ゆっくりパークの春夏秋冬 part 8 中編
遡ること約一年。俺は博麗霊夢と、ある契約を結んだ。
霊夢は、博麗神社が所有する土地の一部を俺に賃貸する。
俺は、その土地を柵で囲って自費でゆっくりパークを作る。
契約期間は一年とする。
迫っている期限というのは、それだ。
三月末で、契約が切れる。自動更新の約束はしていない。改めて巫女と相談しなければならない。
だが俺には契約更新のための金がない。大きな金額ではないのだが、手持ちはパークの建設で使い尽くした。
食っていくのでかつかつだ。
金策はしているが、うまくいくかどうかはわからない。おそらく、契約は切れるだろう。
霊夢に向かってまだ決めていない、と言ったのはそのことだ。契約を延長するかどうか。
実際には延長したくとも金がないので、俺は立ち退かねばならない。
一年前はそれでも別に構わないと思っていた。もともと宝くじで当たったあぶく銭だ。
たとえ一年でも、変わった面白い体験ができればいいと考えていた。
だが、間もなく期限を迎えようとする今、俺は後悔していた。
この一年、ゆっくりたちと過ごした。連中の愚かしくも愛らしい生態をつぶさに見た。
そして、サンクチュアリの必要性を痛切に感じてしまった。
この不思議な生き物たちは、犬や猫のように、人間のそばで暮らすべき生き物ではない。
野っぱらで漫然と、泰然と、適当に暮らすのがもっともふさわしい生き物だ。
けれども彼女ら自身の性格が、そんな風にできていない。
食べ物を、あるいは刺激を求め、ゆっくりはすぐ人間の生活圏に出て来る。
また人間のほうでも、ゆっくりを放置できない。
好奇心や善意、あるいはその反対の気持ちを持って、ゆっくりに近づこうとする。
これが雀や鳩だったら、お互い同じ場所に暮らしつつも、無視しあうことができるだろう。
だがゆっくりに対してそんなことはできない。行動様式が重なりすぎている。他ならぬ俺とれいむたちが、その端的な例だ。
別れて住むべきなのに、重なろうとする人間とゆっくり。
そのジレンマを解決するには、隣り合いながらも干渉しない聖域を設置するしかない。
ゆっくりパークは、それになり得る場所なのだ。
にもかかわらず、恐らくここはあと数十日で閉ざされてしまう。
しっかりした後ろ盾もない、俺という個人が、思いつきでこんなところを作ってしまったからだ。
暗い小屋の中に、大小の寝息がゆぅゆぅと漂っている。
「れいむ……ぱちゅりー……肉まん……」
どんな顔をしてこいつらと別れよう。
俺は、よく眠れなかった。
うつらうつらとしているうちに、どれほどの時間がたったろう。
俺は重々しい地響きに体を揺さぶられて、飛び起きた。
ゴゴゴゴゴ、と小屋が揺れる。棚のものがいっせいにカタカタと揺れ、屋根壁がギシギシときしんだ。
どこか、そう遠くないところから、バキバキとものの割れる凄まじい音がした。
「ゆっ? ゆゆっ!? ぐらぐらだよ、あぶないよ!」
「あかぢゃんだぢ、つがまるんだぞぉ! うーっ――ぴぎっ!」
バタバタ、ドシン、という音が響く。ゆっくりたちが驚いて暴れているのだ。
俺はあわててランプを灯し、室内を見回した。
床には寝ぼけてベッドから落ちたれいむたちが転がり、向こうのコタツの上ではれみりゃ親子がのびている。
野性の本能で、とっさに空へ飛び上がって逃げたものの、天井にぶつかって墜落したんだろう。
気がつけば、あたりはシンと静まり返っている。
軒から、ドサッと雪の落ちる音が聞こえた。
俺がじっと息を殺していると、布団に残っていたれいむが俺のそばにすりよってきた。
「ゆうう……こわいよ、へんなおとがしたよ。これじゃあゆっくりできないよ……」
「大丈夫だから、ちびどもについててやれ」
「ゆ、そうするよ……」
ぴょんと床に下りると、母れいむは子供たちに呼びかけた。おびえたちびどもが、ゆんゆん泣きながら擦り寄った。
俺は、目をしぱしぱさせているぱちゅりーに声をかけた。
「ぱちぇ、おまえも聞こえたか」
「むきゅ……どさっとおとがしたわ」
「それじゃない、地震の最中だ。何か知らんが、とてつもなく大きなものがぶっ壊れるような音がしなかったか」
「きゅぅ……わからないわ」
「れいむはきこえたよ!」
「てことは、おれの空耳じゃないな」
ぱちゅりーが聞き逃したのは、目覚めが遅れたからだろう。
この小屋に関係ある物音ではなさそうだが、どうも胸騒ぎがした。
俺はベッドを出て普段着に着替える。時刻は午前四時半。夜明けまでもう少し。
ゆっくりたちが集まってきて、心配そうにぴょんぴょんと飛び跳ねる。
「おにーさん、どうするの?」
「こわいよ、ここにいてよ!」
「ゆっくちさせてね!」
「見てくる。待ってろ」
「むきゅう……」
すると、ぱちゅりーと子ぱちぇが何やら相談を始めた。
コートを着て靴を履こうとすると、二段重ねになった二匹が玄関にやってきた。
「おにいさん、おにいさん!」
「寝てろって」
「むきゅ、ありがとう。でも、しんぱいだから、おちびちゃんをいっしょにつけるわ!」
「なんだって?」
俺が振り向くと、母の頭からぴょんと降りたちびぱちぇが、俺を見上げていった。
「おかーさまはおもいから、おにいさんにのれないけれど、ぱちぇならじゃまにならないわ! ぱちぇをゆっくりつれていってね!」
そう言って、ちびは大人びた顔で見つめた。
そういえばこの子は、犬小屋の危機を一人で知らせに来たほどのしっかりものだったな。
いつの間にか赤ちゃん言葉も抜けている。
「そうか、よし……」
俺は少し考えた。連れて行くのは構わないが、手が塞がるのは困る。
裸の子ぱちゅなんか持ち歩いたら、何かの間違いで潰しかねん。
台所に戻った。ガラスのコップに紙を詰めこんで上げ底にしてから、子ぱちゅを入れて、手拭いで巻いて蓋をする。
そのままコートの胸ポケットにコップを差し込んだ。
「前が見えるか」
「ゆっくりみえるわ!」
コップの上端にいる子ぱちゅの声が、手拭い越しに聞こえた。
「よし、行くぞ」
「ゆっくりきをつけてね!」
俺はランプ片手に、ゆっくりたちの声を背に受けて表へ出た。
その途端、黒い旋風のようなものがビュッと目の前を横切った。思わず顔をかばう。
「うわっ! なんだ?」
いったん通り過ぎたその旋風は、俺の足元へ舞い戻ると、切迫した様子で飛びついてきた。月明かりに、そいつの顔が浮かび上がる。
「おお、ひさんひさん! おお、きけんきけん!」
「きめぇ丸か!?」
カラス天狗もどきの嫌味な顔をした、頭だけタイプのきめぇ丸だ。夏ごろ知り合って、冬に入る前に別れた。
というのも、こいつはうちの母れいむの長女と結婚して、二人で冬ごもりに入ったからだ。
と、待てよ……冬ごもりの真っ最中のはずのこいつが、なんでここにいる!?
「おまえ、嫁のれいむはどうした?」
青ざめた顔のきめぇ丸が、こいつらしくもない、ひどくあわてた調子で言った。
「れいむれいむ、ぐっしゃりぐっしゃり!」
「……なんだと?」
きめぇ丸が飛び上がり、振り返ってこちらを見る。俺は雪を蹴立てて走り出した。
「なんだこりゃあ……」
きめぇ丸を追って、丘の裏手にある崖までたどり着いた俺は、呆然とした。
目の下は巨大な熊手に掻き取られたように、ごっそりと土が削げている。
割れた岩や生々しい地肌がむき出しになっており、キナくさい匂いがする。さっきの轟音はこれだったのだ。
崩壊した斜面の下のほうに、雪と土砂の入り混じった黒っぽい堆積が見えた。
「土砂崩れ……それとも雪崩かな」
南に面したこの崖には、数日前まで深い雪が積もって雪庇(せっぴ)が突き出していた。
それが昨日までの暖かさで緩んで、崩れたのだろう。
いや、今はそんなことはどうでもいい。
「れいむたちはどうなった!?」
この崖には、パーク建設の時に設置した、ゆっくり用の横穴があったはずなのだ。
それも、四十個以上も。
「れいむれいむ! れいむれいむ!」
崖の下方の空中で、きめぇ丸がぐるぐると回りながら滞空している。
俺はその場所をよく確かめてから、いったん丘の北側へ降り、ぐるりと南へ回りこんだ。
下から崖を眺めると、上から見るよりは様子がつかめた。
どうやら、崩れそうなところはあらかた崩れてしまったようだ。これなら近づける。
「きめぇ丸、どこだ」
堆積の上に登っていくと、きめぇ丸が濡れた土砂の上に降りて待っていた。
狸穴ほどの丸い穴が開いている。きめぇ丸が脱出した穴だろう。
「ここか?」
「ゆ、ゆっくりしないゆっくりしない!」
「わかったから落ち着け、ヒュンヒュンはやめろ」
動揺してやたら頭を振るきめぇ丸を押しのけて、俺はランプをかざして穴を覗き込んだ。
「れいむ! いるか?」
手を伸ばせば届くほどのところに、かろうじて、白い肌が見えるような気がした。
「れいむ!?」
手を伸ばして、俺はその肌に触れた。確かにゆっくりの餅肌だ。もちもちとした手ごたえがある。
「れいむ……」
俺は息を凝らして耳を澄ませるた。れいむの声は聞こえるだろうか。
「ゆぅ……いたいよ……たすけてね……」
「にゃにがおこったのぉぉ……」
「ぐるじいよぉぉ……」
「ん?」
俺は眉をひそめて身を起こし、周りを見回した。
よく聞けば、声は目の前の穴からではなかった。周りのあちこちから上がっている。
生存者が大勢いるようだ。
こいつは大事だ。ただちに救助活動を始めなければ。
だが、俺一人ではどう考えても手に余る……。
俺はしばらく熟考し、やがて口を開いた。
「子ぱちゅよ」
「むきゅっ?」
「おまえたちって、きめぇ丸の言葉はわかるのか」
「きゅ、ちょっとならわかるわ!」
「ちょっとだけじゃ困る、用件がたくさんある。よし、おまえが伝令になれ。今から言うことを覚えろ。できるか」
「ゆっくりやってみるわ!」
「まず母れみりゃ宛て。玄関に大きなスコップがあるから今すぐ持ってこい」
「げんかんのすこっぷね!」
「そうだ。次、子みりゃ二匹。こいつらは崖の上まで来て待て」
「がけのうえね!」
「母れいむと子れいむ二匹は、昼間使ったシャーの盆を持って崖の上に来い」
「れいむおかあさまたちはシァーのおぼん!」
「最後に母ぱちゅりーは家で準備。けが人が大勢いくと伝えろ」
「けがのてあてね!」
「全部覚えたか?」
「ゆっくりおぼえたわ!」
コップの中で紫の小玉が胸を張った。信用してもよさそうだ。まあ、ダメなら聞き返しに来るだろう。
「きめぇ丸、こいつを家まで運べ。絶対に食うなよ!」
「おお、りかいりかい」
コップを差し出すと、きめぇ丸はそれを口にくわえて、ヒュッと上昇していった。こういうときは奴の快速が頼もしい。
「さて、と……」
俺はいったん近くの木立へ向かい、腕ほどの長さの小枝をたくさん折って来た。
そして堆積の上に戻ると、耳を済ませて、声のする地点にそれを突き立てていった。
「ゆっくりしないでたすけてねぇ……」
「おもいよぉ、わからないよぉ……」
「頑張れ、すぐ助けてやる」
旗立てをまだ半分も済まさないうちに、ぱたぱたと音がした。
見上げると、大人用のスコップを重そうに抱えたれみりゃが降りてきた。
「うー、すこっぷもってきたぞぉ!」
「ご苦労、じゃあ代わりにこの枝を持って、埋まってるゆっくりの近くに立てろ」
「たべていいぞぉ?」
「食ってどうする! 怖がるから声もかけるな!」
「う゛う゛ー、おぜうさまのれみりゃが、どうじでぞんなごどぉ~?」
れみりゃは顔をしかめて、ぐねぐねと不満そうに踊る。事態の重大さがわからんのか、こいつは。
……いや、事実わからんのだろうな。中身はれいむたち以下の子供だから。
「わかったわかった、黙って手伝ったら今度バケツでプリンを食わせてやるから!」
「う゛っ? ぷっでぃ~ん? ほ、ほんとうだぞぉ?」
「ああ本当だ」
「それなら、れみりゃがんばるぞぉ~♪」
れみりゃは小枝を受け取り、嬉々としてあたりに刺し始めた。ある意味こいつは扱いやすい。
棒を立て終わるころに、きめぇ丸に連れられた子ぱちゅが戻ってきた。得意げに報告する。
「れみりゃのこどもと、れいむおかあさまたちは、がけのうえでまってるわ!
ぱちぇおかあさまは、おれんじじゅーすをつかうからって、ことわっていたわ!」
「おう、ご苦労。それでかまわんぞ」
子ぱちゅりーは全部的確に伝えたらしい。逸材だねこれは。三つ以上のことを伝えたら人間でも忘れるってのに。
「よし、じゃあ救出計画を説明する。れみりゃときめぇ丸、おまえらで手分けして、埋まってるゆっくりを見つけろ。
死にそうなのがいたら俺に教えること。そいつから先に助ける。
俺がゆっくりを掘り出したら、れみりゃ、子みりゃを呼べ。崖のうえまで運ばせる。
運んだられいむたちに渡せと伝えろ。れいむが家まで運ぶだろう」
俺がそう言うと、きめぇ丸が焦った様子で言った。
「れいむれいむ、れいむれいむ」
「わかってる、おまえの嫁も助ける。だが今は言うとおりに動け。いいな?」
「おお……」
「おおじゃねえ。ほら、始めろ!」
俺が一喝すると、ゆっくりたちは散らばって活動を始めた。
「おお、はっけんはっけん!」
「むきゅ、ゆっくりしてね! もうすこしだけゆっくりしてね!」
「うっうー、はっこぶぞぉ~」
「もっと……ゆっくりしたかっ……」
「ゆゆっ、あきらめちゃだめだよ! ゆっくりはこぶからね!」
「ゆーしょ! ゆーしょ!」「ゆーしょ! ゆーしょ!」
「あまあま~どこだぞぉ~」
「れびりゃだぁぁ……いやあ゛ぁぁ゛ぁ゛!」
探すもの、励ますもの、運ぶもの。みなが懸命に働く。
中には、かえってゆっくりを絶望させちまってるのもいるが……。
「おい、しっかりしろ! じゃなかった、ゆっくりしろ!」
「ゆぐぅ、ゆっぐりさせでね……」
「夫婦ものか? 子供はいないのか?」
「まりざは……れいむどふたりだけだよ……」
俺も土を掘り、次々と饅頭たちを見つけ出したやった。
一匹また一匹とゆっくりが救助され、崖のうえに運ばれて、小屋へ送られる。
そのうちに朝焼けが始まり、崩れた崖の無残な有様が、しらじらと照らし出された。
「はぁ、はぁ……そろそろ……か」
日が高くなったころ、俺はスコップを地面に突き刺して、いったん腰を下ろした。
そこへきめぇ丸に連れられて、すっかり伝令が板についた子ぱちゅがやってくる。
「ぱちゅおかあさまからさしいれよ! おにいさんにって!」
きめぇ丸がぶら下げていた袋を開くと、熱いロールパンと熱いみかんが出てきた。
どうやってあっためたんだ、こんなもん。
……コタツだろうな、他に手はない。
「ありがたい」
俺はかぶりついた。みかんとパンなんておかしな組み合わせだが、この時ばかりははらわたが熱くなった。
後方がしっかりしていると現場は仕事がしやすいね、まったく。
俺の膝でみかん粒をちゅーちゅー吸いながら、子ぱちぇが言う。
「けがにんは、まだくるかって、いってたわ」
「そうだな、声のするやつはあらかた助けた。ひとまず受け入れは止めて、すでに着いてる分をしっかり見てやれと伝えてくれ」
「きゅっ! わかったわ」
コップに入ったぱちぇを、きめぇ丸が運んでいった。
俺が食い終わるころ、きめぇ丸は一匹で戻ってきた。いつものジト目をいっそう暗くして、物言いたげに、足元にすりよる。
「れいむれいむ……」
俺はきめぇ丸を見下ろした。こいつにもパンをやったのに、手をつけていない。
パンくずを払って、俺は立ち上がった。
「よし、来い、きめぇ丸」
俺は土砂に上がり、最初に見つけたれいむの場所へ行って、土を掘り返した。
ザクザクと土をのけていくにつれ、白い頬、赤い髪飾り、黒い髪が現れる。
八割がた姿を現したところで、手を突っ込んで救い出した。
ズボッ、とれいむが穴から引きずり出される。きめぇ丸が待ちかねたように飛びつく。
「おお、れいむれいむ! れいむれいむ……?」
俺は、白い息を吐きつつ、無言で見下ろしていた。
きめぇ丸の表情が変わっていく。
安堵から、不審、恐怖そして驚愕へと。
「残念だったな。嫁さん……死んじまって」
れいむの後ろ半分は破れていた。目は閉じられ、頬はひんやりと冷たい。
きめぇ丸が振り向く。その顔には憎悪が宿っていた。
覚悟はしていたが、きついな。
細い目を血走らせて、地獄の底から湧くような声で言う。
「おお……ひどうひどう……」
「その子は俺が最初に触ったとき、もう死んでたんだよ。ぴくりともしなかった」
きめぇ丸が微妙に表情を動かす。俺は感情を抑えて続ける。
「後回しにして済まなかったな。生きてる連中を助けるほうが大事だったんだ」
「おお……れいこくれいこく……」
「上に運んで、母れいむに会わせてやりたい。おまえ、やってくれるか」
きめぇ丸はじっと俺をにらみ、やがて背を向けた。れいむの亡骸にかがみ込む。
そうやって、いつまでたっても動こうとしなかったので、俺はそっと手を伸ばした。
「きめぇ丸……」
すると、きめぇ丸の黒い翼が動き、バシッ! と俺の手を打ちのめした。
手を引っ込めた俺の前で、きめぇ丸がれいむの髪をくわえて勢いよく飛び上がった。
冬の寒空をぐんぐんと高く昇っていく。
やがて、豆粒のように小さくなると、かすかな声が聞こえた。
「おぉい おいおい! おぉい おいおい!」
それは俺の初めて聞く、きめぇ丸の嘆きの声だった。
最終的に助けることのできたゆっくりの数は、大小あわせて三十六匹。
それに対して、死亡したのも同じほどらしかった。
すべては掘り出せなかったので、隣近所に住んでいたゆっくりの証言を重ね合わせた数字だ。
葬式をどうするか聞いてみた。ゆっくり自分たちでやるよとのことだった。
ゆっくりたちはツバキやフクジュソウの花をどこからか持ち寄って、崖の上から投げた。
喪主になったらしい母れいむが、涙をポトポト落としながら叫んだ。
「みんな、それにかわいいれいむ、てんごくでもゆっくりしていってね!!!」
集まったゆっくりたちに混ざっていた俺は、ふと、背後を振り向いた。
きめぇ丸が屋根の上から静かに見下ろしていた。
俺の視線に気付くと、飛び上がって遠くへ去っていった。
- 生きている命を最優先…わかっちゃいるが切ないな
きめぇ丸の気持ちが嫌って程わかるだけに… -- 名無しさん (2008-12-14 07:05:23)
最終更新:2008年12月16日 06:38