ピリシンのFINST理論

ピリシンの新しい訳本が出ました。


ピリシンといえば,イメージ-命題論争とか,モジュール性とか様々な文脈で有名ですが,そのメインの研究テーマは視覚における対象認知になるのではないでしょうか。
本書は,ピリシンが自身のFINST理論(Finger of INSTantiation theory)を詳しく紹介したものです。
この理論は,MOT(multiple object tracking)課題の説明として有名になったものですが,一種独特の捉えにくさがあるように思います。
それは,ピリシンが単純な単独の対象の知覚ではなく,複数の対象の同時知覚を扱っているという問題設定の独自性にあるのかもしれません。
MOTやサビタイジングのように,複数の対象を同時に背景世界から切り出すには,単にある一点に集まった特徴集合に注意を向ければよいのではなく,共通する特徴群に注意を向けるのと同時にそれぞれの対象を別のものとして個別化する必要があります。
さらに,その中から特定の対象だけを選択することもできなければなりません。
このとき,注意のポインタのような働きをするのがFINSTと呼ばれるメカニズムです。
ともあれ,詳細についてはピリシンの著作を読むのが一番でしょう。

原書の書誌情報は以下の通りです。

Pylyshyn, Z. (2007). Things and Places: How the Mind Connects with the World. MIT Press.

ピリシンのホームページでは,多くの論文がPDFファイルでアップロードされています。

最終更新:2012年01月27日 (金) 14時12分13秒

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