浮かぶ満月、舞い散る花びら、夜だというのに、そこは異様なまでに明るかった。
辺りには無数の桜の木が花を咲かせ、限りなく淡い薄紅のかけらを振りまいている。
辺りには無数の桜の木が花を咲かせ、限りなく淡い薄紅のかけらを振りまいている。
その白薄紅の中で、たたずむ人影一つ。
黒の、燕尾のような衣装を身に纏い、黒の布を首元に巻き、白縹(しろきはなだ)の、二本の尾をゆらゆらと。
足元は金で彩られた西洋式、群青の板金。
左の手に、己の身長ほどもある長大な刀が、鞘に収められたまま握られている。
下緒と飾り帯が巻かれ、白い線を交差させたような紋様が彫られている、それ以外は黒色の大鞘。
足元は金で彩られた西洋式、群青の板金。
左の手に、己の身長ほどもある長大な刀が、鞘に収められたまま握られている。
下緒と飾り帯が巻かれ、白い線を交差させたような紋様が彫られている、それ以外は黒色の大鞘。
その人影は少女だった。
舞う花よりも少し濃い肌の色を持ち、薄青の髪を揺らす少女だった。
舞う花よりも少し濃い肌の色を持ち、薄青の髪を揺らす少女だった。
目を閉じ、刀を納め、立ち尽くすように佇むだけだった少女が、微動する。
桜の吹雪に呼ばれるように、複数の、ざっざっ、という足音が鳴る。
それは、体つきこそ女のものだったが、その顔は輪郭だけ。月光に反射して、つるりと輝くだけ。
目許はあれど眼はなく、鼻頭はあれど鼻ではなく、口には何もなかった。頭髪すらなかった。
まるで影を人の形に削ったような、異様なものども。
桜の吹雪に呼ばれるように、複数の、ざっざっ、という足音が鳴る。
それは、体つきこそ女のものだったが、その顔は輪郭だけ。月光に反射して、つるりと輝くだけ。
目許はあれど眼はなく、鼻頭はあれど鼻ではなく、口には何もなかった。頭髪すらなかった。
まるで影を人の形に削ったような、異様なものども。
それらは、各々武器を手にしていた。
剣をはじめとした武器から、拳銃を持ったものまで。
黒いものどもは切っ先を少女に向け、銃口を少女に向ける。
少女は未だ目を閉じたまま、そこに在るだけ。
剣をはじめとした武器から、拳銃を持ったものまで。
黒いものどもは切っ先を少女に向け、銃口を少女に向ける。
少女は未だ目を閉じたまま、そこに在るだけ。
まず、剣をもったヤツらが動いた。駆け寄り、勢いのまま少女を切り捨てようと、各々の刃を振り下ろす。
その数5体。気合の一声も唸りも挙げず、無言のまま切りかかる。
その数5体。気合の一声も唸りも挙げず、無言のまま切りかかる。
「...It's begining(はじめようか)」
頭上から迫る刃に対し、左手の大刀を、鞘から抜かずに、そのまま受け、横に振り、払う。
剣を弾かれ、よろめく黒。体制を立て直すよりも速く、振り払った勢いのまま少女は姿勢を低くし、鞘で脚をなぎ払っていく。
脚を取られ、後ろ倒し、横倒しになりつつある黒。少女は柄に手をかけ、左の手で鞘を引く。
剣を弾かれ、よろめく黒。体制を立て直すよりも速く、振り払った勢いのまま少女は姿勢を低くし、鞘で脚をなぎ払っていく。
脚を取られ、後ろ倒し、横倒しになりつつある黒。少女は柄に手をかけ、左の手で鞘を引く。
リィン、音が響く。そのほんの1秒ほどあとに、黒いものどもは地面に倒れこむ。
その直後、黒いものどもの上半身と下半身が、別々に蠢き、止まった。
少女の右の手には、月の光が映りこみ、蒼く光る刃。
その直後、黒いものどもの上半身と下半身が、別々に蠢き、止まった。
少女の右の手には、月の光が映りこみ、蒼く光る刃。
後から吹き出る、真っ赤な液体。それらは天に向かって、花を咲かせるが如く吹き上がる。
舞い散る桜がしぶきを浴び、薄紅が深い紅に染まった。
少女はその大きな剣を片手で振り、刃に付く紅い飛沫を払う。
舞い散る桜がしぶきを浴び、薄紅が深い紅に染まった。
少女はその大きな剣を片手で振り、刃に付く紅い飛沫を払う。
直後に火薬が爆発する大きな音。少女の頬のすぐ横を、何かが掠める。
駆け出さず、銃口を向けていた黒いものどもが、引き金を引き絞ったのだ。
立て続けに、拳銃からくつもの火が放たれる。
黄金色をした金属の粒が、目で捉えることが不可能な速さで、次々と少女に向かい、その身を穿とうとする。
駆け出さず、銃口を向けていた黒いものどもが、引き金を引き絞ったのだ。
立て続けに、拳銃からくつもの火が放たれる。
黄金色をした金属の粒が、目で捉えることが不可能な速さで、次々と少女に向かい、その身を穿とうとする。
が、それは手にする白刃の前にさえぎられた。
金属同士がぶつかり合うような、小気味良い音と共に、命中するはずだった弾丸が二つになって、横に逸れていく。
少女がを大きな刃を振るうたび、別たれた弾丸が、桜と共に宙へ舞う。
金属同士がぶつかり合うような、小気味良い音と共に、命中するはずだった弾丸が二つになって、横に逸れていく。
少女がを大きな刃を振るうたび、別たれた弾丸が、桜と共に宙へ舞う。
「―――Rapid Slash(疾走斬り)」
動くのが速いか、切り裂かれた弾が落ちるのが速いか、少女は、黒いものどもに向かって駆け出した。
彼女、弾丸のような、はたまた黒い風のような速さでヤツらの元へ。
無論、ヤツらもその間発砲するが、駆け抜ける最中ですら、その刃を振るい続け、切り払っていく。
駆ける間、止まることなく、白い線のような煌きが少女を包み続ける。
線に触れた弾丸は二つに割れ、線に触れたヤツらの腕も二つに別れ、線に触れたヤツらの身体は無数に別たれる。
彼女、弾丸のような、はたまた黒い風のような速さでヤツらの元へ。
無論、ヤツらもその間発砲するが、駆け抜ける最中ですら、その刃を振るい続け、切り払っていく。
駆ける間、止まることなく、白い線のような煌きが少女を包み続ける。
線に触れた弾丸は二つに割れ、線に触れたヤツらの腕も二つに別れ、線に触れたヤツらの身体は無数に別たれる。
弾丸も、黒きものどもも、空気ですらも、なにもかも両断していく。
「Too easy(チョロイね)」
長大な刀をくるりと回し、鞘に納める。
その広報では引きあがる飛沫。紅い滴が雨のように降り注ぐ。
その広報では引きあがる飛沫。紅い滴が雨のように降り注ぐ。
「なんてね、ぼくのキャラじゃないか」
深紅の花びらを背に、少女は踵を返す。
―――なんだこれ。
「どーよ!こんなかんじでトレーニングにエフェクトやら背景やら重ねてみました!」
いや、どーよって、これおもいっきり私の神姫じゃないか。よく見りゃいつぞやのVRトレーニングだよ。
しかもなんだよこのタイトル。「桜舞」って、ベタすぎじゃないか。
「いやぁ、身近にこういう素材があるっていいよねー、ステキなムービー作り放題だぜ」
……どこまでバカなんだこいつは。
「あとはBGMもつけたいね!和風なロックがいいかなー、いっそヘヴィとかスラッシュとかもいいかなぁ」
いいのか、オマエをネタにヘンなもの作り始めてるぞ、このバカ。
「いいんじゃない、ぼくはこういうのスキだよ?」
あ、そ……。
「マスターも案外、キライじゃないんじゃない?」
なんでそう思う?
「なんか、機嫌良さそうだもん」
いや、どーよって、これおもいっきり私の神姫じゃないか。よく見りゃいつぞやのVRトレーニングだよ。
しかもなんだよこのタイトル。「桜舞」って、ベタすぎじゃないか。
「いやぁ、身近にこういう素材があるっていいよねー、ステキなムービー作り放題だぜ」
……どこまでバカなんだこいつは。
「あとはBGMもつけたいね!和風なロックがいいかなー、いっそヘヴィとかスラッシュとかもいいかなぁ」
いいのか、オマエをネタにヘンなもの作り始めてるぞ、このバカ。
「いいんじゃない、ぼくはこういうのスキだよ?」
あ、そ……。
「マスターも案外、キライじゃないんじゃない?」
なんでそう思う?
「なんか、機嫌良さそうだもん」
……ま、否定はしないけど。
おしまい
「マイマスター、私の出番も欲しい。ていうか私がマイマスターの神姫なんだけど!?」
紅いボディと桃色の髪の彼女が、私の横から抗議の声。
「おおぅっ、折角のアーク型だし、今度はレース風味のヤツでもつくってみようか!BGMはもちろんアレだ」
「あれって?」
紅いボディと桃色の髪の彼女が、私の横から抗議の声。
「おおぅっ、折角のアーク型だし、今度はレース風味のヤツでもつくってみようか!BGMはもちろんアレだ」
「あれって?」
「TRUTHさ」
F1かよ。
今度こそおしまい