『その頃のありす』

『はさんでもいいのよ?』の続編(裏側)になります。

『その頃のありす』

隣の部屋がむぎゅむぎゅとなにやら騒がしい。

「もう・・・こいびとたちはすてきにかたりあうのがとかいはよ!!」

ひとり居間に残って編み物にチャレンジしていたありすは
この騒がしさに少々ご立腹だった。

「でも、やっぱりちょっとうらやましいかしら・・・。」

呟きながら、編み棒の片方を身の下に、片方を口に咥えて器用に編みこんでいく。

「ゆっしょ、ゆっしょと。やっぱりとかいははまふらーよね!!」

ゆっくりと、身体を伸ばし縮みしたり、口を動かしたりして少しづつ小さな
毛糸の編み物が形作られる。

「ほんとはおにーさんにはせーたーをつくってみたいけど、いまはまふらーがせいいっぱいよね・・・。」

独り言を言いながらも本を参考にして右往左往しながら作業を続けていく。
そんな時だった。

「「やっべ!!くっついた!!!やっべえ!!!」」

外から同居しているゆっくり達とは違う声が聞こえてきた。

「もう、またとかいはじゃないゆっくりがきたのかしら。」

声に反応してガラス戸の外を見ると、そこにはぴったりと密着したまま
跳ね回るれいむとまりさが居た。どうやら、家に住むゆっくりとはまた違う
れいむとまりさのカップルのようだ。その仲睦まじい様子に

「ふ、ふん。うらやましくなんてないんだからね!!!」

とぷいっと頬を膨らませて後ろを向くありす。だが、その騒がしさはちょっと異常だった

「「どでな゛い゛よおおおおおおおおおおおおおおおおお」」

あまりに必死なその声に違和感を感じたありすは何事かと戸を少しだけ開けてにゅるっと外に出た。
「あなたたちどうしたの?」
きっちり戸を閉めなおして縁側から騒いでいるカップルに話しかける。
「「ゆ!ありすだ!!たすけてありすたすけてね!!!」」

その時点でありすはようやく気がついた。
このカップルはすりすりし合いながらここに来たのではない。

 ・・・くっついてる。頬同士がむっちりと。それはそれは綺麗に文字通り一つになっている。

(これは・・・たいへん!!だけど、なんだかねたましい・・・。)

家に一緒に住んでいるまりさとれいむのその友情ではない愛情の関係に
悪意ではないもののやっぱり、ちょっとした嫉妬を感じていたありすは
(このせいでぱるすぃと気が合うこととなり仲良くなったのだが。)
異常事態と認識しながらも、この状態にその仲の良い家のまりさとれいむの光景とを重ねてしまい
このカップルにちょっとしたいたずらをしようと思いついたのだった。

ありすはその思惑を隠しながらぴょんと縁側から飛び出し
そろそろと外のカップルのまりさの開いた方に並ぶ。

「「ひっぱってもとれないよ~!!!」」
涙目も涙目。必死に離れようと引っ張り合いながら
もうすぐ大泣きしてしまいそうなカップルに、ありすの悪戯心が燃え上がる。

「うふふ・・・!!」
ぴと。すりすり、むっちり。

「しあわせ~!!!」「ありすううううううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」

ただでさえれいむと一つにくっついてしまい何ともいえない奇妙な感覚なのに
さらにもう片方の頬にもくっつかれてしまい信じられない、と目を見開いて叫ぶまりさ。
異常事態ながらも愛しいまりさと二人で居ることにまだ安心をしていたれいむも
ありすのまさかの行為に驚きついに泣き始めてしまった。

(わたしもこうやってまりさとぴったりしたいなあ)

ありすは悪戯でやっている事は自覚している。してはいるが少しの間
まるで恋人にまりさがいて、そのまりさと仲良く密着していることを思い浮かべそれに浸る。
偽りであれこの行為に少しだけその幸せを感じていた。

(いけないいけない。そろそろなんとかしないとね。)

切ない、ずっとこうしていていたい、そんな思いをありすはため息をついて振り払い
自分が今くっつくことで思い当たった解決方を口にした。

「なに?くっついてひっぱてもとれない?かんたんよ!
 ひっぱってだめなら・・・・・。おせばいいのよ・・・・・!!」

そういって一度後ろに力をためてから思いっきりまりさの方向に力をかける。
ぽん!!
「とれたよとれたよ!!!」
嬉しさにと喜びに頬を染めながら少し涙を流すれいむ。だが・・・
「・・・・・・・・・・まりさは!?」

にやっと猫口でしてやったりの顔をするありすは
(計画通り・・・!!!)
とまりさをお持ち帰りすることを予感させる、よこしまさを漂わせた顔でほくそえむのだった。

「「うわあああああああああああああああああああ!!!!」」

その雰囲気の怖さにくっ付いたままのまりさはもちろん、先程まで外れた事に喜んでいた
れいむも目を見開き口を大きく開け歯をむき出しにして叫んだ。    

「・・・なーんてね!!」

先程まで邪悪な笑みは何処へやら、ちょっとした悪戯とその反応に満足したありすはすっきりとした笑顔で

「このままじゃ、すりすりもできないしね!!そーれいくわよ!!ぽよよん!!」

ありすは身体が少し平べったくなるぐらい力を貯めて、まりさを思いっきり跳ね飛ばす

「とれたよ~れいむ~!!」「やったね!!まりさ!!」

涙を流しながらカップルは外れたことを互いに喜び合い、
ありすに感謝して去っていった。

そんな姿を笑顔で見送り、二人が去って見えなくなった後
ありすは、ふう、と息を吐き遠い目をした後、一度目を瞑ってから再び目を開けると縁側で泥を落した。

「さ、みんなのぶんのあみものにもういちどちゃれんじよ!!!」

そう言い終えるとありすは家の皆の笑顔を思い浮かべながら、夕食時まで編み物を続けたのだった。

                                    即興の人



  • 即興の人さんのすりすりシリーズはとてもほのぼのしてて大好きです -- 名無しさん (2008-10-12 23:48:44)
  • そのままありすとまりさが濃厚でネッチョネチョなすっきりシーンに突入してればもtt(ry -- 名無しさん (2008-10-18 18:37:42)
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最終更新:2008年10月18日 18:37