【リレー小説企画】ゆっくらいだーディケイネ 第10話-1

※編注:容量制限により分割

「創作スレ一周年企画」ゆっくらいだーディケイネ


第10話 いない英雄



「ゆっくらいだーは もういない」


ちょうど私の担当してる人と目が合ったので、必死に訴えたが、目を逸らされた。そのままどこかへ踵を返す
そこまで往来から隠れてもいない、食堂の横の渡り廊下。
私は3人に囲まれて、頬を思い切りつねり上げられた。


 「顔はやめとこ。後から面倒だ」
 「大丈夫だよ。こいつがどうなってたって、誰も気にするもんか。どうせ下等部だぜよ」
 「ほ~ら、言ってみな いつもみたいに『いたいよおー』『やめてね!!! ゆっくりはなしてねー!!!』とかってね」


その通りだった。
それだけ、私なんかはここじゃ最底辺の存在。
現に、何人もが通りかかったけど、皆こちらを見ようとすらしない。
誰も助けてくれない。


 「本当なら、ゆっくらいだー が来てくれる頃?」
 「残念だったな! ゆっくらいだー なんざ来ないよ!!! 下等部が調子に乗るんじゃない!」


抵抗する気は無かったし………  その通りなんだけど、何となく、それだけは否定したかった。


 「ゆ、ゆっくらいだー は、 いるよ………たすけてくれるよ きっと……」
 「いるけど何だっていうの? お前なんか助けてくれると思ってるの? こっちは中等部だぞ?」
 「じゃあ、言ってみてよ 『たすけて~ ゆっくらいだぁ~』 ってな。いつも通りみっともなく叫べ」


早く終わらせたくって――――そろそろ周囲に通りかかる人もいなくなったので、諦めて叫んだ。
なのに―――――こんな時に―――――食堂横からやってくる人がいる。
でももう、どうでもいい。
この現場を見て、見なかった振りをして、そのまま通り過ぎてくに決まってる
皆同じだ。


そう思っていた―――――なのに、その通りすがりは、まっすぐ脇目もふらずに近寄ってきた。


場違いな、作務衣を着ている。すごくきつそうな性格の目。年は私よりも幾分上といったところ?
もしかしてこの暴行に加わるのかと一瞬身構えていたら、私から目を逸らさないで、取り囲む内の一人に話しかけた。


 「すみません。ちょっと教えて下さいね。『ゆっくらいだー』がどうしたって?」


止めるでも、集団リンチに参加するでもなく、唐突な質問。全員が通りすがりの方を向く。


 「何?」
 「いきなりで悪かったわね。何かもの凄くみっともない声で、『たすけて~ ゆっくらいだぁ~』なんて聞こえたから」
 「お前のことじゃない。大体なんだよ。 」
 「いや、それとは別に、『ゆっくらいだー』ってどういう事?ここでは何者?」


どこの田舎者?


 「ゆっくらいだー は ゆっくらいだー だ。それ以上でもそれ以下でもない」
 「――――何か、後ろにつく名前って無い?『グウヤ』でも『ディエイキ』でも『シザーズ』でも『ギャレン』でも」
 「あったかもしれないけど忘れた。 ゆっくらいだー だし」


通りすがりは意味を吟味しているのか、納得のいかない顔を続けてながら、もう一つ尋ねる


 「それから関係ないけど、何でさ――― この娘に、ゆっくりっぽい喋り方させてたり、頬を抓ったりしてるの?」
 「こいつが『下等部』だからさ」


と――――言うか

               / ̄`ヽ、
              /   __   \
          __,,.. -'──-「::::\_,ハ-‐ァ
         i´      __,〉::::::;>rく::::〈
        ,|>'"´ ̄    └‐ァ':::::/|::\」.
       /    ,  ,   ,、く_/、|_」\.
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     レヘ  | ァ' (ヒ_]    ヒ_ン)∨|  ゙ir‐7
   _|\__iヽ ' i ""  ,___,   "" ノ/ |{ !
   \,\| ゙ヽ! ,入   ヽ _ン   /  | | |
      ̄\~ヽ | >.、,_    _,. /}ノ  ノ. | |
       く´ /レ'`ニ、 `‐'´/ ‐ー7フ‐-| |   !ヽ、
        ヽ i´ ''7-ミ∠,,──ナ──H──〉  >
          ヽ、__し' ̄\ーメ< 、___ミ)   レ'
          / |ヽ、   \ `ヽ二____ソ /
           i ヽ ヽ--‐ \   //
          r'         'yニ‐'!
         ∠_>‐--、___,,,r<_ヽ


 「それはいじめの域を越えてる」
 「実際に射抜く訳じゃないよ!!!」
 「大のゆっくりが、胴をつけて揃いも揃って、3人で少女いじめ? 感心しないわね~」


そう―――このいじめグループは主に3人のゆっくり。全員中等級の胴つきで、実際に射抜くはずはないって解っていても、
りりーの構える矢が一番恐ろしくて―――いつも無抵抗だった。


 「さっきから、ここに来るまで何回も見てるのよね ゆっくりとして、恥ずかしくないの?」


何となく、何を見たか解る。私も、同じ様にきめぇ丸が大群で、仲は良くないけど、私と同じクラスの子をグルグル囲んで
いるのを見た。
トイレの横じゃ、優等部の人間が、中等部のゆっくりを本気の力でつねっていた。
壁にへばりついてしまい、本当に半日動けなかったゆっくりもいるらしい
さっきは、れみりゃが何故か30分も大泣きしていたらしいから、それも見たんだろう


 『恥ずかしくないよ!!!』


あいつら、あえてゆっくり喋りではなく、人間の不良らしい口調で話していたんだけど、やっぱり無理をしていたみたいで、
段々馴染みの話し方に変化していった
―――こいつらも、戻ったら、同じ中等部の人間か、優等部の奴等に私と同じことをされるんだろう。


 「ここは厳格な かくさ社会だよ!!!」


と――――通りすがりの背後に向かって、一体のれいむがぴょこぴょこと走ってくる


 「ゆぅ?おねえさん、あのいじめられてる人、こっち見てるよ?いじめてるゆっくり達もすごく悪そうだし、助けてあげないの?」
 「めんどい」
 「このおに!あくま! おにあくま!! 宇宙おにあくま!!」
 「『宇宙』をつければ何でもグレードアップするってもんじゃないの。 それから、こういうのは通りすがりが解決していい事じゃないの」


れいむの方でも、いじめっ子ゆっくり達の方でもなく、私をしっかり見据えて、通りすがりは言った。


 「私が、ずっと見ていられる訳じゃない」


それは――――そうだよね
通りすがりが何者かは解らなかったが、いつまでもここに居てくれる訳でもない。


ゆっくらいだー も同じだった。


 「―――そんなこと言って、見つけるたびに、いじめっ子の邪魔ばっかりして来たから日が暮れちゃったよ!!!」
 「それより、れいむ。『ここが何の世界』なのか、わかるかもしれない」
 「どうゆう事?」
 「いじめっ子のゆっくり達を見てごらん」


 ――― りりー  こあくま  きすめ


 「中ボス?」
 「違うわ そんな高尚なもんじゃない。  『寄せ集め』よ!!! ほら、 確かに中ボスつながりだけど、今までの作品世界で出番なかった
  奴等ばかりじゃない  ―――きすめは、世界自体行ってないけど、多分出番無いだろうし」」
 「あ、なら………」 


不敵な笑いを浮かべる二人
胴付きの中等部ゆっくりが3人。しかも、一人は武装してる。流石に、いじめっ子達に分があるはずなんだけど、誰もが、彼女に、
勝てる気がしない………。


 「そして、このゆっくり達による人間への弱いものいじめが、この世界の異変。この気に食わないいじめっ子達にお仕置きをすれば、
  この次の世界へ行けるんだら」
 「おお、しょぼいしょぼい。でも、ぱっぱと終わらせられるんならいいことだね!!!」
 「ななな………何言ってるの?」
 「暴力はよくないよ!!!」
 「安心しなさい。こんなことで変身なんかしないから。それから、よく集団でいじめなんかやってて、そんな口が叩けるわね」


こあくまが胸を張って言う


 「ここは、さっきも言ったけど、厳格な格差社会だよ!!! 誰もがその被害者なんだよ!!! そんな抑圧されてストレスフルな状態なら、
  強いものが弱いものを叩き、その弱いものが更に弱いものを叩き、その音が響き渡って、ブルースが加速しているんだよ!!! 
  皆自分より可哀想な存在が欲しいだけなんだよ!!!」
 「そこまで自己分析できてるんなら止めなさいよ!!!    あと、名曲の歌詞をいじめの正当化に使うな」


通りすがりが、却って箍が外れたみたいに、最初にリリーの頬を抓ろうとした時―――その腕をひねり上げる手が


 「そこまでよ」
 「ぱちゅりー先生!!!」
 「待ってましたよ先生!!! やっちゃってね!!!」


まったく、どこまでも三下のセリフ……… だけど、背後の相手が、只者じゃない事は、通りすがりにも解ったみたいだった。


 「随分もやしっ子の用心棒ね」
 「見たところプレートすらつけてない。兎に角ついてきなさい。嫌なら手をあげるわ」
 「先生、いつもみたいにぶっとばしてくださいね!!」


勢いよく腕をさげて、踵を返して向かい合う。
見た目は普通のゆっくり――――決して頑強じゃないけど、性能の良さそうな胴は、ここでの地位を表してる。
通りすがりが、何者なのか、何故に勝てる気がしないのかは解らないけど、その事に気がついているのかな?
通りすがりは全く恐れる素振りも無く―――腰のポシェットを開いた。
そして、首のネックレスのロケットを開いて、ポシェットからメダルを一枚取り出し…


 「変身!」


ロケットのくぼみにはめ込み、



  『ユックライドゥ!』



声が発せられると同時にロケットを閉じた


----あれは…… あれは


----私が、 何度も頼った



  『ディケイネ!』



周囲に次々と現れる一頭身のシルエット。それらが集まり、光の中から現れたのは…



なんて…… なんて………



 「「「「かっこ悪」」」」
 「うるさいな」



私だけではなく、いじめられっ子も呆れた顔で眺めている。
立っていたのは、既に人間ですらなく―――


 「大体それ、本当に ゆっくらいだー ? 生身のゆっくりに随分近いし、ヒダヒダついてるし、その眼鏡っぽいのも、
  尖ってて怖いよ?変身ポーズや決めポーズは?」
 「ここの ゆっくらいだー はもっとかっこいいの? いや、それにより何よりポーズ持ってるの?まあ、そう言うんなら……」



更にポシェットからメダルを一枚取り出し、ネックレスにセット
再び現れるシルエットと、今度は陽炎の様に周囲の空気が揺らぐ
消えた瞬間、立っていたのは


 『ユックライドゥ!めーりん!』


更に変形
本人の言葉通りめーりんが!


 「門番(こいつ)とは一回ちゃんとやりあったからね。同居人がお相手するわ」
 「ディケイネ!!?  ここに、本当にいたなんて………」
 「知ってる? ―――嫌な予感しかしない……


小脇に抱えていた本を開こうとするよりも前――――流石に一二を争う武闘派ゆっくりのめーりんらしく瞬時に―――
よく解らない自称「ゆっくらいだー」は更に、3枚目のメダルを手にしていた

 『スペルライドゥ!めーりん!』
 ―――虹符「彩虹の風鈴」―――!!!


体を回すごとに、何方向からも、色とりどりの光る弾が打ち出される弧を描くように少しずつ広がりつつも、それは確実に相手を
狙っていく


 「むぎゅうううう!!!」
 「よし―――――って、あれ?」


弾は―――正直そこまでのスピードはないように見えたけど、確実に胴と、顔にヒットし、数メートル後方へ仰け反らせた!!!


  「手ごたえが無いわねー まさかとは思うけど、ここで負けた振りとか手を抜いてたとかだったら性質悪いわよ?」


「ゆっくらいだー」は、めーりんの姿から、最初の妙なけーねの姿に戻っていた。
そして、更にまた人間の姿に戻ると――


 「とりあえず、鬱憤溜まってるからって恥ずかしい事するんじゃない!!!」
 「「「ごめんなさあああああああい」」」


怯えるいじめっ子達の頬を順繰りに抓り上げるのだった。


 「ね? 実際に矢なんて打たれなかったでしょ? 所詮こんなもんよ」
 「―――? はい…………」


通りすがりの――――「ゆっくらいだー」――――は、私を見てニヤリと笑う。


 「―――お仕置きも終わった事だし、帰ろうね!!!」
 「これでいいのかな………? いや、あまりにも相手に歯ごたえが無さ過ぎて―――――」


いや――――嬉しいんだけど
確かに私、何もできなかったけど
まずいでしょう………それは…………


 「え?何?」
 「――――先生!!? ぱっちぇ先生!!? 誰がこんな事を…………!!?」


いつの間にか、倒れたぱちゅりーをに向かって走ってくる人間の女性――――私の担任だった
さっき目を逸らした人だ。
更に


 「『ディケーネ』だ!!!  『ディケイネ』が出たみたいだぞ!!!」
 「作務衣の、目付き悪い女だって!!!」


何人かの生徒―――主に下等部が、廊下の先の先からやってくる。
中にはうどんげもいたが、笑っていない。
私は、無言で通りすがりの袖を引っ張り、渡り廊下から出て、藪に入った


 「どこじゃああ ディケーネ!!!」
 「ディケーネを見つければ………白い御米が………」
 「もう頬を抓られないで済む………」


―――弟にあの赤いワンピースを着させてやれる!!!
―――お父さんにあのお酒を!!!
―――特進特進特進…………
―――金金金金…………


最近はもう、こんなのばっかり


 「??」
 「こっちに行きましょう!」


そして、走った
後ろかられいむもピョンピョンとついてくる
先ほど、あれだけ堂々としたいじめが繰り広げられていた時には誰も近寄らなかったのに、もう何人もの野次馬が現場には集まっていた


 「用心棒を倒したのがそんなに大変なの?つまりあれ以上強い奴はいないんでしょ?」
 「―――いや、あの方は用心棒じゃなく……… 体育教師ですね。 ぱっちぇ先生 って呼ばれてます」


―――この時ようやく

うどんげの着ているブレザーが、若干通常とは違う事、そして、この私も、同じ様な服を着ている事
そして、ここがどこなのか、自称「ゆっくらいだー」は気がついたらしい



 「―――………高校なんていつぶり……………」
 「結局意味無かったね……ずっとさっきから、からいじめっ子を怒ってるのに」
 「ああ、本当に変身した意味無かったわ」


―――が、通りすがりは、言葉とは反対に、まったくがっかりした顔はしていなかった



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図書室に着いたには、既に日が暮れてた。
受付の奥の部屋にまずは通りすがりのお姉さんを通すと、いいタイミングで、お茶が出された
持ってきたのは、さくや


 「あー やっぱり。前回あんたと会わなかったもんね」
 「??その前にどこかでお会いしましたか? ゆっくりしていってね!!!」


知り合いなのか、そうでないのかよく解らない
続いて、大量の図書カードを抱えたようむが入ってきた。


 「お疲れ様ですみょん ―――お客様?ゆっくりしていってね!!!」


と、思い切り足元のれいむを踏んでしまう


 「うわあああ」
 「ウワアアアア!!!」


二人で驚いてどうする、と流石に私も思ったが、手早く拾い上げると、通りすがりは今度は首を傾げている


 「あんた、『しらたまろう』って所で雪かきして働いたりしてなかった?」w
 「してませんみょん」


今度は、みょんとさくや等―――図書委員達に、私は説明した


 「こちら……さっき、中等部から私を助けてくださいました。 ゆっくらいだー なんです!何か、外国産の」
 「ええと、床次紅里です」


みょんとさくやは、顔を見合わせ、まるで自分達の元祖である人間と半霊をモデルに、やや猥褻なタッチで描かれた絵が公開されたみたいな、
怒ってはいないけど、何とも表現しづらい表情を作った


 「と、とにかく、私をいじめられてるのを助けてくれたんです。悪い人じゃない! 本当です!!!」


床次さんは、今度は自分から説明しだした。


 「この際だから言うわ。私とこのれいむは、この――国っていうか世界って言うか、とにかく別世界から来てるのね。目的は異変解決」
 「そして ふるさと小包」
 「………まあ、ゆっくらいだーに変身できる人間なんていう、非常識な存在の説明っていえばこんなもんでしょ」
 「―――ああ、外の世界のやつらだね!!!」
 「何も知らない、下の下の者ですね!!!」
 「何か、そういう人が来るって噂に聞いたよ!!! 『悪魔』だとか『破壊者』だとか聞いてたけど、全然そうは見えないね!!!。
  しばらく休んだ出て行ってくださいね」


………元々、飲み込みや納得の早いゆっくりの事。
変な噂の事は知っていたけど、実際に会ってみるとあまり実感がわかない


 「まあ、何とでも言いなさいな。ちなみに、そんな訳だから、ここの―――この学校の事を―――良く知らないんで、一つレクチャーしてくれない?」
 「どうして、ここでは人間がいじめられてるの?」
 「別に人間が全員いじめられているわけじゃあありませんが」


それは――――


「……… 謎の組織が、裏で手を回してるんですよ」


床次さんは、れいむを抱きかかえ、室内を見回し、全員の顔を伺ってから、改めて聞いた。


 「『謎の組織?』 それなんかのスラング? 方言?」
 「『謎の組織』は『謎の組織』だよ!!! 色々この学園でゆうぐうされれば、実社会でも通用するようになってるのは、 その組織のおかげだみょん」
 「元々は―――もっと厳格な差別と身分制度が全ての主流でした。 ゆっくりはゆっくりというだけで、露骨につまはじきにされていましたし、
  身分の低い家に生まれたら、一生そのままでした。
  でも、今は努力すれば、誰でも平等に『上に登れる』チャンスが得られる新しいストレートな社会になったんです」
 「ほほう それでそれで?」


 「組織名は解りません。まったく謎なので、『謎の組織』とだけ呼んでるよ。

  ・実質上の頭は、ここの学園長。

  ・側近として、外の世界からも集まったゆっくりが5人。「学園ゆっくり5天王」として、学園長に接近するのを強固に阻んでますわ

  ・元々は「学園ゆっくり6天王」で、、   『語呂が悪い』   という理由で、パルシィ先生とひな先生が解雇され、そのあと流石に
    4人だけでは、何だかこころもとなくなって、1人を加え、「5天王」に改名

  ・側近になると一応3時のおやつが、レプラコーンから毎日支給される

  ・その人脈・勢力は、政財界に張り巡らされ、小学校から大学までエスカレーター方式のこの学園は、言ってみればその組織の優秀な
   メンバー養成機関みたいなものですね。『ここ』で優秀な結果と地位を得た生徒は、その後の進路までを全て約束されるんです

  ―――内訳は

 ・外の世界の身分から這い上がった、『じとめさとりん』『ゆっくりさとりん』『男前さとりん』と、

  由緒正しい 地理教師こまちは、若干サボり癖があるけど、持ち前の鎌を駆使して作る鯖寿司は絶品だとか

  こちらも名門生まれの 『炎刃将』の体育教師のぱちゅりーの鰊蕎麦は、ほっぺが落ちる」


 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 「こんな事ぐらいしか………… 奴等、秘密主義で………」
 「本当に『謎の組織』?それ『謎の組織』なのに、何でそこまで知ってるのよ?」
 「おねえさんおねえさん、きっとその『学園ゆっくり5天王』って、教師より権限持った、自分等だけ白の詰襟着た生徒会とか風紀委員とか、
  そこら辺が勤めるんだよ、きっと!!!」
 「教師よりえらい生徒会なんて、現実にあわけないみょん……………」
 「おお、中二病中二病」
 「まんがの読みすぎだね!!! おお いたいいたい」
 「---ちょっと遅れて気がついたけど、地理教師・体育教師? 『5天王』は教師がやってるの!? あと、得意料理が何だって言うの?」
 「当然ですよ。生徒なんか3年間で卒業するんですし、権限のある教師がやるのが当たり前でしょう」
 「恥ずかしくないのか……?」


この人は何を恥ずかしがっているんだろう?
床次さんは、お茶を飲み干すと、胴の無いれいむを抱えて立ち上がった。


 「頑張れば、一生安心できるしね! 少なくとも、この学園に入れば、下等部でも胴を支給されるんだよ!!! 性能に差はあるけど」
 「あー………だから、みんな胴つきなんだ。
  それじゃあ、ここで成績の悪い奴、部活や体育でパッとしない奴は、堂々といじめてもいいってこと?『下等』『中等』『優等』に別れてる
  ヒエラルキー社会って訳ね
  ここに来るまで、いちいち嫌~な光景を見せ付けられたわ」
 「正式名称は、 『松』『竹』『梅』クラスだよ!!! なんかカツ丼みたいで誰もこの名前を使わないけどね!!!」
 「まあ、悪い事ですが、仕方ないですね………」
 「解りやすいでしょ?」
 「解り安すぎて欠伸が出るわ。 一応、高校出てる私が言うけど――――おっさんくさいけど――――世の中広いよ? 高校で―――
  まあ、何やってたとか、頭張ってただの、成績がどうのこうのって、例外あるけど、その先の大学とか社会人なってからとか、直結するわけじゃ
  ないでしょ」
 「いや、一応直結してるみょん。大学進学・就職まで。 だから皆、必死で努力して世の中が作られていくんだみょん。あと、支給されるおやつ
  の中身もちがうみょん!!!」
 「ああ……そうだったわ  ―――――おやつまで違ってくるの。それは頑張らざるをえないわね」


だけど、どうしようもない


 「――にしても、こんなに解りやすい悪の組織って…………? いや、この場合悪でも無いのか?」
 「この社会を根本から改革しなくちゃだめだよおねえさん!!!」
 「そんなもの、こいつら自身でやるもんでしょ。 はー いじめっ子を助けて終わり っていうのがよかったんだけど」


――自分で変わらないこと
――自身でやること
私と、みょんとさくやを見渡せるように、少し上にれいむをあげて眺めさせる


 「こいつらとこの学校、どう思う?」
 「最高にゆっくりできないね!!! 」


そうだよなあ…………
豊かではあるけど、心配もプレッシャーも絶えないし、ゆっくりしてたら、さっきみたいないじめも起きないし
でも、今更手放せないし、謎の組織も、上層部も、今の状況を変えてはくれないだろう


 「まあ、言いたい事はそれだけだわ。あんた達が満足てるなら、いちいち世直しなんて言うのは思い上がりだわ」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 「異変は、そういう事じゃないんでしょ。 じゃ、もう少し自力で調べてくるわ」


床次さんは、お茶と一時かくまってもらった礼を言い、部屋から出ようとしている。


 「ただ、その学園長ってのに会えば何か解るかもね。少なくとも、ここで何か迷惑をかけるつもりだけはないから」


と、更に入ってきた人が

 「ちょっと迷惑なお客様 一名ね」

        _,. -──-- 、_
      ,. '"   /\     `ヽ、
     ,' ゝ  / @ \  ノ   `ヽ,
    r'y、/⌒y'へ-'⌒i' ̄ヽ_,.へ_  ',
    とヘ_,.'-─'´ ̄`ー-^ー-、_i `ヽ、l
     i ィ ./-iーハ  ハ─i-ヽ、 ヽ、Y^ヽ
    イ i イ(ヒ_]     ヒ_ン )、! ハ ノヽノ
     レ ヘハ"" ,___,   ""'ン レ'   i  :
      i .从"  ヽ _ン    ハ i   ハ  :、
      ハ |ノ>.、.    _,.イ ハ .|  i  〉 : ::
       )ノ/ヽ、  ,.イ /  ,. -| `ヽ、ハ (、 
           / // ∠.._ ´ ,. -一'´ ̄ {
       _厶ムi / ̄`ゞ'´         ヽ.
    /´ ニニう/ /      _,r===ム
    /!    -=ニマ≦========彡 ´ ̄`| |
  人ー一7⌒Xヽヌ¨ ̄ ̄ ̄/  /   :| |、
   \ `ア /  Y  ヽ--- '´ !/     |マ
     V ,.イ|  :|          |      |\\`>
    ./´ :l |  ハ、       /! \    l    ̄
    \ :l | /   \    | | '. ` ー‐ヘ
      ∨ ∨    `ヽ、 :! !  '.     f

 「――――えっ!!? 何々?」
 「何を驚いているの?」
 「いや………驚く事ではないんだろうけど」
 「ここは高校だよ!!! ゆゆこ副委員長は、立派な2年生みょん!!!」
 「なるほど、2年生。17歳ね ―――――何年続けてるの?」
 「多分私が入学するm……もがごごご」


みょんの頬を片手で抓り上げながら、ゆゆこ副委員長は、小脇に抱えていたものを床に放り投げた


 「まりさ?!」
 「みてみてー ここ、こんなに大きい図書室のくせに、全然漫画も絵本もないんだけど、いいもの見つけたよ!!!」
 「あ、『激の河』だね!!! 超レアものだよ!!!」
 「あと、『なにわ金融道』もあるから、読んだ本はちゃんと今度から返しなさいね」


連れ込まれるほど、マナー悪く本を読み漁っていた?胴が無いのだから仕方が無いか……
副委員長は大して怒ってはいない様子で、床次さんに微笑みつつ話しかけた


 「うちの後輩を助けてくれてありがとう」
 「いいえ」
 「これからこの学園を潰しにいくんでしょう? ――あなた、『破壊者』なんですってね」
 「誰もそんな事言ってませんがな」
 「大体わかります。何度かここに『スペースビースト退治の一環』って言って、555のベルトと帝王のベルトを交換だけして学園長に
  戦いを挑んだ子がここにいたもの―――――すぐに帰っちゃったけど」
 「一応、『6天王』が語呂が悪い、って指摘したのが彼女でしたみょん」


そういえばそんなこともあった。あの、錐鮫有紗という2年生も、今はもういない。
と、更に…………

        ||        |     _人人人人人人人人人人人人人人人_
.          n     |      >    話は聞かせてもらったわ!!  <
      fヽ  | l  _  |      ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
     __\`┘ V´/. | バンッ! _γ´  ̄ ̄, ==ヽヽ、
     `ー-、 て  {         //⌒ヽ、 //   `))  ' 、
     fニニ -、 -‐イ)ヽ.       ,〈(__,イノu<ゝ____ノノ,. , . }
         `rf彡く.: .\     'ァ^し‐y'ヽfソーrーt_fヽr-'^`イ
、      :|l    \: : : :  \     〃 {__,.V i/ V__ハ リ| i〈〈i
:.\      ||     \ : : : : . \   レ!l rr=-,   r=;ァ イ、 ハ ヾ
  \    ||        \ : : : :  \ ヽ|l  ̄    ̄〃i,〉イイ〉ヽ
    \  ||     ミ  |: \: : : : . \\\ 'ー=-'  ハj イイ〉i
      \||        |.  \.: : : : . \\\、 __, イァイイ〉,r'^/〈
              |     \: : : : . : \\ヾ>レぐ从ハ ( >=、Y
              |      \: : :ヽ: : :\\ヘ _jヽ, イイ/   ヽ
              |       \: : : : ..: :\ヽ: H:7‐< : : :/
              |         ヽj: : : : : : :ゝ V/: :| : ヽ: :/
              |          |: : : __に{}こ}:k;__;/
              |          ゙ヾtf´-┴ /ムヽィ'
              |          r'´  , / l Xヽ
              |        /    / 〈_/  :Ll
              |       /      /       l
              |      /      ∧ :...    .::ヘ
              |    /      /::::::',    ..:::. \
              |   ヽ⌒7ヽ __ /::::: :::l__ -┬=≦>
              |    ヽ/     { :::: :/       |::::::Vl


 「「「「「ぎゃああああああああああああああああああああ!!!」」」」」
 「何で、図書委員まで全員で驚くのよ!!!」
 「いや……つい」
 「と、図書委員長!!!」
 「ここの胡散臭い学園長を倒すっていうんなら、手を貸すわよ」


元より、優等部でもハネッ返りな面々ばかりが集まった図書委員会。
やたらと物騒な話になってきた。


 「いや、そもそも異変の解決が目的です って自分でも言ってるけど、何が異変なのか解らないって有様でね。普通に考えれば、
  変な状況だとは思うけど、  世の中全体が『そうなって』いるんなら、それは私がどうこうできる話じゃない」
 「ごもっとも。でも、学園長室の行き方はわからないでしょう?」
 「いや………図書委員がそんな事して大丈夫なの?」


乗り気でないどころか、うんざりした顔で、床次さんは手を振る


 「どこぞの知らないゆっくりが来て、を垂れ流しまくってるんでしょ?私が『世界の破壊者』とか『悪魔』ってのは、根も葉もないし。どうもそれって、
  『社会体制を壊す』っていうよりは、『人類ゆっくり皆殺し』 ―― って意味みたいだけどね。 期待されても困る」
 「発信源がゆっくりかどうかは解らないけど、噂は少し前からたってたわ。教員も気にしてたし、何かどっかから捕まえたら報奨金が
  出るとか出ないとか」


出所は、どこなんだろう……


 「『いや………基本的には、あんた達のシステムって間違っては居ないと思うんだけどさ。 ここで異様に気分悪い奴等を沢山見てきたから、
  気持ちは解るけど」
 「ああ―――そういう行為に出る者も中にはいますね。さしずめ、中等部のリリーとかこぁとかでしょう?」
 「そういうあんた達は、全員『ここ』の出身で、優等部とやらの面々?」
 「ちょっと違います」


 ああ――――言われたくない。何故だか、この床次という女性には、馬鹿にされたくない――――しかし、仕方が無いのだと、
私は目を瞑った


 「私とみょんや、ゆゆ様ゆかり様は、確かに『ここ』出身ですし、優等部ですよ でも、この娘――――あ、稲荷地香って言いますが
  ――――まあ、ちょっと努力が足り無すぎたんですねえ」
 「今じゃ、下等部だよ! 家柄は良いのに、怠けた結果がこれだよ!!!」


 そうは言っても―――いや、言い訳はやめよう。 それに、折角生まれつき有利な条件をもらっていながら、社会の最底辺にまで
転落した幼馴染を、こうしてまだ友達とは見なしてくれる面々。
 床次さんは――――     何か、つまらなそうな顔をしていた。
 ただし、それは中等部・優等部、そして教師達が、私にくれる蔑みの視線とは全く違った


 「それが何だか嫌だ、 世界を変えたい、 だから、上を叩く――――変わってもらいたいっていうんならさ」


 本当に退室する。それに、ゆかり委員長とゆゆこ副委員長が続き―――振り返り様、みょんとさくやを見て言った。


 「さっき、私のこと『下の下の者』とか言ったわね」
 「それが?」
 「実際の身分とか、出身地とかおいといて、自分が言われたらどう思う? あと、『梅』部って名称あるのに、、『下等部』って普通
  に呼ぶとかさ」
 「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」


 振り返らずに――――


 「何か空気変えたいんなら、自分達のそういう所から始めるべきなんじゃないの?」


 不自然なほど、ドアが強く閉まり、その余韻が無駄に残った。
 みょんとさくやは、押し黙ったまま、無言で図書カードの整理を始めた。 こうした反乱分子と話すのは初めてじゃなかったけど、私もこの二人も、
直接協力した事は無いから―――処分を受けた事は無い。
 委員長と副委員長は―――――間接的に、あるいは多少直接そうした行為に加わってしまったから、何度も留年して、たまに中等部と優等部
を留年しつつ行き来している、いわば永遠の17歳だ。
 無言のまま、僅かに時間が流れた。
 手持ち無沙汰になったと思って外に出ると――――いた。

 担任だ。
 さっき、思い切り目を逸らしていた奴。


 「稲荷さん」
 「はぁ」
 「さっきの不審者。ぱちゅりー先生を倒した不審者―――」
 「ああ………」
 「解ってるでしょ? 案内くらいしなさい?」


 さっきは、何もしなかったくせに。
 それはそうか。
 担任とはいえ、私は底辺だし。
 別に、この先生には恩義は無い。何かしてもらった覚えも無い。
 強いて言えば、いつでも追放できるのに――――それだけされていない、という事くらいだ
 でも、これは大きな事だ。


 「すみません。本当に」
 「あなた、こういう事には使えるから、何とか守ってあげてるんですからね」


 守るというのは――――そういう事だっけか?
 私には、力が無い。この人達にはある。

 だから、私には、何かを守ることなんてできやしないのだ。


 「――――行った方がいいかもね」
 「委員長・副委員長は大丈夫でしょ」
 「行ってみるだけ行ってみるみょん」


 みょんとさくやの話し声が聞こえる。
 床次さんの一言が、そんなにきいたのか。


「こっちです」



 ―――外国産の、何か生々しい ゆっくらいだー

 本当にごめんなさい。

 私にはあなたを守れません。   恩を仇で今から返します

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最終更新:2009年08月18日 13:53