すとれい・しーぷ002
“堕ちてくんだ キミの中”
“居場所求めて彷徨うけれど 見えない 見えない 見えない”
“キミの世界 放り出された Stray sheep”
“僕は迷子”
“居場所求めて彷徨うけれど 見えない 見えない 見えない”
“キミの世界 放り出された Stray sheep”
“僕は迷子”
クレイドルで寝こけていたわたしの人工脳を揺さぶったのは、悲しくも美しい音色。
オーナーの声だ、そう気づくのに時間はかからなかった。
初めて聴く歌。この声を聴くと、身体が熱くなる。脳回路が焼き切れそうなくらいに。
やめて欲しいけど、もっと聴きたい。
オーナーの歌声は魔性だ。そう感じながらも聴き入ってしまう。
「なんの歌ですか?」
ひとしきり歌い終えたオーナーに純粋な疑問をぶつける。
弾かれたように振り返ったオーナーはいたく焦った様子でわたしを両手のひらで包み、小さな声で言った。
「ごめん、いまのは忘れて」
忘れるなど無理な話だ。こんな強烈な快感。
事実回路が焼き切れるくらいに身体が火照ったのだ。
冷却液の効果もないくらいに。
それは、わたしのオーナーへの強い慕情のせい。
こんな恥ずかしいことを言えるはずもなく、わたしはただ俯くだけだった。
朝日が差し込み、わたしを照らした。
オーナーの声だ、そう気づくのに時間はかからなかった。
初めて聴く歌。この声を聴くと、身体が熱くなる。脳回路が焼き切れそうなくらいに。
やめて欲しいけど、もっと聴きたい。
オーナーの歌声は魔性だ。そう感じながらも聴き入ってしまう。
「なんの歌ですか?」
ひとしきり歌い終えたオーナーに純粋な疑問をぶつける。
弾かれたように振り返ったオーナーはいたく焦った様子でわたしを両手のひらで包み、小さな声で言った。
「ごめん、いまのは忘れて」
忘れるなど無理な話だ。こんな強烈な快感。
事実回路が焼き切れるくらいに身体が火照ったのだ。
冷却液の効果もないくらいに。
それは、わたしのオーナーへの強い慕情のせい。
こんな恥ずかしいことを言えるはずもなく、わたしはただ俯くだけだった。
朝日が差し込み、わたしを照らした。
オーナーはいつも通りまたフラリといずこかへ消えてしまった。
ネットで調べたところ“仕事”をしに行っているそうだ。
“仕事”の内容は人それぞれらしくオーナーの仕事が何なのか、というところまではわからなかったが・・・。
とにかくお留守番中はおとなしくインターネットをして、人間社会についてお勉強するのだ。
ネットで調べたところ“仕事”をしに行っているそうだ。
“仕事”の内容は人それぞれらしくオーナーの仕事が何なのか、というところまではわからなかったが・・・。
とにかくお留守番中はおとなしくインターネットをして、人間社会についてお勉強するのだ。
ふと顔を上げると、既に窓が橙に染まっていた。
綺麗だ。
わたしの目覚めたアメジストも好きだったが、今目の前にあるカーネリアンも負けないくらい美しくて大好きだった。
そろそろオーナーも帰ってくるころだ。お迎えのし仕度をしなくては。
そう、部屋の入り口近くの棚、オーナーの目線近くまで上ると、扉が開くのを待った。
いつの間にか日課になったこの行動は、最初こそオーナーを驚かせたが、今となっては当然の行動なのだ。
ゆっくりとオーナーの生活に溶け込んでいく気がして、嬉しかった。
ガチャ、という音とともに扉が開く。
「オーナー、おかえりなさ、い・・・?」
そこに立っていたのは、知らない女の人。
スレンダーな身体に、鎖や妙な紐のついた形容しがたい面妖な衣装に身を包んでいた。
真っ赤なルージュの引かれた唇が動く。
「へぇ、あんたが神姫を、ね・・・」
そうわたしに伸ばされた知らない手を、オーナーの優しい手が制す。
「・・・こわがってる」
蚊の鳴くような声だったが、いつもの優しい雰囲気は消え、彼女がわたしに触れるのをかたくなに拒んでいた。
嬉しい。オーナーにここまで思われて!
そんな優越に浸っていると、すぐ横から聞きなれない声がした。
「こいつ、おもしろいじゃん!こんな神姫、初めて見るじゃん!」
じゃかじゃかとギターを鳴らしたのは、わたしと同じ神姫だった。
初めて見る、自分以外の神姫にわたしはどぎまぎしてしまう。
「きゃはは、こいつ、マジおもろいじゃん!気に入ったじゃん!お前、ライアの舎弟にしてやるじゃん!」
ベイビーラズ型の神姫は、胸を張った。ない胸を。
「あたしの名前はアグライア!気軽にアグライア様と呼ぶと・・・ふみゃぁぁ!?」
「ライア、あんま調子乗ってるとリセットだから」
ライアのオーナーは親指でライアの頭を押さえると、ぐりぐりとその指をひねる。
すごく、痛そう・・・
「あんたが作ったんでしょ?・・・好きね、ロリ巨乳」
呆れたようにため息をつくとお姉さんはまたわたしを見て赤い唇を持ち上げた。
「私は甲斐田ラン。ランって呼んでちょーだい!」
そっと差し出された知らない手にわたしはそっと手を伸ばした。
何百倍もある手に自分のそれを重ねるまで、どれだけの時間がかかっただろう?
そんなわたしをランはずっと待っていてくれた。
「わ、わたし、わたしはっ、ルキス。オーナーの神姫のルキス!」
顔が熱い。思考回路がフル回転しているのだ。オーバーヒートで脳天からぶすぶすと煙が出ているかもしれない。
ランはくすりと笑うとまたオーナーに向き直った。
「兄貴の言ってたのとずいぶん違うじゃない?趣向の変化?それとも、不良品?いずれにせよ、昔みたいにバトルは無理ね」
ふん、と鼻を鳴らしたランはそのまま自分の上着に手をかけた。
一気にファスナー降ろす、とそこに現れたのは豊満な胸だった。
隠す気はさらさらないようで、それどころかその乳房をオーナーの腕に押し付ける。
「ね、いつもみたいにシよ」
もたれかかるように抱きつき、ランはその細く、健康的に日に焼けた腕をオーナーの首に絡める。
まるで別の生き物かのようにオーナーを絡めとるそれは、ついにランとの距離を0にした。
唇が重なり、湿った淫音が響くとそのまま、ランがオーナーを押し倒す形でソファへと倒れ込んだ。
と、同時に暗転する視界。一瞬バグか、と不安になるが、すぐにそうではないとわかった。
「こっから先は大人の事情でガキは見たらダメじゃん」
目隠しをしながら、ライアは上機嫌に言った。
わたしはガキじゃない。そんな否定は既に頭にはなかった。
綺麗だ。
わたしの目覚めたアメジストも好きだったが、今目の前にあるカーネリアンも負けないくらい美しくて大好きだった。
そろそろオーナーも帰ってくるころだ。お迎えのし仕度をしなくては。
そう、部屋の入り口近くの棚、オーナーの目線近くまで上ると、扉が開くのを待った。
いつの間にか日課になったこの行動は、最初こそオーナーを驚かせたが、今となっては当然の行動なのだ。
ゆっくりとオーナーの生活に溶け込んでいく気がして、嬉しかった。
ガチャ、という音とともに扉が開く。
「オーナー、おかえりなさ、い・・・?」
そこに立っていたのは、知らない女の人。
スレンダーな身体に、鎖や妙な紐のついた形容しがたい面妖な衣装に身を包んでいた。
真っ赤なルージュの引かれた唇が動く。
「へぇ、あんたが神姫を、ね・・・」
そうわたしに伸ばされた知らない手を、オーナーの優しい手が制す。
「・・・こわがってる」
蚊の鳴くような声だったが、いつもの優しい雰囲気は消え、彼女がわたしに触れるのをかたくなに拒んでいた。
嬉しい。オーナーにここまで思われて!
そんな優越に浸っていると、すぐ横から聞きなれない声がした。
「こいつ、おもしろいじゃん!こんな神姫、初めて見るじゃん!」
じゃかじゃかとギターを鳴らしたのは、わたしと同じ神姫だった。
初めて見る、自分以外の神姫にわたしはどぎまぎしてしまう。
「きゃはは、こいつ、マジおもろいじゃん!気に入ったじゃん!お前、ライアの舎弟にしてやるじゃん!」
ベイビーラズ型の神姫は、胸を張った。ない胸を。
「あたしの名前はアグライア!気軽にアグライア様と呼ぶと・・・ふみゃぁぁ!?」
「ライア、あんま調子乗ってるとリセットだから」
ライアのオーナーは親指でライアの頭を押さえると、ぐりぐりとその指をひねる。
すごく、痛そう・・・
「あんたが作ったんでしょ?・・・好きね、ロリ巨乳」
呆れたようにため息をつくとお姉さんはまたわたしを見て赤い唇を持ち上げた。
「私は甲斐田ラン。ランって呼んでちょーだい!」
そっと差し出された知らない手にわたしはそっと手を伸ばした。
何百倍もある手に自分のそれを重ねるまで、どれだけの時間がかかっただろう?
そんなわたしをランはずっと待っていてくれた。
「わ、わたし、わたしはっ、ルキス。オーナーの神姫のルキス!」
顔が熱い。思考回路がフル回転しているのだ。オーバーヒートで脳天からぶすぶすと煙が出ているかもしれない。
ランはくすりと笑うとまたオーナーに向き直った。
「兄貴の言ってたのとずいぶん違うじゃない?趣向の変化?それとも、不良品?いずれにせよ、昔みたいにバトルは無理ね」
ふん、と鼻を鳴らしたランはそのまま自分の上着に手をかけた。
一気にファスナー降ろす、とそこに現れたのは豊満な胸だった。
隠す気はさらさらないようで、それどころかその乳房をオーナーの腕に押し付ける。
「ね、いつもみたいにシよ」
もたれかかるように抱きつき、ランはその細く、健康的に日に焼けた腕をオーナーの首に絡める。
まるで別の生き物かのようにオーナーを絡めとるそれは、ついにランとの距離を0にした。
唇が重なり、湿った淫音が響くとそのまま、ランがオーナーを押し倒す形でソファへと倒れ込んだ。
と、同時に暗転する視界。一瞬バグか、と不安になるが、すぐにそうではないとわかった。
「こっから先は大人の事情でガキは見たらダメじゃん」
目隠しをしながら、ライアは上機嫌に言った。
わたしはガキじゃない。そんな否定は既に頭にはなかった。
不良品。バトル。趣向の変化。
ぐるぐる、ぐるぐる。
回る世界とは逆方向に言葉という星が回る。
わたしはその回転に目を回してしまわないよう必死に目を瞑るだけ。
意味もわからないまま、夜闇が遠ざかった。
ぐるぐる、ぐるぐる。
回る世界とは逆方向に言葉という星が回る。
わたしはその回転に目を回してしまわないよう必死に目を瞑るだけ。
意味もわからないまま、夜闇が遠ざかった。
目が覚めると悪夢の続きが、そこにはあった。
全裸でソファに横たわるランの隣で、すでにフードを目深にかぶったオーナーがゆるゆると寝息を立てていた。
昨晩のライアの話によると、ランは週に一度、オーナーとSEXをしに来るらしい。
オーナーの声が、自分のバンドに欲しくて、身体で懐柔する腹積もりのようだ。
しかしオーナーはまったく折れず、ただただ毎週あがり込んでくるランと寝る。
なんだか胸のあたりがもやもやした。
全裸でソファに横たわるランの隣で、すでにフードを目深にかぶったオーナーがゆるゆると寝息を立てていた。
昨晩のライアの話によると、ランは週に一度、オーナーとSEXをしに来るらしい。
オーナーの声が、自分のバンドに欲しくて、身体で懐柔する腹積もりのようだ。
しかしオーナーはまったく折れず、ただただ毎週あがり込んでくるランと寝る。
なんだか胸のあたりがもやもやした。
ランとライアが帰ったあと、わたしはオーナーに問い詰めた。
「オーナー・・・なぜ、意味もなく、ランさんと・・・その、閨を供に・・・?」
我ながらかなり頑張ったと思う。
なにせこの言葉を発するだけで有に4時間かかったのだから。
「意味がないわけじゃないんだ、ランは性交に依存してる。寝てあげることで、少しでも気が紛れるなら・・・。それに・・・」
何かを言いかけ、困ったように呟いたオーナーは優しくわたしの頭を撫でた。
そんな事をされても、わたしの悲しみと悔しさは消えなかった。
むしろ、わたしのオーナーが、赤の他人にそこまでしてあげなくても、と怒りを助長させるスパイスにすらなった。
“赤の他人”その認識が間違っていた事に気づくのはもう少し先の話。
「オーナー・・・なぜ、意味もなく、ランさんと・・・その、閨を供に・・・?」
我ながらかなり頑張ったと思う。
なにせこの言葉を発するだけで有に4時間かかったのだから。
「意味がないわけじゃないんだ、ランは性交に依存してる。寝てあげることで、少しでも気が紛れるなら・・・。それに・・・」
何かを言いかけ、困ったように呟いたオーナーは優しくわたしの頭を撫でた。
そんな事をされても、わたしの悲しみと悔しさは消えなかった。
むしろ、わたしのオーナーが、赤の他人にそこまでしてあげなくても、と怒りを助長させるスパイスにすらなった。
“赤の他人”その認識が間違っていた事に気づくのはもう少し先の話。
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