ミリィのゆっくり冒険記 第七話

※ヤンデレ要素を不快に思われる方
※ゆっくりを野生動物として扱われるのを不快に感じる方
※捕食種設定を不快に感じる方
※ゆっくりの戦闘シーンを不快に感じる方
※酷い目に遭ってしまうゆっくりがいるのを不快に感じる方
※素晴らしい小説を求めている方

は、この小説に合いません。
申し訳ありませんが、ゆっくりお引き返しください。


















それでも良ければどうぞ





「見つけたあああああ!!!!お姉さまああああああ!!!!!」

ミリィとマーサにとって、どこかで聞いたことある叫び声。
誰の声なのかを思い出す前に、その声の主は3匹の目の前に現れた。
その声の主を見てマーサは叫ぶ。

「ふ、ふりゃんだああああああああ!!!!!!!」







ミリィのゆっくり冒険記 第七話







「ふ、ふらん………?」

ミリィが呆然とするのも無理はない。
昨日会ったふらんと同一人物のようだが、姿形はまるで違う。
片方の翼がなくなっている訳ではない。
翼はすでに再生し終わっている。
では、何が違うのか。

金髪の髪に下ぶくれのある顔…そこまでは同じだ。
しかし、そこに紅い服を着た胴体と手足が付き、虹色に輝く一対の羽は背中に当たる位置まで移動している。

ふらんは胴付きになっていたのだ。



「もう!お姉さま!昨日会ったばかりなのにもう私の顔忘れちゃったの!?」

ふらんは怒ったような口調、しかし嬉しそうな笑みは崩さない。
このシーンだけを見ると生き別れた姉妹の感動の再会シーンかのようだ。
しかし、現実は違う。

「ふらんねぇ…」

ふらんは体を震わせている。
それは恐怖などではない、ましてや怒りなどでもない。

興奮を隠せないためだ。

「お姉さまと…


あそびたいのおおおおおおおおおおおお!!!!」


もう我慢できない!
それを全身で表現したふらんは、翼を羽ばたかせ、地上にいるミリィに体当たりを仕掛ける。

「うああああっ!!」

その体当たりに、ミリィは成す術もなく吹き飛ばされる。
ふらんは以前戦った胴なしの頃に比べ、飛行速度は間違いなく落ちている。
しかし、ミリィの吹き飛ばされ方を見る限り、体当たりの威力は格段に上がっている。
それは何故か?

胴体が付いたことにより体重が増加したためだ。



胴付きになることで機動力は落ちるが、メリットは非常に大きい。
手足が付くことで今までより器用に動けるようになる。
体重が増えるので戦闘力も飛躍的に向上する。
知能の向上は胴なしの時とは比べ物にならない程だ。
しかし、胴付きの恐ろしさはこんなものではなかった。



「ふらんねぇ…」

ふらんは儚げにミリィに話しかける。
しかし、その体は再び体当たりを仕掛けようと、ミリィを狙っていた。

「う、うぅ…いたいぞぉ…」

ミリィは全身の痛みに泣きそうになりながらも、両手を使って立ち上がろうとする。
寝たままの状態だと、ふらんに何をされるか分からないからだ。

しかし、次の瞬間、ミリィの目の前に紅い影が現れる。
その紅い影はミリィの頭に直撃する。

「ぶへぇっ!」
「お姉さまに羽を斬られてねぇ…お姉さまのことが忘れられなくなっちゃったの…」

ミリィの心中は恐怖だけで占められた。
目の前の紅い影への恐怖に。

「私を斬ったお姉さまを泣かせたらどんな顔するのかなあ、とかそんなこと考えてたら…なんだか体が熱くなってきちゃって…」

ミリィはその場で仰向けに倒れてしまう。

「起きたら胴体が付いていたの!!」

今度はミリィの耳にもはっきりと聞こえた。
しかし、何を言っているのかまでは理解できなかった。
それどころではなかったからだ。

ミリィの仰向けに倒れた体の上に、ふらんが全体重を乗せて圧し掛かってきたのだ。

「うああああああああああああああああ!!!!!!!!」

耐久力に優れたれみりゃ種のミリィでも、胴付きふらんの全体重を掛けたスタンピングにはどうしようもなかった。
ミリィはたまらず肉汁を噴き出す。
一方、ふらんはミリィの腹の上からミリィの顔を見下ろす。

「昨日はふらんが弱くて遊べなくなっちゃったけど…」

そんなことはどうでもいい。
早く自分の上からどいてほしい。
ミリィはそれだけを願っていた。

「でもね!でもね!ふらんも胴付きになったの!見て!見てる!?お姉さま!!」

ふらんはミリィの腹をトランポリン代わりにするかのように跳ねる。
やられるミリィとしてはたまったものではない。


「うあっ!うああっ!やめてええええっ!ふらあああああああん!!」


体内の肉と共に悲鳴を吐き続けるミリィ。
胴付きのゆっくりの体重は人間の幼児程度はある。
そんなものが体の上で跳ね続ける。
ミリィにとってこれ以上ないほどの地獄だった。

それでも、ふらんにとっては大好きなお姉様と遊んでる!という認識でしかなかった。

「だから遊べるの!ずぅぅぅぅぅぅっと遊べるの!これでお姉さまと追いかけっこできるの!」

ふらんはようやくミリィの腹の上から降りる。
仰向けに倒れているミリィに寄り添うような形でミリィの耳元で囁く。


「ふらんがお姉さまのことずっと大事にしてあげるから…いっしょにくらそ?」


愛を囁く言葉かのように耳元で囁くふらん。
いや、ふらんにとっては実際に愛を囁いたつもりだったのだろう。

その言葉だけはミリィの耳に届いた。
ふらんの執念が籠った言葉だったからだ。
ミリィにとっては重い重い言葉だった。








「うううう…ミリィ…」
「…」

マーサは動けなかった。
ふらんへの恐怖によるもので。

しゃめい丸も動けなかった。
目の前の光景への驚きで。
しかし、その驚きはふらんの強さへのものではない。
ふらんの知能の向上に驚いていた。

「ここまで…胴付きになると違うとは…」

しゃめい丸は胴なしふらんを何度も見たことがある。
見たことがあるふらん全てが「ゆっくりしね!」や「うー!」等といったありふれた言葉しか使っていなかった。
だから、しゃめい丸はふらんのことを『頭にあるのは餡子と戦闘本能だけ』という手厳しい評価を下していた。
しかし、目の前の胴付きふらんはどうなのか。
いくつもの言葉を流暢に使っている。
その事実がしゃめい丸の中の胴付きへの憧れを強くしていた。

しゃめい丸は胴付きになりたかった。
胴体が付けば手足が付く。
手足が付けば書きたかった新聞も書けるようになる。
しゃめい丸はそれを疑っていなかった。
勿論それは間違いではない。
しかし、現実はしゃめい丸の想像をはるかに超えていた。
目の前のふらんは手足だけでなく、力も、そして知能も付けている。
自分が胴付きになったらどうなるのか。
しゃめい丸は胴付きへの畏怖の感情と共に、胴付きへの憧れの感情もまた強くしていったのだった。



「ううう…あああ……」

ミリィは呻き声を上げる。
ふらんのスタンピングにより、体内の肉を何度も吐いてしまった。
ゆっくりは体の中の餡子(れみりゃの場合は肉)を限界以上に吐き出すことで死に至る。

だが、ゆっくりの再生力、特に捕食種のものは半端なものではない。
捕食種の再生力ならば、1日でも経てば余程の状態でもない限りは元通りになることは出来る。
しかし、その間、ふらんが見逃してくれるなど誰も考える事が出来なかった。


「ううううう…」


ミリィはふらんの猛攻をどう対処すればいいのかわからなかった。
ふらんの体は自分と同じくらい大きくなった。
そして自分よりも素早い。
自分はここで永遠にゆっくり出来なくなってしまうのか。
そう考えると涙が出てきた。

ミリィはまんまぁがいなくなってから泣かないように頑張ってきた。
自分がずっと元気でゆっくりしていたら、いつかまたまんまぁに会えると信じて。

しかし、自分はもうゆっくり出来ないのかもしれない。
もうまんまぁにもおねーさんにもさくやにも会えないのかもしれない。
そう考えると涙が止まらなくなってしまった。

「うう…ぐすっ…」

ふらんは耳元ですすり泣く声が聞こえ、ミリィの顔を見る。
そしてそれを見た瞬間、興奮してしまった。
自分が見たいと願っていた愛しい姉の泣き顔がそこにあったからだ。
そして、この泣き顔を自分は死ぬまでずっと見ることが出来るのだろう。
ふらんはそう確信していた。

ここで目の前の姉を連れ帰ってしまっても良かった。
だが、ふらんにはもう一つだけ姉に見てもらいたいものがあった。

「見て見て!お姉さま!」

ふらんは立ち上がり、右手を空中に掲げた。
右手が紅く光る。
そしてその次の瞬間、ふらんの右手には燃え盛るように紅い剣が握られていた。


「見て見てぇ~♪レ~ヴァテイン~♪格好いいでしょ~♪凄いでしょ~♪ね、お姉さま?」


ふらんは右手の中にある紅い剣を見ながら恍惚とした表情を浮かべていた。





「ゆえええええっ!!」
「あれは…一体…?」

驚くマーサとしゃめい丸。
特に手から紅い武器を出せるのはミリィだけだと信じていたマーサの驚きようは半端なものではなかった。




これが胴付きの真の恐ろしさだ。
ゆっくり達は幻想郷にいる人妖がオリジナルとなっている生物だ。
例えば、れみりゃ種ならばレミリア・スカーレット、ふらん種ならばその妹のフランドール・スカーレットだ。
胴付きになると、そのオリジナルの能力を一部使う事が出来るのだ。
訓練次第では弾幕も扱う事が出来るようになるし、オリジナルを凌駕とまではいかないまでも近い実力にはなれるかもしれない。
そうなると普通の人間は愚か、そこらにいる妖怪でも太刀打ちできなくなる。
今は胴付きへの進化の個体数が少ない為に異変にはなっていないが、個体数が増えていけば異変にも繋がるだろう。




ミリィはぐすぐすと泣いていたが、ふらんがいる方向が光っていることに気付き、顔だけをそちらへ向けた。

「う…?」

ミリィは見た。
ふらんの右手に光る紅い剣を。
形状は違うが手の中で紅く光る武器…それはミリィがどこかで何度も見たことがある槍と非常に似ていた。

ゆっくり出来ない紅く光る武器。
何故ふらんがあの武器を持っているの?
ミリィは先ほどの涙も忘れて、そんなことを考えてしまっていた。



「お姉様!このレーヴァテイン、どうすると思う?」

ふらんは右手のレーヴァテインを足元で仰向けに倒れたままのミリィに見せつける。
その直後、マーサとしゃめい丸の方向をちらりと見るふらん。
ミリィはその瞬間、ふらんが何をしようとしているのかがわかった。

「やめてぇぇぇぇぇ!マーサとしゃめいまるをいじめちゃだめなのおおおぉぉぉ!」

ミリィは必死に叫ぶ。
が、ふらんにはその叫びは届かない。

「だって~…お姉さま、寝てばっかりなんだもん。ふらんは遊んでほしいのに…」

ふらんはまだ遊び足りなかった。
巣に帰る前に、もう少し遊んでから帰りたかった。


「うう…!!…あ…う…」

ミリィは焦って起き上がろうとする。
しかし、体がなかなか言う事を聞いてくれない。
どうやら肉を吐き過ぎたようだ。

ふらんが2匹の元にゆっくりと歩み出す。

マーサは動かない。逃げたところで無駄なのはわかっているからだ。

しゃめい丸も動かない。
しゃめい丸の飛行速度はゆっくりの中でもトップクラスだ。
しゃめい丸ならばふらんから逃げ切ることは出来るだろう。
しかし、ここで逃げたら胴付きになれるチャンスも失ってしまうのではないか。
目の前にいるふらんの言う事を信じるならば、彼女が胴付きになれたのはつい昨日のことだ。
上手くいけば自身も胴付きになれる手がかりが掴めるかもしれない。
自身の打算的な思考にしゃめい丸は自嘲した笑みを浮かべる。

「私が…お相手いたします」

そう言って、しゃめい丸は一歩前へ出た。




しゃめい丸は時間稼ぎをするつもりだった。
恐らく、ふらんが出している紅い剣はそう長時間は保たないだろうと考えていた。
根拠はない。
ただの願望だ。
そしてもう一つ…れみりゃ種であるミリィの治癒能力に賭けていた。
自分ではふらん相手に戦って勝つことは出来そうもないということは本能で感じていた。
あの剣は普通ではない。
だから逃げ回る。
もし仮にミリィに期待できそうもなかったら、自身だけでも逃げてしまう可能性も考えていた。
出来ればそのようなことにならないよう祈りながら、しゃめい丸は翼を広げる。

「…いきます!」

その言葉と共にしゃめい丸は空へ舞う。

ふらんはその姿に笑みを浮かべる。
元々、ふらん種は戦闘をすることが大好きなゆっくりだ。
ふらんにとって、しゃめい丸の参戦に不満は無かった。

「邪魔者は…こわれちゃうよおおおおお!!」

ふらんは嬉しそうに叫びながら、翼を広げ空を舞った。


しゃめい丸は自身の機動力に自信を持っていた。
強大な力を持つふらん相手からも逃げ回る自信はあった。
ふらんは剣を上段に構えている。
ならば、ふらんより少々高めの位置をキープし、後は剣の射程内に入らないよう心掛けた。
ふらんもまだレーヴァテインを使い慣れていないのか、しゃめい丸に斬撃を悉くかわされてしまう。

「う~…!」

ふらんは段々苛々してきた。
目の前のしゃめい丸に自身の剣が当たらない。
ふらんはなんだか眼がかすれてきたが気にしない。
それが逆に功を奏したのか。

「あっ…!?」

ふらんの気合いが勝ったのか、はたまたまぐれか、レーヴァテインがしゃめい丸の左の翼をわずかに薙いだ。

「う…うわあああああ!」

軽く薙いだだけだというのに、しゃめい丸の左の翼は翼の中央から外側に綺麗に裂けた。
ふらんは自身の剣の切れ味に驚く。
剣はこれまでにも一度出したことはあるが、その時はあまりの興奮で試し切りはしていなかった。

片方の翼が使えなくなった以上、上手く高度を取ることが出来ずにしゃめい丸は墜落してしまう。

「さて…邪魔者もいなくなったことだしっと…」

ふらんは墜落していくしゃめい丸を一瞥した後、改めて地上にいるマーサの方を向く。

「今度こそ壊してあげる…」

ふらんの口は嬉しそうに笑っているが、深紅の瞳は笑っていない。
マーサは恐怖で動けなかった。




ミリィは焦っていた。
このままではマーサがやられてしまう。
どうやったらふらんみたいに武器を出すことが出来るのだろうか。
あんな武器を自分にも出せたらマーサを、友達を守れるのに!と考えていた。
ミリィは以前に深紅の槍を出したことを覚えていない。

ミリィは願う。

「まんまぁ…さくや…おねーさん…ミリィをてつだってほしいぞぉ…」

ふらんがやっていたように、どこかで見た『何か』がやっていたように、自分も右手を宙に掲げる。
ミリィの右手が紅く光る。

「う…うあああああああああああああ!!!」

次の瞬間、ミリィの右手には紅い槍が握られていた。





まさか本当に出るとは思っていなかった。
ミリィは呆然としてしまう。
右手に光るゆっくり出来ない紅い槍。
しかし、今はそんなことを考えてる場合ではないと、気を取り直したミリィは左手を使って起き上がる。

「う…ぁ…」

しゃめい丸が時間稼ぎをしてくれたお陰か、多少は回復していた。
痛みは残っているが、何とか体を動かすことは出来るようだ。

「ふらあああああん!!」

ミリィは空中にいるふらんに向かって叫ぶ。
本音は恐い。
ふらんと戦いたくない。
ミリィは決して好戦的な性格ではなく、むしろ臆病な性格だ。
しかし、自分が動かなければマーサが永遠にゆっくり出来なくなってしまう。
それは嫌だった。
マーサを紅魔館へ連れて行くと約束したのだから。
だから戦う。

友達の為に。




ふらんはミリィの方へ振りかえる。
その顔は満面の笑みだった。
自身の名前を呼んでくれたこと、姉が遊んでくれそうなこと。
ふらんはこの瞬間、本当に幸せだった。

「やっとやる気出してくれたんだぁ…♪嬉しいなぁ…♪」

ふらんの声は本当に嬉しそうだった。
この瞬間を待ちわびていた、と言いたげなくらいに。

「じゃあ…遊ぼうか!おねえさまああああああああああああ!!」

ふらんはその叫びと共にミリィのいる方向へ一直線に飛んだ。


ふらんが空中から剣を振りおろし、ミリィが地上から槍で受ける。

紅の槍と剣が交わる。
離れてもまた交わる。
それが何度も繰り返される。
お互いの体には決して届かない。

ミリィもふらんも武器に関しては素人だった。
お互いが武器をぶんぶん振り回すだけ。
どちらも決定打を欠いてしまっていた。
何度目かわからない紅の交差が続いた後


「…あっ!!」


紅い剣が突然消えた。
ふらんの方が先に魔力を消耗してしまった。
魔力切れ。
それがふらんの敗因だった。

片方の紅い剣が消えた。
紅い槍はふらんの体へ吸い込まれていく。
槍はふらんの左肩から胸までを薙いだ。
ふらんの体から餡子が噴き出る。

「あ…あ…!」

ふらんは自分の体の状態が信じられない。

「おねえ…さま…」

ふらんは墜落する。
愛しく大好きな姉の方へ。

ふらんの体をミリィは抱きとめる。
これ以上傷つかぬよう、優しく。

そして、受け止めたミリィももう限界だった。
ミリィの右手の中にある紅い槍が消える。
そして、ふらんの体を抱いたまま、ミリィはそのまま仰向けに倒れてしまった。





後書き
一人称に慣れると三人称は難しく感じますね…。


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最終更新:2011年01月14日 02:09