ゆっくりパークの春夏秋冬part3

 ゆっくりパークの春夏秋冬 part 3


  --intermission ばっちんシェルター--


「ゆぐっ、ゆぐぅぅ! こないでぇぇ!」
「ゆっくりしてね、ゆっくりしていってね!!! いやあああ!」
「たーべちゃーうぞー♪」
 胴つきれみりゃが追いかけ、ゆっくりれいむ一家が必死で逃げる。いつもの光景だ。
 と、一家の前方に、木でできた奇妙な箱のようなものが見えた。縦横ともに、ちょうど
一家の全員が入るぐらい。正面に扉がある。その前で、一頭のゆっちゅりーが叫んでいる。
「こっちよ、ゆっくりしないでかくれてね!」
 天の助けとばかりにれいむたちはぴょんぴょんと駆け寄り、箱に入った。最後にゆっちゅ
りーが駆け込んで、扉を閉めた。
「ゆふー、ゆふー、ゆふー、ゆふー……」
「ゆ、ゆっくりできるね……」
 しかしその途端、ひとつだけの窓に、ぬっとれみりゃの姿が現れた。不気味な笑顔で覗
き込む。
「うふうふー☆ いただきまーす」
「いや゛あぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!」
「ゆっぐりさぜでぇぇぇぇぇ!」
 窓は小さく、れみりゃは入れない。だが手が入る。壁際にさがっておびえる家族に、短
い腕がわきわきと迫る。
 そのとき、ゆっちゅりーが教えた。
「みんな、これをひっぱるのよ!」
 天井から、一本のひもが垂れていた。れいむたちは半狂乱で叫び返す。
「あぞんでるばあいじゃないでしょおお!?」
「いいからやるの! やればゆっくりたすかるわ!」
「ゆ、ゆっくりたすかるの?」
 その言葉にれいむたちは飛びついた。親たちと娘たちが、一家総出でひもに食らいつく。
「せーの、むっきゅ、むっきゅ!」
「ゆっしょ、ゆっしょ!」
 一家はゆっちゅりーの言葉を信じて懸命にそれを引いた。
 すると――
 窓の外側に、雨よけのようなひさしが伸びている。
 そのひさしが、じわじわと持ち上がり始めた!
「もうすぐ、とどくんだぞぉー♪」
 むちむちした顔を四角い窓に突っ込まんばかりにしているれみりゃは、頭上で起こって
いることに気づかない。
 ゆっちゅりーが叫んだ。
「いまよ、はなして!」
「ゆうっ!」
 全員が、ぱっと口を離した。
 その瞬間――
  ばっちん!
 屋根から吊り上げられていた重いひさしが落下して、れみりゃの頭を叩いた。れみりゃ
は地面に叩き伏せられる。
「あぶぅっ!?」
 れみりゃは顔を真っ赤にして起き上がり、周りを見回す。
「れ、れみぃのあたまをたたいたのは、だれなんだぞぉー!?」
 怒り心頭に発したが、あたりには誰もいない。腹いせとばかりに窓に取り付き、前にも
まして
激しく威嚇した。
「がぉー! がおがお、うがぁー!」
「ゆうううう! ゆううううう!?」
「がまんして! もういちどよ!」
 ゆっちゅりーに励まされて、一家は紐を引く。そしてぱっと離す――
  ばっちん!
「うばぁっ!?」
 それから三度ほど、威嚇と反撃のくりかえしがつづいた。
 とうとうれみりゃは泣き出してしまった。
「う゛あ゛ーん、あだまいだいいいぃ! もうやだああ、おうぢがえるううぅぅ!」
 そういうと、身を翻してぱたぱたと飛び去った。
「ゆう、う、うううう……」
 恐怖に身を硬くしていたれいむたちが、ようやく力を抜く。ゆっちゅりーが声をかける。
「やったわね。これからも、ゆっくりゃにおそわれたら、こうすればいいわ!」
「ゆっ、ゆっくりできるの?」
「ええ、そうよ! もうゆっくりゃをこわがらなくていいの!」
「ゆうううう!」
「ゆうううう、ゆっくりできる……ゆっくりできるよぉぉ!」
 れいむたちの歓喜の声が響いた。

「おお、せいこうせいこう」
 丘の上から眺めていた俺は、双眼鏡を下ろしてつぶやく。
 この間作ったゆっくりシェルターはどう考えても失敗作だった。モノを媒介にしたコミュ
ニーションなんて、しょせんはもろい。それに、れみりゃたちがゆっくりを襲わないのは、
不自然だ。
 必要なのは、ゆっくりたちに、適度な身を守る力を与えることだった。
 そこで考えたのがこれ、ばっちんシェルター!(はいはい)
 仕掛けは、説明する必要もないぐらい簡単だ。窓の外にばっちん板のついた箱。れみりゃ
が付きまとおうとする限り、ばっちんばっちん叩かれることになる。
 れいむたちは安全になるが、一人で入ると、ひさしが重くて持ち上がらない。
 また、据え付け式だから、れみりゃに過度の脅威を及ぼすこともない。
 これなら、ゆっくりたちを調子付かせずに守ってやれるというわけだ。
 いずれれみりゃも、ばっちんシェルターに張り付いているのは割に合わないと学習し、他
の食べ物を取りにいくようになるだろう。
 安い。シンプル。丈夫。ほどほど。うむ、やはりギミックってのはこうでなくちゃな!
 よし、これをパーク中に設置しよう。
「どうだ、きめぇ丸。名案だろう」 
「おお、しょぼいしょぼい」
 俺のそばでうろちょろしていたきめぇ丸に声をかけると、あざ笑うようにヒュンヒュン
動いた。ほんとうぜぇな、こいつ。ぱちゅりーのほうがずっと素直だ。
 でもまあ、こいつはそこがいいんだがな。


  
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最終更新:2008年11月01日 00:31