【2012年企画 スカーレットファンタズム】紅魔郷十周年小説  「挑戦」前編

十年という歳月。
それはいわゆる節目といっても過言ではない年月である。
時に騒がしく、時に大変だった十年。
振り返ってみれば、皆懐かしい思いでだ。


そして私は思う。


この十年で、私が築き上げてきたものは何か。
この鍛え上げられた細マッチョか、
おかしくも愉快な仲間達との絆か。
それともネチョ軍団との長く激しい戦いの記録か。


この十年で私が築き上げてきたもの、
それはいったい何なのか、


この挑戦が終わったとき、それが形になっていることを願う。


紅魔郷十周年小説  「挑戦」


紅魔館には巨大な図書館がある。
沢山の図書に囲まれ、日の射さないくらい空間だ。
その図書館の中心に二人の人影がある。


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 くヽ_r'_ヽ 、 ,、_) ヽ ,______r'´イ´
  ['、イ_,-イ、ゝ,_, ,イ_,-,_ゝヽ、__〉
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   i_ノL.イ(ヒ_]     ヒ_ン )!_イ  | |´
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    ヽiノr´ヽイr-r-,iノイ/>ヽ. |
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 「||||「 ̄i  イ〉::〈イ   イ|.    i
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一人は私、ゆっくりパチュリー。
ゆっくりと呼ばれる種族の一人だ。
ゆっくりとは何か?説明は難しいので省かせてもらう。
そういう生き物だと思ってくれればOKだ。


    へ /           ヽ.\     }   /\
  く /              }  〉 ∠-二}/  /
    Y          ヽ __./ ∠_, イ  ヽ ̄ ''<
__.{ \  __ヽ_ イ` ー‐ イ   j、     _ ゝ
  / ̄ ヽ// l ヽ _j   ヽ   ̄丁 ',  イミミ/
―jヽ/7ヽ__/   ! |  | |   ',.     |   |   |爻ミ
  /  | |  |   l |  | |  ,斗-―‐|   |   |ヘミ
/  ィ| |  |   l |  | | / .|   L .」   |     に
ー―爻j l! :| , 斗┼ l |   j_,,,.. ィ1|     |      ゃ
      | |  |   l L.._|    '´ 弋z:ソ |     |      l
      | |  | ィ ィ弋zり        ,,,,,, |     |
     Nー'i  ヽ     ,      ,.j    |
       |   \ '''''   tっ  .. イ .|    |
       |      |` ー -┌ '  へ.|    |
       |      |   |  /ヽ<_:   l    |
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       |      | ./ |// | |ゝ / |    |\
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       |      |   j       j    l   ヽ

もう一人は私の目の前にいる細身の娘、「パチュリー・ノーレッジ。」
私と同じ名前だけじゃない、その容姿も顔つきも私にそっくりである。
一時はどっちがオリジナルかでこの娘と争ったこともあるが、
今は何だかんだで良き友人だ。
今回は私、ゆっくりパチュリーの一人称で話が進行していくので
パチュリーという名前がでたらほぼパチュリーノーレッジの方だと覚えてくれれば幸いである。


「…何度も聞くようで悪いけど、ホントにやるの?」


そのパチュリーは私にそう問いかける。
その不安げな表情は私のみを案じてか。


「ああ、私はそのつもりだ、遠慮なくやってくれ。」


私は何の迷いもなくそう答えた。
この後に及んで迷いがあるなら私はこんな所に立っていない。

私の答えを聞き、パチュリーは深いため息をつく。

「…全く、たかが十年位の年月がたったくらいで
 こんな無謀な挑戦するなんて、あなた頭がおかしいんじゃないの?」

彼女の言い分も理解できなくはない。
幻想卿の住人は長生きだ、目の前にいるパチュリーも
見た目幼く見えるがすでに百年生きている。
しかもそれでもまだ若い方で大物妖怪にもなると、
千年以上生きてる生きた化石のような存在もいる。
そんな連中からみれば十年のなんと短いことかと感じられるだろう。

あきれるパチュリーに向かって私はこう返す。

「重要なのは年月ではない、課程だよ。
 君にとって十年など光の如き一瞬の出来事に過ぎぬかもしれん。
 だが、私にとって今まで歩んできた十年は決して軽いものではない。」

十年、言葉にしてみれば何とも簡潔な言葉だ。
だがその二文字の中身は簡潔なものではない。
時に道に迷い、時に困難に正面からぶつかっていき、
まるで身を削るように生きてきた私の十年、
その十年は決して無駄な歳月ではなかったと、私は思いたい。

「その課程を意味あるものにするために、今日、私は挑戦するんだ。」

その為にその為だけに今、私はここにいる。
友よ、笑いたければ笑え。
だかこの挑戦は決してやり遂げねばならぬのだ。

そしてその友、パチュリーは…。
笑うを通り越してあきれているような表情をしていた。
だが、決して私をバカにしている表情ではなかった。

「…まぁ、その顔に似合わないまじめさがあんたの取り柄よね。
 解ったわ、そこまで言うなら私はもう何も言わない。」

顔に似合わない真面目さはよけいだ、間抜け顔はゆっくりなんだから仕方ないだろ。
とにかく、彼女の同意してくれた。
時は来た、さあ、私の挑戦を始めよう。


「これから私が唱える魔法であなたの頭上にあるものを実体化させる、
 あなたはそれを全て受け止める、それで良かったのよね?」


パチュリーの問いに私はコクリと頷く。


「…先に言っておくけど、この魔法、ちゃんと発動するかどうかさえ解らないわ、。」

「発動するかどうかさえ解らない?
 まさか、ちゃんと使えるかどうか試してないのか?」

「バカね、仮にも七曜の魔法使いが不完全な魔法を他人…
 もとい、他ゆっくりにぶっつけ本番で使うなんてバカな真似すると思う?」

「何だ、ちゃんとテストしているのか、とりあえず安心したよ。」

「一応、テストの時はちゃんと発動したわ、それでも、かなり不安定なのは変わらないわ。
 「概念を実体化させる魔法」何て前代未聞だもん。」


概念を実体化させる魔法。

その意味も効果も文字通りの魔法である。

たとえはクトゥルフでよくある「形容しがたきもの」とか、

浦島太郎とかでよくある、「絵にも描けない美しさ」。

ニュータイプがよくのたまう「もの凄いプレッシャー」などと言ったものを
その魔法で実体化させることができるのだ。
すごい魔法だが、パチュリー曰く、
「不安定なイメージを無理矢理実体化させるから
 もの凄く繊細な取り扱いが必要になる魔法。」らしい。

「もし魔法が暴走したら直ちに中断するわ、
 解ってるわね。」

「言われるまでもない。」

どんなに危険が伴おうが私は挑戦する。
それに何の意味があるの!?と言うツッコミを入れられても
私は構わない。


「…じゃあ、始めるわよ。」


パチュリーは一呼吸置くと、手に取った魔道書を開いた。
この魔道書開くだけで概念を実体化させる魔法が発動する特別成だ。
普通に詠唱するより二倍近く発動が遅くなるが
確実に魔法が発動するという利点がある。
今回のようにミスが許されない魔法にはうってつけというわけか。

「魔法は発動したわ。
 もうすぐあなたの上に何か振ってくると思うけど。」

パチュリーがそう言ったその直後だった。



ズズン!



私は自分の頭上から猛烈なプレッシャーを感じた。
来た!と思う暇もない。
私は二つの細腕を天に突き上げた。

ズオオオオオオン!


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       `ヽ   ノハ/::::|::|:::|、  ヽ_ン u|:::||:::::::lハ    y':
        :ヽr. ν不ト-|:::| \     /|:::|-γ⌒    /:
          :ヽ     ハソL._r‐ト--イ-、ト:;ル      /:
            :ヽ  ノ { }   ! .>< ! { }'     冫

私が両手で受け止めたもの、
それは、何の模様も飾りもない
巨大なブロックのようなものだった。

「フンッ…!」

私は両足でしっかり大地を踏み、
そのブロックに押しつぶされまいと踏ん張る。

「…これが、君の魔法で実体化させた十年の重みか…
 かなり重いが、私にとっては大したことはないな。」

それが私がこのブロックに抱いた素直な感想だった。
このブロックは重い…しかし、今まで私が支えてきたスレッドなどに比べれば
かなり軽く感じられる。
…パチュリーの魔法が不完全だったのか、
それとも私が「十年の重み」というものに過度な期待を寄せすぎていたのか。
そのとき、パチュリーはとんでもない事を口走る。

「何言ってるのよ、今あなたが支えているのは
 ほんの一年の重みに過ぎないわ。」

「何!?」

驚く私に、パチュリーは説明を続ける。

「一度に具現化させるのは危険だと思ったから何回かに分けて具現化するようにしたの。
 …そろそろ次の一年が具現化する頃だと思うのだけど。」

パチュリーがそう言った次の瞬間。


ドオン!


でかい音と同時に私の腕に更なる衝撃が走る。
重量感も増している、おそらく私の上に次の一年の重みが具現化して落ちてきたのだろう。

「ぐ、さらに重くなったが…それだけじゃないな!?」

重みがただ単純に増したわけではない。
足下がふらついてしまうかのようなバランスの悪さ。
おそらく、新しく具現化した一年の重みは単純なブロック型ではない。
いったいどんな形の物体が落ちてきたのか確かめたいが
私の位置からではそれを確認できない。


「一体…何が落ちてきたんだ?」

「まぁ、かなり変わった形してるけど…あ、そっか貴女の今の位置からじゃ確かめるのは不可能よね、少し待ってて。」

そう言うとパチュリーはそばにいた小悪魔に何やら指示を出し始めた。
(ちなみに悪魔語の会話なので私には理解できない。)
指示を受けた小悪魔は空中に飛び上がり、私から少し離れたところで制止する。
丁度、私と私が支えているものが見渡せる位置だ。
パチュリーがそれを見て頷いた後、私の方に向けて水晶玉をおいた。

「これは?」私はその水晶玉を見てそう問いかける。

「あの小悪魔が見ているものをこの水晶玉を通して
 見ることが出来るようにしておいたわ。」

パチュリーはそう説明する。
なるほど、これを使えば私も落ちてきたものを確認することが出来るわけか。
こういう細かいところまで配慮するのが彼女の良い所だ。
早速、私は水晶玉をのぞいてみた。

水晶玉に移っているのはブロックとそのブロックをを支えている私自身、

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                     , '"        ゙ヽ、
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                    ,'   ,' i ゝ、レ´ !//i  イ-┘
                  / ハ i  ! (ヒ_]   ヒ_ン レン゙
             r´^\_,.、,'--!、!. i ""   ,__, " i/i
             '、 (^ヽ〉ヽ,  `ヽ、_!   ヽ_ン  丿 |
 __           ゙ーニ´_ノ    ヽ.ル、 _____, イハノ
   /    __     `ヽ、___,,,...ン:::゙ヽ/ooレi゙'ー- 、/^)
  /\  イ             /::::::::::::::::::y:::::ト   l] つ
 ____            ,く::::::::::::::::::::::::::::::i゙'ー--┘ ̄
.            |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
──────   |    そーなのCAR       |          |
 _____    |   ,-─-、        . ,-─-、 |          |
.           |_/  ,-、ヽ____/ ,-、 ヽ_|_____|
             ',   -' ノ   ヽ:::::::::',  -'  ノ  ヽ::::::::::丿

そして、ブロックの上にのっかっている謎のオブジェだった。
…このとき私が思ったことはただ一つ、「何だこれは?」だ。
タイヤ付きの箱に金髪の少女が乗っている、形を簡潔に説明するならこんな感じだ。
箱にはそうなのCARと書かれているから多分これは車の一種なんだろう。

「これも、一年の重みが具現化されたものね。」

パチュリーはそう説明する。
正直十年という歴史のどの部分を具現化させたら
こんな物が出来上がるのか。
非常に気になる、しかし今の私には考えている余裕などない。

「次、来るわよ!」

そうこうしている内に次の一年も具現化されたからだ。
私は衝撃に備え、腹に力を込める。
…しかし、いつまで待ってもズシッとした手応えがやってこない。

「何だ?妙に手応えを感じないんだが。
 結局具現化は失敗したのか?」

パチュリーにそう問いかけると、彼女は違うと首を振る。

「いいえ成功してるわ、水晶玉をのぞいてみればわかるわよ。」

と、いうことなので私は水晶玉をのぞき込んでみた。
水晶玉に映し出されていた物は…。

    r' ̄i 
    ゙‐-     /^\      ,.へ___
  , - 、     /   >''´ ̄ ̄`'''ヽ7
  {   }    |  /´ _       _'ヽ、
  `‐-‐    〉 / /´  /  ,  、  、 ヽ〉 r'⌒',
   ◯    /  i イ  レ\ ハノ! /i  i !、_丿
       く_ノ  〉 ゝ、   /   )ハヘ|  
       __ノハ. i ハヒ_]      人  :iハ     ○
     /レヘハレへ   ,___, ヒ_ン ) :::   -‐、,,
  ,,r-─(_)       ヽ _ン  "".ノ !.; ヽ ヽ `,
  (                        ,r‐″
    ̄つ                 ,r─‐‐''
   (´              ,r──'
    ̄ ゙̄'───--------‐'

何か、でろっとしていた。
アイスクリームが溶けだしたような形状をしているその物体は、
さっき具現化した少女の頭の上にデロデロとかけられている。
いきなり頭の上から変な物体をかけられた少女の顔は明らかに不快な物になっていた。
この少女、感情を持っていることはわかった。


「どうやら具現化した物は全て固形になるとは限らないみたいね。」


水晶玉を見てパチュリーはそうつぶやいた。

「な、なるほど…しかしこれはこぼしてしまいそうな気がするんだが…。」

私がそんな不安を口にすると、パチュリーはこう返す。

「大丈夫、どうやら液体というよりスライムに近い性質みたいよ、ほら。」

パチュリーの言うとおり、この溶け掛けの物体は
液体のように流れず、伸縮を繰り返している。
おかげでブロックの橋からこぼれることはないようだ。

「そうか、なら安心だな。」

「別の意味での心配はあるけどね…ほら、次が来るわ。」

うむ、私もどんなタイミングで次の具現化が来るのか大体解るようになってきた。
次に備えて私は全身に力を込めた。


ベチョッ!


今度はこんな音が頭上から聞こえてくる。
まぁ、アレの上に落ちたからこんな音がしたのだろう。
正直、どうなっているのか気になる。
私は水晶玉をのぞき込んだ。

          /^\      ,.へ___         _,,..-‐∧─--- 、.,
         /   >''´ ̄ ̄`'''ヽ7        i´ < 龍 >     `ヽ
         |  /´ _       _'ヽ、      y-─レ'ヽ、!--'、.,,_______〈
         〉 / /´  /  ,  、  、 ヽ〉    /:::::;:::::;::::::i:::::::::;:::::;::ヽ;::::i::::|
       __ノ/  i イ  レ\ ハノ! /i  i  ○__ノ::::::::::r ( ヒ_]      人::::::)  ○
     /:::::::::::::::     ,___, ヒ_ン ) :::::::::::)-/:::::::::::::::     ,___, ヒ_ン ) :::::::::::)-‐、
  ,,r-─(_)   ( ヒ_] ヽ _ン  "".ノ !.; ヽ (_)       ヽ _ン  "".ノ !.; ヽ _ン
  (                                         ,r‐″ 
    ̄つ                 ,    '             ,r─‐‐''
   (´                                ,r──'
    ̄ ゙̄'───--------‐──---──────-----‐'

「…見事に混ざってるな。」

それが私の素直な感想だった。
何か、この屋敷の門番に似た何者かがさっきのデロデロと見事に混ざりあっていた。

「まぁ、混ざるのは当然の流れね、予想通り。」

彼女はそう言うが実際の所、どこまでが本当なのか。


とにかくこの後も十年の歴史が具現化したものがどんどん落ちてきた。


            ,. -───-- 、_
♪     rー-、,.'"          `ヽ、.
       _」::::::i  _ゝへ__rへ__ ノ__   `l
      く::::::::::`i / ゝ-'‐' ̄ ̄`ヽ、_ト-、__rイ、
       \::::::::ゝイ,.イノヽ! レ ヽ,_`ヽ7ヽ___>  ))
      r'´ ィ"レ´ ⌒ ,___, ⌒  `!  i  ハ       うー!うー!
       ヽ/ ! ///ヽ_ ノ /// i  ハ   ',
       .ノ /l           ハノ i  ヽ.
       〈,.ヘ ヽ、        〈 i  ハ  i  〉
        ノ レ^ゝi>.、.,_____,,...ィ´//レ'ヽハヘノ
           /⌒`γ´ハ_,,.イ´レ`ヽ、  /⌒ヽ、
            〈r'^ヽi /^L_!ムイ_」   .〉´ /  i' \
           ヘ `⌒ヽ'§  \.!,イ'⌒ヽ、  ノ   i
       、   ((  i、_ノ !、, 冫^ヽ.!,  ))  ⌒ヽノ
              ,i´ r/ `ー-!、_  !_ノ、_
        ((、   /  .~'"゙゙゙゛ヘ    ヽ、
         .   /        ',       r>、  ))
           ,,rく__       ハ  ゝイン"
            `'、__ニ、_r_、_イ__r__ェ_'ン´.......
              ,l゙  /^:::::::::::::::厂~`,i´::::::::
        ::::::::|"ー,i::::::::::::::::::::l_,,,i°::::::::
        ::::::::゙ヽ-" ::::::::::::::::〈,,,,r'゜::::::::

具体的には踊っていたり。


         __________ プップー♪
        /      /      /| ♪ ≡≡=─
      /      /      /  |/
      | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|  ..|  ≡≡=─
      |   さがわうーびん  ..|  ..|
      |             . .|  ..|  ≡≡=─
      |    ⌒ ,___, ⌒      |  ..|
      |  /// ヽ_ ノ ///   ..|  ..|  ≡≡=─
      |    次スレ行き    ..|  /
      |__________|/::()
      (:::::()       (:::::()  ̄
        ̄          ̄

箱だったり。


     _,r‐!7´ー-v―-、 `゙'  、
    r'「>-'、-─'-<こ`ヽ,__   ヽ.
  ,r'ア´        ´ `ヽ|/`ヽ   ':,
  く7  / /  ,!   ,! /!  ノ`ヽ/´!   i
   | ,' | /、ハ  /レ'__,!イ ,  ∨]   |
  ノイ ハ/─ ∨ ,riiニヽ/| ハ Y   |
  '´ | /! ,riiニヽ   "" |/|`ヽ\   ',
    レ'│"" _,,.. -‐'   !メ|),ハ ̄   '.、
   八!ヘ.         ノメハ/  | ,ハ i
  〈rヘメソゝヽ 、_    ノ "イ/´ノ__ノ_ハ ソ
   [ンく_]       '.、[ンく_]'
   ∠_ハ          ノソ_)

変な顔していたり、


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      /  < 龍 フ     `ヽ.    _r'`i ̄Y ̄7ー、_. `ヽ、.,
       i  ゝレ'ヽ、!─-ィ..,,_ノ i  r'´i>'‐- 、─-ァ' i‐-、 、ヽ、,__
      r〉'7´::/::::::ハ::i、,___:::::i:::ヽ、_イ.Y´        ̄`ヽ/-、 ヽr--ヽ.
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めーさくだったり。


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      /  < 龍 フ     `ヽ.    _r'`i ̄Y ̄7ー、_. `ヽ、.,
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        }><{ ,.イ>∞イ/}><{|/   ヽ!  レヘrン´ン´ ̄`ヽ;:::::::::Y´
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           /⌒`γ´ハ_,,.イ´レ`ヽ、  /⌒ヽ〈rヘメソゝヽ 、_    ノ "イ/´ノ__ノ_ハ ソ
          〈r'^ヽi /^L_!ムイ_」   .〉´ /  i'| [ンく_]       '.、[ンく_]' ..|  ≡≡=─
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        ((、   /  .~'"゙゙゙゛ヘ    ヽ、    |  /// ヽ_ ノ ///   ..|  ..|  ≡≡=─
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          /`'、__ニ、_r_、_イ__r__ェ_'ン´.......   (:::::()       (:::::()  ̄
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       __ノ/  i イ  レ\ ハノ! /i  i  ○__ノ::::::::::r ( ヒ_]      人::::::)  ○
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  ,,r-─(_)   ( ヒ_] ヽ _ン  "".ノ !.; ヽ (_)       ヽ _ン  "".ノ !.; ヽ _ン
  (                                         ,r‐″ 
    ̄つ                 ,    '             ,r─‐‐''
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             r´^\_,.、,'--!、!. i ""   ,__, " i/i
             '、 (^ヽ〉ヽ,  `ヽ、_!   ヽ_ン  丿 |
 __           ゙ーニ´_ノ    ヽ.ル、 _____, イハノ
   /    __     `ヽ、___,,,...ン:::゙ヽ/ooレi゙'ー- 、/^)
  /\  イ             /::::::::::::::::::y:::::ト   l] つ
 ____            ,く::::::::::::::::::::::::::::::i゙'ー--┘ ̄
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──────   |    そーなのCAR       |          |
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      \__|  |:__く/::/イ:::/!:::ハ:::|:::l、:ヽ',y、___ |   |:__/
         ,γ!  ハ   l:/:厶XLィ/ L||||、:ノ:ハr'.    |   |:
        :/ ! /  !   .ノ|:::|(ヒ_]:::::::::::::ヒ_ンY::|〈     ハ  .ト、:
      :.!! .!/   ! :.//.l:::|   ,___, .|:::||'、   / ヽ、.! .i:
       `ヽ   ノハ/::::|::|:::|、  ヽ_ン u|:::||:::::::lハ    y': 
        :ヽr. ν不ト-|:::| \     /|:::|-γ⌒    /:  
          :ヽ     ハソL._r‐ト--イ-、ト:;ル      /:
            :ヽ  ノ { }   ! .>< ! { }'     冫

そして気づいたら私の支えている物はかなりのカオス物体へと姿を変えていた。

「こ、これで何個目だ?」

私はパチュリーにそう問いかける。

「…これで九個目、次で多分最後ね。」

返ってきた答えはこうだった。

「次で、最後か…。」

そう、ついにここまで来たのだ。
紅魔館で培ってきた十年の歴史を受け止める偉業。
最後の一個を受け止め切れれば、その挑戦はついに達成される。

「…しかし、遅いな。」

「ええ、私もそう思っていた所よ。」

しかし、その最後の具現化がいつまで経っても起きない。
これまでの感覚からいってそろそろ具現化する頃合いなのだが…。

「まさか、ここに来て不具合が起きたのかしら…。」


パチュリーはぶつぶつ呟きながら図書館を徘徊し始める。
考えごとをしながら辺りを彷徨くのは彼女の癖のようなものだ。
そして図書館と館をつなぐ扉の前に彼女が移動したとき、
事件は起こった。


        _,,.. -───- 、 ..,,__
     , '"´:.:、--‐' `'ー‐ァ:.:.:.:.:.:.:.:.:`ヽ.
    /:.:.:.:.:.:.:.:ヽ. 龍 /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:':,
    !:.:.:.:.::.ゝ-‐レ'::\トー- 、;:ノ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.!
    rゝ'"´/:::::::::::::::::::::::::::::::::::`ヽ,__:.:.:.:.:.:.!
    /::::::;:':::::/::::::;:::!::::::::::;::::::::';:::::::`ヽ.:.:.:.:;'
   ,'::::::/:::::/::!::::;':::iヽ;:::::ハ::::::::!::::::ヽ;::ヽノ!
   i:::::::!::::/、:;」_;!:ィ」 |_、!」__;:ィ!:::::';::::';:::::i´
   ノ:::::::!::::!ァ´i'´`i'   '´ l´`ハ'i:::::i::::i::::::|
   `|__;ハ_ハ! ヒ'_,リ      .ヒ__アノレヘ._」:::::',
     /!:::::! ""    .    "" ハ/::::i:::::::::ヽ.
     !:Y::ハ、.    rー-‐、    ,イ〈::::::|::::::::::::::\
    rノ:〈::イ:::i>、, ` ー‐┘,..イ:::Yj::::::ハ:::::::::;:::::::::':,
  ,. - ''7:::)::i:::::|ア;'r`Tニ ´/ト、〈::i::/:::!:::::::::i:::::::::::i
. /:::::ノ::ァ'´Yj,.'7´:.:レ>n<iン´/:.)::ト-、!:::::::::ハ::::::::::|
,.:'"´:::/  }ンく{;:.:.r}>o<{/:.:.:.:.〉>く{  `ヽ/ ノ::::::ノ
;:ヘ::;r'   !7'.:.:.:.:.:ゝ、!_/:.:.:.:.:.:.:.:Y/     Y::::::(
  Y>ー、,_,.イ.:.:.:.:.:.:.・ーi'-・:.:.:.:.:.:.:.:.:.!     iヽ:::::)
 , '  _/:ゝ、.;_:.:.:._、_:.:.:.:.:__.:.:.:ノ、_、r-へ_r'  )'
.〈  ´ `ヽ;_:::〉:.:.:.:.・十・:.:.:.:.:.:.´:.:!::::ハ    ', (_>
  `' 、,  _,.'^ヽ、.:.:.:.:.ハ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.Y> .',   i
    Y、ヽ.`ヽ.)-ァ'-ヽ、:;____;;:ンヘ.. i    i
    r>.,_>-'´:.:./:.:.:.:.:.:.:.:.:i 回|:.:.:..',/   .,'

「パチュリー様!いらっしゃいますか!」


そう言ってものすごい勢いで扉をバンと開けたもの。
中華風の出で立ちにその身を包んだ彼女の名は 紅 美鈴(ほん めいりん)。
紅魔館の門番兼雑用係である。
普段は門の前にいる彼女が何でこんな所に来たんだ?
しかも、あんなに焦った表情で。


「緊急事態です一今すぐ紅魔館から避難を…!ってあれ?」


美鈴は図書館を見回すが、どこにもパチュリーの姿を見ることは出来ない。
「ちょ、こんな時にかくれんぼですか!?」とか言いながらキョロキョロと辺りを見回している。

「落ち着きたまえ、美鈴君。」

そんな彼女に向かって私はそう呼びかけた。

「ん?あ、あなたは変な方のパチュリーさん!」

…変な方とは何だ、変な方って。
どっちも同じ名前だから仕方ないとはいえ、そう言う名前の呼び方はないと思う。
一応私はゆっくりなんだから普通にゆっくりパチュリーと呼んでくれればいいのに。
やはりゆっくりは首だけの生き物というイメージが定着しているせいだろうか。


「あの、パチュリー様をみませんでしたか?
 もやしで、引きこもりなイメージのある方!」


もっとも、もう一方もこんな感じで呼ばれていたりする。
確かにそれは事実だが、もう少しソフトな言い方って物がある気がする。
まぁ、ここでそんな事を考えていても話は進まない。
今、ここで私は美鈴に伝えなくてはいけないことは一つだ。


「…今、扉を開いたとき二思いっきり挟んだが。」


「え?」


それを聞いた美鈴は今し方開けた戸をゆっくりと閉じていく。
図書室の壁と開いた扉の間に、彼女の姿はあった。


「…扉を開けるときはお静かに。」


なんだかエジプトの壁画のようなポーズで壁にめり込んだまま、
パチュリーは美鈴をにらみつけた。


「…も、申し訳がございません!パチュリー様!」


美鈴は思いっきり頭を下げてパチュリーに謝罪した。


「良いわよ、それより何だか慌てていたけど、どうしたの?」


自力ででれないのか、壁にめり込んだまま美鈴にそう問いかける。
気を配ることにかけては右に出るものがいない美鈴がパチュリーを壁ととの間に挟んでしまったことも気づかずに
駆け込んできた。
よほどの緊急事態なのは間違いない。
美鈴は呼吸を整え、こう叫んだ。


「は、はい!緊急事態です!
 紅魔館に向かって巨大な物体が落ちてきています!
 このままでは紅魔館に直撃!屋敷は跡形もなく吹き飛ぶでしょう!」


「………!?」

「な、何…だと!?」

美鈴が伝えてきたことに私もパチュリーも耳を疑った。

「め、美鈴、それは一体どう言うことだ?」

「どうもこうも言ったままの意味ですよ!」

そう叫ぶ美鈴はかなり焦っている。
どうやら彼女も冗談を言ってるつもりはないようだ。

「本当に巨大な物体がこっちに向かって落ちてきているというの?」

「本当です!何だったら外に出て確認してきてください!」

美鈴はそう言うが私はこの状態だし、パチュリーは壁にめり込んだ状態で
どっちも身動きがとれない。
どうしたものかと私は考えてある名案を思いつく。

「小悪魔、屋上に出て彼女の言葉が本当か確かめてくれないか?」

私は小悪魔に向かってそう言った。

「え?」

いきなりそんな事を言われて戸惑っている小悪魔。

「ああ、なるほど、それならここから外の様子が見れるわね。
 小悪魔お願い、私たちはこの場から動けないの。」

パチュリーも私の意図を呼んだらしく、小悪魔にそうお願いしてくる。

「は、はあ、解りました…。」

そう言って小悪魔は図書室の正門から外に出て屋上向かった。

「全く、どっちのパチュリー様も悪魔使いが荒いですねえ
。」

水晶玉からは小悪魔の愚痴が聞こえてくる。
その愚痴を聞いたパチュリーは「…給料下げようかしら」と呟いている。
小悪魔が屋上に着くまであまり時間はかからなかった。

「ふう、やっと屋上にでれました…ってこぁあああああああああ!?」

その瞬間、小悪魔の絶叫が図書館内に響きわたる。
小悪魔は一体屋上で何を目撃したのか。
私は目を凝らして水晶玉をにらみつけた。


水晶玉に映し出されていたのは、色々な意味でありえない光景だった。


                  _. -―‐ .    \ ヽ
                .  ´       \   ヽ
            __/               ヽ
          ノ }                \
         r┴::.( ハ  ヽ ,ヘ   _ ヽ
         }::::::__ノ::::::ヽ ('′ ヾ´  _rへ    }  つ
         {__(__:::ヾ:::', }  /:   ヾ.  l ∨_  っ
     ___ _ノ  \ `ゝ、::} ,′l i   ハ  l ノ 〉
  _ : '´: : : /:\ア´ .ヘ、 `/  l___!、____ ! l´ _)′
 '⌒丶: : / : : : } /イ   ゝ′ !、___,ゝ,_,′ !´}: :`ヽ
      }:/: : : : :!: : : {   { !  ノ"__"ノ{  ノ}リ: : : : :\
     ´ ̄ ̄ヽ'r三、`ー^ゝ彡-く{、iハノ{ヽ`¨ソi:, '´ ̄`ヾ
        / / ̄フ/ /  ハY⌒ヽ ヽ`´
       /    __f ヾ/   /トハ   マ、 \
        /    V  ノ /  /vヘミハ   V}   :,
      {    、( .イ /  /ノ{    ',  lノヽ }
     rヘ    /`ヾ. /ー /      ハ__! 〈 ノ、
     V彡、_r ヘ__ノV_/-‐- .__ ′}___ lヽ) ン
      ヽ{ ヽ >、! f´::::::ヽ       /::::::::ヾ¨´
       ´ ̄´ ̄`{=== }`¨⌒´ ̄{ ===}


「か、カリスマガード…だと?」


そう表現するしかなかった。
この館、紅魔館の主である吸血鬼、レミリア=スカーレット。
彼女の得意技の一つーー本人は「ただのしゃがみガードよ!」といい張っているが。
鉄壁の防御を誇り、そのかわいらしさで相手の油断を誘う防御技の究極型、カリスマガード。
それを象った巨大な物体が青い空にドカンと浮かんでいた。
そして、それはパニック映画に出てくる地球に向かって落ちてくる巨大隕石のごとく、
大気との摩擦熱で赤く発光しながらこっちに向かって落ちてきていた。


「た、確かに巨大には違いないけど…。」


パチュリーも言葉が出てこない。
正直、気持ちは分かる。
当主レミリアのシンボルマークとも言って良いカリスマガード。
それを象った巨大な物体が今、紅魔館を破壊しようとしている。
そんな馬鹿げたことが今起ころうとしているのだ。


「ちなみにお嬢様は今現在顔を真っ赤にして
 「あのふざけた物体を破壊しろ!」とわめいていました。」


「…それは何となくわかるわね。」


私もパチュリーも美鈴の言葉を聞いて
子供のように喚くおぜうさまの姿をありありと思い浮かべた。


「まぁ、そんな事より、このカリスマガードの正体、
 あなたも薄々気づいているんじゃないかしら?」


と、そこでパチュリーが私にそう問いかけてくる。
…彼女の言うとおりだ。
私はこの物体の正体に薄々感づいている。

「…このカリスマガードの正体は魔法で具現化された
「十年の重み」の一部…そうなんだろ?」

私はそう言い放つ。
間違いない、これは概念を具現化させる魔法で実体化した
十年の歴史の重みだ。


「え?まさかお二人がこれを出現させたんですか?」


美鈴がそう問いかけてくるので私はウムと答える。

「…何やってるんですか。」

美鈴があきれ顔でそう答えた。

「まさか最後の最後でこんな巨大な代物が具現化されるとはね。
 …やっぱり発動不安定なせいかしら…。」

パチュリーは壁にめり込んだままブツブツと呟き始めた。

「あ、あの!私はどうすればいいんですか!?
 あの物体かなり近いところまで落ちてきているんですけど!」

と、小悪魔が水晶越しにそう言ってくる。
彼女の言うとおり、カリスマガードは紅魔館の目と鼻の先まで近づいてきている。
紅魔館に直撃まで二~三分もかからないだろう。

「と、とにかくお二人とも避難を!このままあの物体が直撃したら
 ここも無事ではすみませんよ!」

美鈴は私たちに避難を促してくる。
…しかし、私は首を横に振り、こう言った。

「無駄だ、今から避難しても逃げきれないな。」


「え!?」


驚く美鈴に私は説明を続ける。


「あれだけデカい物が地表に衝突すれば
 被害は紅魔館だけではすまない、衝突するときに発生する衝撃波はおそらく紅魔館を中心にありとあらゆる物をなぎ倒すだろう。
 あれが衝突するまでの数分でその衝撃波の範囲の外まで逃げるのは不可能だ。」


                      、/ヽ
                  -─込㍉トy|
                <      Y´ >'ヘ___
                  /      rミ/    弋__
              /        / / / /  j ,∧
             /    __, イZ { / / .,イ / ',
            /  ィ     /イ㍉彡/>'、|,イ l ハ
        ー=彡イ /    < {(( 〃 込ハ.从小{ ノ
        〃イ//,イ       | `代イ    (
          /イ/// ./ | ,人 弋㍉   ,イ
             /イイ /,小l ハ{ヽ. トイ "イ
            从/イ㍉ル′  /トイー′  __ノ
              ___/>' ¨¨ ̄ト7,><⌒㍉、__
             ァ|      y辷/   `ヽ
                (''人___rー=彡≦       |
              { `l¨¨´:.:.:.:.{.          |
              人. |:.:.:.:.:.:.:.:.:.:>-─ 、    人
             /   !:.:.:.:.:.:.:..:《7⌒ヽ ヽ__ ノ:ヽ
         弋     V:.:.:.:.:.:.:/   .〉_ノ:.:.:.:.:.:.:.:.:ノ
           〉¨ヽ___>:.:.:.:.:/   /:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.:/
              `Tー─7V:/    /:.:.::.:.:.:.:.:.:..:イ
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          弋   ⌒Yrt> 、     ノ三ニY′  ̄⌒イ
           〉ー-=彡イ人ー==ニニ二ニ=ー彡__∠
            し'⌒:.:/ /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.>㍉イ⌒リ>ー-ミ{
              | /:.:./ l:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:イ   代( 〃ハ   ノ__
           ィく:.∠___.{:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.人辷ヽ、_)弋) Vl/-─ミァ
        <:.:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.(/⌒㍉__ノ      V⌒   Y
     /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.)>ーy         V⌒Zニ、
 ,イミ<:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:rf㍉代¨ヾミ       弋Y   )


「だ、だったら咲夜さんに時を止めてもらいましょう!」


「…今、咲夜は何処にいるのだ?」


「…何処にいるんでしょうね?」


時を止められる彼女の力を借りるのは悪い提案じゃない。
…が、今彼女はレミリアお嬢様を安全なところに避難させるのに全力を尽くしているだろう。
もう屋敷からはかなり離れているはず。
今から彼女に救援を求めてもその間に時間切れになる確率の方が高い。
咲夜の方から気づいてくれれば話は別だが、あれは妙なところで抜けているため
主人を助けた所で満足して私たちのことを忘れてる可能性が高い。


                /l
        /⌒ヽ//
        '"⌒):::::::⌒ヽ
       ,..イ::::::::::i⌒ヽ〉
.    ,.ィ'":::::::::::::::::::八
    i::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
    !:::::(__)::::::::::::::::::::::ハ
    \::::::::::::::::::::(__)::::::l,..-‐ '' ´ ̄ `丶r‐-.、
      `ー1ソr-、___ノ、l^ヽ、       /::::::::::!
       lル|  /^ヽ__ソ___マ'⌒`K´::::::::i::::ト、
        |ル!  } γ'/ / /`广卞⊥_::::::!:ノ_ ヽ
       Vヘ く_/ ,/ Tヽ/ ! | l_ ヽムヽ:f´:::ソ ̄`丶、
        Vハ  レ'/ ,ィ ムハ l ト、`ヽ l`了ヽ::::ヽ::::::::::::〉
        Vハ/ 〈 l / ! /fハ lハ ノ,斗ミ ! L乙_::::::::::::/
         lル!.  ル' lハ ヒリ  ' !::匕〉ハ {. ヽ/:::::::r'´
         r┴'t‐、{ ,イハ人 ' _   ゙ー/  | ヘ. ヽーイ
         f  ‐-}J リ  ト、ト>‐┬ イィ'l  l ハ. \,!
        l 、_ソ   _l_ノ丁了/´ ̄ヽル'  ', ヽ \
        | |ソ|l   f´  ,仏fこ!_ノ ̄二ヽ  ', ヽ、\
       Vルハ r‐<___,/:::/' ^lヘ、__,ィ┘  ヽ   ',  ハ,/
          |ル! V^ヽ,/::::/ ;  ト、::::/    ハ   ! /
.        |ソl.     /::::/ i    ヽヽ, -‐,、=-}  レ'
.         |ソ|ヽ--イ:/^|___| /丁ソ( rー ' ヽ_〉

「…そ、そうだ!フランドール様の力を使えば!
 前にも隕石を壊した事がありますし!」

また美鈴は新たな案を思いつく。
しかし。

「あ、あれ?フランドール様、そんなところで何やってるんですか?」

「ムキー!何よあのお姉さまモドキ!
 いくらドカーンしてもヒビ一つ入らないじゃない!」

その提案は水晶玉越しに聞こえてきた小悪魔と妹様の声に
あっさりかき消された。
屋上に上がってカリスマガードの破壊を試みるも、
力が全く通用せず、悔しそうに地団太を踏むフランドールお嬢様の姿がありありと思い浮かぶ。


「フランドールの力も通用しないのか…。」

「普通の物質じゃないから物理的な破壊は通用しないかもしれないわね。」


パチュリーは冷静にそう分析する。
逃げるのも無理、破壊も不可能…。
はっきり言って私達には打つ手がない…。
しかし、私はそう思っていなかった。


「ああ、こんな事なら私もすぐに逃げればよかったかもしれません…。」

「絶望するのはまだ早いぞ、美鈴。」


私は美鈴に向かってそう言い放った。


「え?それはどう言うことですか?」


首を傾げる美鈴は掘っておいて私は軽くジャンプする。
…踏む、かなり重い物を支えているが、本気を出せば成層圏まで飛べるな、余裕で。


「…ま、まさか、あなた…!」

「何を言っている元々あれはそのつもりで出したものだろう?」

「無理よ!あれは重すぎるわ!やめなさい!」


私が、これから何をしようとしているか理解したパチュリーが大声でそう叫ぶ。
私は彼女の警告を無視して足を屈伸させて柔軟運動を始める。
さて、時間はない、すぐに行動に移らねば。


「パチュリー。」

「!?」


「とりあえず、無事に帰ってこれたらおいしいパイを焼いてくれ。」


「こ、ここであえての死亡フラグ発言ですとぉ!?」


美鈴は私の発言に衝撃を受けている。


「美鈴、心配するな…これは死亡フラグではない…
 死亡フラグへの”挑戦”だ。」

「止めましょう!ここで余計な挑戦増やすのはやめましょう!」


美鈴の発言はあえてスルーさせてもらう。
私は目的を果たすため両足に力を込める。


「それでは、ちょっと行ってくる。」


「や、止めなさい!マジで止めなさい!」


必死で呼び止めるパチュリー。
そんな彼女の制止を振り切るように…私は大きく飛び上がった。


バキバキバキバキイッ!


図書館の…イヤ、紅魔館の天井を突き破り、
私は十年の重みの一部を持ち上げたまま大空へと飛び出していく。

「ゆっくりパチュリーーーーーーーー!」


パチュリーの叫び声が私の耳に、心に響きわたる。
心にズキリとくる物があったが私はそれを振りきり、どんどんと上昇していった。

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最終更新:2013年01月01日 16:23