てゐ魂 第二十四話-2



~☆~


「ハァ…ハァ…ハァ…。」

「かぜがつよくて めがあけらりぇないよー!」

うどんげは必死になって屋上の屋根の上へと登っていた。
小脇に抱えている植木鉢には、相変わらず赤ちゃんれいむが舌ッ足らずで叫んでいる。
そんな叫びを無視するかのように、うどんげは屋根の頂上へ、頂上へと向かってくる。
何故か?


「おぉおおおおおお!れいむの赤ちゃんを返せェええええええええ!」


後ろから、赤ちゃんれいむの母親のれいむが凄い勢いで登ってきているからだ。

「ちょ、あのれいむ、凄すぎでしょ…。」

「ちょッと怖すぎるど…。」

その迫力、後ろから追いかけているれみりゃ達がマジで引いてしまいそうな程である。
…が、まぁその追いかけっこもすぐに終わることになる。

「…ゲ、ゲラ…!」

屋根の端までうどんげが追い詰められたからだ。

「ふぅ…ふぅ…さあ!追い詰めたよ!ゆっくり赤ちゃんを返してね!」

れいむはうどんげにそう言い放つ。

「ゲラゲラ…!」

「誰が返すものか!これは私の子だ!イオシスカンパニーの跡取りだ!」

そんなれいむに対してうどんげはそう言い返す。
そして、睨み合ううどんげとれいむ。

「…呆れた奴だど、まだそんな事言っているのかど。」

「今だ、そんな事にこだわっている時点で器が知れたな、あまりにも小物過ぎるでしょう。」

てんことれみりゃは呆れ顔でそう言い放った。

正に、一触即発とはこの事を言うのだろう。

「ゆきゃああああああ!」

そして、赤ちゃんれいむが、うどんげの腕の中で凄い勢いで泣き出した。

「ああもううるさい!一体どうやったら泣き止んでくれるんや!
おーよちよち!いい子だねんねしなー!」

「おお、いない、いない。」

「ゆぅきゃあああん!ふらぁああああいい!」

「…あのさ、てんこちゃん、あの泣き声…。」

「気持ちは解るが、ここはスルーすべき、そうすべき。」

うどんげは必死で赤ちゃんれいむをあやしている。
チビきめぇ丸も手伝ってくれているが、全然泣き止んでくれない。

「…そんなに大変なられいむが手伝ってあげようか?ホラ、プリーズ。」

れいむはそう言ってうどんげにもみ上げを差し出す。

「ああ、それはどうもご親切に…って騙されるかぼけぇ!」

うどんげはノリツッコミ!
「チッ。」
れいむは舌打ちした。

「ゆっきゃあああん!…!」

と、その時だった。

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それまで元気に泣きまくっていた赤ちゃんれいむが急に泣きやんだのだ。
それだけならまだ良い、
問題は、その後凄い勢いで痙攣し始めているという事だ。

「!?子供の様子がおかしいぞ!
 おい!聞こえるか!?しっかりしろ!」

うどんげが通訳を通してではなく、地声で赤ちゃんれいむに問いかける。

「…!…!…!」

しかし、赤ちゃんれいむは痙攣ばかりで何の返事もしてくれない。

「ちょ、ま、まさか色々連れまわしたから変な病気にかかった…。」

「違うよ!それは病気じゃ無い!熟したんだよ!」

突然の事態に困惑するうどんげに対して、れいむはそう叫んだ。

「え…じゅ、じゅく…?」

聞きなれない言葉に戸惑ううどんげ。
れいむはそんなうどんげに向かって説明する。

「れいむの赤ちゃんは今、自らの力でその身体を蔦から切り離して
地面に降り立とうとしているんだよ!正に今!れいむの赤ちゃんは真の誕生を果たそうとしているんだよ!」

「よ、良く解らないけど、とても大事な局面なのは解ったわ。」

「で、でもどうしよう!こんな所で熟す何て事は考えてなかったから何の準備もしてないよ!」

れいむは慌てて辺りを走り回っている。
「おいぃ!?なんだか知らないが、このままじゃあ赤ちゃんがヤバイのが確定的に明らか、れみりゃ、何とか出来ますか!?」

「れ、れみりゃに言われても赤ちゃんの事なんて全然解らないんだど!」

れみりゃもてんこもパニックになってしまい、その場の収拾がつかなくなってくる。

「お前達!その辺うろうろ走り回ったって仕方ないてんこ!」

しかし、その中で一匹だけ冷静なゆっくりがいた!

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何でこんな所にいるのか、もうその理由さえどうでも良くなってきているゆっくり、らんであった!
らんは何処にしまっていたのか小さめのクッションを取り出すと、赤ちゃんれいむの真下に敷く。

「こうやって落下の際の衝撃を和らげておけば、生まれてそうそう怪我をしなくて澄むてんこ。」

「おいぃ、お前意外と詳しくないですか?」

「ちぇんとの将来に備えて色々勉強したてんこ!」

らんはフフン、と胸を張ってそう言った。

「…!…!…!」

そうこうしている間も赤ちゃんれいむは無言で気張っている。

「が、頑張れ!赤ちゃん頑張れ!ホラ、ひっひっふー!ひっひっふー!」

れいむは赤ちゃんれいむを励ましながらラマーズ呼吸法を実践している。
「…あの、ここでラマーズ呼吸法を使ったところで意味がないんじゃ…。」
うどんげがれいむにそうツッコミを入れると。
「バカだね!ラマーズ呼吸法を通して赤ちゃんにエネルギーを送るんだよ!」
れいむは自信満々にそう答えた。

「そ、そうか、じゃあ私も…ひっ、ひっ、ふ~。」

それを聞いたうどんげも、ラマーズ呼吸法を始める。
赤ちゃんれいむを挟んで二人のゆっくりがラマーズ呼吸法をする光景。
傍から見れば、かなり異様な光景であった。
しかし、本人達から見れば真剣な光景なので、れみりゃ達は必死で吹き出したりするのを我慢した。

「…!…!…!フンヌギャああああああ!」

そして、とうとうその時が来た!

赤ちゃんれいむが物凄い踏ん張り声とともに、その体時を繋いでいた部分をぶち切ったのだ!
重力に従い、落下する赤ちゃんれいむの身体!
その身体はらんが敷いたクッションの上に見事に着地した!

「おぉ!」

「やったど!」

その光景を見て、れみりゃとてんこがそう声を上げる!
しかし、その直後だった!


ポォオオオオン!


赤ちゃんれいむの身体がクッションの弾力で思いっきり跳ね上がったのだ!
風に乗ったれいむの身体は予想以上に大きく飛んで

飛んで。

飛んで…。


「あぁぁあああああああああああ…。」


ドップラー効果を起こしながら屋根の下へと落ちてしまったのだ。
お忘れないようにいっておくが、ここは地上数十階にも及ぶビルの天辺である事を忘れてはいけない。


「…えぇええええええええ!?」


れいむ、うどんげ、殆ど同時に絶叫。

「おいィ!?お前、何がどうしてこうなった!?」

てんこはらんに思いっきり怒鳴りつける。
「ご、ゴメンてんこ!クッションの弾力が予想以上だったてんこ!」
らんは冷や汗交じりにそう言い訳する。。

「ありすぎだど!赤ちゃんが数メートルも飛ぶほどの弾力を誇るクッションって一体どんなクッション何だど!」

もはやクッションと言うより、トランポリンでは無いだろうか。
「ちょとこれシャレにならんでしょ、間接的とは言え、殺ゆっくり罪なのは確定的に明らか。」

「ちょ…!」

らんは顔を真っ青にする。

「赤ちゃーん!」

「ゲラゲラゲラゲラーーーー!!」

れいむとうどんげは凄い叫び声を上げながら赤ちゃんれいむの落ちた方へと向かっていく。
その時だった。

「…よっこいしょ。」

そんな親父臭い声を上げて、てゐが屋根の上へと登ってきたのだ。

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「あーびっくちした。」

「びっくりしたのはこっちだって言うの、何で上から落ちてきたのさ?」

その頭の上に、赤ちゃんれいむを乗せて。


『…あかちゃぁああああん!』


その様子を見て、れいむとうどんげは凄い勢いでてゐに近づいてきた。
「う、うわ!ちょっと落ち着きなよ!」
凄い憩いで迫ってきたゆっくり二人に驚きながらもてゐは赤ちゃんれいむをれいむの頭の上に乗せる。

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                                         'ー'  !_,./

「赤ちゃーん!もう大丈夫だからね!安心してね!」

「良かった…本当に良かった!」

「おかーちゃんもちょっとしんぱいしちゅぎ!」

そう言ってくる赤ちゃんれいむを、れいむも、うどんげも笑顔であやしていた。
その光景を見て、てゐは呟く。
「…あれま、あの二人、子供の件についていざこざし合って居たんじゃなかったっけ?」

さっきまで、子供は自分の物だ自分の物だと争っていたのに、その肝心の子供を前にするとそんな事を忘れてしまう。
実にゆっくりらしいというか、何というか。
それとも子供というのには場を和ませる力があるというのか。

「…ま、後は私らがああだこうだ言う問題でもないって事かな。」

なんとも喉かな光景を見て、てゐがそう呟く。

「てゐさーん!無事だったのかど!」

「やっぱりてゐに隙は無かった!」

と、てゐに向かって、れみりゃとてんこが向かってくる。

「あ、れみりゃ、てんこ!そんなに心配していたの?」

こっちに駆け寄ってくるれみりゃ達に向かっててゐがそう呟く。

「あ、当たり前だど!こっちがどれだけ心配したと思ってるんだど!」

「ハイハイ、解った解った・・・ところで、一つ聞きたい事があるんだけど。」

「え?」

てゐは突然、身体を仰向けに寝かせる。
そうすることで、身体の下の部分が丸見えになる。
そして、からだの下の部分には、ある物が付着していた。

      ∞
      ∬∬
     ■□■
     □■□
     □■□

「…こ、これって…。」

「さっきあの赤ちゃんを助けたときにうっかり踏んづけちゃったんだけどさ。
 …これ、鳥のフンじゃ無いよね、明らかにゆっくりのう○こだよね。
 このうんこに見覚えはない?」

てゐは静かに殺気を放ちながらそう問いかけた。

「え?」

「ええと…。」

れみりゃとてんこはゆっくりと、後ろを振り向く。

              :.∧     ○、,_:
        :○、.,_ /  ',   / `ヽ.`ヽ.:
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    :!ァ'´  ゝ、 !. / ァ'/!  、`ヽ、___7、  ,ハ   |:
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      `ヽ./!>.,、.,___ ,. イ;'/、/_!/>、,__,.>'´:

後ろではらんが、恐怖に染まった表情のままで固まっていた。


地獄絵図になるであろうてゐ達の方は放って置いてとりあえず、話は赤ちゃんれいむとその関係者達の方へと戻そう。
「…スピースピー…。」
赤ちゃんれいむはと言うと、母親の頭の上で呑気に眠っていた。

「ゆふふ、よく寝ているね。」

れいむは寝息を聞いて何だか笑顔だ。
「…ゲラゲラゲラゲラ…。」

「あの、住みませんが、子供を私に抱かせてくれませんか?」

と、うどんげがれいむにそうお願いして来た。

「…そう言って、そのまま子供連れてとんずらするんじゃないでしょうね?」

「ゲラゲラ。」

「…それはしないって、ねぇ、お願い。」

うどんげはそう言ってれいむに向かって水をすくうように手を差し出した。
「…ちょっとでも怪しい仕草をしたらすぐにぼこるよ。」
れいむはそう言うと、頭の上の赤ちゃんれいむをうどんげの手の上に乗っけてあげた。
うどんげは赤ちゃんれいむの寝顔をじっと見つめている。

「…こうしてみると、あいつの・・・きもんげが赤ちゃんの頃を思い出すわね。
 寝顔が実にそっくり。」

「え。」

それを聞いたれいむが明らかにいやな顔になる。

「そんなにいやな顔しないでよ…こうして子供を抱いていると、
 あの頃を思い出すわね…。」

「あの頃?」

「…きもんげが子供の頃よ。」

きもんげが生まれた時、医者はうどんげたちにこう告げた。
きもんげは生まれつき身体が弱い。
恐らく、普通のゆっくりの3分の一も生きていられない、と。
それを聞いたうどんげは落胆してしまった。
その時、うどんげの妻…つまりきもんげのお母さんはこう言ったそうだ。

「普通のゆっくりの三分の一しか生きられないのなら私達が3倍の幸せを送ってあげましょう。
 それが、あの子にとって一番のゆっくりした贈り物になるはずだから…と。
 …私は妻と約束したわ、あの子にそんなゆっくり生を送ってあげられる様にするって。
 妻が永遠にゆっくりしたのはその直後だったわ。」

うどんげは喋っているうちに俯き加減になる。

「…私は怖かった、妻だけじゃなくて、子供まで私を置いていってしまうことが…
 だからあんな所に押し込んで、少しでも長く生きながらせようと…
 バカよね、そんな事したって、妻が喜ぶはずがないって解ってたのに…ね。」

ふと、うどんげの顔に何か光る物が零れ落ちた。
俯いていたのでれいむにはよく解らなかったが、それが涙であることは何となく予想がついた。
その涙は、手のひらに乗っかっていた赤ちゃんれいむの顔に掛かってしまう。

「む~ちゅめたい…。」

眠っていた赤ちゃんれいむはゆっくりと目を覚ます。
目を覚まして、まず視界に入ったのはうどんげの顔だった。

「…ねぇ、なんできみはないてりゅの?」

「え?」

赤ちゃんれいむに問いかけられてうどんげはきょとん、となる。

「どんなことがあったのかわからないけど、これでゆっきゅりげんきだしちぇね!」

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赤ちゃんれいむはそう言って手のひらをすりすりし始めた。
…うどんげは更に大粒の涙を流し始めた。

「ゴメン、ごめんなさい…私の勝手なわがままで、親と離れ離れにしちゃって…。」

「え!?な、なんでないちぇるの!?れいみゅのせい!?ゆっきゅりなきやんでね!!!」

赤ちゃんれいむは慌ててうどんげにそう語りかける。

「赤ちゃん、良いんだよ。」

「え?」

突然声をかけられて、振り向いてみると、そこには母の姿があった。

「思いっきり泣いた方が良い時もあるんだよ、とてもすっきりするからね。」

「にゃるほど!またべんきょうになったにぇ!」

赤ちゃんれいむは無邪気にそう叫ぶ。
うどんげは赤ちゃんれいむを手に持ったまま、大粒の涙を流し続けた。


「て、てゐさん!やめて!やめててんこー!」

「うるせぇええええええええええええ!」


…そこから離れた場所では、らんがまた違う意味で大粒の涙を流していた。


~☆~


戦い終わって日が暮れて、ビルのふもとの公園で。

「ありがとう!皆さんが居なかったら今頃どうなっていたか解らなかったよ!」

れいむはてゐ達に向かってお礼を言う。

                                                       |`\     ,. -──-...、    ト、 ./|
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    /      ハ├──-//i    i       rー-、,.'"          `ヽ、.          ./ ∧ |,.-‐イ`i7ァニi"´ト-| ,ハ    ハ
   ,'      / ソ::::::::::::::::::ヽ、!    |      _」::::::i  _ゝへ__rへ__ ノ__   `l         /   ∨  r'─ ァ‐r-─'ァ. レ'`ヽ! / !
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   ハ:::::::レヘ::i' rr=-,´   r=;ァハソ:::ハ    / / ハ ハ/ ! /// ヽ_ ノ /// i  ハ  〈〈{_   ノ  } | __,/  /∧、  |o|>-、  `ヽ/ /
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          ((
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「イヤイヤ、私達は自分の都合で動いただけだって。」

別に照れるでもなくてゐはそう答える。

「そこの狐みたいなゆっくり、幽体離脱してるけど大丈夫?」

「気にしないで下さい、一応本体は呼吸していますんで。」

浮遊霊状態になりながらもらんはそう答える。
…まぁ、確かに大丈夫には違いないだろう、このゆっくりがこんな目に合うのはいつもの事だ。酷い話だが。

「ホントに大丈夫何だど?またあの会長さん子供にちょっかい出そうとするんじゃ…。」

「その心配は無いよ、今度会うときは、イオシスカンパニーの会長ではなく、この子のおじいちゃんとして会いに行くって言ってたし。」

れいむはそう言って、頭の上の赤ちゃんれいむを見せる。
赤ちゃんれいむは、何も言わずに黙り込んでいる。

「…そっか…じゃあもうあたし達が心配することもない訳だ。」

「うん。」

てゐの問い掛けにれいむはコクリと頷いた。
「…よかったーよーやっとあの赤ん坊から解放されるわけかぁ…。」
それを聞いたてゐはほっ、と全身の力を抜いてフニャッとなる。
今までどれだけ大変だったか、この様子を見れば一目瞭然だ。

「てゐさん、そろそろ帰らないと、みま様が心配してるど~。」

れみりゃがてゐにむかってそう呼びかける。

「…別にあんなババアが心配するとも思えないけどねぇ、
 ま、とりあえず帰りますか。」

てゐはそう言うと、赤ちゃんれいむの方へと近寄る。

「そんじゃあ、縁があったらまたって事で。」

「…おとうちゃん、どきょかいくの?」

「ん?別れが寂しいってのか?そんな心配しなくって良いって、
 そうだ、お前が酒が飲めるくらいの年齢になったら良い所に案内してやるよ。」

てゐはそう言って耳の先で赤ちゃんれいむのオデコをつっついた。
…途端に赤ちゃんれいむのか尾が涙目になる。

「どうしたの?おでこ、思いの他強く突っついちゃった?それとも別れが惜しいの?」

「お…。」

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      r , -`―'- 、イ、
     イi イ人ルレ ン、
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゜    .(" U Д U" []ノ i   ゜
     `ー―――'レル'

「おとーちゃんがおかーちゃんとれいみゅをすてるきだー!」

「え?」

いきなりそんな事をいって泣き出した赤ちゃんれいむを見て、てゐはキョトンとした顔になる。

「…あ~。」

「この赤ちゃん、てゐの事をまだお父さんだと誤解したまま何だどね。」

てんことれみりゃがその様子を見て、何となく状況を理解した。

「ひどい!ひどい!さんざんもてあちょんでおいちぇ、あきちゃらぽいだんだにぇ!」

「い、いや!それは違っ…!」

言いかけててゐは気づく。
周囲から、冷たい視線が突き刺さっていることに。

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  \_ \ /´ カナこン´  `  /レ'´ /_,/         i    _..,,-":::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::{   '  }r-''''フ
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      |  ー 、          ,r',.:'"  '/~~`ヽ、    :|      .'    '; i i  i  !  i  } }   i
      |   ;:|`ヽ、__ヾ   , /;;;;;;;:::"/!     ヽ   |     ,' i  ' ; ゝ、人人ノ/_ノノ / ノ   、
      i   ;:|     ヽ    ,| ヾ、   `)     \  !、     i ヽ |           / /  i  '、
       !   ;|      |    |   ヽ  :/       ヾ  :i!     ! |\.|     Y     ( /|   |   '、
       |  ;:|       !  ,:,i    / .:|        |  :|     ヽ V 人    |     人   人   '、
                                         、_)ノ ノ \_人__/イ/ ( ノ (._
               )フ
  ウ--,,          ノ フ
   フ   ̄ ̄ヽ...--.../  フ
    フ    ......ヽOノ.............フ___
   フ  /::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ/
  <>/==─::::::::人::::─==ヽ ?
   >ノ:::::::::::::::::::::ノ  ヽ:::::::::::::::::ヽ
   クノ_ノノ_ノ/ゝ、   /ヽ:::_ヽ_ヽ
   __ノ::::::::::r  ●    ●人::::::)
 ∠:::::::::::::::::|”"   ,___,  "''|::::::/
  ノノ >:::::::人.   「  Y   ,'::::ヽ
   /:::::::::::::::>,、 _i` ´_ ,.イ::::::::::\


「まぁ、捨てるですって…?」

「あんなかわいい奥さんと子供に対してよくそんな酷いことがいえるんだぜ!」

「おぉ、修羅場、修羅場。」

周りを見回すと、公園を散歩していたであろうゆっくり達が一斉にこちらを見つめていた。
てゐはゆっくり達の避難の視線を一身に浴びていた。
その様子を見て、れいむはてゐに向かってこう言った。

「…あの、いっその事?ホントに一緒になろうか?」

「そんな余計なことは言わなくて良いってぇええええ!」


夕暮れの中、てゐの叫び声が空に吸い込まれていった。




第二十四話、終わり

  • 良かった! -- 名無しさん (2010-06-02 07:26:34)
  • >周囲から、冷たい視線が突き刺さっていることに。
    一人寝てるー!(ガビーン -- 名無しさん (2010-06-03 20:17:31)
  • クッションは低反発性にすべきそうすべき
    ところでうどんげっておじいちゃんだったのか?前の話ではおばあちゃんだったような気が -- 名無しさん (2011-02-02 16:05:28)
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最終更新:2011年02月02日 16:05