バニーゆっくり

 ※ 元ネタ:

   ラーメンズ第13回公演「CLASSIC」
   小林賢太郎脚本:「バニーボーイ」 より


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 今夜も来てしまった


 「また来たの?常連なの?お得意様なの?」
 「来たければ来ればいいとおもうよ」
 「「ゆっくりしていってネ!!!」」


 ――げらげらげらげらげ―――


 それにしても、改装したばかりのこの店のインテリアは何なんだろう。
コーディネーターの意志か、スキマが多すぎる。ゆっくりが挟まるには
丁度いい大きさの上、お陰で非常によゆうのあるスペースには見えるが、
人間の客はかえって入るスペースが減っている気がする。


 「ふう…………」


 いつもの席に座ると、のたのたといつもと変わらぬ顔ぶれが現れた


 「いらっしゃいませ~」
 「バニー・バニー」
 「西日暮里店にー」
 「「ゆっぐりしていってねー!!!」」
 「水割り下さい」


 未だにちょっと訛りのとれないちぇんと、私がこの店に来て3回目から
ずっと付いてくるれみりゃだった。
 60年代イギリスの、増えすぎたゆっくりうどんげとゆっくりてゐの孤児
の救済施設がこんな所に行き着くとは。
 発祥の地はアメリカだが、「正真正銘のバニーガール」がいる店として
全国規模に広がった「バニー・バニー」店もついに日本に店舗を構えるこ
となった訳だが、入る客層がバニーガールよりも兎、というかゆっくり好
きかゆっくり本人ばかりだったため、この店も既に単なるゆっくりパブに
なりかけている
 まあ、それはそれで良い訳なのだが……


 「水割り下さい」
 「いいよ~」
 「どうぞだよぉー」


 慣れない手つきで水割りを作るれみりゃを、未だに心配そうに指導する
ちぇん。考えてみれば、ここの古株兼チーフマネージャーと、期待の(?)
新人に毎度相手してもらっているわけだ。しかし、あまり進歩が無い
 ちなみに、語尾が「どぉー」や「ぞぉーではなく、時折「よぉー」が入る
のは、中国生まれだかららしく、かなり嫌な思い出があるようなので、あ
まり立ち入った話ができないでいる。


 「日本にも二人とも慣れた頃だろ?」
 「でもたまに帰りたいよ~」
 「本国の店舗には入れてもらえないのか?」
 「ニューヨークにだけは行きたくないの~」
 (―――何があった?)
 「でもでも、どうしたの~?さいきんきてくれなかったからさびしかったよ~」
 「いや、ごめんね。ちょっと熱出しちゃってのよ」
 「あららぁ~、どこからだぞぉー?」


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ―――どこから、っていうか、まあ体から… でね、寝てたら不思議な事があったの


 「わぁああー」
 「あるんだぁー実際ー!!わかる、わかるよ~」


 いや、まだ不思議じゃないからね


 「そっか。まちがえたぞー」


 で、家で寝てたの、布団で


 「え?どっちー?ふとんで~?家で~?」


 家の中に在る布団の中で


 「ふとんの中?ふとんの中?中!?」


 いや、掛け布団と敷き布団の間で


 「かけふとんとしきふとんの間~?」
 「ちょっとまって、どんなふとんだぞー?」


 いや。掛け布団の下に私がいて、その下に敷布団


 「うっへー !あるんだ、実際」


 2人の顔は真剣そのもの
 ………いや、まだ不思議じゃないからね、


 「はっはーんそうかー、まだ、不思議じゃないからね」


 ―――でさ、、私んちの天井に、モビールがあるのね


 「いきなり!?」


 いや、前に勝手さ、丸い気の玉がついてる奴。でさあ、眺めてたの


 「モビールが」


 私が。そしたらね、全く動いて無いんだ


 「おまえが」


 モビールが。私もだけど。今はモビールの話


 「おお!?」
 「どんなモビールのおはなしだぞぉー?」


 いや、モビールは普通のモビールなんだけど


 「ふつうかぁー」
 「NICE!!」


 ……でね、”動け!”って思ったの。そしたらさあ、回るのよ、右に」


 「おまえが?」


 モビールが!! ”左!”って思ったらさあ、回んだよ、左に!」


 「おまえが?」


 モビールが!!面白えって思ってぐるぐるやってたんだけどさあ、これって不思議だろ?
 れみりゃを指差す。
 その指先を見つめ――


 「ああー!」


 じゃなく、この事実が
 と、れみりゃは指差す方角の自分を指して、


 「うん。この」


 じゃなくてこの全体の話


 「あ、全体的にネ」


 全体機にって言うか、思ったとおりにモビールが動くのが。ところがね、それが全然不思議とか
思わないのよ。そのくらい朦朧としてんの40度だったからね


 「ああ、さいしょすいちょくだったのに、モビールが40度まわったことが」


 違う。熱が


 「モビールの」


 私の


 「お前のモビールの」


 私の体温の話


 「おお!!どんな話だぞぉー?」


 いや、もう終わりなんだけど


 「おわりかぁー」
 「NICE!」


 まあ、夢でも見てたのかな


 「夢かーい」
 「ちゃんちゃんと」


 ――――この野郎………!
 で、すげえ腹立つことがあったんだよ


 「腹立つ事!?」


 その風邪が全然治らないからさあ、病院行ったのね


 「病院!」


 怒りに2人は打ち震えたように体を痙攣させる
 いや、これはまだ腹立つ部分じゃないから


 「そうか、間違えたよ~」


 で、近所の病院に行って


 「近所!」


 再び痙攣する2人


 「まだ」
 「まだかぁ~、またやっちゃったぞ~」


 肩をすくめて自分の頭をこづく


 「ねえいっこきいていい~?」


 何?


 「何で近所の病院にしたの~?」


 近いから


 「なるほど~。とおいよりはちかい方があっとうてきにいいもんね~」


 でさあ、内科医いるじゃない


 「いないぞぉー」


 いるの。
 恐る恐る周りを伺う2人
 ――病院にだよ


 「病院に、ね!」


 ……内科医は薬で直すじゃん。でもね、簡単な手術ならやるらしいんだよ」


 「それはおかしいよ~」


 だろ?


 「それじゃむずかしいのはやらないんだぞ~?」


 そうだよ。
 でな、その話を、別の患者に聞いて


 「どの話?」


 内科医なのに、手術する話


 「おお、どんな話だ~」


 内科医なのに、手術する話


 「「出った~!!」」


 2人の兎耳を掴み放り上げると空中でくるくると回って椅子に着陸
 ――でね


 「うんうん」


 何か緊張するジャン。そんな会話の後だから


 「会話の……まって、かんがえるから………」
 「えー、何会話だぞぉー?」


 ――別の何会話とかそういうんじゃなくて、普通の日本語会話kだけど


 「あ、 日本語だったらわかるよ~」


 ………うん、でな、この医者大丈夫かなーと思って、ちょっと不安になったの


 「えー、まってまって、じゃあさ、い一個きいていい~?」
 「不安になる前はなんだったんだぞぉー?」


 ………普通


 「普通。ってことは、普通から不安になったんだね」


 ………そう


 「「見えてきた見えてきた」


 こう先生の前に座っていったのよ”熱があります”って


 「うわーNICE!!」


 …………でさあ。内科医の先生がさあ、超簡単なの、診察が。ちょっと診て、”…風邪だね”これでおしまい」


 「ああー。それは確かに腹立つぞー…」


 だろ?


 「顔がもうだって。なあ」


 ………顔はまあ普通だったけど


 2人は立ち上がり、ピョンピョンとはねた


 「そっか。ま、いいんじゃない?たまにはらしくないことだってさ」


 怒りのあまり、2人の兎耳を両手で掴み。近くのソファに投げつける。
 吹っ飛んだ2人ボヨンと跳ね返ってくる。もう一度投げるともう一度跳ね返り。
 3度目に挑戦すると、初めて2人は抵抗を始めた。
 もみ合いの末、真上に投げると、倒れた私の顔面と下腹部に急降下した。
 何を心配したか、自分の鼻を押さえて怯えている


 「―――出てねえよ!!鼻血は。むかつくなあ、お前らムカつかれる天才だな。ムカツキパブやれよ。どこぞのウドンゲ
  達とさ!」
 「「へえ~あるんだー実際」」
 「ナンバーワンだよ!」



 これがあるから、バニーゆっくり通いはやめられない。


  • テラシュールww
    この世界観はなんか癖になりますね -- 名無しさん (2008-12-02 17:04:10)
  • ラーメンズかwww -- 名無しさん (2009-02-18 16:48:30)
  • 話噛み合わないw -- 名無しさん (2011-01-11 11:39:30)
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最終更新:2011年01月11日 11:39