※開かれました。
そして私は、会場に設置されたあの馬鹿でかい壺の中にいる。
あの腐れヤブ医者が言っていた通り、壺の中はその外観より遥かに大きな空間を有していた。色調は灰色一色で窓一つない味気ない空間ではあるのだが、ちょっとした体育館くらいの広さを持ち、周囲は適度な光度で照らされているので、窮屈な思いはしない。
そして、当たり前ではあるのだろうが、何もない。
私と、私と共に連れられてきたきめぇ丸達以外、何も存在しない。寝床も遊戯物も食料も水も。
「と、取りあえず。一緒に連れてこられたはずの仲間と‥」
これからどうするべきか作戦を練ろう‥、そう思って再び辺りを見渡して、
「て、あれ?」
この空間には私以外、本当にキメェ丸しかいないということに、やっと気づくことができたのだ。
「え‥?なんで?ていうかきめぇ丸達‥」
「おお、怖い怖い」「おお、怖い怖い」「おお、怖い怖い」「おお、怖い怖い」「おお、怖い怖い」「おお、怖い怖い」「おお、怖い怖い」「おお、怖い怖い」「おお、怖い怖い」「おお、怖い怖い」「おお、怖い怖い」「おお、怖い怖い」「おお、怖い怖い」「おお、怖い怖い」「おお、怖い怖い」「おお、怖い怖い」「おお、怖い怖い」「おお、怖い怖い」「おお、怖い怖い」
19人いた。
『ちなみに。本来ならゆっくりあやさんときめぇ丸さん、10対10で勝負を行って頂く予定でしたが、勝負の内容を伝えたところ、他のゆっくりあやさんは一人も集まらなかったので、その辺で暇そうになって頂いたキメェ丸さん9人に急遽参加して頂くことになりました!』
「おい、お前ら!フェアって言葉を辞書で引いてみてくれないか!マジでお願いだから」
『善意の協力者に感謝ですね!』
「どんな善意ぃぃ!?数の暴力ってレベルじゃねぇぇぞぉっ!!つうか私寸前まで勝負の内容一切知らされてなかったぞッッゴラァ!何で私だけ拒否権ないんだよ!?何で私だけ難易度『MUST DIE』で始めなきゃいけねぇぇんだよ!?人生にリセットボタンもクイックコンテニューもないんだぞ!?」
「「「おお、哀れ哀れ」」」×19
「うるせぇえぇぞ!!ぶち殺すぞお前らぁあああ!!!!」
考えられる限り最悪の展開だと思っていたら、現実はその斜め上を行っていた。ポルナレフ状態とかバカ王子の陰謀とかそんなちゃちなもんじゃ断じてねー現実の恐ろしさを垣間知った。
凄いなー、強すぎるなー現実。
ということで状況を整理しなおすと、
水も食料も何もない空間、
19匹のきめぇ丸と一緒にサバイバルレース。
「マジすか‥?」
本当に決着がつくまでこんな空間で時を浪費しなければならないのだろうか。
ていうかこんなアマゾン奥地の少数民族の間ですら忌諱されてそうな術儀に自主参加ってどんだけアグレッシブに人生送ってんだよ、お前ら。
そもそも私たちはゆっくりなのだ。ちょっと長い間飲まず食わずでいたところで、干からびることはあろうが、そう簡単に死にはしない。いわんや、共食いなんて‥。
そうだ、そうだった。
今回の勝負はあくまで私達ときめぇ丸との間での10番勝負なのだ。
一つの勝負に何か月も時間を使える余裕があるとは思えない。
いくらゆっくりとは言え、人間と同じく理性と知性のある生き物。
短期間で殺し合いなんて始まる訳がないのだ。
「はん、そうですよ!こんな勝負‥端から成立するはずが‥!」
『‥そういえば、この壺の結界、本当に見事な出来ですけど、どうやって制作したんですか』
『永遠と須臾の力を持つ私の姫様の力をお借りしましてね。ちょっと時空間の理をいじってあるんで、空間の大きさ、時流の速さはある程度自由に調節できるんですよ。具体的に言うと、早送り、シーン送りは容易に可能です』
『わぁ!それは凄いですね!つまり、お茶の間で借りてきたハリウッド映画を見るのと同じ感覚で、この名勝負を鑑賞することができるという訳ですね!!』
『流石に巻き戻しはできませんけどね。試しに一日後の様子を見てみましょうか』
『はい、お願いしま‥』
―ピッ
それきり、外界の音はさっぱり聞くことができなくなった。
「‥‥‥‥‥あっちゃー、ここ精神と時の部屋だったかー」
外の世界で数分経つ間、この世界では一年分の修行を行うことだって可能なのだ。いつ魔人ブゥが復活しようともこれで一安心である。
もうこれ以上の最悪はないと思っていた矢先にコレである。もうこれ以上のどん底はないと確信した直後に更なる底を見せてくれるのだから、現実って奴奥が深い。
「おお、ドンマイ」「ドンマイ」「ドドンマイ」「強く生きろよ」
きめぇ丸が何匹かが可愛そうな生き物を見るような眼でこちらを眺めながら、憐みの言葉をかけてくる。
「まぁそのうち良いことありますよ」
そして、きめぇ丸のうち一匹が私の肩に手を置いてポンポンと叩いた。
その優しさが、今は辛い。
あとそのニヤケ面腹立つ。
「う、うるせぇええええええ!!こうなったら絶対こっから生きて帰ってやるからな!外でこれ見てる奴全員同じ目に遭わせてやるからな!覚悟しやがれぇ!!」
きめぇ丸の手を跳ね除け、私は空間の隅へ走り出した。
味方なんて居ない。生き残れる自信なんてない。
だけど自分の死を易々と受け入れられる程、私は長生きも達観もしていない。
だから今はただ逃げるしかなかった。
先の見えた袋小路を、前が見えないよう目を瞑りながら。
二日目。
結局、空間の隅で周囲を警戒しながら縮こまっているだけで、昨日一日は終わってしまった。
どういう訳か、きめぇ丸達は私に指一本触れず、時折数匹がこちらの方を眺めてヒソヒソ話しては顔をニヤけるだけで、特に行動という行動は起こさなかった。
彼女たちもこの状況を理不尽に思い、勝負をポイコットしてくれているのだろうか。だとしたら有り難いのだが。
しかし、勝負の内容を知りながら、拒否することなく試合に参加してきた19匹だ。その望みは薄いだろう。
あ、またこっち見てヒソヒソ話してる。
「‥‥‥(ニタァ)」「‥‥‥(ニタァ)」
敵意は感じられないが腹立つな、本当。
『一日経過しているはずですが、まだ何も始まりませんね』
『流石に知識のある生き物ですからね。一日二日じゃ何も起こらなくても不思議ではありません』
『それじゃ、もう少し時間を経過させてみましょうか』
『変わり映えのない映像じゃ、視聴者さんも退屈しちゃいますしね』
『ということで、更に3日後に時間を進めます』
敵意は感じられないが殺したくなるな、本当。
一日中警戒していたが、その日もまた出来事らしい出来事は起きなかった。
三日目。
並みのゆっくりより鍛えている自信はあるが、流石にそろそろ集中力が切れ始めてきた。
三日間何も食べていない飢餓感以上に、三日間目立った出来事がなにもない日常に、退屈の方が己を殺し始めている。
どう行動を起こそうと行き止まりでしかないこの状況、このまま考えるのをやめて一個の御饅頭に成るのも一つの手段ではないか、そんな考えが頭をよぎる。
それほどまでに、この緩慢な日々は私にとって最悪に居心地の悪い時間であった。
「‥‥‥ヒソヒソ」「‥‥‥ヒソヒソ」
きめぇ丸達は今日も変わらずこちらを見ながらニヤケ面でヒソヒソ話をしているようだ。あいつらはこの状況に飽きがこないのだろうか。
// ヽ,
,.└''"´ ̄ ̄ `ヽ、 カサカサカサカサササササ
,. '´ 、、 ヽ ヽ ―――
ノ , lヽ j /、lヽ ト、_,,.', ――――
r'´ r'"イ .ノ\| .レ r=;ァ'レ' { } ―――
{ !、 l rr=- //// / `'''l.>‐ .、 ――――
レヽ.,ト'///// ー=‐' / l 、,,_,,ノ ―――
,}' ', /ヘ, /レ' ,/ >‐、 ―――
7'´レ1 ヽ 人ル'レ' 'i、_
レ~i` ヽ 、_ ( "
《〈《,,,,《〈《 ̄》〉》ヾ、
「‥‥‥‥」
何か目の前を高速でカサカサしたきめぇ丸的な何かが通り過ぎたような気がした。
「なんだ、幻覚か」
気のせいだと思い込んだ。
只でさえ体力の浪費が激しいのに、あいつらの奇行に一々突っ込んでいたら身が持たない。
最低限の警戒を保ちつつ、結局今日も私は空間の隅でじっと座り続けた。
四日目。
_/\∧/\/|_
/ヽ \ /
,__ /: : ミl < ニャーン!!! >
{≡::ヽ、 ____,,,,,ノ: : : 彡l / \
ヽ三: : :`' ' 、 ̄|/\/V\/ ̄
ヽ ミ:'´ '':、、 ヽ ヽ ..,.;;''⌒ヽ
ノ , lヽ N/ヘ、ヽト、_,,', , ,__,,;'" "'; ,ノ
r'´ r'"イ、ノ\| レ' r=ァVl ( )''" ....゙'';;..,,;; ,,Y"
{ !、 l rr=- / `'''l.>‐ 、 'i;;- 、,,
レヽ.,トl ー=‐' ミ li、,_,,ノ ゙"ヽ、
( ,}' 彡 レヘ, /レ' ,/ .>‐、 ゙)
.7'´ レ1 ヽ 人ル'レ' .i、 _ノ , ; ''i,-‐'"
, ‐'、 ,,-‐''"`ヽ 、_ __ ,..;;; ゙"
!、_ノ( ,,, '' ,,.-‐''" ,, '"´``´
ヽ,..-‐'' ,.-‐''" ノ-‐''"´ きめぇ丸
( .,.-'" ≪キャットフォーム(モデル:火焔猫)≫
ヽ、,,.. -‐'''"
,ぃ,,,、 _,,,―'二ニ,,゙゙,レ
゙l::::::`゙゙'''ーri、、 ,,r¬″:r二v-'',r'"
ヽ:::::::'|゙'i、:::::^'ー,,_ ,r,二,::::::.,,-ニ。:::,r″
.゙く:::::゙l;;;゚←,,,、:::`''-,,, ,r'',i´;;,i´::,l″;;;,,i´,,i´
゙!,:::│;;;;;;;;;;゙'i、、y,`'i、 ,/::::゙l,_│::l";;;;;│:.,″
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ヽ:::::::广゙"~`゙''i、:::,,,,,,/=,,,::゙'i、 // ヽ, ,/::::::"二ニニ_,,,、:~゛::,,,i´
゚ヽ,,_゙―-,_,,/::|;;;;;;;;;;;;;」:::::,.└''"´ ̄ ̄ `ヽ、:::::.,/′:::::::::::_,r",,r‐' ゙`
`゙''-、,,`:::::::゙l,;;;;;,r',. '´ 、、 ヽ ヽ,|゜:::::,,,―''レ‐'゙゜
゙゙'-,::ヘ┘ノ , lヽ j /、lヽ ト、_,,.',"`,,,,,,イ
ヽ r'´ r'"イ .ノ\| .レ r=;ァ'レ' { } ̄ きめぇ丸
{ !、 l rr=- / `'''l.>‐ .、 ≪キャットフォーム(モデル:パピヨン)≫
レヽ.,ト' ー=‐' / l 、,,_,,ノ
,,,,}' ', /ヘ, /レ' ,/ >‐、
,,r7'´レ1 ヽ 人ル'レ' 'i、_,ミ,''i、
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゙l、゙!、;;;,i´:,/  ̄ `゙''-ミ∪ヽ:::,r~:,,r″
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// ヽ,
,.└''"´ ̄ ̄ `ヽ、
,. '´ 、、 ヽ ヽ
ノ , lヽ j /、lヽ ト、_,,.',
r'´ r'"イ .ノ\| .レ r=;ァ'レ' { }
{ !、 l rr=- / `'''l.>‐ .、
レヽ.,ト' ー=‐' / l 、,,_,,ノ
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// ヽ,7'´レ1 ヽ 人ル'レ' 'i、_ ノ
,.└''"´ ̄ ̄ `ヽ、 ( ,,r' ゙i\
,. '´ 、、 ヽ ,r'´  ̄ ̄ ̄`゛''┘.,
ノ , lヽ j /、l ,r' ,r' 、 ,. `' 、
r'´ r'"イ .ノ\| .レ r=;,'.,,_、イ ,r'l、\ j ,r'l , !、
{ !、 l rr=- { } 'レ'rr=r レ. |/(,. ト゛'、`'、
レヽ.,ト' ー=‐' 、. ‐<.l'''` ゙i -=;ァ' l ,.! }
{ ,}' ', (,,,_,,、 l ゙i '‐=ー 'レ.,r'レ
.7'´レ1 ヽ \, 'J゙i ,ベ人 ノ ,' '{, }ヽ
レ~i` ヽ 、_ レ'ル r' 「レ` ヽ l
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| ;:|`ヽ、__ヾ , /;;;;;;;:::"/! ヽ | :|
i ;:| ヽ ,| ヾ、 `) \ !、
! ;| | | ヽ :/ ヾ :i!
| :| | ,/,i ,.-'",;、 ,/ ! ;|
_ノ :| / ,! `ーー'" ノ i;
/rrrn ノ / / LLL,,,ノ
(,rrn_,,,ノ
きめぇ丸
≪キャットフォーム(モデル:ケルべロス)≫
仮眠から覚めてみたら、なんかもう手遅れだった。
ていうか進化していた。
この何もない閉鎖空間で、縮こまり小さくなるのならまだ分かるが、あろうことかあいつら全員進化していた。
昨日の蟲みたいなきめぇ丸一匹ならまだ見逃せていたろうが、今日のこれは明らかに異常事態だ。
ていうか何で全員姿がまるで違うのに猫と言い張ってるんだよ!パピヨンは犬だ!
そしてふと、こんな出鱈目な生態の生き物に、私達ゆっくりあやは偽物扱いされていることを思い出して、この世の理不尽さに泣きたくなった。
「‥‥‥‥ヒソヒソリーナ」「‥‥ヒソヒソリン」
あいつら全員姿が変わっても、やってることは変わらないらしい。相も変わらずこちらを眺めながら何事か内緒話をしている。
ここまで来ると、最早腹立たしささえ感じてこない。ただひたすらに放っておいて欲しい。
頼むからお前らの狂気の世界に引きずり込まないで欲しい。
取りあえず、ツッコミたくなかったからスルーした。
もうやだよ、疲れた。おうちに帰りたい。
5日目。
. . ,_ . /7 「l /'.7
`<ヽ, 「:l // ヽ, |:l _/"ニニン'フ .,ィつry
丶,`:-': '-..,「:| ,└''"´ ̄^`ヾご/ヽ、ノ:://:ン. //フ_
 ̄ ̄ヾ/´ 、、 ヽ ヽ/ノ:ノィ斗、/// /ゥ
ノ lヽ j /、lヽ ト、 .'l.>‐ .::: /`ハ / / / / ラ
h'´ r'"イ .ノ\| .r=ァ レ'{ }l彡" rヽ / / / /∠っ,´,´^ `ヽ j j
o,'ヽ.,l .r=- >l11`o' :ノ ) ,'))入,,/r//ノ,,__ヽ `! ./^:~^ヽヽ、 ._,,,,,_^ノγ,
/゛_,.,,ニ_ ヽ'、 ー=‐' 人ルィ / ノ))))) } /:/ /:/.~ヽ'^:〉::゙j /,,-~l-、_ヽ、j ィ,,, ヒン,,,, !-ィ,
," r′ レ'ヽゝ .、 ノ.:ミ三::,/ ,/爻彡"=ニフ .| .|.| |,,::{::: | l':i'' l^/’;;- 、、,/∠ニ=,,-"´~,゚ ゙
.│ { `彡:ヽ、,、.メ.::::::ミ≡'/ ,i"爻彡ヘ>`z ! .|.|,, ノ_,:::ヘ::i //^!^l ,,_^l_"_=-";;' ';;"
', ` .彡:::.:.:`,..:.::.:.:.:::::ミ ´ !  ̄ ̄ ̄`.ミ:: ヽ ヾニ'''__'''--'´ノ_ //,, ~-i=─"ニ"="=ェ
.ヽ 、 . /,,ヽ:::::.:():::.::::::.::::ミ.i´ ./ .. ゙V'_`丶^`─''ー-'"''"′ _,ノ''''` ''  ̄
\ ′""`" ノ::::::.:.:.:.:::::::::/⌒v' ノ., `ヽ: : : `ヽ ヽ `, _,,...,_ ,
``'¬ー'''" |メ!川!,ハ'i ヽ、,,,,,ノ`ヽ: .|ヽ: / │`、,./" .r=ァヽ
(~⌒~i !~⌒~} \, :`i |: ノ` ヽ (´ r=‐ ,ィ
i`""i i""゛i 〕 :| |: / `一-ヾ, '=彡'',)
ノ ;, ,' ト | :/ (:: |, "、_,_',ノ
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∠ | ノ `、 丿 :/ .|:: `i
_ノ=´レV`,i- 厶ス /`v`〉 (,,/゛ ,i´ ./
//´^ / ノ 《レ' i " `iノ く_/
`'ー-^ー'´ `ー'ー'´
“百万獣の頂に立つ獣” 『きめら丸』
`<ヽ, 「:l /ヽ._,,,...,, |:l _/"ニニン'
丶,`:-': '-..,「‐/ @ ':,:.:.^`ヾご/ヽ、
 ̄ ̄ヾ/:,'-‐r-‐‐'、 ヽ ヽ
ノ lヽ j /、lヽ ト、 .',
h'´ r'"イ .ノ\| .r=ァ レ'{ }
{ヽ.,l r=- l11`○
´レ1ヽ'、 ー=‐' 人ル `。
o′ レ~/|.、 ノ.:ミ三= ゞ
○' __ハフ .|`彡:ヽ、,、.メ.::::::ミ≡ ヽ
l フ:::;;::.:.:`,..:.::.:.:::::ミ ヽ
! く 彡:::::.:::::..:.:::::::.::ミ | l
/)、__,.,,''´ 彡::::.:.:.:.::::::::ミ | 〉
( う _ノ メ!川!,ハj;´ |_/ “遅れてきた最終使徒”
`ー-' /⌒\ .| 『きめら丸』
__ / へ \ ノ
へ\ __/ / / \ /
/ /〉\\_ノ 〈 <\__ノ
ヽ y / \\ \ \
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ヽ/ ヽ// (⌒ )
(二二)二二)
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`<ヽ, 「:l /ヽ._,,,...,, |:l _/"ニニノ
丶,`:-': '-..,「‐/ @ ':,:.:.^`ヾご/
 ̄ ̄ヾ/:,'-‐r-‐‐'、 ヽ ヽ
ノ lヽ j /、lヽ ト、 .', ・・・チッ
h'´ r'"イ .ノ\| .r=ァ レ'{ }
{ヽ.,l r=- l11`○!
レ1ヽ'、 'ー=ョ 人ル ノ`。 ,,,,ノノメメ彡ミミ彡ミ:
o'レ~7'ヽ、 ノ.:ミ三=三=ミミミ彡`,..:.::;;;:;:`,..:.::;:ミ
○' `彡:ヽ、,、.メ.::::::ミ≡ ヽ :::;;::`,..:.::;:`,..:.::;:`,..:.:ミ
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/ `- ソ~~ ̄ヽ^^) /| ::;;::`,..:.::`,.`,.;;.::`;ミ'''
( /__ ~~~ / | ::;;:`,.:.:.::;;..`,.;ミ''
`--´~メ!川ハ`---´ | :`,.:;;::`,..:.;;ミ''
| |ミ派メ川ハj’
“格闘技世界チャンピオン”
『きめら丸』
進化、停まらず。
この空間、ゲッター線や螺旋力で汚染されてないか心配になってきた。
あの姿はゆっくり界隈でも有名な『きめら丸』という姿だ。その神だか悪魔だか分からん容姿から「神獣」「宇宙怪獣」と恐れ敬われ、尾にも見えるクレーンから様々な物体を吸収して成長するらしい。
自分で言っていて訳が分からない。
あんな良く分からない生物とずっと一緒の空間に居て、私ってばよく無事でいられるな。自分の強運と、そんなことに運を使うしかない現状に泣きたくなる。
何が悲しくて、あんな化け物19体と‥
「‥‥‥‥へ?」
突然、簡単な計算が分からなくなった。
この壺のこの空間は、誰も逃げられないよう強力な結界が張られている。
だから、如何にあいつらが変容しようと、あいつらの数は5日前と変わらないはずだ。
それなのに‥。
「12体?」
あいつら、きめぇ丸、今のきめら丸は、この空間に12体しか見つけることが出来なかった。
『ようやく、勝負らしい勝負。いえ、蠱毒らしい蠱毒になってきた、という所でしょうかね』
『早くも、脱落者は七名です』
いつから、どうして私は、こんな勘違いしていたのだろう?
何故、きめぇ丸達が、この“勝負”を始めていないと思い込んでしまったのだろうか?
私は何も考えられないまま、5日ぶりに奴らの群れへと駆け寄って問いかけた。
「お前ら。まさか、食ったのか?」
殺したのか?と。
「仲間を、同胞を?こんなふざけた勝負に本気で乗って?まだ、たった5日しか経っていないのに?」
仲間。そう、仲間だ。
私にとっては違くても、あいつらは、同じ場所に閉じ込められて、同じ運命を背負わされた運命共同体。
みんな同じのはずなのに。
「それなのに、本当に、そんなこと‥。そんなことをやってしまったのか!?」
蠱毒。
同じ場所に閉じ込められた、同じ場所で生きるしかない、同じ運命を持つお互いで、一人になるまで生き残り合う。
自分以外の全ての死を以ってしか終わらせることのできない小さな世界。
それが、この呪儀の本質。
「本当に、お前ら自分以外全部死んでしまえばいいって、そう思ってるってことかよ!!?」
分かってはいた。だけど、問わずにはいられなかった。
そんな残酷な現実を、こいつら全員覚悟して、それを実行しているだなんて、私は思いたくなかった。
「「「あなたには、関係のないことです」」」
奴らは、口を揃えてそう答えた。
5日ぶりの私ときめぇ丸のコミュニケーションは、その一言で閉じられた。
私は本当に、いつから勘違いしていたのだろう。
分かっていたはずだ。
奴らは、この最悪で最害極まりないこの競技に、自分から参加してきたのだ。
殺し合うことも、食い合うことも、そんな地獄を自分たちで創り出すことも、全て承知の上だったはずだ。
この壺の中の小さな世界は、最初からそういう風に出来ていた。
そんな中、たった一人覚悟のできていない私は、この世界のたった一つの異物。
だから、ただの異物として放っておかれていただけ。奴らは最初から、私の事なんて眼中になかったのだ。
私に構う暇があるなら、その分をこの世界で生きていく意思のあるライバル、否、敵同士である同じきめぇ丸と、相対敵対警戒し合いながら、殺し合っていた方が有意義だった。
それだけの話だったのだ。
この世界で独りきりだったのは、奴らも私も同じだったのだ。
しかし奴らは全員、この世界で生きていく意思を持っていた。
蠱毒という術儀の中、仲間とではなく敵と共に、ただコドクに生きていく。
私とは、最初から立っているフィールドが違過ぎた。
だから私は、もう、この狂った世界で生きていくことを諦めた。
- 誤字修正。どうやら簡単な計算が出来なくなってたのは作者のようだったよ! -- かぐもこジャスティス (2011-12-12 17:43:18)
最終更新:2011年12月12日 17:43