親馬鹿

「おにいさん、おねがいがあるんですけど……」

「んー? どうしたさなえ」

ある日、不意にさなえがそんな事を聞いてきた。あれから、たまにこうしてお願いをする。
大体は何のことは無いお願いなので、俺も笑って叶えてやる。その時の早苗の笑顔を見るのが、最近の楽しみだ。

「ええとですね、ひらがなだけでいいので、じをおしえてください。それと、おてがみのだいひつを……」

詳しく事情を聞いてみる。どうやらおつかいのときに知り合ったてんこにペンフレンドになってくれとか言われたので、
お手紙を送りたいのだそうだ。了承すると、いつにもまして輝いた笑顔で答えてくれた。
家の中だけではなく、自分でも交友範囲を広げていく。あれから随分と成長したものだなぁ、と感慨にふけってみる。ああもう可愛いなぁ!

「おにいさんにはいつもおせわになっていますけど……だいじょうぶです。わたしだってせいちょうしてます。
 わたしはひとりでもだいじょうぶですから、おにいさんはもっとゆっくりしていてくださいね!」

えへん、と若干のけぞる(胸を張っているらしい)さなえ。あ、いかん。ちょっと我慢できんわこれ。

「可愛いぞぉ、さなええぇぇっ!」

「わひゃぁぁぁぁっ?!」

さなえに飛びついてすりすりするお兄さん。その姿はちぇんに飛びつくらんしゃまのようで、
どう見ても親馬鹿にしか見えなかったと言ふ―――

どっとはらい。



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最終更新:2009年02月02日 21:22