神社の朝

神社の朝

空気が肌寒くなってきたこの頃、私こと博麗霊夢は博麗神社の社務所の寝床で布団にくるまっていた
病気という訳ではないから安心して頂戴、でもここまで肌寒いとこたつを引っ張り出して来たくなるわね…でも寒いし眠いし…

「おねーさん!あさだよ!ゆっくりしていってね!!!」
「あー…れいむ?…お願いだからもうちょっと寝かせておいてくれないかしら…」

私の枕元で叫んでいるおせっかい焼きの何かは謎の饅頭、『ゆっくりれいむ』
何の冗談か私の髪型を真似ている妖怪とも何とも言えない饅頭は幻想郷の至る所に現れて
特に異変をおこす事もなく、思い思いにただゆっくりしているだけという謎めいた存在なの
私はこいつらを妖精の仲間なんじゃないかと思ってるけど妖精と比べてもずっと害がないし
異変の途中で妖精がたくさん投げつけてきたのを退治してみても涼しい顔して応援しながら地面を転がってくもので
もう私としてはどうでも良くなって放っておいたんだけど、偶々縁側で私の隣に来てお茶を飲んでいたこいつが
度々私に構ってくる様になって…今はもう目覚まし時計みたいに私を起こしに来る始末よ…

「だめだよ!ゆっくりおきてね!あと5分コールはもうきかないよ!!!」
「私は寝れば寝るほど美味しくなるのよ…」
「そんなじょうだんは竹林のうさぎさんだけにしてね!!!」
「…ZZZ…ZZZ…」
「ゆぅ~…だったられいむにもかんがえがあるよ!!!」

突然金属音が部屋中に鳴り響き、私は起きざるを得なくなってしまった
れいむの方を見てみれば、れいむはどこからともなく出したフライパンとおたまを叩き合わせていたの

「…もうちょっとスマートな起こし方は無かったのかしら」
「ごめんね!もうへやの外で白黒おねーさんがまってるよ!!!」
「そういうのはもうちょっと早く言ってくれない?…それにしても魔理沙は…どうせお茶飲みに来ただけよね」

私は肌寒さを堪えながらいつもの巫女服に着替え、お煎餅をかじりつつ部屋の外に出た
朝日に照らされる縁側には魔理沙と彼女の頭の上にはお目付け役(?)であるゆっくりまりさの姿があった

「あっ、白黒おねーさんとこのまりさ!!!」
「おう、みこさんとこのれいむ!!!」

それを見たれいむが縁側に飛び出し、まりさも魔理沙の頭から飛び降りてまりさが左に、れいむが右に位置を取って

「「ゆっくりしていってね!!!」」

いつもの挨拶をしたわ、どうやらこれ、お約束という奴らしく知り合いのゆっくりと共に唱える事があるみたい
私達の間で言うおはよう、こんにちは、こんばんは位の意味だと思うんだけど…これで合ってるのかしら?
そうそう、言い忘れていたけどゆっくりのモデルは私だけではないの、そのまりさもモデルは言わずもがな
ゆっくり達はこの幻想郷に住む私の知り合いや弾幕ごっこした気がしないでもない奴がモデルになっているらしいわ
魔理沙が調べた結果、中でもれいむ、まりさ、あと何人かのゆっくりは幻想郷全域で見かけるみたい、確かアリス、文辺りだったかしら

「よっ霊夢、今日はしぶとかったみたいだな、あとお茶いただいてるぜ」
「やっぱり、今日は特別寒いからかしらね、そろそろこたつを出そうと思うわ」
「そいつはいいな、出したら呼んでくれよ、あと私の分のみかんも頼むぜ」
「おねーさん、そうなんでもかんでも人任せにするのは良くないぜ」

まりさが小言を言い始めた、どうもこのまりさはアリスが送りつけた刺客らしく
所々だらしない所のある魔理沙をサポートしているらしい、こいつホントに魔理沙がモデルなのかしら?
私のとこのれいむもそんな感じだし世話焼き気質なのかもしれないわね

「何だと、まりさも言ってくれるじゃないか、私はお茶を飲むのに忙しいんだ」
「あんたのゆっくりは相変わらずまじめな奴じゃないの、あんたとは大違いね」
「ちぇっ、人をまじめじゃないみたいに言ってくれやがって、んで霊夢、そのこたつは何処にあるんだ?今から出さねば気が済まん」
「あんたが手伝ってくれればすぐ済むわ、こっちの納屋に行くから着いてきて」

二人と二頭で納屋に向かう、その途中でも他のれいむ、まりさだけでなく様々なゆっくりが現れてはゆっくりしているのだけれど…
れみりゃといいすいかといいゆかりといい、こいつらみんな宴会の常連のゆっくりよね(そもそも神社に遊びにくる妖怪ばっかだし)
どうせだったら全部餌付けして労働力にでもしてみようかしら、神社の掃除をしてもらうとすっごい楽できるんだけど

「おねーさん!きっとおねーさんの分のおせんべいがなくなっちゃうよ!!!」
「あっ、いつの間に私の考えを読んでいたのよ」
「まあ霊夢は顔に出るからな、さとり妖怪じゃなくても簡単な考えは見透かせるもんだぜ」
「悪かったわね…まあよく考えたら餌付け代で家計がまた火の車になっちゃうか…このれいむだけが限度かしらね」
「おねーさんしってる?まりさたちはべつにごはん食べなくてもゆっくりできるんだぜ!!!」
「…それホント?じゃあれいむが時々どこからともなくお茶を出すのは…」
「おちゃをのんで見るけしきはとってもゆっくりできるんだよ!あと、おいしい!!!」
「なるほど、そりゃ確かにとってもゆっくりできるじゃないか、霊夢もそうだろ?」

食べなくてもゆっくりできるけど美味しいとゆっくりできるってのもいいねと談笑しつつ私達は納屋からこたつを引っ張り出した
物珍しそうに他のゆっくり達が覗き見ている中、私と魔理沙でこたつを運び込み、社務所の中で温まったってワケ

「あ~、やっぱ労働の後のこたつとみかんは最高だぜ」
「ホントホント、生き返るわ~…何か忘れている様な気がするけどね」
「ゆ~ん…あったか~い…でもおねーさん、多分じんじゃの前をはきそうじしてないよ!このままじゃおちばの山ができるよ!!!」
「んな大げさな…でもまあお賽銭の確認だけはしとこうかしらね、れいむ、手伝いなさい」
「ゆっくりわかったよ!!!」
「いってらっしゃーい、あー、こたつから出たくないぜ…」
「おねーさん、今日のじっけんでできあがった薬はおひるにはばくはつしちゃうとか言ってたけどどうなのぜ?」
「…あっ…やべっ!霊夢!お茶美味しかったぜ!またな!」

寒気を我慢し、私はれいむを連れて境内の掃除に向かったわ、振り向けば魔理沙が慌てて箒に乗って家に帰ったみたいだけど…
まあいいか、掃除が終わったらまたこたつに潜ってみかんを頬張るとしましょ
私はこたつの暖かさを思い出しつつ、れいむにちりとりを渡して竹箒を手に取った…

ありすアリスの人

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2016年11月02日 19:45