所変わって此処は黒海空輸。
闇に聳える扉の前に、社長は佇んでいた……。
「ふん、この代償は高く付くぞ……。」
彼は門へ近づくと、臆する様子も無く、いつものように通話用のブザーを鳴らした。
「はい、黒海空輸です。」
「ゆっくり運送の者だ、こう言えばもう分かるだろう。そちらの社長にでも繋いで置くんだな。」
それだけ伝えると通信を切る。
もはや交渉の余地など微塵も無い、この会社を跡形も残さず潰すしか、彼の怒りを鎮める方法は残されていないのだ。
堅牢な門は硬く閉ざされている。しかし、今の彼にとって、そんなものは意味を成すものでは無かった。
「くだらん、悪あがきもいいところだ…。」
と、静かに言い放つ、そしてその閉ざされた格子に手を置き少しばかり力を入れると、格子はメキメキと粘土の様にその形を歪め、その役目を終えた。
普段の彼ならば、こんな事はしなかっただろう。
それだけ彼は怒りに打ち震えていた。
扉には不思議と鍵は掛かっていなかった。周囲を警戒しながら扉を開け、中へ入る。
すると。
「ようこそ、黒海空輸へ。」
彼を迎えた者、それは武装した集団でも無ければ、単騎の精鋭でもない、ごく普通の一人の華奢な女性だった。
いや、見た目は確かに唯の女性だ、しかし此処は幻想卿、恐らく妖怪の類が姿を変えているのだろう。
「どういうつもりだ。」
「この度は大変な失礼をした」と、社長が直接謝罪をしたいと申しまして。」
「ほう、実に殊勝な心がけだな。殊勝すぎて、逆に疑ってしまう程にな……。」
「いらっしゃるかは、貴方次第です。ここで暴れても結構ですが、唯では済まないと思われますよ?」
顔に笑顔を貼り付けたまま彼女は語る。
「ほぅ、試してみるかね?」
「どうぞ、ご自由に。」
「………………。」
暫しの沈黙、彼の回答は意外なものだった。
「わかった、君に従おう。」
「有難う御座います、ではこちらへ。」
「あぁ。」
明らかに誘っている……。
恐らくは罠だろう、しかし、それがどうしたと言うのだろう。
罠だと言うのならその罠ごと奴らを噛み砕いてやればいい。
そう彼は考えていた…。
女性の案内に従い、社内を移動する。
内部は薄暗く、物陰から常に視線を感じる。その視線のどれもが激しい敵意を纏った物であった。
「お考えを改める気は無いのでしょうか?」
「愚問だな。新しい就職先でも探したらどうだ?」
「お気遣いどうも、ですが間に合ってます。」
「フン。」
暫く歩いていると、薄明かりの中に、重厚な扉が姿を現した。
扉に付いているプレートには「社長室」と書かれている。
「さぁ、此処で社長がお待ちです。私が命じられた役目は案内だけですので、私はここで失礼致します。」
「あぁ、ご苦労だった。」
女性は踵を返すと、暗闇の中へと消えていった。
「さて、行くか…。」
扉からは僅かながらに血の匂いが漏れている……。
恐らくは、今までと同じような手段で面倒事を解決してきたのだろう。
「全く、品性のかけらも感じられないな。」
ノブに手を掛けると、そのままゆっくりと回す。
「ギィィ…」と軋みを上げながら扉が開いてゆく…。
中は意外に広く明るい、中央にそこそこ良い物と思われるデスクが設置されている。
そこに座っている者が一人、黒海空輸代表取締役、詰まるところの社長である。
「ようこそ、ゆっくり運送社長…。」
「随分と回りくどい真似をするじゃないか、この古狸が。」
「はっはっは、随分な言われ様だな。まぁ、その辺のソファーにでも座ってくれ。」
「その必要は無い、用なら直ぐに済む。」
「まぁ、そう急ぐ事もあるまいよ。私は逃げも隠れもしない…。」
「ほぅ、良い心がけだ、動かないほうが至極楽に死ぬ事ができるぞ。」
「言っただろう、そう急ぐ事もあるまい、と。それに今夜はちょっとした余興を用意している。」
「余興だと?」
「その通り。」
男が不意に右手を上に上げると、部屋のドア、窓、天井裏、至る侵入口から大量の異形達が姿を現した。
その異形達のどれもが並みの妖怪では無い事を、彼等の放つ強烈な血の匂いが物語っていた。
「これが貴様の言っていた余興か?」
「その通り、中々洒落ているだろう?」
「フン、悪趣味極まりないな。魔理沙君や霊夢君の方がもう少しマシな物を考えるだろうな。」
「気に入って頂けなくて残念だ。まぁ、これから居なくなる者の事を気にしても仕方が無いだろうがな。」
「さて、居なくなるのは、どちらだろうな?余りに駄作だと、演目自体が書き換えられる事もあるかも知れんぞ?」
「せいぜいそこで吼えていろ、私はここから見物させて貰う。君が必死に踊る様をな。」
「いいだろう、こいつ等と踊り終わったあかつきには貴様を招待するとしよう。」
「フン、さぁ!掛かれ!!」
男の合図で前線の異形達が彼目掛けて襲い掛かる。
その刹那、二、三体の異形が吹き飛ばされ、壁に激突、四散した。
「下らん……、実に下らんぞ!その血の匂いはこけおどしか貴様等!!」
散らばった仲間の肉片と彼の殺気に気圧され、異形達は後ずさる。
しかし、彼等が引く事はその雇い主が許さなかった。
「グ…ッ…!…お前等!何をしている!さっさと片付けないか!!!!」
男の怒号で異形達は戦意を取り戻し、一斉に彼に襲い掛かった。
「一斉に来るか、この数は…少々厄介だな……。」
同時刻、黒海空輸玄関ホール
薄暗いながらもそこそこ小奇麗にされていた社内は見る影も無く、壁はえぐれ、デスクは粉々に砕かれている。
静けさを守っていた社内は、異形達の苦痛にのたうつ呻きに満たされていた。
「…グ…ガ……!!何なんだコイツは………。」
「ありえん……有り得ん事だ……。」
「ば……化け物……。」
周囲には倒れ、痛みに呻く異形達が横たわっている。
彼等は驚愕していた、触れる事も適わず、自分達を完膚なきまでに叩き伏せた者、それは妖怪でも無ければ人間でも無い。
それは……。
「ゆ!ばけものじゃないぜ!まりさだぜ!!」
一匹のゆっくりだった……。
「頼む……助けてくれ…何でもする、だから……。」
「ゆゆ!じゃあしゃちょうのいばしょをおしえるんだぜ!!」
「社長だと……?」
「そうだぜ!まりさのしゃちょうはどこなんだぜ!!」
「まさか……アイツか……フフ、はっはっは!!」
「なんでわらってるんだぜ!?」
「アイツなら…二階の社長室だ……。だ…だがな、恐らく…もうこの世には…居ない…。」
「ゆゆ!どういうことなんだぜ!!」
「言った…とおりの意味…さ、なんなら自分の目で…確かめると…いい…ふ…ふふ…。」
それだけ言うと、勝ち誇った様に薄ら笑いを浮かべ、気絶してしまった。
「しゃちょう…。」
そう彼の名を呟くと、魔理沙はポンポンと跳ねながら奥の暗闇へと消えていった……。
ゆっくり好きな新参者。
[おまけに限りなく近い何か]
「ゆ!とうとうものがたりも「かきょう」だぜ!!」
「うむ、そうだな魔理沙君。」
「れいむもかつやくしたいよ!!」
「う~☆れみりゃもかりしゅまばくはつさせたいどぉ~♪」
「まぁまぁ、君達、落ち着いて落ち着いて。」
「ゆ~!まりさばっかりずるいよ!!」
「ずるいどぉ~!!」
「ゆっふん!まりさはしゃちょうの「みぎうで」だからとうぜんなんだぜ!!」
「ゆゆ~!ぷくうぅぅぅぅぅぅ!!」
「あぁ~スマン霊夢君!別枠の出番もまだあるから!れみりゃ君もまた話に登場させるから!魔理沙君!火に油を注がないでくれ!」
「ゆゆ~…だって…。」
「まぁ、はしゃぎ過ぎないように程々にな。」
「ゆ、わかったぜ!」
「そうときまればれいむも「しんわざ」がほしいよ!しゃちょう!ゆっくりおしえてね!!」
「またんか、物事には順序というものが…。」
「れみりゃをわすれるんじゃないどおぉ~☆」
「あぁ~スマンスマン!」
「う~!れみりゃにもなんかおしえるんだどぉ~!!」
「あぁ~!!作者君!たすけてくれぇぇぇ~!!」
「ゆゆぅ~!!」
「だぜぇ~!!」
「うっう~☆」
毎日変わらず、ゆっくり運送は賑やかです。
「コラァ!!無理やりまとめようとするんじゃn…。」
「うっう~☆はやくはやく~♪」
「はやくおしえてね!!」
「まりさをないがしろにするんじゃないぜぇ!!」
ゆっくり運送は賑やかですw
- 珍しくシリアスな雰囲気なのにまりさの飛び跳ね方が可愛いから吹っ飛んだww
ポンポンってwww -- 名無しさん (2009-05-25 09:55:17)
- 途中まで「アレ? これゆっくりssだよな?」
って感じの真剣な雰囲気で逆に笑ったw
まりさも活躍できてよかったね! -- 名無しさん (2009-05-25 13:46:53)
- う~ん、どうも真面目に書こうとしても地が出ますね;
バトルパートを入れようと必死になっていたらこうなってしまいましたw
もう少しポップな方がいいでしょうか?? -- ゆっくり好きな新参者 (2009-05-25 16:43:42)
- このまま行っちゃえ、そして最後は大団円だ!
たまにはシリアスも悪くないさ -- 名無しさん (2009-05-25 19:19:41)
- ラストバトルだからシリアスにするか、それともあえて活劇っぽく明るい笑いを交えて戦うか、
結局は作者さんの書きたいように書くことが大事だと思います
最後だからやりたいようにやるのが一番いいでしょうし、
なんだったら一日くらいどう書くかを悩んでみるのもいいかもしれませんね
エンディングに向かって頑張ってください! -- 名無しさん (2009-05-25 19:50:39)
- おぉ、こんなにアドバイスを貰えるとはw
皆様本当に有難う御座います^^
そうですね、この際なので好きに書いてみようと思います。
シリアスか、シリアルかはまだ迷っていますがw
自由にやってみます^^
一応ラストの展開は伏せて起きます…w -- ゆっくり好きな新参者 (2009-05-25 21:14:24)
最終更新:2009年05月25日 21:14