番外その一 「ヂェリー・パニック・アンド・ラブ」
大都会、東京の銀座。
欲望渦巻くこの街の片隅で、恐るべき計画が進行しているのであった……。
欲望渦巻くこの街の片隅で、恐るべき計画が進行しているのであった……。
「ぬふふ~、やっと届いたですう。このヂェリーさえあれば、愛しのメリーさんはわたしのものに……!」
茶色いダンボール箱を開け、毒々しい色のヂェリカンを取り出したのは、そう、恋するラブリーテンタクルスことノワールですう。皆さんお元気してるですか?
え? このヂェリカンは何かって? よくぞ聞いてくれたですう。
これはその名もズバリ、『気になるあの子を一発キャッチ! ハート・イグニッション・ヂェリー』なるものなのです。つまりは人間の言うほれ薬ってところですかね。インターネットを見ていたら、面白そうだったからつい買ってしまったのです。てへ。
使い方は簡単、何と対象となる神姫に飲ませるだけ、十秒ほどで気になるあの子は貴方にメロメロというのだから、最近の技術の進歩には目を見張るものがあるのです。
つまりはこれさえあれば、あの心優しく清楚なメリーさんも……。
茶色いダンボール箱を開け、毒々しい色のヂェリカンを取り出したのは、そう、恋するラブリーテンタクルスことノワールですう。皆さんお元気してるですか?
え? このヂェリカンは何かって? よくぞ聞いてくれたですう。
これはその名もズバリ、『気になるあの子を一発キャッチ! ハート・イグニッション・ヂェリー』なるものなのです。つまりは人間の言うほれ薬ってところですかね。インターネットを見ていたら、面白そうだったからつい買ってしまったのです。てへ。
使い方は簡単、何と対象となる神姫に飲ませるだけ、十秒ほどで気になるあの子は貴方にメロメロというのだから、最近の技術の進歩には目を見張るものがあるのです。
つまりはこれさえあれば、あの心優しく清楚なメリーさんも……。
「はあ、はあ……。あ、ふうぅ……」
「ほらほら、どうしたです? もう我慢できないんですか?」
「そんな……、わ、私は、く、くうぅ……」
「正直に言っちゃいなさいですう。もうコレが欲しくて仕方ないって……。ほら! (触手を体にぴとっ)」
「ひゃ! あああああっ、あ、あれ?」
「おっと、だめですよー。メリーさんが自分から欲しいって言うまでは、絶対あげないですー♪」
「そ、そんなぁ……。(ためらって、しかしこくんと喉をならし)ほ、欲しい……です」
「んー? 聞こえないですよー」
「い、意地悪ぅ……。う、あああ(腿をもじもじすりあわせる)」
「んっふっふ、でも今回はよしとしてあげるです。そぉ~れ!」
「きゃ……! あうあああああーっ!」
「ほらほら、どうしたです? もう我慢できないんですか?」
「そんな……、わ、私は、く、くうぅ……」
「正直に言っちゃいなさいですう。もうコレが欲しくて仕方ないって……。ほら! (触手を体にぴとっ)」
「ひゃ! あああああっ、あ、あれ?」
「おっと、だめですよー。メリーさんが自分から欲しいって言うまでは、絶対あげないですー♪」
「そ、そんなぁ……。(ためらって、しかしこくんと喉をならし)ほ、欲しい……です」
「んー? 聞こえないですよー」
「い、意地悪ぅ……。う、あああ(腿をもじもじすりあわせる)」
「んっふっふ、でも今回はよしとしてあげるです。そぉ~れ!」
「きゃ……! あうあああああーっ!」
「うふ、うふふふ~」
おっといけない、妄想してしまったです。よい子のみんなは秘密にしておくですよ。
さて、早速あの食堂に行って試してみるですかね。もうこの後の事を思うと、うへへ。おっと、よだれが出ちゃったです。
え? そんなに好きなら正面から告白しないのかって? ノンノン、それも悪くないですが、やっぱり可愛いものはいじめたくなっちゃう性分なのですよ。
「オー、ここにいましたか、ノワール」
あ、マスターです。ではでは、食堂に行くのをねだってみるですかねー。
「ノワール、ワタシのクレジットカードが無いのデスが、知りまセンか?」
「え!? し、ししし知らないですぅ~♪」
「そうデスか。フム、困りまシタね」
「そそそそれよりもマスター、わたし行きたいところが……」
お金を払う時にマスターのクレジットカードを使ってしまったですけど、まあ必要経費ってとこです。てへっ。
おっといけない、妄想してしまったです。よい子のみんなは秘密にしておくですよ。
さて、早速あの食堂に行って試してみるですかね。もうこの後の事を思うと、うへへ。おっと、よだれが出ちゃったです。
え? そんなに好きなら正面から告白しないのかって? ノンノン、それも悪くないですが、やっぱり可愛いものはいじめたくなっちゃう性分なのですよ。
「オー、ここにいましたか、ノワール」
あ、マスターです。ではでは、食堂に行くのをねだってみるですかねー。
「ノワール、ワタシのクレジットカードが無いのデスが、知りまセンか?」
「え!? し、ししし知らないですぅ~♪」
「そうデスか。フム、困りまシタね」
「そそそそれよりもマスター、わたし行きたいところが……」
お金を払う時にマスターのクレジットカードを使ってしまったですけど、まあ必要経費ってとこです。てへっ。
※※※
さて、食堂に着いたです。
それにしても古めかしい建物ですねー。わたしの知識ではあれはショウワの時代のデザインのようですけど、元から古いのか、それともわざと古いように作ってあるのか、まあそれはわたしのあずかり知るところでは無いですう。
マスターと、それからソレイユと一緒に中に入ると、おや、見た事無い人がいるです。
「おっ、アンリ君じゃないか。いらっしゃい」
「ボンジュール、ムッシュ明石」
ほうほう、ムッシュ明石というのですか。眼鏡をかけてて、なんか優しそうな人ですねー。
「今日はどうしたんだい?」
「いえ、ノワールがどうしても行きたいと言ったものデスから。それにワタシもアキラに用がありマス」
「ああ、それならちょっと待っててくれるかな。いや、昨日直也君と飲み過ぎたみたいでね、二日酔いで寝てるんだ」
なんかよく分からない話をしてるですけど、これは好都合です。中に忍び込んでメリーさんにこれを飲ませるです。
そろーっとそろっーと、テーブルから降りて……。
「おや? ノワール、どこに行きマシたか?」
マスター、わたしは想いを遂げに行ってくるですう。
それにしても古めかしい建物ですねー。わたしの知識ではあれはショウワの時代のデザインのようですけど、元から古いのか、それともわざと古いように作ってあるのか、まあそれはわたしのあずかり知るところでは無いですう。
マスターと、それからソレイユと一緒に中に入ると、おや、見た事無い人がいるです。
「おっ、アンリ君じゃないか。いらっしゃい」
「ボンジュール、ムッシュ明石」
ほうほう、ムッシュ明石というのですか。眼鏡をかけてて、なんか優しそうな人ですねー。
「今日はどうしたんだい?」
「いえ、ノワールがどうしても行きたいと言ったものデスから。それにワタシもアキラに用がありマス」
「ああ、それならちょっと待っててくれるかな。いや、昨日直也君と飲み過ぎたみたいでね、二日酔いで寝てるんだ」
なんかよく分からない話をしてるですけど、これは好都合です。中に忍び込んでメリーさんにこれを飲ませるです。
そろーっとそろっーと、テーブルから降りて……。
「おや? ノワール、どこに行きマシたか?」
マスター、わたしは想いを遂げに行ってくるですう。
※※※
ふう。神姫サイズの体だと、捜し物をするだけでも一苦労です。
しかし、忍び込むには向いてるですし、マスターの勤めているお店とはまた違ってて面白いですね。ほら、隣の和室を覗いてみると、あそこにあるのはブツダンってやつなのです。ん、あの棚にある写真って、さっきのムッシュ明石に似てる人と、……隣のおじいさんは誰ですかね?
ともかく、ここは廊下らしいところですから、身を隠しつつ慎重に進むのですう。……しかし、このヂェリーって本当に効果あるんですかね? 今更ながら怪しくなってきたですう。
「……あーあ、最近ついてないわね」
おっと、誰かこっちにやって来るです。ダンボールの陰に隠れて、と。
「ヂェリーの隠し場所を変えてもすぐ盗られるし、なんかぼーっとしちゃうし、朝の占いも当たらないし……。恋愛運とか、別に気にしてないけど」
おや、確か彼女は雅さんです。ノワールがえらく気に入ってましたね。
何だか独り言が多いですけど、どうしたんですかね?ちょっとこのまま隠れて様子を見てみましょうです。
「それもこれも全部アキラのせいね。うん、それで決まり! だいたいあのスカポンタンってば、ろくに腕も上げないでへらへらしてるし、それでいて他人の厄介ごとばっかり持ち込んでくるし、バカだし」
オーナーの悪口をしきりに並べたててるです。何か溜まってるんですかね?
「この前だって人がせっかく髪型変えてやったのに、『暑いのか?』とか言っちゃって、……まあ、占いとか気にしたあたしが悪いのかもしれないけど。何が『おかっぱにすると運気アップ!』よ」
きゅぴーん! と、わたしのセンサーに感があったです。これは……、間違いなく恋をしてるですね。わたしには分かるです。
「……女の子っぽくないのかな、あたし。まあ、分かっちゃいるけど」
おやおや~、髪とか気にしちゃって、これはもう確定ですねえ。はっ! そうです、このヂェリーに本当に効果があるのか、彼女で試してみるです。うん? それは人体実験というか、人柱ですって? いやいや、これはれっきとした手助けですよ。そう、彼女の恋をほんの一押ししてあげるだけなのです。
では善は急げということで、ダンボールの陰から出て……。
「おはようです、雅さん!」
「きゃっ!? ……ってあんたか。どうしたのよ、こんなところで」
「まあいいじゃありませんか。それよりもですね、耳寄りなアイテムを持ってきたのですよ」
「耳寄りなアイテム?」
「そうなのです。……雅さん、最近オーナーさんのことで悩んでいませんか?」
「アキラの? それなら四六時中悩んでるわよ。この前なんか仕事ほっぽり出して半日迷子の猫探しとか水道管の修理で潰すし、昨日なんかは」
「あー、そういうことじゃないですよ。実はですねー、オーナーさんと手軽にお近づきになれちゃうアイテムがあるんですよ」
「お近づきに、って?」
「んふふ、雅さん、オーナーさんのことが好きなんじゃないですか?」
「なっ!?」
おーおー、真っ赤になっちゃって可愛いですねえ。わたしの読みは外れてなかったですよ。
「ば、バカ言わないでよ! あんなボケナスのどこがいいってのよ! ……まあ、ちょっとは優しいところもあるかもしれないけど、その、ああもう! とにかくお断り!」
ちっ。なかなか陥落しないです。ここはもう、無理矢理にでも飲ませて……。ええと、後ろを向いて説明書きを読んでみると、なになに、『本品は水などで5~6倍に希釈してご使用下さい。また、効果には個人差があります。本品のご使用によるトラブルに関しましては、弊社では一切責任を負いかねます』……? 面倒くさいですね。そんなもん使わなくたっていいじゃないですか。
ここはもう、無理矢理突っ込んでやるです!
「雅さん」
「え? ……もがっ! んぐ、んぐ!」
ほらほら、大人しく飲みやがれですう。強引にボトルを傾けてやれば、ほーら、だんだんほっぺたが赤くなってきたです。
「ぷはぁ! ……ひっく……ぽーっ」
目も潤んできて、やっぱりこのヂェリーは本物でしたね。三万円は伊達じゃなかったです。
しかし、忍び込むには向いてるですし、マスターの勤めているお店とはまた違ってて面白いですね。ほら、隣の和室を覗いてみると、あそこにあるのはブツダンってやつなのです。ん、あの棚にある写真って、さっきのムッシュ明石に似てる人と、……隣のおじいさんは誰ですかね?
ともかく、ここは廊下らしいところですから、身を隠しつつ慎重に進むのですう。……しかし、このヂェリーって本当に効果あるんですかね? 今更ながら怪しくなってきたですう。
「……あーあ、最近ついてないわね」
おっと、誰かこっちにやって来るです。ダンボールの陰に隠れて、と。
「ヂェリーの隠し場所を変えてもすぐ盗られるし、なんかぼーっとしちゃうし、朝の占いも当たらないし……。恋愛運とか、別に気にしてないけど」
おや、確か彼女は雅さんです。ノワールがえらく気に入ってましたね。
何だか独り言が多いですけど、どうしたんですかね?ちょっとこのまま隠れて様子を見てみましょうです。
「それもこれも全部アキラのせいね。うん、それで決まり! だいたいあのスカポンタンってば、ろくに腕も上げないでへらへらしてるし、それでいて他人の厄介ごとばっかり持ち込んでくるし、バカだし」
オーナーの悪口をしきりに並べたててるです。何か溜まってるんですかね?
「この前だって人がせっかく髪型変えてやったのに、『暑いのか?』とか言っちゃって、……まあ、占いとか気にしたあたしが悪いのかもしれないけど。何が『おかっぱにすると運気アップ!』よ」
きゅぴーん! と、わたしのセンサーに感があったです。これは……、間違いなく恋をしてるですね。わたしには分かるです。
「……女の子っぽくないのかな、あたし。まあ、分かっちゃいるけど」
おやおや~、髪とか気にしちゃって、これはもう確定ですねえ。はっ! そうです、このヂェリーに本当に効果があるのか、彼女で試してみるです。うん? それは人体実験というか、人柱ですって? いやいや、これはれっきとした手助けですよ。そう、彼女の恋をほんの一押ししてあげるだけなのです。
では善は急げということで、ダンボールの陰から出て……。
「おはようです、雅さん!」
「きゃっ!? ……ってあんたか。どうしたのよ、こんなところで」
「まあいいじゃありませんか。それよりもですね、耳寄りなアイテムを持ってきたのですよ」
「耳寄りなアイテム?」
「そうなのです。……雅さん、最近オーナーさんのことで悩んでいませんか?」
「アキラの? それなら四六時中悩んでるわよ。この前なんか仕事ほっぽり出して半日迷子の猫探しとか水道管の修理で潰すし、昨日なんかは」
「あー、そういうことじゃないですよ。実はですねー、オーナーさんと手軽にお近づきになれちゃうアイテムがあるんですよ」
「お近づきに、って?」
「んふふ、雅さん、オーナーさんのことが好きなんじゃないですか?」
「なっ!?」
おーおー、真っ赤になっちゃって可愛いですねえ。わたしの読みは外れてなかったですよ。
「ば、バカ言わないでよ! あんなボケナスのどこがいいってのよ! ……まあ、ちょっとは優しいところもあるかもしれないけど、その、ああもう! とにかくお断り!」
ちっ。なかなか陥落しないです。ここはもう、無理矢理にでも飲ませて……。ええと、後ろを向いて説明書きを読んでみると、なになに、『本品は水などで5~6倍に希釈してご使用下さい。また、効果には個人差があります。本品のご使用によるトラブルに関しましては、弊社では一切責任を負いかねます』……? 面倒くさいですね。そんなもん使わなくたっていいじゃないですか。
ここはもう、無理矢理突っ込んでやるです!
「雅さん」
「え? ……もがっ! んぐ、んぐ!」
ほらほら、大人しく飲みやがれですう。強引にボトルを傾けてやれば、ほーら、だんだんほっぺたが赤くなってきたです。
「ぷはぁ! ……ひっく……ぽーっ」
目も潤んできて、やっぱりこのヂェリーは本物でしたね。三万円は伊達じゃなかったです。
「あー、マジ頭いてえな、くそっ」
やや、誰か来るです。メリーさんも見当たらないですし、ここは一旦マスターのところに戻るです。このヂェリカンは……、ええい、捨ててっちゃえです! まだもう一本あるですしね。
やや、誰か来るです。メリーさんも見当たらないですし、ここは一旦マスターのところに戻るです。このヂェリカンは……、ええい、捨ててっちゃえです! まだもう一本あるですしね。
※※※
「……あー、まだガンガンいってやがる」
昨日は直也と飲みに行って来たんだが、あの野郎三時間ぶっ通しでやれめぐみさんがどうの、やれこの前行ったゲーセンで美人の神姫オーナーを見かけただの、くそっ、次もこの調子だったらぶちのめすぞ。
おかげで起きたら十一時だ、畜生。おやっさんになんて言えばいいんだ。最近はおかしな電話のせいでめぐみさんにかっこ悪いとこ見せちまうし、知らない間にクレアの動きがちょっとだけ良くなってるし、よく分からん。
と……、仏間の前に雅がいる。何でここに?あいついつもならもうとっくに厨房だろ? それに、ありゃあヂェリカンか?
近づいてみると、雅は顔を上げた。
「おい雅、どうし……ん?」
「あ、アキラ。おはようございます。よくお休みになれましたか?」
……なんでこいつこんな女々しいの? なんか体くねらせてるし、目が潤んでるんだけど。
「はっ! 駄目よあたしったら、ご主人様を呼び捨てだなんて、その、申し訳ありません!」
と思ったらいきなりめそめそ泣き始めた。どうしたんだこいつ。
「おい雅、お前大丈夫か?」
「ご主人様!」
「どうわっ!?」
雅を手に乗せると、俺の首に抱きついてきた。
「ご主人様、申し訳ありません! こんな未熟者のあたしを叱って下さい!」
「だっ……お前、本当にどうした!?」
勢い余って転んでしまった俺は、ふとそこのヂェリカンが気になった。ハート・イグニッション・ヂェリーって、聞いた事ねえ名前だな。
「大丈夫か? なんか変なもんでも食ったか?」
「いいえ、あたしは正常です。でも……、ご主人様を見てると、その、なんと言うか、胸の高鳴りを押さえきれないと言うか」
「え?」
「ご主人様! ん~っ!」
「のわっ!」
雅はそう言うと、俺の頬に口を付けて吸ってきた。
「くっさ! 何だこの臭い、止めろバカ野郎!」
「ぷはっ……。ご主人様は、あたしの事どう思っていますか?」
「あ!?」
「その、女の子らしいとか、可愛いとか。いやっ、別にいいんです。ただ、あたしの気持ちだけは知っていて欲しいんです」
「何訳分かんねー事言ってんだよ! ……とりあえず、おやっさんに話してから神姫センターにでも行くぞ」
どこか故障したのかもしれないが、それにしたって今までこいつは健康そのものだったしな。いや、まさかこのヂェリーのせいか?
昨日は直也と飲みに行って来たんだが、あの野郎三時間ぶっ通しでやれめぐみさんがどうの、やれこの前行ったゲーセンで美人の神姫オーナーを見かけただの、くそっ、次もこの調子だったらぶちのめすぞ。
おかげで起きたら十一時だ、畜生。おやっさんになんて言えばいいんだ。最近はおかしな電話のせいでめぐみさんにかっこ悪いとこ見せちまうし、知らない間にクレアの動きがちょっとだけ良くなってるし、よく分からん。
と……、仏間の前に雅がいる。何でここに?あいついつもならもうとっくに厨房だろ? それに、ありゃあヂェリカンか?
近づいてみると、雅は顔を上げた。
「おい雅、どうし……ん?」
「あ、アキラ。おはようございます。よくお休みになれましたか?」
……なんでこいつこんな女々しいの? なんか体くねらせてるし、目が潤んでるんだけど。
「はっ! 駄目よあたしったら、ご主人様を呼び捨てだなんて、その、申し訳ありません!」
と思ったらいきなりめそめそ泣き始めた。どうしたんだこいつ。
「おい雅、お前大丈夫か?」
「ご主人様!」
「どうわっ!?」
雅を手に乗せると、俺の首に抱きついてきた。
「ご主人様、申し訳ありません! こんな未熟者のあたしを叱って下さい!」
「だっ……お前、本当にどうした!?」
勢い余って転んでしまった俺は、ふとそこのヂェリカンが気になった。ハート・イグニッション・ヂェリーって、聞いた事ねえ名前だな。
「大丈夫か? なんか変なもんでも食ったか?」
「いいえ、あたしは正常です。でも……、ご主人様を見てると、その、なんと言うか、胸の高鳴りを押さえきれないと言うか」
「え?」
「ご主人様! ん~っ!」
「のわっ!」
雅はそう言うと、俺の頬に口を付けて吸ってきた。
「くっさ! 何だこの臭い、止めろバカ野郎!」
「ぷはっ……。ご主人様は、あたしの事どう思っていますか?」
「あ!?」
「その、女の子らしいとか、可愛いとか。いやっ、別にいいんです。ただ、あたしの気持ちだけは知っていて欲しいんです」
「何訳分かんねー事言ってんだよ! ……とりあえず、おやっさんに話してから神姫センターにでも行くぞ」
どこか故障したのかもしれないが、それにしたって今までこいつは健康そのものだったしな。いや、まさかこのヂェリーのせいか?
ヂェリー(雅はさっきからもじもじしながら俺の肩に乗っている)を持って店の方に行くと、おやっさんとアンリがいた。
「おや輝、大丈夫かい?」
「おはようっす、おやっさん。あの、実は雅が……」
「ん?」
事情を話したら、おやっさんは当惑していた。そりゃそうだよな。
「それで、どうして雅がそうなったのか分からないのか?」
「それが全然。強いて言うならこのヂェリーぐらいっすかね」俺がおかしな色のヂェリカンをポケットから出すと、目の端でノワールが顔を逸らしたのが見えた。
「雅、お前覚えてないのか? 誰かになんかされたとか」
「いいえ、あたしはご主人様以外に体を許すような事はしません」
「誤解を招く言動は止せ。っつーかそのキャラなんなの?」
さすがにこれはやばいだろと思った。普段こうじゃ無い奴がおかしくなると、余計にそれが際立つ気がする。
「フーム、何やら良く分かりまセンが、アキラも来た事デスし、ワタシはワタシの用を済ませるとしまショウ」
「あ?」
アンリは突然立ち上がると、ソレイユを呼び出した。
「今日はアナタに再びバトルロンドを挑みに来たのデスよ。ソレイユと、その雅嬢との戦いをね」
「おい、今はそれどころじゃ……、って、まさかお前か?」
そうか、雅がおかしくなったのも、このヂェリーを飲まされたからだとすれば説明がつく。一人で油断していたところを、ソレイユかノワールに襲われたのだとしたら……!
「なかなか卑怯な手ぇ使ってくれるじゃねえか。そうまでして勝ちたいってのか?」
「ム? 何の話デスか? まあ、勝ちたいというのは真実デスね」
「てめえ……!いいぜ、乗ってやるよ。この近くにゲーセンがあるから、そこで勝負してやる」
野郎、とぼけやがって。少しは見所のある奴かもと思っていたが、いいさ、吠え面かかせてやるよ。
「ご主人様、お出かけですか?あたしもお供します!」とりあえず、こいつ何とかならねえかな。
「おや輝、大丈夫かい?」
「おはようっす、おやっさん。あの、実は雅が……」
「ん?」
事情を話したら、おやっさんは当惑していた。そりゃそうだよな。
「それで、どうして雅がそうなったのか分からないのか?」
「それが全然。強いて言うならこのヂェリーぐらいっすかね」俺がおかしな色のヂェリカンをポケットから出すと、目の端でノワールが顔を逸らしたのが見えた。
「雅、お前覚えてないのか? 誰かになんかされたとか」
「いいえ、あたしはご主人様以外に体を許すような事はしません」
「誤解を招く言動は止せ。っつーかそのキャラなんなの?」
さすがにこれはやばいだろと思った。普段こうじゃ無い奴がおかしくなると、余計にそれが際立つ気がする。
「フーム、何やら良く分かりまセンが、アキラも来た事デスし、ワタシはワタシの用を済ませるとしまショウ」
「あ?」
アンリは突然立ち上がると、ソレイユを呼び出した。
「今日はアナタに再びバトルロンドを挑みに来たのデスよ。ソレイユと、その雅嬢との戦いをね」
「おい、今はそれどころじゃ……、って、まさかお前か?」
そうか、雅がおかしくなったのも、このヂェリーを飲まされたからだとすれば説明がつく。一人で油断していたところを、ソレイユかノワールに襲われたのだとしたら……!
「なかなか卑怯な手ぇ使ってくれるじゃねえか。そうまでして勝ちたいってのか?」
「ム? 何の話デスか? まあ、勝ちたいというのは真実デスね」
「てめえ……!いいぜ、乗ってやるよ。この近くにゲーセンがあるから、そこで勝負してやる」
野郎、とぼけやがって。少しは見所のある奴かもと思っていたが、いいさ、吠え面かかせてやるよ。
「ご主人様、お出かけですか?あたしもお供します!」とりあえず、こいつ何とかならねえかな。
※※※
前に健五とクレアを助けた時のゲーセンで決着をつける事にする。ここは俺と直也が練習しているゲーセンとは違って規模はそんなに大きくは無い。
「ご主人様、頑張りましょうね! あたし達の愛の力を、あのお二人に見せつけてあげましょう!」
バトル前にバーチャル筐体の設定をしている間も、ずっと雅はこの調子だった。いい加減にこっちが恥ずかしくなってくる。さすがのメリーもここまでブリッ子な事は言わない。
だが今は、雅をこんなにしたアンリの奴が許せない。
「おい、ステージは?」
「フフ、今回はステージを選択しまショウ。そうデスね……、ドールハウスなどどうでショウか。試合時間が短いデスし、すぐに決着がつきマス」
「何でもいいさ。さっさと始めるぞ」
ドールハウスはタイムアップまでの時間が他のステージと比べて短い、狭い空間だ。とは言っても、おままごとで使うようなドールハウスではなくて、人間を神姫のサイズに換算した場合の、人間が使う家の三倍はスケールがでかい。
今モニターに映っている場所にも、どぎついピンク色のクッションや犬のぬいぐるみが落ちている。
しかし、雅のこれって、前に見たような気が……。と、ふと思ったところで気付いた。
「あ、そうか」
俺はさっき店から持ってきたヂェリカンを、武装のメインボードにセットした。
「雅、試合が始まったらヂェリカンをすぐに使え。いいな」
「はい♪ ご主人様のご命令とあれば」
「……ああ、もう疲れる」
「フフ、どうやらアキラと雅嬢は上手くいっていないようデスね。いかに雅嬢が強かろうと、信頼関係を無くしていればこちらの勝利は決まったも同然デス」
勝手に言ってろ。ソレイユと雅がフィールドに転送された。
「ご主人様、頑張りましょうね! あたし達の愛の力を、あのお二人に見せつけてあげましょう!」
バトル前にバーチャル筐体の設定をしている間も、ずっと雅はこの調子だった。いい加減にこっちが恥ずかしくなってくる。さすがのメリーもここまでブリッ子な事は言わない。
だが今は、雅をこんなにしたアンリの奴が許せない。
「おい、ステージは?」
「フフ、今回はステージを選択しまショウ。そうデスね……、ドールハウスなどどうでショウか。試合時間が短いデスし、すぐに決着がつきマス」
「何でもいいさ。さっさと始めるぞ」
ドールハウスはタイムアップまでの時間が他のステージと比べて短い、狭い空間だ。とは言っても、おままごとで使うようなドールハウスではなくて、人間を神姫のサイズに換算した場合の、人間が使う家の三倍はスケールがでかい。
今モニターに映っている場所にも、どぎついピンク色のクッションや犬のぬいぐるみが落ちている。
しかし、雅のこれって、前に見たような気が……。と、ふと思ったところで気付いた。
「あ、そうか」
俺はさっき店から持ってきたヂェリカンを、武装のメインボードにセットした。
「雅、試合が始まったらヂェリカンをすぐに使え。いいな」
「はい♪ ご主人様のご命令とあれば」
「……ああ、もう疲れる」
「フフ、どうやらアキラと雅嬢は上手くいっていないようデスね。いかに雅嬢が強かろうと、信頼関係を無くしていればこちらの勝利は決まったも同然デス」
勝手に言ってろ。ソレイユと雅がフィールドに転送された。
※※※
あわわ、えらい事になっちゃったですう。
でも、これはこれで面白そうですし、じっくり見学させてもらうですう。
でも、これはこれで面白そうですし、じっくり見学させてもらうですう。
※※※
「やあ雅。久しぶりだね」
「ええと、どなたでしょう? 初めてお目に掛かりますが」
雅よ、それはひどいぞ。
「ぐっ……。ま、まあいい。僕の実力が覚えるに足らないと言うのなら、また刻み込んであげるまでさ。そう、僕とマスターは君に勝つために努力を重ねてきた。各地の強豪の戦術も研究した。君に実力で劣る点は全くない」
「いいえ、あたしは負けません! あたしとご主人様の愛の力は無敵です!」
「ふっ……、勇ましいね。だが、それも今日までの事! 僕は今ここで君を超える!」
試合開始の合図と共に、早速指示を出す。
「雅、ヂェリーを飲め!」
「はい、ご主人様! ……んくっ」
ヂェリーを雅が飲んでいる間にも、ソレイユはブースターを吹かして迫ってくる。
「ハハハ! 悠長に食前酒か!」
「んくっ……んくっ……ぷはっ! ……ひっく」
雅はヂェリーを飲み終えると、容器を投げ捨てて、口元を手の甲でぬぐった。
そして―。
「ええと、どなたでしょう? 初めてお目に掛かりますが」
雅よ、それはひどいぞ。
「ぐっ……。ま、まあいい。僕の実力が覚えるに足らないと言うのなら、また刻み込んであげるまでさ。そう、僕とマスターは君に勝つために努力を重ねてきた。各地の強豪の戦術も研究した。君に実力で劣る点は全くない」
「いいえ、あたしは負けません! あたしとご主人様の愛の力は無敵です!」
「ふっ……、勇ましいね。だが、それも今日までの事! 僕は今ここで君を超える!」
試合開始の合図と共に、早速指示を出す。
「雅、ヂェリーを飲め!」
「はい、ご主人様! ……んくっ」
ヂェリーを雅が飲んでいる間にも、ソレイユはブースターを吹かして迫ってくる。
「ハハハ! 悠長に食前酒か!」
「んくっ……んくっ……ぷはっ! ……ひっく」
雅はヂェリーを飲み終えると、容器を投げ捨てて、口元を手の甲でぬぐった。
そして―。
「うるああああああああああああ!」
「えっ……? ちょっ、雅、まっ……ぎゃああああ!?」
開始から十二秒で、試合は終わった。
「えっ……? ちょっ、雅、まっ……ぎゃああああ!?」
開始から十二秒で、試合は終わった。
※※※
あわー……。ソレイユ、ボコボコにされちゃったですう。
アクセスポッドから出てきた雅さんはまだ暴れていて、オーナーさんに押さえつけられているです。
「フーッ! フーッ!」
「こら雅、いい加減にしろ」
「な、何なのデスかあれは! 聞いていまセンよ!」
「あ? お前がやったんだろ? ほら、このヂェリーだよ」
オーナーさんが出したのはわたしが買ったヂェリカンです! ……あれ、でも、あれってほれ薬ですよね? どうして暴れるんです?
「何デスかこれは? ワタシは知りまセンよ」
「え? お前がやったんじゃないのか?」
「ハート・イグニッション・ヂェリー? ウオッ、この臭いは?」
「マスター、少しテイスティングしてもいいかい?」
あ、ソレイユが飲んじゃうです!……あー、やっちゃったです。はて、じゃあソレイユが今度は乱れる事に……? それはそれで面白いかもですう。
……あれ? 何も起きないです?
アクセスポッドから出てきた雅さんはまだ暴れていて、オーナーさんに押さえつけられているです。
「フーッ! フーッ!」
「こら雅、いい加減にしろ」
「な、何なのデスかあれは! 聞いていまセンよ!」
「あ? お前がやったんだろ? ほら、このヂェリーだよ」
オーナーさんが出したのはわたしが買ったヂェリカンです! ……あれ、でも、あれってほれ薬ですよね? どうして暴れるんです?
「何デスかこれは? ワタシは知りまセンよ」
「え? お前がやったんじゃないのか?」
「ハート・イグニッション・ヂェリー? ウオッ、この臭いは?」
「マスター、少しテイスティングしてもいいかい?」
あ、ソレイユが飲んじゃうです!……あー、やっちゃったです。はて、じゃあソレイユが今度は乱れる事に……? それはそれで面白いかもですう。
……あれ? 何も起きないです?
「んっ……、これ、バナナハバネロスパークリングヂェリーじゃないか?」
え? ……え、ええええええっ!?
「しかも凄く濃いね。そのままじゃ飲みにくいから、薄めれば丁度良いと思うよ」
「やっぱりな。……雅はな、バナナハバネロを飲むと悪酔いするんだよ。で、三回飲むと元に戻る」
「そんな機能聞いた事ありまセンよ」
「まあ、こりゃ癖みたいなもんだな」
じゃ、じゃああれですか……。わたしは、わたしは、ただのバナナハバネロスパークリングヂェリーのために三万円払ったって事なのですかあああ~!
「オオ、ノワール! どうしたのデスか?」
「ま……、マスター、今日はもう……帰りましょうです……(パタッ)」
「ノワール! これはセンターに連れて行った方が良さそうデスね。それでは失礼」
ああ、メリーさんはこの程度では堕ちないですか。ああ、窓に、窓にメリーさんの姿が、ふふ、ふふふふふ、まだだ、まだ終わらんよです……と考えながら、ああ、意識が遠のいていくですう。
「しかも凄く濃いね。そのままじゃ飲みにくいから、薄めれば丁度良いと思うよ」
「やっぱりな。……雅はな、バナナハバネロを飲むと悪酔いするんだよ。で、三回飲むと元に戻る」
「そんな機能聞いた事ありまセンよ」
「まあ、こりゃ癖みたいなもんだな」
じゃ、じゃああれですか……。わたしは、わたしは、ただのバナナハバネロスパークリングヂェリーのために三万円払ったって事なのですかあああ~!
「オオ、ノワール! どうしたのデスか?」
「ま……、マスター、今日はもう……帰りましょうです……(パタッ)」
「ノワール! これはセンターに連れて行った方が良さそうデスね。それでは失礼」
ああ、メリーさんはこの程度では堕ちないですか。ああ、窓に、窓にメリーさんの姿が、ふふ、ふふふふふ、まだだ、まだ終わらんよです……と考えながら、ああ、意識が遠のいていくですう。
※※※
こうして、ノワールの計画は失敗に終わったのです。
神姫とオーナーの信頼をもてあそぶとは、恐ろしい相手です。
しかし、神姫との健全な関係をお望みの武装紳士・淑女の皆さん、ご安心を。これは遠い遠い、2041年のお話なのです。それに、この事件も無事に解決したとは言えないでしょう。
え?何故って?
神姫とオーナーの信頼をもてあそぶとは、恐ろしい相手です。
しかし、神姫との健全な関係をお望みの武装紳士・淑女の皆さん、ご安心を。これは遠い遠い、2041年のお話なのです。それに、この事件も無事に解決したとは言えないでしょう。
え?何故って?
※※※
「そんな事があったんだ」
健五にそう話してやったら、不思議そうな顔をした。
「でも、不便でしょう? そんな癖があったら」
「まあ良いんじゃないのか。一つくらいはおかしなとこがあった方が面白いと思うぞ」
うんうん、と一人で納得してみせる。
「マスターマスター、あたしの癖ってなんでしょうか?」
「クレアは……、うーん、分からないや」
「えー、残念です」
「さっきから何の話よ? あ、そういえばアキラ、あたしってお昼前に何してたか分かる? 覚えて無いのよね」
「え!? いや~、何も無かったぞ」
「そう? あれ、あんたほっぺた腫れてるわよ。虫さされ?」
「え、ああ多分そうだな! うん!」
このまま何も無かった事にしておこう。それがいい。
健五にそう話してやったら、不思議そうな顔をした。
「でも、不便でしょう? そんな癖があったら」
「まあ良いんじゃないのか。一つくらいはおかしなとこがあった方が面白いと思うぞ」
うんうん、と一人で納得してみせる。
「マスターマスター、あたしの癖ってなんでしょうか?」
「クレアは……、うーん、分からないや」
「えー、残念です」
「さっきから何の話よ? あ、そういえばアキラ、あたしってお昼前に何してたか分かる? 覚えて無いのよね」
「え!? いや~、何も無かったぞ」
「そう? あれ、あんたほっぺた腫れてるわよ。虫さされ?」
「え、ああ多分そうだな! うん!」
このまま何も無かった事にしておこう。それがいい。
「へえぇ~、何にも無かったんですか~、良かったですね、ご・しゅ・じ・ん・さ・ま」
振り向くと、全身から黒いオーラをほとばしらせている……ようなメリーがいた。
「主従プレイの次は記憶喪失プレイですか~、知りませんでしたね~、そんな趣味をお持ちだったなんて」
「……メリー? ちょっと?」
「あら~、私はどうもしていませんよ、ご・しゅ・じ・ん・さ・ま」
メリーは店で使っている金属製のフォークを持っていた。
「……もしかして、見てた?」
「始めから終わりまでぜ~んぶ。まんざらでもなさそうでしたね~、ご・しゅ・じ・ん・さ・ま!」
「いや、それは絶対にありえな―、ぎゃああああああ!」
「ち、ちょっと、落ち着きなさいよメリー?」
「うるさーい!この泥棒猫!私だってキスした事無いのにーっ!」
「主従プレイの次は記憶喪失プレイですか~、知りませんでしたね~、そんな趣味をお持ちだったなんて」
「……メリー? ちょっと?」
「あら~、私はどうもしていませんよ、ご・しゅ・じ・ん・さ・ま」
メリーは店で使っている金属製のフォークを持っていた。
「……もしかして、見てた?」
「始めから終わりまでぜ~んぶ。まんざらでもなさそうでしたね~、ご・しゅ・じ・ん・さ・ま!」
「いや、それは絶対にありえな―、ぎゃああああああ!」
「ち、ちょっと、落ち着きなさいよメリー?」
「うるさーい!この泥棒猫!私だってキスした事無いのにーっ!」
彼らはまだ、充分にお互いの気持ちに気付いているわけではありませんから。
おまけ、ミッシェル社内にて。
「……ハート・イグニッションか、困るなあ。おかしなものを販売されると商品全体の信頼性に関わるよ」
「あー、こりゃ面倒くさいですね。対策を打った方が良いんじゃないですか?」
「あの~、わたしのお昼の飲み物がバナナハバネロスパークリングヂェリーになってたんですが……」
「ほう、それは早急に対策を講じた方が良いな。なあ、Bよ?」
「え!? いや~、ははは。面白そうだったからつい」
「……抹茶、また無くなってしまったな」
「あー、こりゃ面倒くさいですね。対策を打った方が良いんじゃないですか?」
「あの~、わたしのお昼の飲み物がバナナハバネロスパークリングヂェリーになってたんですが……」
「ほう、それは早急に対策を講じた方が良いな。なあ、Bよ?」
「え!? いや~、ははは。面白そうだったからつい」
「……抹茶、また無くなってしまったな」
おしまい。
武装食堂に戻る