『ゆっくらいだーディケイネ』
これまでのゆっくらいだーディケイネは!
エンディングになかなかたどり着けず、黙々とゲームをやっていた主人公・床次紅里(とこつぐ あかり)の下に
いきなり(なぜかクール便で)届けられたネックレス。それは様々なゆっくりに変身し、その力を使う『ディケイネ』に変身する事ので
きるアイテムだった。(理由はよくわからないが)れみりゃと
さくやに世界を巡る旅に出るよう言われ、(物に釣られて)それを受けた紅里は同居ゆっくりであるれいむ、
まりさと共に最初の世界、初夏の大雪が舞う白銀の『妖々夢の世界』に訪れた。
┗超かわいい。
第2話 妖々夢の世界
「さて」
コートにマフラー、耳当てに毛糸の帽子、そして手袋。防寒対策は完璧だ。
いつまでも家にヒキっていては何も始まらないし、終わらない。私はとりあえず調査のために外に出ることにした。
いつまでも家にヒキっていたい気持ちはあったけど。寒いし。
「んじゃあちょっくら行ってくるわ。アンタらはここで待ってなさい」(どう考えても役に立たないだろうし)
「「そんな!」」
二人はぴょんぴょんとあちこちを飛び跳ねる。
「水くさいよおねえさん!」
れいむは台所からお茶を持ってきた。
「まりさ達は同じ部屋に住む仲間なんだぜ!」
まりさは棚からお菓子を持ち出した。
「「だから一緒についていくよ!」」
二人揃ってテーブルに乗っかり、テレビをつけた。
…どう見ても留守番する気満々じゃねえか。こんちくしょう。
「…じゃ、あとよろしく」
「「ゆっくりがんばってね!」」
テンションだとかモチベーションだとかそういうのが一気に下がるのを感じつつ、私は部屋を出た。
ここは山の上に立つお屋敷、しらたまろう。
雪がしんしん降る中で、庭でせっせと雪を掻いてる影ひとつ。
「ふー…ここらで一息つくみょん」
屋敷の庭師のゆっくりようむ、通称みょん。積み上げた雪にスコップ刺して、しばしゆっくり一休み。
「けどなんだってゆゆこ様はただの雪かきじゃなくて『一箇所に集めた後自分の部屋までもってこい』なんて
みょんな事させるのかみょん?効率悪くて仕方ないみょん」
「わかる、わかるよー」
ちなみに答えているのはちぇんではない。半霊の方だ。
半霊もみょんなので、会話しているように見えて実質独り言である。
少し休んで、さて再開しようかと思ったその時、ざっざっざっと雪を踏みしめ歩いてくる音が聞こえた。
コートにマフラー、耳当てに毛糸の帽子。ポニーテールをぷらぷらさせて、床次紅里がやってきた。
「お邪魔するわよ」
「邪魔するんだったら帰ってー」
「はいよー………ってそうじゃない」
新喜劇か。
「何のご用ですみょん?」
「春を出せ」
「みょん?」
「ネタは割れてんのよ。いいからとっとと出しなさい」
小首をかしげるみょん。しばらく考えた後、何を思いついたのか顔を真っ赤に染めた。
「は、春ってそんな…お姉さん、そういうのは困りますみょん…」
「アンタが何想像してるかは知らないけどそれは絶対に違う。あーもうめんどくさいわね。ゆゆこと直接話すわ」
そう言って無理矢理踏み込もうとすると、その前にみょんが立ちふさがった。
「招かれざるお客さまを通すわけにはいきまみょん」
「やるっての?クソ寒い中山登りさせられた直後だからちょっとキてるわよ」
二人の目つきが鋭くなり、間の空気が重くなる。
みょんは半霊がいつのまにか持ってきた刀を抜いて、構える。
対する紅里はメダルを取り出し、ネックレスのロケットを開ける。
場を支配する静寂、そしてどんどん重くなる空気…数秒の沈黙の後、それを破り開戦の口火を切ったのはみょんの叫びだった。
「あんまりない!」
「端折るな!変身!」
『ユックライドゥ!ディケイネ!』
「んぅっ…………あっ………はぁっ……………」
しらたまろうの一室から悩ましげな声が聞こえる。
「うっ……あぁっ………んぁぁあぁっ…………」
声が上がるたびに、室内の影はその身を激しくくねらせる。
「あぁぁぁぁぁぁぁ………………っ……………」
声が止み、同時に室内にいた者…ゆゆこの動きも静止する。
しばらくそのままの静寂が続き、やがてゆっくりと息をついた。
「ふぅ………いいわぁ………この頭痛さえも楽しめるのが『通』ってヤツよね……ず『つう』なだけに………」(上手い)
室内には所狭しと雪が積まれ、テーブルの上にはカキ氷シロップの一升瓶が何本も並んでいる。
「さ♪続きを食べましょう♪」
シロップを適当にバラ撒いて、シャシャシャシャシャシャと信じられない速さで雪をたいらげていくゆっくりブラックホール・ゆゆこ。
「んッ…………きたぁ………っ…………」
そしてまた頭痛。
いまようやく気づいたんですが「しらたまろう」って「うらしまたろう」に似てますよね。
「そうね。ところでようむが追加の雪を持ってこないんだけど、あなた何か知らない?」
あぁ、みょんなら今…って地の文と会話するのやめてください。
「あらあら、うっかりしてたわ」
言い終えるとゆゆこは再び雪を…吸引する作業に戻った。そして当初の3割程度まで雪が減ったとき…
『ラストスペルライドゥ!ディディディディケイネ!』
未 来 「 高 天 原 」
「みょぉぉぉぉぉぉぉぉん!?」
疾走する無数の弾丸とレーザーと共に、みょんが障子を破って部屋に吹っ飛ばされてきた。
「あら?これは新食感…」
「それアンタの手下」
直撃を受けて目を回したみょんは、すっぽりとゆゆこの口に収まっていた。
「あらあら」
「みょー…………ん………」
「何の事かしら?」
みょんが目を覚ますまで待って、改めて春の行方を聞いた答えはこれだった。
「トボけんじゃないわよ。アンタがでかい桜咲かせようとして春かき集めてたんでしょ?」
「うーん、桜はあるけど…私は花より団子よ?今はカキ氷よ」
「ゆゆこさまはここ数ヶ月、特に何もしてませんみょん。私もずっと雪かきしてましたみょん」
どうにも埒が明かない…そう思ったとき、ふと気が付いた。
春を集めているのなら、ここに雪は降っていないはずだ。
「…どういうこと?」
だが咲いている桜は無く、他の場所と同じように雪が降っている。(そしてそれをゆゆこがたいらげている)
つまりしらたまろうの連中は犯人じゃあない。しかし、それなら一体誰が…
「…ねえ、さっきから不思議に思ってたんだけど」
ゆゆこは雪を口にするのをいったん止めて、代わりに疑問を口にした。
ちなみに食うのを中断した理由はシロップが切れたからだ。
「あれ何?」
「どれ?」
ゆゆこの示した方を見ると…別の山のてっぺんに何か細長い塔のようなものが建っている。
ここから見てもそれは決して大木の類ではなく、人工物であることがわかる。
「…めちゃくちゃ怪しいわね。なんでアンタら今までアレに気づかなかったの?」
山頂にあるため麓からでは見えないが、ちょうど同じくらいの高さにあるここからなら丸見えだ。
あんなのを見つけたらとりあえず調べてみるものだと思うが…
「私は先々月くらいから部屋に引きこもってカキ氷食べながら録り溜めしておいた『ザエさん』を第一回からマラソンで観てたわ」
「なにそれ拷問?…アンタの方は?」
ゆゆこの衝撃発言に呆れてみょんの方を見ると、ぼーっとあの塔のようなものを見つめていた。
「…………………………………?」
少し小首を傾げ、またしてもぼーーーっと眺めて…
「………………!あ、あれは何ですみょん!?」
「気づいてなかったんかい!」
あんな怪しいものによく気づかなかったものだ。こっちが驚いた。
「ところでゆゆこさま、今日は何日でしたっけ?」
「5月24日よー」
「6月近くになってこんなに雪が降ってるなんて絶対おかしいですみょん!」
「遅いわ!」
このみょん、雪の異変にすら気づいていなかったらしい。2度ビックリだ。
「なんにしてもあの塔は調べてみるひちゅお…必要があるわね。みょん、悪いけど行ってきてくれる?」
おそらく異変の原因はあの塔だろう。しかしわざわざ私が行くのは面倒だ。
その点この間抜けすぎるみょんならば、上手い事騙されてぶつくさ文句たれながらでも行ってくれるだろう。
労せずして異変を解決する事が出来る。私の計画は完璧だ。噛んだけど。
「ようむを調査に行かせるという事は、あなたがお屋敷の修理をしてくれるのね?」
完璧じゃなかった。こっちの方がめんどくさい。
「やっぱりあんな所まで調べに行かせるのは酷だわ。私が行ってあげるからみょんは屋敷の修理をお願いね」
「恩に着ますみょん」
また雪山を上り下りするのかと思うと気が滅入る。しかし屋敷の修理よりはマシだ。多分。
誰だ屋敷壊したの。私か。
「待って」
「ん?」
「これを持って行きなさい。雪山での必需品よ」
そう言ってゆゆこは箱を一つ渡してきた。
「これは……?」
「シロップよ」
「要るか!」
-つづく-
書いた人:えーきさまはヤマカワイイ
この作品はフィクションです。ゆえに実在する人物だのなんだのとは一切関係ないんじゃないかと思います。
- ゆゆ様噛んだw -- 名無しさん (2009-05-24 23:02:15)
- 会話が楽しいな。ゆっくり達が魅力的
<床次紅里(とこつぐ あかり)
未だ名前の由来がわからない・・・ -- 名無しさん (2009-05-30 17:03:32)
- おねえさんの名前発覚…だと……!? -- 名無しさん (2009-05-30 19:37:45)
最終更新:2009年08月10日 22:03