【バレンタイン企画】ゆっくりチョコレート工場

「ゆふふん♪ おにいさん、きょうはなんのひかな?」

家で飼っているゆっくりまりさがやたら上機嫌でこんな事を言ってきた
特に思い当たる節は無いので適当にあしらう

「ん?何か特別な日だったか?」
「ゆっゆっゆっ♪ べつに~♪」

なんなんだ?気味が悪いな・・・


「ゆふ~、そろそろさぎょうかいしだよ!!!」

その後、どこかに行った振りをして戻ってきてみると、台所でなにやら始めようとしている様だ

「たしかこのへんに・・・あったよ!!!」

帽子の中から取り出したのは、なにやら黒い塊と『ミニ八卦路~ゆっくりVer~』だった
一体何を始めるのだろう? 今は丼に入れた水を沸かしているようだった

「ゆ~♪ゆゆ~♪ゆっくり~♪」
「そのあいだに、じゅんびをすすめるよ!!!」

お湯が沸いたところでいったん準備をやめるゆっくり
おもむろに丼に中の沸いたお湯の中に茶碗を浮かべると、その中に先ほどの黒い塊を放り込んだ
甘い匂いがそこらじゅうに漂ってくる、多分さっきの黒い塊は『チョコレート』だったのだろう

「そろそろだね・・・きんょうしてきたよ・・・」

しばらくの間そのチョコの海を眺めたり、口にくわえた箸で混ぜたりしていたがついに

「ゆー・・・なむさん!!!」

いきなりそれの中に飛び込んでしまった。助けてやろうかとも思ったが本人は存外平気そうだった

「ゆ~ん♪ あったかくてきもちいいね~♪」

などと暢気な事を言いながらどんどん真っ黒になっていくまりさ

「ゆゆっ!!! あんまりゆっくりもしてられないよ!!! ゆっくりころがるよ!!!」

チョコの中から飛び出し先ほど準備をしていた、これまた黒い粉を敷き詰めた皿の上を転がりだすまりさ
この位置からだとよく見えないのだが、さしづめあの粉は『ココアパウダー』だろう

「ゆっふん♪ あとはひえるのをまつだけだね!!! おうたさんをうたってゆっくりまつよ!!!」

一通りの作業が終わったのだろう、テーブルの上で誇らしげに胸を張っている


「ゆー♪ ゆー♪ ゆー♪」

あれからどの位経っただろう、未だまりさはテーブルの上で歌っていた

「ゆ~♪ ゆゆ~!? だんだんかたくなってきたね!!!」

そろそろ出て行ってもいい頃だろう、とりあえず真っ黒な塊になってしまったまりさに声をかける

「おまえ・・・なにやってんだ?」
「おにーさん!? おもったいじょうにかたくてうごけないよ!!! たすけてね!!!」
「いや・・・だからなにをやっていたんだ?」

大体何をしていたのかは予想が付くがとりあえず事情を説明してもらう
まりさは私と話しているうちに落ち着いてきたのだろう
その顔には安堵と小憎たらしさの混じった笑顔が浮かんでいた

「おにーさん!!! 『バレンタイン』の『チョコ』だよ!!!

バレンタインのチョコ? そういえば今日は2月14日だったっけ

「さぁ!!! おたべなさい!!!」

そう言って彼女は自慢げに胸を張った。そこまで言うのなら期待に応えなければならない

「あ、あぁ・・・いただきまっ!?」

だが食べようとした瞬間に手が滑って彼女を床に落としてしまった

「ゆっくりしたけっかがこれだよ!!!」

何の抵抗もなく彼女は砕けてしまった、ただ一言だけ残して
殺してしまった、私の不注意で、何の罪も無い彼女を・・・
頭の中が真っ白になる、もう取り返しが付かない
そんな事を考えていると、

「ゆぅぅぅぅ・・・・ゆっくりしていってね!!!」

突然彼女が降って来た。事態が飲み込めないがとりあえず謝る

「すまない・・・大丈夫か?」
「おにーさん!!!もっとていねいにあつかってね!!!」

これだけ元気に喋れるのであれば特に異常はないのだろう

「いやすまん・・・ついツルッと手が」
「もう!!おかげでひさしぶりに『残機』がへっちゃったよ!!!」

残機?よく分からないがすぐ復活できるらしい。私も長い事一緒にいるがはじめて知った

「ところで、このチョコまみれの前世のお前はどうする?」
「んじゃ、それをたべてもういちど『チョコ』になるからつぎはしっかりたべてね!!!

自分で自分を食べるのがどんな気持ちかは分からないが私のためにもう一度やってくれるらしい

「むーしゃ!!!むーしゃ!!! へぶんじょうたい!!!」

おぉ、本当にチョコになってる・・・どういう原理なのだろう

「さぁ!!! こんどこそおたべなさい!!!」

それでは遠慮なく行かせて貰う事にしよう。ガブリと一口端のほうを齧る

「ゆ゛っ!!! はかったねおにーさん!!!ところであじのほうはどう?」
「なかなかうまいぞ!!! 甘すぎずほろ苦い感じがちょうどいいぞ」
「ゆっふん♪ がんばったかいがあったよ!!!」

今年のバレンタインも彼女からのチョコだけで幕を下ろすことになりそうだ


だけど悲しくはない



~おわり~

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最終更新:2009年02月16日 10:18