プリザーブドフラワー「preserved flower」とは「保存された花」という意味で、生花を脱水・脱色して染料やグリセリンなどの保湿液を吸収させ、長期保存を可能にした花材である。

 大まかな作り方としては、生花が一番きれいに咲いている状態でカットし、有機溶剤を用いて脱水、脱色後、保存液となる不揮発性溶液を用いて水分と置換し、染料を用いて着色させた後、乾燥させる。脱水にはメタノール・エタノールなどの低級アルコールを主成分とする液を用いており、水分の置換にはポリエチレングリコールや高級エーテルなど、不揮発性で比較的安全性の高い有機溶剤を用いるため、人体にはほとんど影響がないと言える。水分を抜いて作られたドライフラワーとは異なり、プリザーブドフラワーは生花と比べてほとんど遜色ないくらいに生命感があり、触り心地も柔らかく、瑞々しい。一般的には、バラやカーネーション、アジサイなどの花、バラの葉やユーカリ、アイビーなどの葉もの、実ものが多く出回っているが、同様の処理を果実に対して行ったプリザーブドフルーツも存在する。

 プリザーブドフラワーの主な魅力は、美しい花姿のままの長期保存が可能であること、手入れが不要であること、生花では再現できない色や豊富なカラーバリエーションが揃っていること、軽量であること、などが挙げられる。
 まず保存可能期間であるが、プリザーブドフラワー発祥の地であるフランスなど、湿度の低い地域では3~5年以上、日本など高温多湿の地域では一年~数年程度、保存が可能である。最適な保存条件は気温約25度、湿度50%前後なので、日本では梅雨や夏場に注意が必要である。また、直射日光に当たると色が退色しやすいため、置き場所にも注意が必要。この湿度、気温、直射日光に気をつけて保存することで、日本でも数年間は美しさを保つことが出来る。

 プリザーブドフラワーの手入れについては、特殊加工されているために花には花粉がなく、水やりも必要ない為、非常に楽と言える。過酷な気候条件下で保存しない限りは急速な劣化もなく、安定した美しさを楽しむことが出来る。花としての魅力の一つである「香り」は加工によって失われるが、レストランや病院など、香りに対して敏感な場所にも置くことが出来るという点では、逆にプリザーブドフラワーの魅力と言えるだろう。

 次に、カラーバリエーションについて。葉や実などはほとんど自然の色合いを元に着色されているので、このカラーバリエーションとは主に「花」に施された着色の種類を言う。カラーバリエーションはプリザーブドフラワー製造メーカーによってその色相や彩度、明度は様々であるが、ほとんどのメーカーでは生花にはない色味(例えば青や緑、茶)の着色を行っている。この着色技術によって、生花のアレンジでは出来なかった色の組み合わせが可能となり、アレンジの幅も広がりを見せている。

 最後に、プリザーブドフラワーの重さについてであるが、プリザーブドフラワーは花首から下が無いことや、加工の際に水分を抜いている為に生花に比べてとても軽い。そのため、重い豪華なウェディングブーケもプリザーブドフラワーなら軽く、一日持ち歩いても花嫁の負担にならない。長期保存できるというメリットもプラスされて、ウエディングで人気が非常に高まっている。また、インテリアやギフトとしての需要も高い。



最終更新:2010年04月23日 06:07