【作者当て】darkxmas

☆☆ ゆっくりとのゆっくりした(しかしゆっくりしていない)クリスマス ☆☆


「ジングッベー ジングッベー ジングッ伯ー母上ェー」「ゆっゆっゆー♪」

陽気に歌いながら料理を盛り付ける私。
今日のメニューはライスとローストビーフサラダにパンプキンスープ、
そしてタンドリーチキンとシャンパンだ。
微妙にクリスマス食じゃないけれど頑張って張り込んだぞ!

「森にー 林にー 怒りの輪が舞っうっウェッ!」「ゆぅっ!」

合いの手を入れるのはペットのゆっくりれいむ。
こたつの隅でよだれをたりたり流しながら、増えていく料理をうっとりと見ている。
同居し始めてはや9ヶ月。私の歌にあわせるのもすっかりお手の物だ。

「ゆゆーう、きょうはすごいごちそうだよ! はやくむーしゃむーしゃしたいよ!」
「はいはい、もうすぐよー。ジングッベー ジングッベッたら」

言いながら料理を並べ終え、私は腰を下ろした。
右側に陣取っている、大人の猫ぐらい大きさのれいむと、にんわりと笑い交わし、
まずはシャンパンの瓶を取って栓に手をかける。

「いくよっ、れいむ」
「ゆっ? おもしろいこと? おもしろいこと!? ゆっくりみせてね!!!」

好奇心ぱんぱんの顔でもぞもぞ近づいてくるゆっくり。
それを手で制して、私は瓶にタオルを沿え、キノコ型のコルクを押し出した。

 ぎゅむむむ・・・スポーーーーーーーーーーン!!!

「ゆぎゅーっ!?」

栓はれいむのリボンをかすめて飛んでいった。
ぶったまげたれいむは、吹っ飛ばされたみたいにズテーンと後ろへひっくり返って、
そのままガクガク震え出してしまう。
私はクロゼットの上まで飛んでいったコルクをとってくる。

「ゆゆゆゆゆゆおねえさん、それはなあに?こわいよ、ゆっくりできないよ!」

れいむは顔を背けて半泣きで震えている。泣き顔がたべちゃいたいほど可愛い。
そんな彼女に、私は笑いながら、シャンパンを深皿に注いで差し出した。

「あははは、これはシャンパンっていうのよ。怖くなんかないよ」
「ゆっ!?おねえさん、それはほんとうなの?」
「そうだよ、ただの飲み物なのよ」
「ゆゆ、それなられいむ、ゆっくりするよ?ゆっくりさせてね?」
「いいわよ。さあ、飲んでみて」
「ゆう!ゆっくりのむよ!」

もそもそと近づいてきたれいむが深皿に舌を伸ばす。
私はそこに自分のグラスを近づけて、チンと当てた。

「乾杯♪」
「ぺーろ、ぺーろ・・・しゅわしゅわー!」

ぱああ、とれいむは顔を輝かせた。泣き顔があっというまに100ワットの笑顔になる。
そのままぺろぺろと残りも飲み始めた。
よかった、気に入ってくれたみたい。

「それじゃあ、ごちそうにしようね。いただきまーす」
「ゆっくりしていってね!!!」
「はい、あーんして」
「あーん!」
「それ」
「むーしゃ、むーしゃ♪ ・・・しあわせー!」
「私もむーしゃむーしゃ」
「ゆっゆっ♪ゆっゆっゆっ♪」

フォークで刺した肉やサラダを、一口ずつ交互にむしゃむしゃして食べた。
食後にはもちろん、ホールで買った24センチのでっかいケーキを持ってきた。
いつもは「あまあま、あまあまだよ!」と大騒ぎするれいむも、
この前例のない巨大菓子状物体に度肝を抜かれたのか、かえって静かになってしまった。
私はケーキの真ん中に、包丁を入れる。

「こうして、ふたつにしてー・・・」
「ゆ・・・ゆ・・・」
「こっちが私」
「ゆ」
「こっちがれいむね」
「ゆぅっ!?」

ケーキを前にして、おびえたようにそろそろと振り向くれいむ。

「ゆ・・・これ、れいむの・・・ゆっ?」

これはあれだな、ハロウィンにパンプキンパイを大口で丸かじりして、
ドッ叱られたのをまだ覚えているんだろうな。
いいのよ、れいむ。クリスマスだもの。

「そう、そっち半分、全部れいむのよ」
「・・・・・・・・・・・・ゅぅーーーーーーっ・・・!!!」

ぱああっていうか、ぼわぁぁぁぁああああ! ぐらいの勢いでれいむが明るくなった。
皿の端をくわえて、テーブルの隅までそろそろ引っ張っていって、なんか泣きそうな必死な顔で宣言する。

「こっこれはれいむのあまあまだよ!れいむがもらったあまあまだよ!
 だからおねえさんにもあげないよ!ぜっっったいにあげないよ!!!」
「うんうん、いいのよ」

私が何度もうなずいてやると、れいむはようやく疑いを解いたのか、ちょっと優しい感じに目を細めて言った。

「おねえさん、ありがとうね! れいむにこんなにごちそうをくれて!」
「なに言ってんの、私とあんたの仲じゃない」
「そうだね、れいむはしあわせだよ!だから、だから・・・」
「ん?」

もじもじと目を背けたれいむが、もう一度こちらを向いて、天使のような笑顔で叫んだ。

「らいねんも『でーと』なんかしないで、れいむとゆっくりしていってね!!!」


瞬間、部屋が凍りつく。


「いやぁー・・・それはキツいよれいむちゃん・・・私だって男ほしいよ・・・」

ずどーん、と灰色になって落ち込む私。思わず禁句を口にする。

「そんなこと言うなら、れいむだって、来年もまたお隣のまりさに振られてよね」
「ゆぐぅっ!?それはいわないでよ、おねえさん・・・」

ずどーん、と真っ黒に萎びて落ち込むれいむ。





聖夜にぽつり、孤独な女が二人。





「ま、まあ、話し相手がいてよかったよね、お互い」
「ゆぅん・・・そうだよね・・・」
「ケーキ食べよケーキ。ね」
「ゆっくりそうするよ。むーしゃ、むーしゃ・・・しあわせー・・・」

何はともあれ、清しこの夜(貞操的に)。





 (おしまい)

  • もうお前らで付き合っちゃえYO!
    という冗談は置いといて、皿ひっぱるれいむ萌へ。 -- 名無しさん (2009-02-10 11:04:29)
名前:
コメント:

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2009年02月10日 11:04