ろぜーんさなえ

「ゆっくりしていってね!!!」

「…」

私はいつもの様に目を覚まして鞄を開けた、ただそれだけなのだわ。そしたら、目の前に首だけで跳ねている黒髪で頭に赤のリボンを付けていて、肌がモチモチしていて顎の部分が下膨れてぱっと見ちょっとむかつく…。
…ドール? まあ、いたのだわ。今もいるけど。
そう、それだけ。特に悪い事もしていないし、アリスゲームも一時休戦の様なものだし、昨日取って置いたプリンが楽しみだし、う~ん…。
…戦い? 生きることは戦い、これはまた新しいアリスへの道? 冒険、滞在は衰退の一歩!
私たちは勇気を持って一歩を踏み出さなければならない、しかし今日のおやつはわざわざ夜食べずに残して置いたプリンだから楽しみだし、ああああああ!

「おねーさん何唇をアヒルさんみたいにして首相の浮かない顔の様な表情をしているの?」

「…ハッ! わ、私は何を考えて!? ちょっと、ジュン、ジュン!?」

「こっちが聞きたいくらいだよ! おねーさん、ゆっくりしてないよ!」

…ゆっくり、か。そういえば鞄を開けて、いきなり『ゆっくりしていってね!!!』だなんて知らない声がしたからこんなに混乱していたのでしたっけ。
それはもう待ち構えていたのでは無いかしらと疑問を抱いてしまうくらいにピンポイントで鞄を開けた瞬間に叫ばれて、驚かないほうがおかしいのだわ!
全く、レディに接する態度では無いわね!
…すると、廊下からトットットッと小刻みに階段を登る音が聞こえてくる。パタンとドアが開けられて、顔を覗かせたのはジュンだった。
ジュンはなにやらピンク色の財布を持っているけど、どうしたのだろう?

「ん~? どうした真紅、寝惚けているのか…、おお、ゆっくりじゃないか!」

「ゆっくり? 確かにこの子はゆっくりと叫んでいたけど、何か関係が?」

「ゆぅ~! ゆっくり!」

「真紅は知らないのか? こいつは神出鬼没でな、現れた時はこんな風に抱えてあげて撫でてあげると…」

ジュンは床に居座るゆっくり? をヒョイと胸に抱えて頬や頭、全体を万遍なく撫でる。ゆっくりは嬉しそうにはにかみ、ジュンの胸に顔をすりすりし始めた。
ジュンはおいおいと照れながらもゆっくりを受け入れている。
私には滅多に抱っこをしてくれないのに、何なのよ…! 私だってジュンの胸に顔をうずめたいわ、撫でて貰いたいわ! ハグだけでいい、それを何よあのゆっくりは来て早々に抱っこして貰っちゃって、くう…!

「…真紅? どうした、いきなり瞳に涙を溜めて!」

「…うるさいのだわっ、ジュンの馬鹿バカ鈍感まぬけ! ふんだ!」

何よ、なによ! 別にいいわよ、私なんかどうせ…。ふんだ!
淡い期待を持ちつつジュンの側に寄り添う様に背中を向けているというのに、ジュンは一向に何もしてこないのだわ!
もう、せめて声くらい掛けて欲しいのだわ! 本当に、もう…。

「うーん、どうしちゃったんだ? …おわっ!」

「…おおっとれいむはうっかり体をひねらせて地面に落ちてしまったぞ! さらにうっかり、転がってしまいそこのおねーさんに正面から当たってしまった!」

「え? …キャッ!」

「危ない、真紅!」

いきなりゆっくりが横からターンしてきて、思い切り私にぶつかって来たのだわ!
落ちたとかいうレベルじゃない、どう考えてもわざとにしか思えない! 何なのかしら、私に恨みでもあるのかしら!?
…そう考えたのもつかの間、揺らめゆく景色もすぐに止まり、背中にポフンと感触があって背後からはジュン特有の石鹸のいい匂いが。
数秒経って、ジュンは『大丈夫か?』と私に尋ねてきて背中から私を抱きしめてくれた。さっきまで拗ねていた事が恥ずかしくなって、私はただうつむいて返事をするだけだったのだわ。
…まさか、あの子は空気を読んでくれて?

「ヘイ、お二人さん見せ付けてくれて!!! 全く嫉ましいねえ、どうだい! 今なられーむ屋特製のゆっくり饅頭発売だよ! お二人の幸運を祈って一つどうだい?」

全くそんな事は無かったのだわ。私は立ち上がりジュンから離れて、ゆっくりに近づきパンチを一発お見舞いしてやったのだわ。

「ゆ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!゛!゛!゛ い゛た゛い゛!゛!゛!゛」

「これが絆よ、覚えておきなさい」

「お、おいおい真紅! 流石にやりすぎじゃないか?」

…それもそうか。折角ジュンに構ってもらうきっかけを作ってもらったというのに、これはやりすぎか。
素直に謝ろうとした時だったのだわ。

「…おっぱい小さい癖に」

「…」

「あ゛た゛た゛た゛た゛た゛た゛た゛!゛!゛!゛ ギ゛ブ゛、ギ゛ブ゛!゛ ご゛め゛ん゛な゛さ゛い゛!゛!゛!゛
れーむが悪かった! 全面的に悪かったよもうやりませんから!! 反省してますからお゛う゛ぶ゛ぶ゛ふ゛ふ゛ふ゛ふ゛ぶ゛ぶ゛!゛!゛!゛
何さ! さっきだっておねーさんが素直に抱っこしてって言わなかったのが悪いんじゃないのさ! れーむはおねーさんをいたわって行動したというのに、ちょっとこの扱いは酷いんじゃないの!?」

「そうだぞ真紅、流石んにやりすぎじゃないか!?」 

「いいの、いいのよ! こいつは私が一番気にしている事をずかずかと言いやがったのだわ、三角絞めくらいしないと気がすまないのだわ!!!」

「そんな短気だからいつまで経ってもお胸がペタペタなんじゃないのこの芸術的洗濯板!!!
…え、何? そんないきなりれーむにまたがっちゃって太ももでれーむをクラッチしちゃって? れーむの魅力にメロメロになって欲情したの? 全く、れーむったらおねーさんをも弄んじゃうだなんてイ・ケ・ナ・イ・人♪
…ゆ゛べ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!゛!゛!゛」

「…生きるとは戦い。思考を放棄するのは、逃げよ」

「真紅…?」

床に肌がのぺーっと広がっている何やら奇妙な物体があるけど、そんなことは些細な問題では無いのだわ。
…ここだけの話、ゆっくりに技をかましている時にさりげなく感触を試していたのだけど、…とっても肌触りがいいのだわ!
見た目通りモチモチっとした感触がしていて、さらに手触りがしっとり、弾力もしっかりしたもので一日中抱きしめていようかと思ったくらい! それはもう、子供の頃に夢見たバランスボールさながらなのだわ!
これはいいわね、あとでゆっくりが元気になったらお願いしようかと考えているわ!

「…真紅、今日はおかしいぞ? さっきまで落ち込んでいたと思ったら怒り出して、さらに今はハキハキとした笑顔を浮かべて…。何かあったのなら相談に乗るぞ?」

「…えっと、うう///」

そんなに表情に出ていたのかしら? ポーカーフェイスには自信があるつもりだったのだけれど…。
返す言葉も無く、ただうつむく事しか出来ないのだわ。

「ゆはあっ! もう、死ぬかと思ったよ!」

ゆっくりは何事も無く起き上がりこちらへ擦り寄って来たのだわ。体の構造がどうなってるのか、見てみたいのだわ。

「ふふ、いらっしゃい。うちの真紅は乱暴者だけど、決して悪いやつじゃないから安心してな。…あいたっ!」

ジュンが余計な事を言うから、巻き毛ウィップをお見舞いしてやったのだわ。
全く、なんで男の人はいつも余計なことを言うのかしら!

「ゆうっ、ゆっくりしていくよ! れーむはれーむ、よろしくね!」

「れーむ、よろしく! …ねーちゃんの忘れ物を届けに行くから、俺はもう行くよ。後は真紅と遊んでいてくれ、じゃあな!」

この子の名前はれーむと言うのね。ジュンがれーむに微笑みかけて、そそくさにドアを開けて廊下に行ったのだわ。
すぐにドン、ドンと階段を下って行った音が聞こえたのだわ。…部屋内にはどこかぎこちない、むずかゆい雰囲気が流れ出したのだわ。

今日、のりと雛苺は雛苺の要望で遊園地に行くことになったのだわ。外は晴れ模様で折角に休日だし、有効な使い道かも知れないわね。
しかし、流石はのり期待を裏切らないというか、のり特有のそそっかしさから財布を家に忘れてしまい、ジュンはそれを届けに外に出たという所かしらね。
なんでわかるかって? 今までの生活からの推測と、ジュンの片手にはのりのピンク色の財布が握られていたからかしらね。
全く、今日はジュンと一日のんびり過ごしていようと思ったのに、仮にれーむが来ていなかったとしても結局一緒に居られなかったんじゃない! 
不満をれーむに垂れつつ私はされげなくれーむの体に手を伸ばし、ふにふにと弄ぶ。
…やわっこい! 気持ちいい!

「ゆう~、おねーさん。そんなに激しく触られちゃうと、恥ずかしいよ…」

「あ、ご、ごめんなさい。ついつい、可愛くて」

「やっぱり? れーむの魅力に当てられちゃ、我慢できないのも当然だよね!」

そこはかとなくいらついたのでお構い無しにれーむを撫で繰り倒したのだわ。

「ゆ゛う゛う゛う゛う゛う゛!゛!゛!゛ こ゛め゛ん゛な゛さ゛い゛、も゛う゛や゛り゛ま゛せ゛ん゛か゛ら゛!゛!゛!゛」

…全く、どうしてこの子は敵わないとわかっている相手に対してちょっかいを出してくるのかしら?
まあ、そこもまた愛おしいのだけれど。…最初見たときにはうざいと感じた下膨れの顔も、今では可愛く見える。何かの感染かしらね、この現象。

…ぐう~、と。腹の虫が小さくお腹が空いている事を告げる。れーむにはしっかり聞かれていた様で、目を開けて凝視されてしまっている…。
は、恥ずかしい…///

「…ごほん。あー、冷蔵庫にプリンがあるの。食べる?」

場の空気を変えるため、私はれーむに提案する。れーむははち切れんばかりの笑顔で『食べるっ!』と床を跳ねながら答えた。
全く、そんなに元気いっぱいに言われてしまったらこっちも嬉しくなるじゃないの。時間的にはまだお昼も回っていないけれど、別にいいわよね。
思わずつりあがる口元をれーむに見えない様隠しつつ、私は部屋の隅に置いてある便利ステッキを手に取りドアを開けたのだわ。
れーむが私に近付いて来て、『だっこ!』と私の胸に飛び跳ねて来た。本来なら私が抱っこされる側だと言うのに…。
私の大きさから、バレーボール並の大きさのれーむを抱えるのは無理だった。その代わり、れーむが私を頭に乗せてくれて、階段を跳ねながら降りてくれた。
うーん、なんだか新鮮な気分。ちょうどいい具合の反発力があって、病み付きになりそうなのだわ!

…冷蔵庫前に着いた。普段なら届かないと言う理由で見向きもしない冷蔵庫も、れーむから降りて椅子とステッキを駆使すればなんてことのない障害なのだわ!
おやつとは乙女のたしなみ、いわば至福の時! 誰も触れない二人だけの国、それがおやつの時間というもの!
ふふふ、考えただけでよだれが垂れてくる思いだわ…、あっ。と、年頃の乙女がはははははしたないのだわ///
ともかく、今はプリン! 私は意を決して、冷蔵庫を開けたのだわ!
威風堂々と棚に立ちはだかるプリン、その神々しいカップは始めから私を待ち構えていた様に…、…あれ!?

無い、ない、ない!!?
プリンがどこにも見当たらないのだわ!!!

なんで、何故、一体どうして!?
凄く楽しみにしていたというのに! 今日最大の楽しみだというのに、そんな!
…まさか、ジュンね! レディのささやかな幸福を邪魔して反応を楽しむ、全くジェントルマンではないのだわ!
私は部屋を見回す! 姿をみたときが最後よ、覚悟しなさいジュン…、…あ! …。

テーブルの上には空の容器が二つ転がっている。そして、頬にカラメルソースがちょびっとついた、れーむの姿がそこにあったのだわ。
れーむは満足そうに、目を細めて体を震わせ『ヘブン状態!!!』とよくわからない言葉を叫んでいる。

「…れーむ。ちょっと、こっちへおいでなさい」

「ゆ、ゆゆっ!? れーむ、べべべべ別におねーさんのププププリンなんか、食べて無いよ!? カラメルが甘甘に加えてざらざらしていてとても美味しかっただなんて、れーむ知らないよ!?」

れーむが変な事をのたまいながら空の容器を加えて私から見えない位置に隠そうとしている。
しかしここはテーブル、特に障害物も無く安置の有り所が無いのだわ。
…覚悟!

「…」

「な、何なにおねーさん!? そんな無言で詰め寄られちゃあれーむ恐いよ、ひきゃあ!」

「…」 ふにふにふに

「あっ、んふう、やめてねおねーさん! そんな情熱的に揉まれると、れーむ、変な気分になっちゃうよ、きゃんっ!」

「…」 ふにふにふにぷにぷにゅぷにゅ!

「あう、ご、ごめんなさいおねーさん! れーむが悪かった、悪かったからあっ!」

「分かればいいのだわ」

具体的に何をやったのかを説明するとすれば、れーむの頬をまんべんなく揉みしだいたという事かしらね。
いやあ、良かったわ! 手触りがもちもちしっかりしたもので、まるで女性のおおおおお///、…ごほん!
今度も機会があったら何かしらいちゃもんを付けて揉んでしまおうと言う位だわ! 流石れーむ、人々を魅了してしまう肌触りなのだわ…!

「…おねーさん、胸小さいもんね」

「ふんっ」

「べぐんっ」

何かとてもまずい音が聞こえた気もするけど、些細な事。気のせいね、きっと。

「ああ、くんくん! 推理により私は偉大なる貴方に一歩近付く事が出来ました、しかしそのために私は多大なる犠牲を…! ああっ!」

「またまた大袈裟な~」

「なんか言った?」

「滅相もございません」

「わかればよろしい」

…ま、元々ひょっとしたら二個ともれーむにあげていたかも知れないしね。甘いものは時に乙女の敵なのよ、誘惑してくるから…、くうう!
あの日、何でポテチを二袋も! 我慢しとけば、2キロだなんて太らなかったのに…!
…閑話休題。ともかく、れーむに対する八つ当たりも済んだし、後はジュンを待つことにしましょうか。私はれーむの頭を撫で、胸で寄りかかる様に抱えこんだ。
バレーボール大の大きさであるれーむは何だか暖かく抱きがいがあって、うとうとしてきたのだわ。
時間は何時くらいだろう。ああ、今にもまどろんできて、体が…。







「…ん」

カーテン越しの窓から漏れて来る日差しが気持ち良い。カーテンをバッと開けて、日差しを直に体に受ける。
…んん、気持ちいいわ…。
ふと、辺りを見回すと先程まで居たリビングでは無く、ジュンの部屋のベットの上で寝かされている事に気が付いた。
いつの間に運ばれたのだろう、すぐ隣にはゆっくりのれーむが寝息を立てながら気持ちよさそうに眠っている。
悪戯してやろうと意気込んでれーむの顔を覗く。『ゆぅ…、ゆう』と寝言を言いながら時々幸せそうに上がる口の端っこが、なんとも可愛らしい。視線に気が付いたのか、びくんと体を震わせるものの瞼を閉じたまま起きる気配はさっぱり無い。
…次第に見つめている内、だんだんと変な気分になってきた。れーむの体全体から、れーむの瞳に目が言って、それかられーむの小さな唇に目線が移っていって、

…―ちょっとくらいなら、良いよね?
自分の前髪をかきあげて、両手をれーむのそれぞれの頬にそっとつける。体を入れて、じりじりと水の中を進む様に距離を詰めて…

「…ほうほう。そこから、熱烈的なキスシーンに入ると…」

「え、ええ…。でも、私、こんな胸の内が高ぶるのは初めてで、どうしたらいいか…、…。…」


「…、? どうしたの、真紅…? どうぞ、続けて」

「…き、いや、きゃ」

「きゃ?」





『きゃあああ~~~~っ!』

「ゆ、ゆうっ!? おねーさん、いきなり大声出さないでよ!」

「ご、ごめんなさいれーむ。でもでもっ、その、あれれ!?」

「そんな、大声だして。わざわざ私に見せ付けてくれた癖にぃ…♪ 気にせずにもっと続けて、いいんだよ…?」

「何がいいよ、何が続けてよ! 人のうららかな昼の時間を邪魔しに来て! …それよりも!」







「お馬鹿水晶、いつからそこに!?」

「馬鹿じゃないもん」

お馬鹿水晶はすねた様に頬を膨らませた表情で私に不満をアピールする。
すると、ドタドタと下から階段を駆け上がる様な音が聞こえてくる。バンッと強くドアを開けて入ってきたのは、ジュンだったのだわ!
帰って来てたのね! でも、いつの間に?
帰りのお迎えに行けなくて残念なのだわ…。ううん、今はそうじゃなくて!

「真紅、大丈夫かっ!? 大声が聞こえたから、…お馬鹿水晶か」

ジュンが息を切らして駆け込み! …落胆してに部屋に座り込んだのだわ。
まあ、一乙女の悲鳴ですもの急いで部屋に向かうわよね。しかし生憎ここに居るのはばらしー、力が抜けてしまうのも仕方ないか…。

「ひどい…」

酷いと思うんだったら脈絡も無く部屋に入ることをやめなさい、お馬鹿水晶。

「まあ、とにかく。どこから入ったんだ、ばかしー?」

「…ふふん。清く、正しく、麗しく、月も恥じらう、世紀末の美少女…! ばらしーちゃんに不可能など無いんだいっ…! ぶい」

お馬鹿と言われてしまっても仕方ないのだわ

「やっぱりアホのばかしーだな」

「くすん…」

薔薇水晶はしょげた様に部屋の隅でうずくまり地面に指でのの字を描き始めた。
少しかわいそうと思ったけど、お馬鹿水晶の事だからすぐに立ち直るに違いないわ。

「ところでジュン…! 明日の日曜日、私暇だから一緒にラブホテルなんて…。どう?」

「なんでそこで映画とかじゃなくてこう直球を投げてくるかな何なのかな」

「私なりの…、茶目っ気…?」

「発言には自信を持ちなさい。首をかしげない」

少しでも心配した私が馬鹿だったのだわ。ジュンは風邪でも引いたかの様なことを言うおばか水晶を軽くあしらってゆっくりのれーむをガスガスと乱暴に撫で回す。
れーむはまだ眠たいのか始めちょっと嫌な顔をするが、すぐに喜んで『ゆう~♪』と明るい声を出した。
なるほど、優しく撫でるよりも激しく撫でてあげた方がれーむは嬉しがるのか…。ううむ。
お馬鹿水晶はまたもや部屋の隅で一人カビでも生えてきそうなジメジメとした空気をかもし出している。まあ、些細な事なのだわ。

「…れーむ。貴方はいつまでここにいるつもり?」

「ゆっ? おねーさんたちが嫌にならない位までだけど、どうしたの?」

「いや、もしかしたらすぐ帰ってしまうのかと思って。のり達が帰ってくるまで時間がかかるし、何よりここに4人集まったから。人生ゲームでもやりましょうか!」

私は皆に提案し、ジュンの部屋の押入れのスペースから人生ゲームを取り出す。
『銀行の役目は誰がやるんだよ』と隣から呆れた様な声が聞こえるけど、当然じゃないジュン。雑務は全て、下僕の役目でしょう?
春の暖かな日差しの下、私たちがボードゲームに夢中になっていくのはそう時間の掛かる話では無かったのだわ―…。

…ここだけの話、この後薔薇水晶が一人大勝ちして、怒りの収まらない私が薔薇水晶に格闘ゲームを挑みこんでボロボロに負けてしまうのだけれど、それは別のお話。

  • 珍しい組み合わせだな、ローゼン×ゆっくりとは。神出鬼没にもほどがあるぞww薔薇水晶お馬鹿キャラだったっけ? -- 名無しさん (2009-04-14 01:34:26)
  • アリだな、うん。全然ありだw
    苺と餡子みたいに意外とイケる組み合わせだw -- 名無しさん (2009-04-14 09:12:50)
  • 続編があったら、見てみたいです。 -- 名無しさん (2009-04-14 20:59:19)
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最終更新:2009年04月14日 20:59