ゆっくりが泣きます。鳴き声ではなく泣き叫ぶ声です。
聴きたくない人は見ないほうがいいです。
ペットを飼う場合、当然果たさなければならない義務がある。
それが例えそのペットにとって嫌なことであったとしても、飼い主としてやらねばならん事なのだ。
俺は読んでいた『予防接種のお知らせ』と書かれたチラシを読みながら溜息を吐いた。
なんでもゆっくりを経由して感染するウイルスが発見されたとのことで、飼っているゆっくりにワクチンを打たせねばいけないらしい。
幸せそうにご飯を食べているれいむを見て、俺はもう一度溜息を吐いた。
人から聞いた話なので本当かどうかはわからないのだが、野生のゆっくりと違って飼われているゆっくりというのは痛みに対しての耐性が全くないらしい。
なので注射やら治療の為に病院へいくと… 当然暴れるわけだ。ここら辺は猫や犬等とあまり変わらない。
だが、ゆっくりは喋るのだ。
大切にしている家族同然のれいむの泣き叫ぶ声など俺はできれば聞きたくない。だが、ワクチンは絶対に打たねばならない。
「おにいさんどうしたの?」
ご飯を食べていたれいむが不安そうな顔をして俺の方にやってきた。
どうやら心配してくれたようだ…
とりあえず俺はれいむに正直に話す事にした。
どっちにしろ注射はしなくてはいけないし、何も知らないで行くよりは事情を知っておいた方がいいだろうと思ったからだ。
「あのな、れいむはこれから病院へいって注射しなくちゃいけないんだ。注射は何かわかるよな?」
「れいむはちゃんとわかるよ!! ほそいあれだよね!!」
「そうなんだ。それをなれいむは体に刺さなくちゃいけなんだが、我慢してくれるか?」
嫌がるかなって思ったが、れいむの返事は違った。
「れいむがまんするよ!! ちゅうしゃしなきゃいけないならちゃんとちゅうしゃするよ!!」
「いいのか? 少し痛いかもしれないぞ?」
「うん、おにいさんといっしょなられいむだいじょうぶだよ!!」
「そっか、じゃあ行こうか」
れいむの言葉に涙が零れそうになったが、ここで泣いてしまうのはみっともない。
「おにいさんはやくいこうね!!」
「はいはい、すぐ行こうな」
れいむをお出かけ用の籠の中へ入れて車の助手席へ置いて俺も乗る。
懇意にしているゆっくり専門の病院ゆっクリニックは家からだと結構遠いのだ。
「終わったらお菓子買ってやるからな」
「ほんと? おにいさんありがとう!!」
れいむと約束をして、俺は車を走らせた。
「いやだああああああああああああああああああああああああはなじでえええええええええええええええええええええええええええ!!!!」
ゆっクリニックの入口を開けて俺の耳に飛び込んで来た叫び声に、俺は思わず立ち止まってしまった。
ここは個人で運営している病院の為、入り口からすぐに治療室にいくことができる。
だから、治療室からの音も良く聴こえてしまう。
今の悲鳴は間違いなくゆっくりの声で、俺と同じようにワクチン注射に来た飼い主がいるのだろう。
治療室からは今もまだ「おにいざんだずげでよおおおおおおおお!!!!」だの「いだいよおおおおおおおおおおおおおお!!!!」と聴こえてくる。
どうやらかなり怯えているようだ。注射をするのも初めてなんだろう。
籠に入っているれいむの様子を伺うと、顔を青くし体を震わしていた。
家ではああ言っていたものの、やはり怖いのだろう…
「れいむ大丈夫か?」
とりあえず受付を済まし終えた俺はれいむに声を掛けてやる。
「れ、れいむはだいじょうぶだよ!! ぜんぜんこわくなんてないよ!!」
狭い籠の中でブルブル震えても、心配かけまいと笑顔を俺に見せてくる。
本当に健気な奴だ…
俺とれいむは治療室のゆっくりの悲鳴をBGMに待合室で順番がくるのを待っていた。
まだゆっくりを飼う人間はこの街では少ないからか、待合室に他のゆっくりはいない。
待っている間にずっと怯えているれいむの気を紛らわせようとしたのだが、聴こえてくる声に集中してしまいやはり無意味であった。
それでも、俺が「今度にしようか?」と聞いても、れいむは頑なに拒んだ。
れいむとしては遠いここへ何度も連れてきてもらうのが悪いと思ったのだろう。
それから10分ほど経っただろうか? やっと治療室から飼い主と飼い主の腕に抱えられたゆっくりまりさが出てきた。
どうやら散々抵抗したらしく、抱えられているまりさは所々皮が破け涙の後で少しふやけていた。
それと、「どうしてたすけてくれなかったの…」とボソボソ呟いていた。れいむもあんな風になってしまうのだろうか…
「次の方入ってきてくださ~い」
「あ、はい!!」
先生に呼ばれた俺はれいむの入っている籠を持って治療室へ入った。
「今日はお注射ですよね?」
「はい、そうです」
籠から出したれいむを台の上に載せながら答える。
先生の声は穏やかだが、注射を持っているのでれいむは益々怯えてしまっている。
「れいむ、ちゃんすぐ終わるからね~」
注射の尻を押して中の薬品を少し押し出す先生。れいむはもう余裕がないのか、ただ体を縦に振るだけだ。
「飼い主さんはれいむちゃん押さえてあげて下さいね」
「あ、勿論です」
れいむを後ろから左右の頬を手で掴む。すぐ終わるから頑張れよ、れいむ…
「少しチクッとしますから我慢してね~」
注射の先端からまた薬品が飛び出す。そのまま先生は注射をれいむに近づけていく。
徐々に近づいてくる針を見て、れいむはとうとう目を瞑った。
とうとう針はれいむの眉間に迫り、俺はこの後響くであろうれいむの絶叫を覚悟して目を瞑る。
1秒、2秒、3秒… どれ程経ったのか分からないが、まだれいむの絶叫は響かない。
恐る恐る目を開けると、先生は注射を置いて綿でれいむの眉間を拭いていた。
「せ、先生? 注射は?」
「もう終わりましたよ~ れいむちゃんはおとなしい子ですね~」
「へ?」「ゆゅ?」
本当に終わったのか? さっき響いていたまりさの悲鳴はなんだったんだ?
「じゃ、お疲れ様でした。れいむちゃん元気でね~」
「あ… どうもありがとうございました」「せんせいありがとうございました!!」
先生の言葉で、俺達は部屋から出た。
結局、れいむが泣く事はなかった。
車の中でれいむに注射がどうだったのかを聞いても、「ちょっとチクってしたけどぜんぜんいたくなかったよ!!」と、元気一杯だ。
まあ、あのまりさが泣き虫なだけだったのかもしれない。
「じゃ、お菓子買ってやるからな~」
「おにいさんありがとね!!」
とりあえず今は、行くときにした約束を果たそう。今日はケーキでも買ってやるかな…
最後まで読んでいただき本当にありがとうございます!!
イヌとかを飼っているならば絶対に打たねばならない注射があります。
聖者の途に登場したゆっくり黒ウイルスがあるのならば、ゆっくりも打たねばいけないでしょう。
そんな風に考えて書かせていただきました。
単純な理由でごめんなさいorz
最後にもう一度、こんな駄文を最後まで読んでいただきありがとうございました!!本当にお目汚し失礼!!
- SS作者は皆神様。着眼点もいいし、愛が感じられる小説・・・良かったです! -- ine (2008-09-23 18:43:34)
- まりさがなんであんなに喚いてたのかがよく分からないんですが・・・ -- 名無しさん (2008-10-03 22:42:01)
- 歯医者に行けば同じような光景見れるよ、先入観で異様に痛がって泣き叫ぶ子供。 -- 名無しさん (2008-10-03 22:45:16)
- 俺もガキの頃には歯医者を怖がって逃げようとしたっけな -- 名無しさん (2008-10-03 22:59:49)
- イメージできる痛みはすごい痛いのにな、車にはねられたときは全然痛くなかった -- 名無しさん (2009-01-03 21:10:26)
- なにサラッと凄い事言ってんだwww -- 名無しさん (2009-05-25 03:36:06)
- 乙 -- 名無しさん (2010-06-06 03:55:23)
- 私も車にはねられました。 -- 名無しさん (2010-06-07 23:40:51)
- さらっとすごい事をいいまくっているような・・・ 痛いと思うから痛いんじゃないの? -- ちぇんとぱちゅりーとれみりゃ飼いたい (2012-03-21 19:20:59)
最終更新:2012年03月21日 19:20