『未確認ゆっくりシンドローム』
「ゆっくりしていってね!!!」
まあ、なんだ。良く解らないこれが家に来てからもうしばらくになるのだが
「ゆっくりしていってね!!!」
「ゆっくりしていってね!!!」
「ゆっくりしていってね!!!」
時折、何を考えているのかこのセリフを連呼し始める時がある。
「ゆっくりしていってね!!!」
赤いリボンと髪飾りを着けた髪を跳ねさせて勢い良く何度も同じことを言う。
わかった、わかったから静かにしてくれ。
「ゆっくりしていってね!!!」
ああ、もうしつこい!!こう何度も大声で同じことを言われるのは色々と癪だ。
「ゆっくりしていってね!!!」
「ゆっくりしていってね!!!」
「ゆっくりしていってね!!!」
「ゆっくりしていってね!!!」
止まらない・・・。あまり生きていて言葉が解る者に実力行使はスマートではないが
捕まえて猿ぐつわでもしてやろうと思い飛び掛っても
ヒュン!!「それはざんぞうだ。」
目にも留まらぬ速さで動くと、冷めた目つきのまま何だかぶれた状態のこれがこう言う訳だ。
まあキレて叫んで追いかけまわしても、罠をしかけても捕まえられない事はもはや経験済み。
「ふ・・・。」
では、どうするのか。クールに息を吹いているこれを無視して部屋を出る。
そして台所に着いた俺はお茶を用意する。・・・今、あいつの分も用意するもんだと思っただろ。
これ、俺の分だけで良いんだ。
「ゆっくりしていってね!!!」
部屋のドアを開けるや否やまたこれだ。わかったからそろそろ静かにしてくれ。
目の前に座って、お茶を一口。これでようやく連呼が止まる。
「さあ、おたべなさい!!!」
こうやって目の前で茶を飲むと、眉を何時もより立てた表情でホッペから丸い一口サイズの饅頭が出てくるんだ。
なんだかくやしいが味は正直一級品、それを受けにしてお茶を飲む。
まあ、これは後で解った事なんだが実はお茶はいらない。
連呼し始めたら目の前に座ってのんびりする様をしばらく見せれば良いだけみたいだ。
「・・・。」
そんな俺の姿の何が楽しいのか珍しく口を閉じ頬を赤らめて、何時もより自慢げな・・・いや、満足げというべき表情で見ている。
不思議だ、本当に何を考えてるのかよくは解らない。よくは解らないが・・・。今こいつの目の前でお茶を飲んでいる、
こののんびりとした時間は、日ごろ忘れがちな実に余裕のある、ゆっくりした時間なのだと思うのだ。 即興の人
最終更新:2008年12月04日 19:22