第2話 「開始」
チビ悪魔と暮らす事を決めた次の日。
まずはブソーシンキ…「武装神姫」について無知極まる俺に対するお勉強から始まった。
チビ悪魔の長ったらしい説明をかいつまんで話すと、武装神姫ってのは「EDEN-PLASTICS」っていうバカデカい多国籍企業が去年……つまり2036年に発売してから爆発的な大ブームになったオモチャのこと。
しかしたかがオモチャと侮るなかれ、そのシェアはいまやとんでもない規模らしい。
このチビ悪魔を作った「島田重工」は元々航空機用だの工業用ロボットだのの製造で有名な大会社だし、他にも国内有数の製鉄会社「篠房製鉄」や世界的トップデザイナーが起業した「GOLIフューチャーデザイン」、トドメにゃヨーロッパ系軍事産業の勇「カサハラ・インダストリアル」までもが参入して、今現在も続々と関連企業は増えているという。
……正直言ってビックリしたってぇか呆れたね。 世界は平和だ。
で、そういうオフィシャルメーカーから色々発売されている専用パーツはもとより、アンオフィシャルのオモチャさえ流用可能という拡張性の高いカスタマイズ性(チビ悪魔によると『公式アナウンスは出来ないけれど世間では暗黙の了解』だとか)が人気を呼び、さらにはネット上での登録によるイメージカスタマイズやドレスアップコンテスト、神姫同士を戦わせるバトルサービス……なんてのもあるそうだ。
ハイテクな話にはあまり興味もなく、アレコレと関係ない話で混ぜっ返しながら聞く俺に、根気よく話してくれたチビ悪魔の根性はたいしたモンだった。
話が一段落したあたりで、オレンジジュースを一口。
俺は百均で買った紙コップ(後で洗うのがめんどくさいから)だが、コイツには手ごろなサイズのコップなんか無いんで、ペットボトルのキャップだ。
んくんく、と器用にジュースを飲んでいる悪魔を見て、ふと思いついた事を口にしてみる。
「それにしても、お前って悪魔タイプなのに礼儀正しい喋り方だよな。 神姫ってみんなそうなの?」
「いえ、出荷時にランダム設定されますので、性格は個体ごとに違います。 無邪気な子や大人しい子、元気な子、悪戯が好きな子、オシャレが好きな子、バトルが好きな子、嫌いな子……様々です」
「ふーん。 で、お前はどんな性格なワケ?」
えっ、と一瞬口篭もったあと、おずおずとこっちを見上げてきた。
「……あの、笑いませんか?」
「んにゃ、別に」
「……その……バトルに興味が……」
「へー意外」
「笑わないって約束したじゃないですかぁ!」
「いや笑ってない笑ってない。 なんか掃除とか洗濯とかのお世話関係が好きそうかなーって思ってただけで」
「そういうのも嫌いじゃないです……というか好きですけど、『特訓』とか『パワーアップ』という言葉には憧れがあります」
…つくづく意外だ。
いや、「実は好戦的」ってのは悪魔らしいというべきなのかね?