【2009年冬企画】間に合うかもしれないパチェさん(SS741)

以下の点に注意してお読みください。
  • 東方キャラ登場注意
  • ボクっ娘注意


――12月24日、クリスマスイブ。宵の刻

紅に染まる館、紅魔館。
吸血鬼レミリア・スカーレットの居城であるこの館では、毎年この季節になると、大規模なクリスマスパーティーが開催される。
大勢の人間以外と一部の人間が招かれ、一流の従者が作った豪勢な食事と華やかなイベントを享受する、年に一度のお祭り騒ぎ。

聖者の聖誕祭を仮にも悪魔を名乗る吸血鬼が祝っていいのか、と本人に問いただせば、
『たまたまよ、私たちのパーティーの日時と奴の生まれた日が偶然被さっただけに過ぎない』
とか屁理屈にすらなっていない答えが返ってくる、
その程度のいい加減な認識の、それでも規模だけは大きな馬鹿騒ぎ。
招待者はもちろん、館で働く者たちにとっても、年に一度のこのパーティーは大変待ち遠しく、楽しみなものであった。

「こぁこぁこぁ~!こぁこぁこぁ~! クリスマス~♪」

紅魔館内部に存在する大図書館。
そこでは一人の小悪魔がパーティーの準備に明け暮れていた。

「さってと、イルミネーションの飾りつけはこれにて終了なのです。そぉれぇ、ライトアップ!!」

立ち並ぶ本棚に、何の法則性もなく適当に、それでも量だけは多く取り付けられたイルミネーションを眺め、
小悪魔は満足気に大きく頷くと、手元にあったスイッチをポチっと押した。

「おぉぉ!ピカピカ綺麗なのです!普段は主同様に情緒も優美さも可愛らしさも欠片も無い図書館が、
 一瞬でクリスマス限定仕様の素敵空間に劇的ビフォーアフターなのです!」

正直、大図書館に無茶苦茶に飾り付けられたそれらの明かりは、
厳かな雰囲気を持つその場には相応しくないアンバランスなものであったが、
仕掛けた小悪魔本人は『これが匠の技なのですかー!』などとはしゃぎながら、楽しげに次の準備に取り掛かろうとしていた。

「次はテーブルの飾りつけなのです!
 赤いテーブルクロスに、サンタさんの縫いぐるみ!隣にはトナカイさんも一緒なのです!
 おっと、これだけではまるでお子様ランチに乗っかった爪楊枝でできた国旗の如くの幼稚さなのです!
 ここは大人っぽい小悪魔的な妖艶な雰囲気を演出する為にワイングラスをそれっぽく置いてみるのです!
 きゃー、これだけで何だかちょっぴりイケナイ大人の女になった気分なのですー!」

『でもワインは苦手だから、中身は無難にカルピスサワーにしておくのです♪くっふふぅ』
と誰に向けたのだか分からないしたり顔で微笑みながら、彼女は更に準備を進める。

「ケーキの上にももちろんサンタさんなのです!
 食べるのが勿体無いくらい可愛いのですぅ!そしてイチゴもたくさん乗せて‥
 あれぇ、そういえばこういうケーキって、蝋燭は何本立てればいいのですか?某張り付け聖者の歳の分だけ‥?
 しかしそれだと余裕で二千オーバーなのです~」

「クリスマスツリーも飾り付けるのですよー!
 でもモミの木なんて近場に生えてないから、ロビーに飾ってあった良くわからない観葉植物で我慢しておくのです!
 取り敢えず天辺に星がついてりゃ、それで良いのですよー!
 そーれ、リースぐるぐるー!なのです」

「そして、じゃーん、ボク自身もクリスマス仕様の限定コス『ミニスカサンタ』なのです!
 帽子に付いた黒い羽根飾りと、白いニーソックス、
 そして大胆に開いた両肩がアピールポイントなのですよー。
 冬専用なのに、まるで耐寒性のことが考えられていないこの格好、最高なのです!!
 普段はパチュリー様の趣味の、糞つまらない白黒の制服だから、こういう色可愛い服は久々なのですよ!くるくるーっと」

すっかりご機嫌な様子で、小悪魔はその衣装を見せびらかすように本棚の脇をくるくる回りながら歩を進めた。
すると、

『むきゅー』

どこかで聞いたようなか細い鳴き声が耳に通った。
小悪魔が自分の身体の回転を止め、首を傾けると、ちょうど彼女の頭と同じ位置の本棚に『そいつら』を見つけることができた。

いつ頃からか、すっかりこの大図書館に居ついてしまった、一頭身の奇妙な生もの達。

「おやおや、そこに居るのはいつぞやのむらさきもやし饅頭」

『むきゅ!』
『こぁ!』

「そして、ボクにそっくりの超癒し小悪魔系饅頭まで!いやぁ、何度見てもお前は可愛いのです~!」

『むきゅー』
『こぁこぁ~』

「まったく、寒くなってからあまり見なくなったなとおもっていたら、今まで何処行ってたのですか?
 それでいざクリスマスパーティーの直前に再び姿を現すなんて、ちゃっかりした奴らなのです」

『むきゅー!』
『こぁー!』

「はいはい、分かったのです!特別にお前らもパーティーへの参加を許可してやるのです!」

『むきゅ?』
『こぁこぁー?』

「ふふふ、『そんなこと下っ端であるお前が勝手に決めていいのか?』とでも言いたげな顔ですね?
 心配することなんざ何もないのですよ?だって‥」




――同時刻、紅魔館ロビー。

いつもなら大勢の屋敷下部妖精で賑わっているはずの、
例年通りなら多くの客人と豪華料理、そして楽しげなイベントで賑わっているはずの、

この館で一番大きく忙しないはずの空間。

そこは現在、
誰の姿も見つけることができず、
何の音も聞こえることがなく、
絢爛豪華なシャンデリアどころか蝋燭一つの灯りすらない、

簡潔に申すなら“空虚”の二文字で表せる空間になっていた。




「だって、今紅魔館に居るのは、
 クリスマスだってのに‥、
 誰にも御呼ばれさないで、
 何処に行く宛も無く、
 孤独に過ごそうとしているのは」

小悪魔は、淡々と言葉を紡ぐ。

「ボクだけなのですから」

『‥‥』
『‥‥』

人外の饅頭二人は何も喋れなかった。
気づいてしまったからだ。
それまで無邪気に意気揚々にワクワクしながらパーティーの準備をしていた彼女は、
言動こそ楽しげに笑っていた様子だったが、



その瞳には、溢れんばかりの涙が溜まっていたことに。



某デビルハンターが言っていた。『悪魔は涙を流さない』と。

皆さん、それは嘘です。
彼女は今ボロ泣きです。











2009年冬企画 『間に会うかもしれないパチェさん』




――同時刻。
幻想の境界、博麗神社。

「それじゃ、適当に始めましょうか。博麗神社のクリスマスパーティーよ!」


――『博麗神社クリスマスパーティー』
――主催者、博麗霊夢。


「まったく‥、祭事となると異教異文化見境なく馬鹿みたいに宴会騒ぎなんだから‥、
 卑しき地上の皆々様はもう少し節度というものを学ぶべきだわ」
「萃香ー。そこで大吟醸がぶ飲みしてる天人さんがお帰りよ。ぶん投げてあげなさい、雲の上まで」
「おーけー、紫ー」
「あ、ちょっと待ってくださいー。そんな劇的な瞬間、何が何でもカメラに収めなければ」

参加者、比那名居天子。八雲紫。伊吹萃香。射命丸文。

「まぁ、極々偶にはこんな辺鄙で狭苦しい犬小屋みたいな神社でクリスマスを過ごすのも一興だわ。
 人が集まりすぎて窮屈この上ない上に、出されてる料理は三流だけどね」
「萃香ー、こっちの吸血鬼もお帰りよ。ぶん投げてー、流れる川に」
「やっだぁ、霊夢ったらぁ!冗談に決まってるジャン!私神社とか神聖な雰囲気の場所って超好きなんだからぁ!
 今日は招待してくれてありがと!レミィすっごく嬉しかったゾ!」
「寄るな触るな引っ付くなウザイ」

そして、紅魔館の主、レミリア・スカーレット。





――同時刻。
死者の邸、白玉楼。

「という訳で‥、これより従者慰労クリスマスパーティーを‥」


――『従者慰労の会 クリスマスパーティー』
――主催者、魂魄妖夢。


「ひゃじめたいと思いにゃす!!みょん!!」


訂正。
――主催者、酔って理性のタガがはずれかけた魂魄妖夢。


「あの半人半霊、もうベロンベロンじゃないか」
「あのぅ、何があったんですか?」
「うん、まぁちょっとね。早苗達が来る前に色々あったのよ」
「ここは空気を読んでそっとしておくべきですかね?」
「そっとしておくってか、そっとしそうにもない動きだよ、あいつ。目とかぐるんぐるんだし」

参加者、ナズーリン。東風谷早苗。鈴仙・優曇華院・因幡。永江衣玖。小野塚小町。

「あーもう、畜生ー。幽々子様死んでくんねーかなー。あの夜雀と一緒に死んでくんねーかな、マジ死んでくんねーかなー」
「いや、もう死んでるから。貴方のご主人様これ以上ないくらい亡霊だから、ね」
「咲夜さんは良いですよねー!主人が幼女だよ、幼女!つるぺただよ!うちのおっぱいお化けとは偉い違いだよ!!」
「落ち着いて妖夢、胸の大きさは関係ないから」

そして、パーフェクトメイド長、十六夜咲夜。





――同時刻。
妖怪寺、命蓮寺。

「という訳で、これよりクリスマス魔女の集いを開催致します」


――『クリスマス魔女の集いin命蓮寺』
――主催者、聖白蓮。


「姐さん、本当に始めちゃったよ。お寺でクリスマスパーティー」
「シュールだなー」

準備した人、雲居一輪。村紗水蜜。

「この度はお招き有難う、聖さん」
「白蓮でいいのよ、アリス・マーガトロイドさん」
「始めて来たけれど、これが“寺”という建築物なのね。神社とどう違うのかしら?」
「良ければ私の弟子に後ほど説明させましょうか?パチュリー・ノーレッジさん」
「いやぁ、私は魔女なんかじゃないのに、押し掛けてしまって済まないねぇ」
「この寺は、妖怪でしたら何時でも誰でも大歓迎ですわ、河城にとりさん」

参加者、アリス・マーガトロイド。パチュリー・ノーレッジ。河城にとり。

「魔理沙もお久しぶりですね。ようこそ、命蓮寺へ」
「ああ、御招き大変有難いが」

そして、普通の魔法使い、霧雨魔理沙。

「どうして私はいきなり雁字搦めに縛られてるんだぜ。
 今日は純粋に祭りを楽しみ来ただけの善良な普通の魔法使いだってのに」

訂正。堅いロープで縛られ吊るされた霧雨魔理沙。

「それじゃ、始めましょうか。クリスマスパーティー兼、魔理沙の蒐集癖を矯正する会を」
「おい、アリス!今なんて言った!?」

「ルールは簡単、遊びに来たら取り敢えず盗む、他人のスペルカードも平気で盗む、
 呼吸をするように物を掠める、魔理沙は大変なものを盗んでいきました(実害的な意味で)、
 そんな盗みが生活の一部となってしまった悲しき不良魔法使い、
 霧雨魔理沙に正しき善の心を取り戻すこと、それがこのイベントの目的です。
 ちなみに、魔理沙の心に一番深い傷を刻み込んだ人が優勝です」
「待て、白蓮。改心させるのにどうして心に傷が刻み込まれる必要があるんだ!?」

「道具は一人一個までだったよね(ギュィィィィンン)」
「道具って何!?その怖いドリル回転音は何だよ、にとり!?」

「殺しちゃったらその場で失格よ。手加減を見誤らないように。身体ではなく精神を削ることに重点を置くこと」
「その言い方だと身体も多少削ることになっていませんか!?パーチュリーさん!?」


「大丈夫よ、魔理沙」
「全てが終わったころにはきっと」
「もう二度と悪事ができないぐらいの」
「純朴な乙女に生まれ変わってることでしょうから」


ケタケタケタケタ、妖怪寺に魔女達の笑い声が高らかに響き渡る。

「わ、私の傍に近寄るなぁぁぁあああああ!!!」





――同時刻。

「うわぁ、雪が降ってきたよ、美鈴」
「ええ、綺麗ですね。フランドール様」
「もう!今日はフランって呼んでって言ったでしょ!」
「あ、そっか。ごめんね、フラン」
「まったくもう‥!」

普通にデート。
紅美鈴とフランドール・スカーレット。





――同時刻。

「お休みだー」
「お休みだー」
「でもさみぃ」
「はやく家帰ろうよー」

普通に休日。
その他大勢の妖精メイド達。




そして、舞台は再び、紅魔館の大図書館。

「という訳で、今年はパチュリー様、お嬢様、妹様、メイド長、門番長、
 みんなみーんな別の約束に御呼ばれしたので紅魔館のクリスマスパーティー中止なのですよー。
 小悪魔は今現在この館でホームアローンなケビン少年なのですー。
 でもケビン少年には想っている親兄弟が居ますが、小悪魔にそんな優しい人は居ないのです!ケャハハハアハハハ」

その空気は、シンプルに、
ただシンプルに、重かった。

『むきゅきゅ‥』『こぁぁぁ‥』

言葉を持たぬこのゆっくり達に耐えられるものではとてもない。
2匹ともあまりのショックに白目を向き口をあんぐり開け、いわゆる『うわぁああああ』といった形相だ。

「ちなみにぃ、パチュリー様に至っては」

『人里に新しくできた寺の連中に面白そうなパーティーの御呼ばれしたから行ってくるわ。
 はぁ?図書館でのクリスマスパーティー?
 そういえばそんなこと言ってたわね。分かったわ。
 できたらなるべく早く帰ってこれるよう努力を試みるかもしれない可能性を考えておくべきかどうか運命の分かれ道の選択肢に追加しておかなくもないわ。
 もしかしたら間に合うかもしれないわね』

「とあやふやさ全開な言葉で濁らせられたのですー。ていうか間に合わせる気0%なのですよー」

だからもう独りっきりのクリスマスは確定事項なのですよー、と、なんでもないような笑顔に見える泣き顔で語る。

「あ? たった一人なのにボクがクリスマスパーティーの準備していたのか不思議だっていう顔しているのです。
 えっへぇへぇ、それはですねぇ」

小悪魔は両手をパチンと合わせてまた笑顔、に見える泣き顔。

「このあと、思い切り暴れまわって全てぶっ壊すためなのですよー」

そう嬉しそうに語る彼女の目は、そのなんというか‥、色がない。
レイプ目と言えばわかりやすいだろうか、宿る生気が皆無に等しい。


『‥‥』『‥‥こぁ』


ゆっくり達、笑えない。

「自分で‥、懇切丁寧に‥、楽しく、理想のクリスマスパーティーを思い描きながら‥、
 たくさん頑張って‥、苦労して準備した‥、この料理も‥、飾りつけも‥、サンタさんの縫いぐるみも‥」

震える声。
小悪魔は、それでも口元で笑いながら、


「ボクの手で準備したものすべて、ボクの手で全部壊すのです」



「ハッハハァ、ハアハハハハハッハハハハァァァ!ハハハハアハハハハハハハハアハ!!!!」



高らかに、とても高らかに小悪魔は笑う。
でもそれの伝える感情は歓喜などでは決してない。


この状態を仮にカタカナ4文字で表すとすれば、アレだ。


ヤンデレ。


問題は、デレる対象がどこにもいないことである。
デレる対象がいないヤンデレって、あんたそれはただの悲しい人です。


『‥‥』『‥‥‥』

ゆっくり2匹。
駄目だこいつ、早く何とかしないと、的な表情。


「さてと、言葉様ばりの笑顔を振りまいたところで、さっそくこのクリスマスを『だむ ですとろ~い』なので‥」


『むきゅむきゅー!!』


「あいたぁ!!」

紫饅頭による、馬鹿なことはやめるんだ!的な体当たりが小悪魔の顔面に炸裂!
小悪魔はバランスを崩しその場に腰を落としてしまった。

「な、何をするのですかー!!」
『こぁ!こぁこぁこぁー、こぁこぁこぁ!!』

自暴自棄になってどうするの!
こんなに一生懸命準備をして‥、
クリスマスパーティー、凄く楽しみにしていたんでしょ!
それを自分の手で壊すなんて、悲しいことはよして!!

的な小悪魔風饅頭の説得、のような気がする叫び。

「楽しみだったから‥、ずっとずっと楽しみにしてたから‥、
 だからこんなに悲しいのですよ!!こんなに涙が出るのですよ!!」

小悪魔、何故か通じる。

「でも、もうどんなに泣いたって‥、みんな‥みんなボクを置いて行ってしまったのです‥。
 ボクは‥ボクはもう独りぼっちなのです!!」

『むきゅぁぁあ!!!』
「あう!!」

バチコーン!

てな感じに、紫饅頭のお下げによるビンタが小悪魔の頬に炸裂!

『むっきゅむきゅむきゅぅぅぅぅううう!!!』

甘ったれるんじゃねぇ!
お前は小悪魔だろ!誇り高き魔族だって自分で言ってただろ!!
孤独になんか負けんじゃねぇ!
他人がちっと期待した通りに動いてくれなかっただけでこの世の終わりみたいな顔すんじゃねぇよ!

的な突然の一方的な説教をやっぱり叫んでいた気がする。

「そんな‥、どんなこと言われたって、もう手遅れなのです!
 ボクだけで‥
 たった独りじゃ‥、何も、何もできる訳ないじゃないですかぁ!!」

小悪魔、やっぱり通じる。
案外レベルの近い生き物同士なのかもしれない。

『むきゅぁぁ!!むきゅむきゅむきゅむきゅむきゅ!!!』
「あぅあぅあぅあぅあぅあぅあぅあぅあぅ!」

グルドガッドダッーンダダダダダダダダダダダダ!

紫饅頭が今度は左右両方のお下げで小悪魔の頬に往復ビンタ‥、したはずなのだが、
効果音はどう聞いてもそういうレベルじゃありませんでした。


だからって、ここで自分の不幸に酔って、ヤンデレ演じて、それで全てを壊せればそれで満足なのかよ!
ちげーだろ!そんなの絶対間違ってるだろ!!
お前はずっと待ってたんだろ、誰も不幸にならず、皆で笑い合える、
そんな誰もが望む最高のクリスマスパーティーって奴を!
だったらそれはまだ終わってねぇ!始まってすらいねぇ!
ちょっと長いプロローグで絶望してんじゃねぇよ!!


幻想殺しみたいな、紫饅頭先生によるスーパー説教タイム、のような気がする熱の入ったシャフト。


その剣幕に呆然とする小悪魔に、小悪魔風饅頭がそっと近づき、彼女の胸にぴょんと飛び乗り、
口に咥えていた何かをそのまま彼女の胸の上に落とした。


「これは‥」


それは、10円玉硬貨ぐらいの大きさの、安っぽい玩具のロケット。
人間用に作られたもののようで、首からぶら下げるための細長い鎖が通されている。
そして、その中に飾られた一枚絵は、子供が描いたような稚拙な、
それでも確かな暖かさを感じる手作り感に溢れた、一人の少女の似顔絵だった。


「ボクの‥、絵?」
『こぁこぁこぁ!』


二人で、作ったの。
クリスマスだから、何か、形に残るものを贈りたくて。
普段、とってもお世話になってる友達に‥。
こんな簡単なものでも、私たちには凄く時間がかかったけど‥。

ねぇ、独りだなんて、悲しいこと言わないで。
あなたには、私たちが居るじゃない。
人間や妖怪に比べれば、取るに足らないちっぽけな存在かもしれないけど、
それでも、私たちはあなたの友達でしょ!


多分こういうそんな感じの意味が込められた言葉なんだろうなぁ、と思われる小悪魔風饅頭による告白。

「お、お前たち‥」
『むきゅ』


手を伸ばせば届くんだ。
いい加減始めようぜ、小悪魔!


的に熱い瞳で紫の饅頭は小悪魔のことを真っ直ぐ見つめた。


「ぼ‥、ボクは、馬鹿でした。ボクのことを、こんなに思ってくれる仲間が、友達がいるのに‥」

小悪魔はもらったロケットを強く握り締め、再び瞳から涙を零し始めた。
だがその涙は、さっきまで流していたものと、同じ種類のものではない。

「ボクはそんな当たり前のことも忘れて‥、勝手に、自暴自棄になって‥、馬鹿なのです」

小さく首を振ると、小悪魔は手を伸ばし、小悪魔風饅頭を優しく抱きかかえた。

「そんなボクを友達と言ってくれて、ありがとう‥なのです」
『こぁこぁ~』

聞きたかった言葉を聴けたからか、
やっと友達から悲しみ以外の感情を見つけることができたからか、
小悪魔風饅頭は満足そうに微笑んだ。


『むきゅ』


その様子を見て、やれやれといわんばかりの呆れ顔で紫の饅頭は首を横に振った。

「お前にも、一応礼を言っておくのです。
 でも、さっき散々なぶられた痛みは、いずれ返して差し上げますのです」

涙目、かつ顔を真っ赤にしながら、
怒っているのか、照れているのか判断に困る表情で小悪魔は対象をキッと睨みつけた。

『むきゅ』

悪態をつく小悪魔に対し、やってみろ?と言わんばかりの小ばかにした表情をする紫饅頭。
だが、その顔はどこか満足そうだった。














「という訳で、遅れた分を取り戻すのです、野郎共!!今日この日、紅魔館に居るのはボクたちだけ‥、
 つまり、今日一日はこの小悪魔がこの館の主なのです!!
 好き勝手暴れ騒ぎ放題なのですよー!!!」
『むきゅー!』『こぁー!』

以上の非常に長い茶番を乗り越えて、今やっと小悪魔のクリスマスパーティーは始まった。
用意された料理といえば事前に作ってあった1ホールのケーキと、
もともと買い置きしてあった数種類の菓子類、
それとワイングラスに並々注がれたカルピスサワーだけ。
それでも一人と二匹にとっては十分すぎる量だ。

『むぎゅむぎゅ』『こぁこぁ』

ボリボリと適当に、だが幸せそうに菓子類を頬張る二匹。

「それでは、鬼の居ぬ間に何とやら‥、
 まずはこのボク、小悪魔による、我が主人紫もやしについての愚痴大会を開催するのです!!」
『むきゅー‥』『こぁー‥』
「『おいおい、また身内の愚痴かよ‥』なーんて顔してねーで聞きやがれなのですー。
 こちとらクリスマスにシカトされて片腹大起立なのですからー」

「面白そうな話ね。聞かせてもらおうかしら」

「お~さっすが、パチュリー様は話が分かるのですー‥、それじゃ話ますですよー!」

小悪魔、元気よく愚痴を始めようと思うも、

「あれ?」

さっきの会話に物凄い違和感、というか異物感、寧ろいつも通りの自然感を感じて、

「れれ?」

つまり、聞き慣れた声がしたような気がして、後ろを振り向いてみる。

「構わないわ、続けなさい」

彼女の背後にはいつの間にか、寧ろいつも通りと言うべきか、
彼女の主である魔女、パチュリー・ノーレッジの姿があった。

「いやいや、これはないのです」
「何が、かしら?」
「いくらなんでもいつも通りのパターン過ぎなのです。
 ボクがパチュリー様の悪口とか陰口とか陰湿な噂とか卑猥な噂とか愚痴とか垂れ流してる時に限って、
 ボクの背後のパチュリー様出現確立が上昇の一途を辿り過ぎなのです。
 この一連の流れには作為的なものを感じざるを得ないのです」
「あなたがどんな場所でも構わず馬鹿みたいに大きな声で喋り始めるのがいけないんじゃない?
 ついでにさっきの“馬鹿みたい”は“大きい”を強調しているのではなく、
 言葉どおりに貴女自身を修飾していると補足説明を加えるわ」
「その冷たく無駄に具体的に言い放たれる毒舌は間違いなくパチュリー様‥、え?でもどうして‥」

現在の時刻は宵、と言ってもまだ深夜と呼ぶには早すぎる時間帯だ。
アルコールの類が振舞われるはずのクリスマスパーティーがこんなに早い時間帯に終わるはずがない。
幻想郷の住人で宴を好まない者は殆ど居ない。
故に、一般的にクリスマスのような一大パーティーでは、宴は朝まで続くのが通例なのだが。

「どうして、こんなに早く帰ってきたのですか?」

そう、いくらなんでも早すぎる。
この時間帯じゃ二次会どころか一次会すら終わってるかどうか怪しい時間帯だというのに。

「そんなこと、どうでもいいじゃない」

だが、パチュリーはそんな当然の疑問に介せず、その淡白な瞳で小悪魔を見つめた。

「今重要なのは、今日のお仕置きはロイヤルフレアとサイレントセレナ、どっちが良いって話だけよ」
「いぃぃいいい!?エクストラスペル以外の選択肢はないのですかー!?」

いつも通りの摂関を食らう流れだと頭で理解するより速く心で理解した小悪魔は、
頭を抱え震えながらも衝撃に耐えようと目を瞑った。

「じゃ、今日は奮発してどっちも行こうかしら!?」
「ひゃい!? そ、それはいくらなんでも鬼畜過ぎなのですぅぅう!!!」

パチュリーが片手に持っている魔道書が魔力を秘めた輝きを集め、その高明度を上げていく。
小悪魔は半分諦めの境地で、責めてテーブルの上のケーキは潰れなきゃいいな、と片隅に思いながら、
近いうちに訪れるであろう痛みを恐怖の感情と共に待ち構えた。



「なんてね」



――ぱたん
しかし、小悪魔に届いたのは静かに本が閉じられる音だけだった。

「ほえ?」
「見逃してあげる、今日は疲れてるから」

釈然としない面持ちで小悪魔が目を開けると、
パチュリーはすでに小悪魔の元を離れ、図書館の離れにある自室へと歩を進めていた。

「明日からこの館も通常営業よ。その無駄に寄せ集めた飾り付けも明日までに片付けておくのよ。
 それと、あまりはしゃぎ過ぎないうちに貴女も寝なさい」
「は、はいなのです」

その余りにも潔い、仮にも主人を馬鹿にした言動を取っていた自分への対処としては優しすぎる処遇に、
小悪魔は一片の違和感を感じた、

(そういえば疲れてるって‥、確かにちょっと顔色が優れていないように見えましたのですが‥)

が、

「何はともあれ苛められずにすんで良かったのですー!パーティーを再開させるのですよー!」

あまりそういうことを深く考えられる性分ではなかった。

「いやぁ、場に軽い緊張感を走らせてしまったのですー。すみませんなのでしたー」
『むきゅー』
「あれ?」

テーブルを見やった小悪魔はそこに“ない”一つの違和感に気づく。
いつの間にかテーブルの上にのっている饅頭は紫色のそれだけになっていた。

「ボクそっくりのキュートなあの子は何処行ったのですか?」
『むきゅー』







「ふー」

廊下に出たパチュリーは、疲れたように壁に身を預けて、大きなため息をついた。
それと同時に、ずるずると壁に身を預けたまま身体を床に落とす。

「コホ、コホッ、まったく‥私ともあろうものが、柄にもなく急ぎすぎちゃったわね」

持病の喘息が治まるまで休憩しよう、そう判断した魔女は冷や汗を流しながらその場に蹲った。

「それでも‥」

思い出されるのは、今日の朝まではつけていなかった、小悪魔の首に飾られていた玩具のようなロケット。
そして、彼女の嬉しそうな笑顔。


「結局私は‥、間に合わなかった訳ね」


どこか自嘲めいた笑みを浮かべながら、パチュリーは自分の懐から小さな箱を取り出した。
ピンクの可愛らしいリボンで包まれた、一目でプレゼント用だと分かる小箱。

「これじゃ最初から、参加するのは本命だけにしておくべきだったかしら‥、まぁ、今更遅いか‥」

『こぁー』

「‥‥、こぁー?」

突然聞こえた奇怪な声に、パチュリーはきょとんとしながらも声のした方向に振り向いた。

『こぁこぁ!』

そこにはパタパタと笑顔で羽ばたく、自分の使い魔みたいな顔をした饅頭のような生物が飛んでいて、

「あ」

いつの間に盗られたのだろうか、そいつはさっきまでパチュリーが持っていたはずの小箱を器用に咥えていた。

「ちょ、ちょっと待ちなさい。まさかあなたそれを‥」
『こぁー!』

パチュリーが言い終わる前に、その小悪魔風饅頭は嬉しそうに風を切って飛んでいってしまう。

「ま、待ちなさい!それは駄目!持ってかないでー!!」







「あ、戻ってきたのです」

小悪魔風饅頭が居なくなってから、その辺の本棚を適当に探索していた小悪魔は、
捜索対象がこっちに大はしゃぎで飛んでくるのを見つけて安心そうに息をついたと同時に、

「あれ?パチュリー様まで?」

その後ろを必死に、だけど喘息のせいで苦しそうに息をつきながら走ってくる自分の主人の姿も見つけて、
何があったのかと首を傾けた。

『こぁー♪』

小悪魔風饅頭は、彼女の頭の上まで滑るように滑空すると同時に、ぽとりと小さな箱を落とした。

「なにですか?」

反射的に小悪魔はその小箱をキャッチ、ぽかんとした表情で眺める。
何のことはない、ピンクのリボンで巻かれただけのただの箱。
中身は気になるところだが。

「ま、駄目よ!小悪魔!!!」
「ひゃい?」
「そのままストップ!ストップよ!動かないで!」
「パチュリー様?これはいったい!?」
「口答えするな!絶対その小箱を開けちゃ駄目よ!あと、読んじゃ駄目!」
「読む?」

箱に対し『開けるな』という命令は理解できるが、『読むな』とはいったいどういうことだろう。
そんな疑問と共に、小悪魔は半ば反射的にもう一度、その小箱のことを見てしまった。

「おや?」

よく見ると、リボンが縛っているのは小箱だけではない。
小箱とリボンの間に、小さなメッセージカードが挟まっていた。

「これは‥何か書いてあるのですよー」
「だから読んじゃ!!」

だが、文字とは視覚的に一瞬で頭の中に入ってくる情報だ。それがシンプルで短い文章なら更に。
そして、受け取る側の人間が待ち望んでいるような情報なら、それはなお更に。
パチュリーの静止は、最初から意味をなしていなかった。






     親愛なら我が使い魔へ
     いつもお仕事ご苦労様。
     By.パチュリー・ノーレッジ






「あぁあああああ!!!」

パチュリーは目を見開いて、その短いメッセージ熟読している小悪魔の様子をも見て、
自身の静止が完全に間に合わなかったことを悟りながらも、
顔を真っ赤にして、恥ずかしげな叫びをあげてしまった。

「‥‥‥、開けるのです」
「ちょっとまっ!!」

普段ないくらい冷静に、その目をギラギラと輝かせ、
小悪魔は小箱のリボンを手早く解き始める。

小箱は見た目の通り、難しい造りはしていなかった。
だから、その中身はすぐに日の目を浴びることができた。


「これは‥ロケットなのです」

それは、綺麗な装飾が施された、純金製のロケット。
首にかけるための鎖までもが金で作られているようで、
先ほど饅頭たちにもらったものとは比較にならない程の重量感と、価値の高さを持っていることが伺える。

「だ‥だって、しょうがないじゃない!」

パチュリーは自分の今の表情が小悪魔に覗かれないよう顔を伏せながら、
観念したように声を押し殺すように小さな声で続ける。

「まさか‥、ここのゆっくり達とプレゼントが被っちゃうなんて‥想像できる訳ないし。
 それに、貴女は私がいなくても楽しそうにしていたし。
 あんな空気の中で、そんなもの、渡せる訳‥うばぁ!」


だが、その言葉は途中で打ち消された。
言葉によってでなく、半ば強制的に。
実力行使で。
小悪魔の、懇親の抱きつきによって。



小悪魔は、基本的に人の話を聞かない娘です。



「パチュリー様っぁぁぁぁぁ!!!大好きなのです!」

小悪魔は手に取ったばかりの純金製のロケットを手にぎゅっと掴みながら、
満面の笑顔で、本当にこれ以上ないくらい嬉しそうな笑顔で、パチュリーに唐突に抱きついてきたのだ。
そして、そんな体当たりに近い抱擁に貧弱な魔女の身体が持つ訳がなく。

「ひ、ひにゃぁああああ!!」

パチュリーはそのまま床に倒れ、小悪魔がパチュリーを押し倒したような形になってしまう。

「ま、待ちなさい!小悪魔!そんな格好で抱きかないでー!!」

長い間描写しなかったので忘れていたかもしれないが、
小悪魔の現在の衣装→ミニスカサンタコス、である。

「パチュリー様!パチュリー様!パチュリー様♪」

小悪魔は、本当に人の話を聞かない娘です。

もう本当に嬉しそうに、悪魔らしく獣らしく、獣っていうか子犬っぽく、
自分の額をパチュリーの胸に何度もこすりつけている。

「だぁぁ!!プレゼント一つで何でそんなに喜んでんのよ!ロケットならさっきもらったじゃない!」

こんな馬鹿みたいに喜んで。
パチュリーはさっきまでの自分の苦悩が本当馬鹿らしく感じてきた。

「だって、だって!だって!」

小悪魔はパチュリーの背中まで腕を回して、彼女の胸に頭を埋めながら更に深く抱きつく。

「嬉しかった!パチュリー様はボクの為に、クリスマスプレゼントを用意してくれた!
 ボクとのクリスマスのことを、考えてくれていた!」

主人が自分のことを気遣ってくれる、ちゃんと想ってくれている。
使い魔として、それ以上の幸福はない。

「ボクは、もう一生パチュリー様の使い魔なのです!これから先もずっとずぅっぅうと一緒なのです!!」

パチュリーはそんな、まるで自分の本心を隠そうとしない自分の使い魔のアクションに圧倒されながらも、
ついでに顔を真っ赤に染めながらも、

「ば、馬鹿ね。そんなの‥当然でしょ」

とても、不満気の無い、寧ろ満足そうなすねた声で自分の想いを小悪魔に返した。




『こぁこぁこぁ~!』『むきゅ』

そんな二人の様子を満足そうにテーブルの上から眺める饅頭が2匹。

まったく、クリスマスだからって自嘲しない子猫ちゃん達だぜ!

とか言ってたかどうかは定かではないが、
取り敢えず、彼女らは本当に満足そうな表情をしていた。

もっしゃもっしゃと、ケーキを美味しそうに頬張りながら。


多分小悪魔の分はもう残っていない。













――12月25日。
クリスマス当日。午後。
同図書館。

「なるほどね、だから小悪魔がいつになくはしゃいでいた訳だ。良い部下を持って幸せじゃない?」
「冗談はよして。昨日は色々疲れたわ」
「それじゃ魔理沙は最終的にどうなったのか分からないの?途中で抜け出しちゃったんでしょ?」
「ええ、ただ私が抜けた時点じゃ、まだ軽い幼児退行を起こしている程度だったわ」
「短時間でそこまで追い詰めたの!?」
「私のことはもういいでしょ。それより、レミィの方はどうだったのよ」
「あー、私んとこはいつも通りだわ。朝まで飲んで馬鹿騒ぎしてそれでお開き、平和なもんよ、
 一回霊夢に本気で殺されかけたくらいで」
「あー、そりゃいつも通りで何よりね」

どうやらこの友人も自分も、今年のクリスマスはそれなりに楽しむことができたらしい。
二人は顔を見合わせニッと笑い合った。

「それでさ、パチェ?」
「何かしら?」
「あんたのその格好、何?」
「う‥、このままスルーしてくれればいいのに」
「美味しいものは最後にとっておくものでしょ」
「あー、今嫌いなものを最後に食べる奴の気持ちがよく理解できるわ」

パチュリーは頭を抱えながらも、恥ずかしげに自分の衣服の端を摘んで説明する。

「これは‥その‥、小悪魔からのクリスマスプレゼントで。まさかこんなもん用意してるとは思わなくて‥」

「その‥、御揃いだからって‥。それで、今日逃したら一年着る機会がないからって‥、せがまれて‥、
 それでしょうがなくね?」

「あー、パチェも甘いわねー」
「だって涙目よ!あのイベントの後涙目でせがんでくんのよ!
 しょうがないじゃない!!断れる空気が欲しかったわ!!」
「なんだかんだで嬉しそー」
「ない!そんなことない!!」




「ありゃりゃりゃ、パチュリー様とお嬢様がまた口喧嘩してるのです。懲りないですねー」

遠くの方で二人の喧騒を耳で聞いた小悪魔は、呆れるように首を振った。
ちなみにまだサンタコス。相当気に入ってるらしい。

『こぁ』『むきゅ』

近場の本棚で佇んでいた二人のゆっくりも同意するように声をあげる。

「できれば、近寄って眺めてやりたいところなのですが」

小悪魔の両手は現在抱えるほどの量の本で塞がっている。
今日もまたパチュリーに図書の整理を命じられているのだ。

「ていうか、面倒だからそういうサボタージュは歓迎なのですが」

小悪魔は自分の首下を見つめ、また小さく首を振った。

「ま、今日くらいは、真面目に仕事してやるのですよ」

そして彼女はまた元気に本を抱えて運ぶ。
首下にある、クリスマスの名残を肌で感じながら。

「よっしゃー、頑張るぜなのです!」






12月25日。
紅魔館の大図書館。
そこに居る小悪魔は、二つのロケットを大事そうに首からぶら下げていた。

一つは、子供が作ったような安っぽい玩具のような小さなロケット。
中には小悪魔の似顔絵が飾られている。

そしてもう一つは、鎖も本体も純金製の立派なロケット。

中に飾られているのは、
とても無愛想で、
貧弱な喘息もちの、
ときどき彼女に酷い体罰を与えたりする、

それでも、彼女の敬愛する、とてもとても大切な、

魔女の顔写真が飾られている。



この二つのロケットは、彼女の最高の宝物だ。




   ~了~

  • パチュこあっていいですね、小悪魔がとても可愛いです
    ゆっくり達もいい味を出していました。上条さんw -- 名無しさん (2009-12-28 12:37:26)
  • 小悪魔デレすぎだろう・・・ -- 名無しさん (2009-12-28 13:00:49)
  • パチュリーってやつツンデレ -- 名無しさん (2009-12-28 15:21:29)
  • 前半の小悪魔、星さんちの飛雄馬くんを思い出す -- 名無しさん (2009-12-28 17:05:04)
  • 飾り付けをしてはしゃいでいるシーンといい、某悪魔ハンターさん形無しなくらい泣いているシーンといい、
    相変わらず小悪魔が愛嬌たっぷりで可愛くて最高でした
    また東方キャラたちや小悪魔とパチュリーのかすがいとなったゆっくり達など、
    登場キャラ一人ひとりから個性を感じられ、会話のシーンを読むのがすごく楽しかったです -- 名無しさん (2010-01-02 20:18:52)
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最終更新:2010年01月02日 20:18