捕食種とよばれていたものたち

捕食種とよばれていたものたち



 ゆっくりの中には、捕食種とよばれる種族が存在している。
ただし、これは厳密には誤りといえる。

 一般的には、ゆっくりれみりゃ、ゆっくりふらんがそう呼ばれるが、実際のところは、親の食生活によりけり、なのだ。

 捕食種と呼ばれる種族以外のゆっくりは、雑食性で知られている。
が、奇妙な事に、人間と同じように、何を嫌うか、というのは何を食べてきたか、による。
例えば、人間の赤ん坊は、腐肉の匂いを嫌がらない。腹を壊した経験、吐き出したくなる味付け、それらが嫌悪感を惹起し、好き嫌いを生み出す。
現に、狼に育てられた人間の少女は生肉、それも腐肉を食らった。学習こそが人や、ゆっくりを作り上げる。

 であれば、もしかすると同じゆっくりを餌として与え続ければ、同じゆっくりを主食とする『捕食種』に変わるのでは無いだろうか、
と考える者が居ても不思議では無いし、それは実証されている。

 では、なぜ今のれいむ種やまりさ種が同族を捕食しないのか、と言えば、答えは単純。

 その能力が無いのと、基本的に空を飛べないからである。
れみりゃやふらんは空を飛ぶ事が可能で、しかも力が強い。捕食した後にすばやく逃げる事が可能なのは、精々がこの二種だからだ。

 逆に言えば、親に同族を捕る事を教えられなかったれみりゃや、ふらんはゆっくりを捕食しないし、その行動を考えたり、実行しようとしたりしない。
いくらか実例が報告されていたものの、他の地域から移ってきたほかの種族のゆっくりから情報が伝わり、他種族との関係が壊れてしまい、捕食種に変容する、という事がままある。

 基本的に、ゆっくりは孤立が強いストレスとなりやすく、力の強いれみりゃやふらんの場合は、それが他のゆっくりの死につながり、
餌場からたたき出される。恨みを持ったれみりゃ、ないしふらんが口で攻撃し、それが自分の味覚にとって『おいしい』という事に気付き、
といった具合にして『捕食種』が出来上がる。
 基本的にはこうだ、と言われているが。だが、私は少々違和感を覚えないでもない。
日本では、あまり捕食種を観察する人が居ないという事もあって、報告例があまりに少ない。

 国外ではそこそこあるにはあるのだが、生息数自体がそもそも少ないので、日本と同じぐらいだろうか。

 そこで、私は近所に居た、親なしのれみりゃとふらんの双子を観察してみる事とする。
無論、このままでは生きていけない。というわけで、そのまた近くに居たゆっくりさくやに世話を頼んでみたところ、
二つ返事で了承してくれた。やはりさくやは世話好きである。なんだか鼻血が出ていたのは引っかかるが。

 加えて、さくやは他のゆっくりの獲り方を知らない事が多いので、獲り方を教えることは無いだろう。
仮に知っていたとしても、まあ研究室で同様の事をやればいい。この場合だと、人為的に母親から子供を引き離す事になるので、気は進まないが。



 近くにテントをはり、幾つか器材を運び込んで、観察を開始する。
面白くなってくれれば御の字である。観察用のセンサをつけることは考えたが、さすがにどこにくくりつけたものか、というわけで諦めた。

 それを体内に送り込む器材もあるにはあるのだが、予算が下りなかった。
というか、なんというか、ゆっくりの研究は今のところ下火である。残念ながら。

 ともあれ、さくやはれみりゃとふらんに受け入れられ、食べられるものの取れる場所を教えたり、すりすりしたりして遊んでいる。
どうなるか不安だったが、第一段階は終了である。


付記:しかし、さくやのようにこちらの鼻血が出そうなくらい、れみりゃとふらんは、かわいい。



 観察二日目であるが、通りかかった子れいむに、れみりゃとふらんは逃げられた。
折悪しくさくやがおらず、フォローも出来なかったようである。泣いている二匹を前に、おろおろしていた。

 顛末は、こうである。

「れいむはおいしくないよ! ゆっくりこないでね!!!」

「うー! なにもしないぞ~」

「おねえちゃんをいじめるな!!!」

 恐怖をむき出しにしたれいむは、精一杯体を大きくして威嚇し、とまどうばかりのれみりゃとふらんの前で高くはねる。
だんだんと勇ましい事を言っていたふらんがぐずりだし、つられてれみりゃが泣き出す。

「ゆゆゆ?」

 今度はれいむが困惑する番だった。
恐ろしい筈のれみりゃとふらんがぴいぴい泣いているのだ。ひょっとしたら逃げられないかも、と半ば震えていたれいむは、われに返ったのか慌てて逃げ出す。

「うー! うー!」

「しね! ゆっくりしね!」

 そこにさくやが戻ってきて、前述のようにおろおろしていたが、どこからか『ぷでぃん』を出してあげる事によって、事なきを得た。
だが、このような事の積み重ねが『捕食種』を生み出すようだ。


付記:慰めてやりたいが、出て行くのも憚られる。観察が目的、観察が目的。



 昨日のれいむが、なぜかれみりゃとふらんをじっと見ている。
その視線に気付いて、ふらんがぷくっと膨れて威嚇していて、今度はれみりゃがおろおろしている。
おっとりした姉と、気の強い妹、という関係を何故か連想した。

 さくやは食料を取りに行っており、あいにくと、居ない。テントの方でごそごそという音がしたが、多分気のせい。
ではなく、さくやが居たので、他をさがすように言うと、弾かれたような勢いで逃げ出した。

 ギリースーツを被っており、ム○クのような格好だったのが災いしたようである。ばけものー! だそうな。意外と傷つくものである。


 ……とまれ、観察中である。

 威嚇されたれいむは慌てて逃げ出した。その数秒後、なにやら雲行きがおかしくなっている。

「うー! ふらん!」

「あのこはゆっくりできないよ! ゆっくりしね!」

 どうやら、れみりゃは話しかけてみようと思っていたらしい、だかられいむを威嚇したふらんに対して怒っているのだ。
ただ、ふらんは姉のためを思ってやった事らしく、困惑の色を浮かべていた。ああ、すれちがい。

「うー! ゆっくりしね!」

「おねえちゃんのばか! ゆっくりしね!」

 ついにはつかみ合い、もとい噛み合いになってしまう。
なんというか、だんだんと見ているのがつらくなってきた。正直止めたいが、観察という眼目からはずれる。さくやはもどってこない。

「うー! うー!」

「うー! うー!」

 ぴいぴい泣いているにもかかわらず、お互い謝ろうともしないし、噛み付いたままだ。
なんのかんのいって、こういう強情さが有るようである。個体固有の物か、はたまた種族固有の物かは判然としないが。


付記:やっぱり泣き顔は非常にかわいい。ただ、ほかのゆっくりが私の上を平気で飛び跳ねていくのには本当に辟易した。
ギリースーツを着てるからと言って、踏めばわかるだろうに。
さくやは何も取っていかなかった。
どうやら、テントに興味を惹かれたので見に来ただけらしい。緑色の嫌ムッ○が居るとわかれば、多分寄ってはくるまい。



 さて、本日で三日目だが、研究室でやればよかった、などと考えつつ、嫌○ックから人間となって朝食をとり、舞い戻って観察を続ける。
しかし、定点カメラを設置して、一端引き払うことも考えている。あまりに動きが無い。
 有るにはあるが、姉妹喧嘩で、お互いがお互いほほに青あざを作って、そっぽを向いていることぐらいだろうか。
血液が流れていないのに、あざが出来るというのもおかしな話ではあるが。どうも、打撲傷ができれば、出血班のような反応を示すらしい。

 しかし、一番気の毒なのは『おじょうさまといもうとさま』のために食事を取りに行ってきて、
帰ってきてみれば大喧嘩をしていたのを見る羽目になったさくやだろう。

「ゆっくりできないー!」

「うー! ふらんのせいだよ!」

「うー! おねえちゃんのせい!」

 ゆっくりにしてはギスギスした空気である。
二頭を甘やかす傾向のあるさくやでも、さすがに困り果てている節があり、泣きそうになっていた。
まあ、即席の家族であるし、こんな物だろうか。頼んだこっちが、悪いことをした気になる。

 そして、喧嘩の原因になった子れいむはやってきていない。さすがに毎日は外に出してもらえないだろうし、天気が悪い。
雨の日に子供を外出させる親ゆっくりはいないのだから、しぜん子れいむは来ないことになる。
それに、だからこそさくやは昨日頑張って食料を採ろうとしていたのだから。

 別に、食べなくても平気ではある。だが、それは自称『しょうしゃなめいど』のさくやのプライドが許さないらしい。

とまれ、いつまでもここに居られればいいが、別の仕事がある。
というわけで、カメラを仕掛けて帰る事にした。カメラとアンテナのバッテリーが、交換できる日までもてばいいが。



―多分続く

あとがき

 えー、ちるのの観察日記も終わってないのに、ちょっとれみりゃとふらんのSSを書いてみたくなりまして。
プラス、設定的に気になるところがありましたから。

 それは、いわゆる『捕食種』以外のゆっくりは概ねの場合雑食と設定されているのですが、同じ雑食の人間は基本的に学習によって食べる物の好みが変化します。
なら、上でも述べたように、ゆっくりにも同じようなプロセスがあるんじゃないか?と考えたためです。

 じゃ、れみりゃやふらんが捕食する側にまわったのは、雑食だが、親から教えられて同族を捕るようになった、という話を考えてみたわけですよ。
なら、親から教えられなければ雑食動物になるんじゃないかね、という。この辺は、書いてる中の人が電子系の人なので、あんまり詳しくないのですが。

……にしても、やっぱりれみりゃやふらんはかわいいなぁ(以下略


ゆっくりと動物の人



  • >さくやのようにこちらの鼻血が出そうなくらい、れみりゃとふらんは、かわいい。 -- 名無しさん (2008-12-05 21:15:17)
  • すいません、途中で送ってしまいました。上の感想は私です。 -- 名無しさん (2008-12-05 21:17:07)
  • たびたびすいません。名前を入れるのを忘れていました。でも、本当にかわいいですよね、れみりゃ。ふらんもですが。 -- 名無しさん (2008-12-05 21:19:29)
  • 全部の感想は私です。ホントにすいません。 -- れみりゃ好きの人 (2008-12-05 21:20:37)
  • ↑ゆっくりしていってね! -- 名無しさん (2009-07-15 20:40:50)
  • ゆっくりがこの世にいたらすごく可愛がるのにな〜 -- 阿部さん (2013-08-09 23:21:49)
  • ゆっくりがこの世にいたらすごく可愛がるのにな〜 -- 阿部さん (2013-08-09 23:23:58)
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最終更新:2013年08月09日 23:23