
 私が進む道ならば、私の手で拓かなければ意味がない。
 ましてや薔薇水晶の手によって、進む道になどは……」

「叶う望みなどあるはずがない、か。
 私のマスターはやはり賢明だな。
 出来れば私が手を出す前に、その結論を出して欲しかったが」

 いちいち茶々を入れるアーチャーに、わずかにムッとする真紅。

「……そういう訳だから、薔薇水晶。
 私は自分の意思と力に拠って、壊し合う以外の方法でアリスゲームを制してみせる。
 貴女が何を考えていようと、それは変わらないのだわ」

 毅然とした拒絶。
 それに対して、薔薇水晶は……。


α:「無駄なこと……貴女はいつか必ず、私の手を取ることになる」と、立ち去った。
β:「ならばまず……その意思を手折ることにしましょう」と、剣を取った。

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最終更新:2007年05月19日 23:44