「・・・元々、白狼型は火器制御を諦める代わりに“近接格闘や原始的な武器”に関する適応力を、他の神姫よりも底上げされているんです」
俯きながら彩女はいう。
「他の神姫は程度の差こそあれ、初期状態ですと大抵万能にセッティングされます。しかし私は違う。銃なんて使えない代わりに、格闘に関しては最高の能力を誇る。・・・そういうわけで邪魔しないでください。私はアメティスタに話があります」
俯きながら彩女はいう。
「他の神姫は程度の差こそあれ、初期状態ですと大抵万能にセッティングされます。しかし私は違う。銃なんて使えない代わりに、格闘に関しては最高の能力を誇る。・・・そういうわけで邪魔しないでください。私はアメティスタに話があります」
ホワイトファング・ハウリングソウル
第三十七話
『そしてすべては雨の日に』
彩女は無言でアメティスタへと歩き出す。
それを防ごうとサラとハウが再び飛び掛るが、彩女は受け流し或いは軽く身をそらし全ての攻撃をいなしていた。
「彩女!」
受け流されたハウが再び彩女へと走る。
今度は彩女は・・・受け流さなかった。
「―――――ッ!?」
一瞬で腰から取り外した刀の石突でハウの腹を強く突く。
彼女は苦悶の表情と共にその場に崩れ落ちた。
「・・・邪魔、しないで下さい」
彩女はそういうとゆっくりと歩き出す。
フェンリルのそばで立ち尽くすアメティスタに向かって。
「―――――ぁぁあああああ!!」
さっきまで転がっていたサラが、クラブハンドを構え飛び掛る。
それは誰も予測していなかった奇襲。しかし
「―――――」
彩女は振り返らずに身をかがめサラの攻撃をやり過ごす。
そのまま着地したサラに向かって回し蹴りを食らわせ昏倒させた。
「・・・御免なさい」
雨の中、彼女は呟いた。
「・・・あや、め」
アメティスタは動けない。
彩女の目があまりにも、悲しそうに揺れているから。
・・・彩女をそうしてしまったのが、自分だから。
「アメティスタ・・・」
気がつくと目の前に彩女がいた。
左手に鞘を持ち、白銀の刃は既に抜かれている。
「・・・なぜ、主の事を黙っていたのですか?」
悲しみに彩られた琥珀の瞳が、アメティスタを見つめる。
「・・・・・・・・・・・それ、は」
言うべきか? 記四季が何をしようとしていたのかを。
しかしそれは・・・アメティスタにとって彼の命以上の価値は無くとも、記四季にとっては命を賭けるに足るものだった。
そして今も、記四季は戦っている。自分の命を賭けて。
「・・・言えない。約束も何もして無いけれど、ボクの全てに賭けて言えないよ」
震える体を抱え、アメティスタはそういった。
その言葉に彩女は銀の耳を少し動かす。
「・・・どうして」
「記四季さんはやりたいことがあった。だから・・・自分が倒れるまで頑張ったんだ。それが何なのかは言えないけれど・・・彩女、記四季さんはキミの事を大切に思ってる」
抜き身の刀を手にし佇む彩女の頬を、雫が濡らす。
それは雨なのか涙なのか。アメティスタには判らない。
「・・・主は・・・主は、無事なのですか」
「危険な状態だよ。・・・だからボク達がここに来た。彩女、キミを迎えに来た」
アメティスタがそういうと、彩女は雨が降り注ぐ空を仰ぎ見る。
「・・・・・・・・・・よかった・・・本当に・・・」
今ならはっきりとわかる。
曇天の空を仰ぎ、彩女は泣いていた。
「・・・・・・・・ですが」
と、右手に持ったままだった刀を、彩女は自らの首に押し当てる。
「彩女!?」
「・・・主の真意を汲み取れず。あまつさえ助けに来てくれた友に刃を向けた・・・・・・私は、主のそばにいる資格がない・・・」
顔を逸らし、白い首に刃を突き立てる。
アメティスタは止めようと手を伸ばすが、伸ばせば伸ばした分だけ彩女は遠ざかる。
「駄目だ・・・駄目だ彩女!」
「・・・御免なさい。アメティスタ」
彩女はそう呟くと、刀を引こうとし
それを防ごうとサラとハウが再び飛び掛るが、彩女は受け流し或いは軽く身をそらし全ての攻撃をいなしていた。
「彩女!」
受け流されたハウが再び彩女へと走る。
今度は彩女は・・・受け流さなかった。
「―――――ッ!?」
一瞬で腰から取り外した刀の石突でハウの腹を強く突く。
彼女は苦悶の表情と共にその場に崩れ落ちた。
「・・・邪魔、しないで下さい」
彩女はそういうとゆっくりと歩き出す。
フェンリルのそばで立ち尽くすアメティスタに向かって。
「―――――ぁぁあああああ!!」
さっきまで転がっていたサラが、クラブハンドを構え飛び掛る。
それは誰も予測していなかった奇襲。しかし
「―――――」
彩女は振り返らずに身をかがめサラの攻撃をやり過ごす。
そのまま着地したサラに向かって回し蹴りを食らわせ昏倒させた。
「・・・御免なさい」
雨の中、彼女は呟いた。
「・・・あや、め」
アメティスタは動けない。
彩女の目があまりにも、悲しそうに揺れているから。
・・・彩女をそうしてしまったのが、自分だから。
「アメティスタ・・・」
気がつくと目の前に彩女がいた。
左手に鞘を持ち、白銀の刃は既に抜かれている。
「・・・なぜ、主の事を黙っていたのですか?」
悲しみに彩られた琥珀の瞳が、アメティスタを見つめる。
「・・・・・・・・・・・それ、は」
言うべきか? 記四季が何をしようとしていたのかを。
しかしそれは・・・アメティスタにとって彼の命以上の価値は無くとも、記四季にとっては命を賭けるに足るものだった。
そして今も、記四季は戦っている。自分の命を賭けて。
「・・・言えない。約束も何もして無いけれど、ボクの全てに賭けて言えないよ」
震える体を抱え、アメティスタはそういった。
その言葉に彩女は銀の耳を少し動かす。
「・・・どうして」
「記四季さんはやりたいことがあった。だから・・・自分が倒れるまで頑張ったんだ。それが何なのかは言えないけれど・・・彩女、記四季さんはキミの事を大切に思ってる」
抜き身の刀を手にし佇む彩女の頬を、雫が濡らす。
それは雨なのか涙なのか。アメティスタには判らない。
「・・・主は・・・主は、無事なのですか」
「危険な状態だよ。・・・だからボク達がここに来た。彩女、キミを迎えに来た」
アメティスタがそういうと、彩女は雨が降り注ぐ空を仰ぎ見る。
「・・・・・・・・・・よかった・・・本当に・・・」
今ならはっきりとわかる。
曇天の空を仰ぎ、彩女は泣いていた。
「・・・・・・・・ですが」
と、右手に持ったままだった刀を、彩女は自らの首に押し当てる。
「彩女!?」
「・・・主の真意を汲み取れず。あまつさえ助けに来てくれた友に刃を向けた・・・・・・私は、主のそばにいる資格がない・・・」
顔を逸らし、白い首に刃を突き立てる。
アメティスタは止めようと手を伸ばすが、伸ばせば伸ばした分だけ彩女は遠ざかる。
「駄目だ・・・駄目だ彩女!」
「・・・御免なさい。アメティスタ」
彩女はそう呟くと、刀を引こうとし
その瞬間、銃声が響いた。
根元から折れた刃は明後日の方向へと飛んでいく。
衝撃で彩女は倒れかけ ―――すんでの所でアメティスタに抱きとめられる。
「・・・・・・・アメ・・・ティスタ。・・・私は・・・・・・」
「・・・・・馬鹿!」
アメティスタはそう叫び、彩女の小さな身体を抱きしめる。
「ボクは・・・ボクはこんな未来が欲しかったんじゃない! 皆がいて・・・皆で笑っていたいだけなんだ・・・記四季さんも、彩女もそこにいる。サラもハウも春奈も都も! だから・・・そんなことしないでよ・・・お願いだから・・・」
アメティスタは・・・泣いていた。
あの雨の日全てを失い、雨の日にその罪を許された彼女。
その彼女が、彩女を抱きしめ泣いていた。
「・・・・・・・・御免なさい。アメティスタ・・・御免なさい・・・」
アメティスタを抱きしめ、彩女も泣く。
雨が止むまで・・・二人はそうやって泣き続けた。
衝撃で彩女は倒れかけ ―――すんでの所でアメティスタに抱きとめられる。
「・・・・・・・アメ・・・ティスタ。・・・私は・・・・・・」
「・・・・・馬鹿!」
アメティスタはそう叫び、彩女の小さな身体を抱きしめる。
「ボクは・・・ボクはこんな未来が欲しかったんじゃない! 皆がいて・・・皆で笑っていたいだけなんだ・・・記四季さんも、彩女もそこにいる。サラもハウも春奈も都も! だから・・・そんなことしないでよ・・・お願いだから・・・」
アメティスタは・・・泣いていた。
あの雨の日全てを失い、雨の日にその罪を許された彼女。
その彼女が、彩女を抱きしめ泣いていた。
「・・・・・・・・御免なさい。アメティスタ・・・御免なさい・・・」
アメティスタを抱きしめ、彩女も泣く。
雨が止むまで・・・二人はそうやって泣き続けた。
「・・・・・・・・・・間に合った・・・」
彩女とアメティスタ、二人が雨に打たれながら泣いている様子を眺めながら、ハウは地面に大の字に転がっていた。
右手に持った銃からは、雨にかき消されながらも硝煙が上っていた。
「・・・流石です。片手で刀の根元を狙うとは」
と、さっきまで昏倒していたサラが這ってきた。
どうもまだうまく体が動かないらしい。
もっともそれはハウも同じことだが。
「それほどでも。・・・二人が泣き止むまで、しばらく寝てようか」
「・・・そうですね。どちらにしろ動けませんが」
二人はそういうと、お互いの顔を見て笑った。
彩女とアメティスタ、二人が雨に打たれながら泣いている様子を眺めながら、ハウは地面に大の字に転がっていた。
右手に持った銃からは、雨にかき消されながらも硝煙が上っていた。
「・・・流石です。片手で刀の根元を狙うとは」
と、さっきまで昏倒していたサラが這ってきた。
どうもまだうまく体が動かないらしい。
もっともそれはハウも同じことだが。
「それほどでも。・・・二人が泣き止むまで、しばらく寝てようか」
「・・・そうですね。どちらにしろ動けませんが」
二人はそういうと、お互いの顔を見て笑った。