正義と聖人不在の宴

※東方原作キャラが登場します
※ちょっとした百合表現あり
※ハロウィンということで、シンプソンズのスペシャルみたいなものと思ってください



 夕食後、気の向いた時や何か良い事があった時、おすそ分けがあった時には、
霊夢殿は果物を剥いてくださったり、お菓子を出してくれたりするのですが、
寝る時間が近い事もあり、日中のおやつよりもほんの僅かな量なのです。

 それが、今日は卓袱台のお皿に大盛にお菓子が盛られています。

 キャラメル・チョコレイト・マシュマロ・ビスケット――――普段口にしない洋菓子
ばかりで、きれいな包み紙もあって、まるで中身を広げた宝石箱のよう。
 最初、私が籠を持って却って来た時は、私への心配半分・怪訝さ半分といった
表情の霊夢殿でしたが、キャンディの最後の一個を並べると、ようやく笑顔を見せて
下さいました。

 「ほら! 大丈夫だったよ! ちゃんといけない事もしなかったし、お菓子もいっぱい
  もらってきたよ!!」
 「まあ―――でかした って言っちゃいけないかな、これは……」

 夕方頃、リグルさんとルーミアさんが神社の前に集まっていて――オレンジ色の、
変にぶかぶかしたズボンを履かされたり、怖い顔のお面をつけたりして、3人で遊びに
連れられました。
 勿論、霊夢殿に許可は頂いてから、これだけ夜遅くまで歩いていたのですが、
中々楽しい御散歩でした。
 ミスティアさんの屋台・古道具屋・人里・紅魔館―――と巡ってきたのです。

 「あのね、あのね! 『とりっくあんづとりーと』 って言ったらね! 店長さん達と、
  門番さんと、先生がね! 笑いながらくれたんだよ!」

 用意していたのか、一番奮発してくれたのは、門番さん。
 ちょっと寂しそうだったのが、人里の入り口付近で、それ以上中には入れてくれなかった
慧音先生。

 「ああ、ちゃんと見張ってるのね………」
 「行きたかったな……」
 「今は  まだやめときなさい」
 「どうして?」

 同じく、少し複雑な顔で考えてから、「どうしても まだね」と霊夢殿は言いました。
 そんな気持ちを振り払うように、歯磨きをキチンと念入りにする事を条件に、2人で
戦利品を食べ始めました。

 「お礼はちゃんと言った?」
 「大丈夫だよ!」
 「あ―― でも、本当はお礼を言うもんじゃないのか、あれは」
 「ゆゆっ?」

 何でも外の世界の、西洋圏における「ハロウィン」という行事だそうで――――
 子供らが、妖怪の扮装をして、近所を回り、
 『トリックアンドトリート』
 とうと、あらかじめ用意してもらっていたお菓子をもらって回るのだそうです。

 「考えて見れば、幻想郷じゃ毎日がハロウィンだわ。ナンセンスね」
 「楽しかったよ!」
 「そりゃ楽しいでしょうけど、結局子供の遊びだわね」
 「ゆゆぅ…………」

 そういえば、もう外の世界には殆ど妖怪がいなくなっているのだとか。
 「産業革命」という現象が起こった圏内の風習がこのハロウィンだとすれば、なるほど
妖怪に紛争して擬似的に近辺を「襲う」事で、昔ながらのそうした脅威を語りづいていこう、
忘れずにいよう、というどこかノスタルジックな行事と考えられましょう。
 逆に言えば、それだけ外の西洋圏では妖怪の存在が日常から失われてしまったという事
なのでしょう………
 私を連れ出してくれたルーミアさんも、レミリアさんと同じくそちらの出身だったはず。きっと
思うことがあるのでしょう。

 「いやーあいつらにそんな感傷が有るわけないでしょ」
 「でも………」
 「ああして、子供の頃から強奪の準備を始めてるのよ。野蛮ねー」
 「ゆっ?」
 「『お菓子をくれないといたずらするぞ』って意味らしいのよ」

 そんな。

 「『とりっくあんどとりーと』ってそんないみだったの!!?」
 「まあ冗談だって皆わかってるから……」
 「おっと、それじゃあ、『いたずらしてお菓子ももらってやる』って意味になっちゃうよ! 『アンド』
  じゃないよ 『オア』 だよ!!!」


 ―――ああ………

 美味しい料理の上に、しばらく出しっぱなしにして無味無臭になった醤油でもしとしとかけるような………
禍々しい声……
 多少雲行きは怪しくなってきたとは言え、本当に幸せな時間を台無しにするような、もう自分の
中の芯の部分が―――アイスキャンディーで言えば、棒の部分だけ内側から何らかの力で溶かされて
いくような、細菌兵器のような声です。
 そう、大事な核(コア)が奪われるような
 それは私の背後から聞こえてきました。



 そう、あの紅白饅頭でした。



 本当にあんなモノが幻想郷どころか、この世に存在している事自体信じられません。

 「あら、あんたいつのまに来てたの」
 「そこまで詳しいんだったら、正確におぼえてないとね!!!」

 ちなみに、外来語だという事は解るのですが、「アンド」と「オア」の発音が異様に気持ち悪い!
 本人はもっともらしく性格に口に出しているつもりなのでしょうが、却って胡散臭い事この上ありません。

 「それにしても乱射魔のバイタリティには恐れ入るね!」
 「あんたも―――――いつのまにそんなもの作ったのよ。驚いたじゃない」

 ――――最初から無視するつもりでした。
 もういないものとして、振り返りも反応もせずに、霊夢殿とこのまま語らい、お菓子を食べ続けようと思って
いました。
 声が聞こえようと聞こえまいと、霊夢殿に向き合っているつもりでした。
 そうすれば、向こうもその内退散するものと思っていました。
 にも拘らず――――霊夢殿はごく普通にあの紅白饅頭と話されているのです。
 世界で最も無駄な時間だというのに…………
 もう、神社の中に入っているという事だけでこちらは心のどこかが小さく黒ずんでくるような気さえしてくると
いうのに、会話をしているだけで、美しい霊夢殿の口元が、そして肺までも汚されて行くような気持ちです。
 一刻も早く、やめてほしいのに………
 霊夢殿の言う「よく作った」というのが何なのかも気になってしまいました。
 私は、ついに振り返ってしまいました。



 すぐに後悔しました。



 最初に目に付いたのは、「屋根」です。
 屋内なのに屋根――――
 おそらく素材はダンボールというものでしょう。
 高さと広さはは、ちょうど60cmほど
 似たようなものは、人里付近で田畑の辺りによく見つけました。
 森の中にも、大小の違いはあれど、よく似たものが建っています。


 小規模な、祠が、部屋の隅に作られていました。

 はっきり言います。



 かなりの完成度です。



 ダンボールという素材が、かなり使い勝手がいいという事は藍様に昔教えて
いただいたのですが、それにしても、元々の材質が紙である事を考えるとかなり
の技量を要する事は素人目にも解ります。
 一見するとシンプルですが、基本的な造りがしっかりしているので、耐久性も
非常に高そう。
 そしてデザインとしても、祠という一部屋のみの小規模な空間なのですが、
見事に神社という一つの建造物を、コンパクトにディフォルメされています。

 紅白饅頭は、その中に実にふてぶてしく、ゆっくりと座って(?)いたのですが――
――――これだけなら、まだ誰が作ったかは知りませんが、そこそこ感心していた
だけなのですが――――


 私は、その、中央に掲げられた看板を見て―――舐めかけのまだ固いキャラメルを
粉々に 噛み砕きました

 書かれていたのは



                ―――  は く れいじん じゃ ―――





                     殺意が湧きました




                       レ'(○) ,レ'(●)  ハ





 おそらく、クレヨンでしょう。
 最近お絵かきはとんと離れていましたが、私も藍様にいただいた8色を、まだ大事にしまって
ありますが、はっきり言って、クレヨンより、他の素材―――例えば色鉛筆といったものの方が
正確に文字を書けるという事くらいは解っています。


 「は」の字だけが極端に離れ、その後のバランスを獲ろうとしてしっぱいしたのか、かなり文字の
間隔がちぐはぐになっていました。




 この辺りにも、泥ヘドロの様な凶悪なあざとさを感じます。




 そもそも、この祠自体も、計算されつくした頑健な造りだという事も、高度な技術が用いられて
入る事も解るのに、所どころ、耐久にはギリギリ影響が出ない範囲で、とても拙く見える部分が
あるのです。
 完成度の高さは褒めましたが、もしも遠目に見たり、一見すると、実は本当に子供が作った
ようにも見えるようなあしらいが随所に張り巡らされていました。

 何より、その文字の拙い事―――――

 実際に紅白饅頭が書いたのではなく、人間の幼児にでも描かせたのか―――この看板だけで
印象がかなり変わります。
 平仮名という点も大きいでしょう。


 これが、本当に「博麗神社」と漢字で書かれていたのならば――――

 別のベクトルの怒りで、私は我を忘れていた事でしょう。


 そしてこれがもし――――平仮名で 「れいむのおうち」  とか 「ゆっくりハウス」 とか書かれていたら



 私は今度こそ正気を保っていなかったでしょう



 全体に張り巡らされた高度な計算と、それと同じく高度なあざとさ・媚びっぷりに、吐き気を覚えながらも、
私は噛み砕いた飴の破片を飲み込みました。
 そう、怒りも一緒に飲み込んだのです。
 後は無視しよう。
 そう決め込んで、チョコレートに手を伸ばすと、なおもの霊夢殿は話を続けます。

 「よく出来てる割には、汚い字だこと」
 「えへへへ 自分でかいたら失敗しちゃった」
 「その祠は?」
 「これも自力でつくったんだけどねー」
 「なーんか、子供っぽ和むわね」
 「簡易版・博麗神社 ってところだね!!! ここがれえむの新しいおうちだよ!!!」
 「あははは……… あんた可愛いわ!」








 気がつくと











 私は納屋から鉈を持ち出していました。














 「あったあった、これだね!!!  うんしょっ うんしょっ」




 そのまま、床を傷つけないように注意して廊下を歩いて、あの邪悪な毒気に充満された、
いつもの居間に戻ろうとしていたのです。
 鉈は予想以上に重たいものでしたが、ちっとも苦にはなりませんでした。

 「うんしょっ うんしょっ もうちょっとだにぇ!」

 頭の中で、できる限り明確にこれから先をシュミレートしていたのですが―――


 居間の前には、霊夢殿が――――そして、いつの間に来ていたのか、紫様までもが座って
おられました。
 一緒にお菓子でも食べていればいいのに――――
 ちょっと確かにこれから血生臭いことは起きるかもしれませんが、何あんな紅白饅頭ごときに
団欒が揺らぐお二人ではないでしょうに。
 それでも――――
 廊下に出て、こっそりと中を覗いておられるお二人は―――― 本当に楽しそう。
 霊夢殿は、顔を真っ赤にしていますが、何ともやりきれないような笑みを堪えきれ無そう。
 紫様は興味津々と言った様子。

 「ああ………」

 私は間違っていました。

 西洋の、略奪だか郷愁だか、あまり前向きではない背景があるにせよ、形骸化しても
楽しい行事の夜。
 ルーミアさん達との散歩は本当に楽しかったし、応じてくれた先生も、門番さんも、本当に
楽しそうでした。
 きっと、一仕事終えて休憩の紫様も、そんな夜を少しでも霊夢殿と共有したくてやってきたに
違いありません。
 きっとそうですとも。
 そんな楽しい時間を――――あんなふてぶてしい紅白饅頭に一々振り回されるなど、愚の骨頂。
 少しでも、あの御二方との時間と空間に、私一人が何を焦っていたのでしょう。
 私は、丁寧に壁際に鉈を置きました。
 紫様は私に気づいていない様子。
 何をご覧になっているのでしょう?

 「ほらほら、入っていくわよ」
 「―――……あいつら全く……」

 私もこっそり覗き込みました。





 あの紫様のゆっくり――――紫(むらさき)ババアが、いつのまにか涌いておりました。




 そして、あの禍々しい「は く れいじん じゃ」に入っていくのです。
 中では、紅白饅頭が相変わらずゆっくりしていました。
 そして―――………







 「トリック オア トリート  ですわ  れえむ」
 「ふん、いい歳して悪戯もお菓子もあったもんじゃないよ!! すこしはかんがえてね!」
 「せっかく来たんだから、ごちそうしてちょうだいな」
 「あいにく、10分前に作ったばかりだから、『れえむのおうち』にはまだお茶も出せないありさまだよ!」
 「あら………」


 ガタリ…………


 「お菓子ならここにありますわ」










                           _       / ̄7ヽ
                         /::::/\__,,,,....,,,,__|::::::::/|::::!
                         !:::::::| '"´\   /:::/、|::::ト 、/|  おいしそうな
                      __.\:::\__r'-‐ァ'<._// /::::/    甘ぁい  お饅頭(れえむ)v
                      \::::::/「>-‐'"´ ̄ ̄`゙ー-、><_/ヽ.
                        「´/              \/\   |
                        く/      /     /   ヽ ヽ、,ト、/
   ___   _____   ______.        [_i    i  | __./|  /|_..二、| / ∨
   ネ  _,, '-´ ̄ ̄`-ゝ、_''.        ',   | // _レ ´ '´|ノ r|レ'|  |
  、ン 'r ´          ヽ、       \ |,ハ rr=-,   r=;ァ  ! .|  !
   i ,'==─-      -─==',.         ∨./ ! /// ,__,.////,| !  \
  | i./イル_\イ人レン/i イ i.        /|/ ,|> 、,_/`l _,,..イ/ |    ヽ.
  ||. i、|. | . (ヒ_]     ヒ_ン).iイリj       / /〈ア´ ̄`∨  `'yiヽ/ /|  ,ハ   〉
  | iヽ「 ! /// ,___, /// !Y!.       ,|/ /::::::::::::::::|   ノく::|/ヽ| /    /
  .| |ヽ L」    ヽ _ン   ,.'」       / , 〈::::、_r、::::/  ムハ]>く]::∨   〈
  ヽ |イ|| |ヽ、       ,イ|| |     _,|/|  ゝ! __∨   |:::::Y::ハ::〉::::〉   ハ
   レ レル. `.ー--一 ´ルレ     }_ン[lく]ヘ  rァ'`ヽ!   /::::::::::レイ`∨   /  `ヽ.



















    ああっ目がぁ~目がぁああああ
         o-、       o、
         /ヽ、>     ,へ 〉
        />  ´ ̄`""''ー'__〉 ',
       /-r‐'T´i二rニヽ___ へi
      r',>''"i、ハ;:;:;:;:ハニ!r、!'ヽ、ト,、!
      Y /rノ)_;:;:;:;:;:;:_r= `ヽヽ 〉   ト 、
      /  _r‐';:rェェ;:ー、_  ,,,へ   ノ  ,ハ  ,|
    / γ';:;:;:;:|r‐r‐,|;:;:;:;:<'''  ィ⌒ヽ^^^ .!/ |
   へ  ∧   `ニニ´   \f"    \  |、/ヽ|
  ハ  \| レ>.、.,,___,,..イナり )      i  ,ハ  |
  | ` ーくk   メ にも メ f''       | /   /
  k    ヌ  ||:::::::::::::::::::||        /   /
  `、   /  ||:::::::::::::::::::||  ヽ    / -‐<








 もう何も見えません。
 しばらくは何も見たくはありません。
 目を通じて、自分の中の芯の棒が、腐食していくような思いでした。
 思わずその場でへたりこんでいると、

 「あら………去年の私達のやりとり、何で再現してるのかしら」
 「紫・・・・・・、そのあれは……」

 と紫様と霊夢殿のやりとりが聞こえた気がしましたが、それどころではありません。

 「ほら、らんしゃま、どしたの? 紫の奴が遊びに来てくれてるわよ?」
 「もうおねむさんの時間かしらね?」
 「うう………霊夢殿……紫様ぁ………」

 目の見えない私を、紫様は抱きかかえて下さったようです。
 本当に暖かい――――
 続いて、霊夢殿のお膝に移して下さいました。
 御布団にいるより、縁側で日向ぼっこをしているよりずっと気持ちがいい―――
 ゆっくりと優しい手つきで撫でられていると、私も大分落ち着いてきました。

 「おおきな声出しちゃってごめんなさい………」
 「まあ、ハロウィンだし」
 「らんね? いまね? とってもこわいものみちゃったの!!! こわきゃったよう………」
 「ハロウィンだから仕方ないかしらね」
 「それはそうと………」

 それはもう―――絹を擦るような、ギリギリ私に聞き取れる声で―――目は開けなくとも、
近づいてきた事が解るので、きっと霊夢殿の正面で言ったのでしょう。

 「Trick or treat かしらね? 霊夢」
 「………あんたまで……」
 「ハロウィンですもの」
 「だからって」

 私はようやく目を開けて、紫様を見上げました

 「魔理沙から借りてきたの?」
 「似合うかしら?」
 「不自然」

 あの白黒の魔法使いの帽子を被っています。
 これは愛らしい……
 しかし、私はここでまた違和感に気づきました。
 久しぶりに、紫様は洋装だったのですが、いつもの手袋が肘の上に来るくらい、少し長くて、
そしてやけにピッタリと肌に吸い付くような素材の上、てかてかと光沢を纏った黒なのです。
 と―――

 「これならどう?」

 紫様は元々色が白いので――――紅く塗られた唇が、今日は殊更花の様………
 そして――――あの手袋と同じ素材の、胸から下へ皮膚の様に広がり、細い紐だけで
留められた黒いドレスのせいで――――肩から上が、まるで美しい高山の雪の様。
 たしかに絵本で見た西洋の「悪い魔女」にそっくりです。
 あんなおばあさんではありませんが、相手の心をとらえる妖しい存在という意味では―――

 「寒くない?」
 「正直ちょっとね……うふふふ」

 そう言う霊夢殿は、夏のあの日の様に真っ赤です。
 こちらまでその熱が伝わりそう。

 「さっ、お菓子を………」
 「あ、ごめん。それは無い」

 俯いたまま、卓袱台の上を霊夢殿は指差しました

 「もう食べちゃったのよ」
 「…………?」
 「らんしゃまと」

 紫様は少し考えてから、クスリと意地悪く笑いました。
 そしてやや俯き加減な霊夢殿の頬に、そのたおやかな手袋を優しく当てます。

 「それなら………」
 「……………………」




 ご馳走 か 悪戯か




 「解っててやってた?」
 「そんな訳ないでしょ! そういうのは早いんだから、ベタベタしなさんな! あんたにあげる菓子なんて
  無いって言ってるのよ!」

 紫様の手を振り解こうとする気は、それでもさらさら無い様です。
 クスクス笑いながらも――――少し困ったように、そして気まずそうに―――ちらり、と紫様は私を見ました。
 続いて、霊夢殿も、私をとても申し訳なさそうに見ます。






 ―――なるほど   それなら仕方がありません



 私にはきちんと理解できました。
 勿論、こんなことでひがんだりはいたしません。
 自分の置かれた立場、お二人の状況、ちゃんと察する事ができます。

 ああ、それにしても優しいお二人

 普通なら、ここで空気を読めなかった私をもっと咎めてもいいはずなのに、優しく促してくださいました。
 寂しくないといえばウソになりますが、そんな事はどうでもいいのです。
 寧ろ、その口実やお二人の会話に少しでも私の名前が出たことだけでも幸せ。
 この場を離れる事など、全く苦ではありません。

 「ちょっと いってくるね!!!」

 ぽとり、と霊夢殿のお膝から降りてから―――私は一度だけ振り返りました。
 先程と変わらないお二人
 でも、本当に美しいお二人
 本来ならば、楽しい夜なのです。
 私は十分に、先程もらいました。


 「さ て と」


 改めて、居間を覗き込むと、紅白饅頭と紫ババァは、「お茶など無い」といったにも拘らず、
自前らしいお茶をちゃんと入れて、座布団まで敷いて、2人でゆっくりしていました。

 私には気づいていません。

 ふすまを閉め――――先程の鉈を両手に持って、私は向かいました。













           l :::       |                 : ○、,_ :
               l :::       |     : ○、.,_ :     : / `ヽ.`ヽ. :
\ヽ l|l|l|l // l ::       |    : /´ `ヽ) :    : /、    ':,_,ノ :
\         / l :::      |    : ,'   _[_`ゝ-‐''´ヽ、/     ! :
二   邪    二 .l      |   : ,'  ´             | :
―   教    ― .l        |  : /_.7-‐ァ' ̄!二7´ ̄7ヽ、/`ヽ._! :
二   の      二 .l ,、-_,ニニ| : r' ̄7-‐'"´ ̄   ̄`ヽ、_!`ヽ、___! :
―   館      ―  l´'" .:.::::::::.| : !ァ'´   , _!_ ,   ,ハ-‐!  、`ヽ、___7 :
二   へ     二   l .:.:.::::::::::.|;'  ,' /´ゝ、!. / ァ'/ノハ/! ヽ. ヽ ! :
―    ・    ―:   l .:.:.:.:::::::: |!  ! ;' .(○), V::::: (●)  ! /!  ハ! :
二    ・    二   l .:.:.:.:::::::: `ヽ! !'"" ,____, "" .レ' ,' ./ | :
//   ・    \    l_;,: -‐、‐'ト、_レ'7    ヽ _ン     .,' レ' :
 // l|l|l|l ヽ\  i´  _,,....L:;_)〈  ヽ、         ,イ / ハ :
              〉 ''"~´ _j,, )` `ヽ./!>.,、.,___ ,. イ;'/、/_! :
              l  、-''"´_,,.::.〕 ./  \     //  i
              〕  、-''"´_,..、〉゙     \  ,、 '゙//    l i
              i゙:';;  ,ィ-'゙-─-、,    ヽ、`´ V    |l
              l::';; /!  _,.、- ゙!   ゙''  `ヽ、 ヽ.    l|



                             了

  • らんしゃまが相変わらずいいキャラしてるというか、鉈辺りからずっとわらいっぱなしでしたw -- 名無しさん (2010-10-31 04:55:56)
  • ハロウィンだからって何でも許されると思ったら間違いだぞ!!w乱射魔って奴、もはやL5の域 -- 名無しさん (2010-10-31 16:49:50)
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最終更新:2010年10月31日 16:49