ゆっくりできるね

ゆっくりできるね

※初投稿となります、よろしくお願い致します。
※ヤマもオチもございません
※ゆっくり亜種的なものが出ますのでご注意を


…ネタが思い付かん。
締め切りが既に5日にも過ぎ「真・締め切り」も後少しにせまっていた。
なのに、一向にネタが浮かばん。あのへっぽこ担当がせっかくのシーンを総ボツにしたために、
結構な空白が出来てしまった。

「何が『先生ならもうワンステージ上のモノが出来ます』だ」
怒りにまかせて、灰皿に吸いがらを押し付ける。そして、次の煙草に手を出すため、
横に置いていたシガレットケースを取ろうとすると

―無かった。

ふと、横を見ると何かのアイテムを取ったかのようにシガレットケースを掲げ、寂しそうな笑みを浮かべている。
「おい」
声をかけるもそれは静かに首を振る。ここ最近居ついたゆっくりさなえ(おさとう式)だ。
「それを、よこせっ」
少し、声を荒げて膝を立てると、疾風のようにさなえはシガレットケースを掲げたまま、逃げた。
「待てっ」
足が絡まって転んだが、それでも追いかける。
あの煙草は結構高いし、中々手に入らない。それに今の俺にとってはあれがゆっくり出来るモノなのだから。

だが、普段の運動不足がたたってか、あっと言う間に息切れがする。
「ちくしょうが……」
縁側にうずまくると、弾んだ音が聞こえてきた。
「おじさん!」
昔から懐いている、ゆっくりれいむだ。俺の家の前にいた『先客』である。
まさか、引っ越してきた途端「ゆっくりしていってね!」と挨拶されるとは思わなかった。
別に害も無いので座敷わらしの一種だと思いこのまま同居している。
たまに、菓子を食いながらのんびりとした話をすると意外なアイディアも出る。

「さなえがはしっていったけど『ゆっくりできない』のおわった!?」
『ゆっくりできない』時間とは俺が締め切りに追われている時だ。さすがに、そんな時にはれいむの相手は出来ない。
仕事の事であれこれと話すのも面倒なので『ゆっくりできない時がある』という事で簡単にすませた。
れいむもその時は出来る限り俺に近づかないようにしている。

だが、ここ最近居付いたさなえは違う。俺が忙しい時でも入ってくる。
居眠りの際にはいつの間にか横でお茶を準備していた。しかも、旨い。
れいむともウマが合うようで、頭に乗せては散歩に出かけている。

「すまんが、まだだ」
「そっか……ざんねん」
ちょっと顔をうつむけるれいむ。だが、すぐに顔を上げて
「じゃ、ゆっくりできるのまってるよ。それまでおしごとしてくる」
「仕事、お前が?」
「『北東のニンジャ』のじっきょう!」
あれ、お前かい。あまりのカオスぶりにぶっとおしで見たぞ、俺。
「……みずにしごとしてください。おもにれいむとさなえのごはんのために」
オマエまで、蔑んだ冷たい目で見るんじゃねぇ。

そんな訳で、PCの前に座る。ご丁寧にもネットの回線は抜かれていた。
ため息をつきながらキーボードを叩く。
「これ以上、どこを変えろっていうんだよあのクソ担当が」
悪態をつきながらも、誤字の訂正や表現を変えてみる。
メインのシーンは最高の出来だと思うが、改めて見るとどこか独りよがりな気もしたのでちょっと視点を変えてみた。
自分でも推敲を重ね、何度も書き直しては消し、消しては書き直す。
トイレついでに、れいむの実況を見に行こうかと思ったが
汚い字で
『ゆっくりできてないひとは、はいらないでください』
と大きく書いてやがる。ちょっとだけ音が聞こえるが凄い早口で喋ってる。
アイツ、夢中になるとテンション変わるタイプなのか?どうせなら、アイツのノリをこっちに欲しいものだなと思う。
「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
やたら、間の抜けた叫びが聞こえるのがやかましいので、自分の部屋に戻る。
うん、今度の間の抜けたキャラ作る時はあいつモデルにしよう。

―数時間後、

「こんなモンか……な?」
自分でも、もう一回考え直したものを振り絞ってみたと思う。
少し、伸びをすると畳に背をあずけた。ここで、眠らずにさっさと編集部へ送らないと。
その前に回線を探さないとな。れいむかさなえか分らんが、どちらかが持っていっただろうし……
だがそれしても眠い。軽く仮眠を取るか。
手探りで枕を探し、手につかむ。疲れからなのか、やたら枕が重い。
眠ろう。そして、起きたらさっさと送って、あいつらに飯作ってやんないとな。
そう思っている内に、俺の意識は落ちた。


「さん…おじさん!」
「んあ?」
眠けまなこを空けると腹の上でれいむがポンポンと跳ねている。
「だいじょうぶ!?ゆっくりしんでない!?」
「勝手に殺すんじゃねぇよ」
起き上がってパソコンを見ると肌色の長い物体が何か打っている。
さなえだ。
「おい、何いじって…」
振りかえるとさなえはドヤ顔でPCのディスプレイに手を向ける。
そこには俺が書いた原稿が編集部宛に送られていた。
しかも、やたら折り目正しい文章で送られている。
これ、担当が見たら俺が送ったって思わないんじゃないかってぐらいに。
「さなえ、メールも打てたんだな」
「れいむがちょっとずつおしえたんだよ!」
ドヤ顔する二匹。
「おてがみのぶんはれいむがかんがえて、さなえがうったの。
 あと、さなえはっさきまでおじさんのまくらだったんだよ」
あぁ、どうりで重いと思ったらオマエか。
「もっとほめてもいいんだよ!」
さらにドヤ顔になり顔(?)をそらすれいむとさなえ。
そのに呆れたのか俺は思わず苦笑が浮かんだ。
「あぁ、ありがとよ。さなえ、れいむ」
さなえは手をじたばたと動かす。
「『ごほうびにごはんはカレーがいいです!』だって!」
良く分かるな。まぁ、手伝ってくれたのは確かだしな
「そだな……今日ぐらいはいいだろう。いつもの甘口だな」
「れいむはこのまえ、えらいひとがもってきたマンゴーもたべたい!」
「わぁったよ。ただしあんまり食いすぎるんじゃねぇぞ」
「ゆっ!」

れいむはひと鳴きするとさなえの頭に乗った。さなえが戸を開けると歌いながら歩いていく。
さなえの頭でくるっとれいむは回ると
「おじさん!」
「ん?」
俺の顔を見て満面の笑みを浮かべると
「おつかれさま!いますごく、ゆっくりできてるね、もっとゆっくりしていってね!!」
れいむは元気な声を俺にかけてくれる。
「……あいよ」
今日のご飯は旨いだろう。そして、ちょっと甘いの多めに出してやるか
そんな事を考えながら、俺達は台所へ向かった。





翌日、担当からOKの返事が来た。
だが、ついでに
『蛇足ではありますが、あのメールの文章は先生が書かれたのでしょうか?
 いつもの先生らしくなく、まるで女性が書かれたような印象を受けました。
 今度の別作品であの雰囲気で書かれてはどうかと思います』

という返事が帰って来た。
ふと、ゲームに夢中になる二匹を見やり、『ゴーストライター』という単語が頭によぎったが、
ゆっくりに負けるわけにはいかんと思い、必死にれいむ作、さなえ著のメールを読む俺がいた。



以上です、お粗末様でした。



  • 仕事が終わった後はゆっくりできるね!
    しかし実況ってプロが居るのかw -- 名無しさん (2012-08-20 07:10:20)
  • ノーマルとおさとうの違いはあってもゆっくりしてほしいと思う心はひとつですね。
    久しぶりの新人さんですね。これからもゆっくり投稿していってね! -- 名無しさん (2012-10-03 14:46:02)
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最終更新:2012年10月03日 14:46