家のゆっくり3

「おい。明日はちょっと出かけるぞ」
「ゆ!! どこに?」
「ドライブだ!!」
「ゆっゆ~~~♪」

 明日から三連休、たまには外に行くのも良いだろうと初日はドライブに行く事に決めた俺は、帰って早々にゆっくり霊夢に報告した。
「ゆっゆ~~~♪ どらいぶだね!! おくるまでおでかけだね!!!」
「ああそうだ、だから今日は早めに寝るぞ!!」
「ゆっゆ~~♪ じゃあおにーさんこもりうたうたって!!!」
「分かった。怖い怖い怪談話を聞かせてやろう」
「ゆーーー!!!!!」
 ――
 とまあ、そんな感じで割とあっけなく眠ってしまったのが昨日。
 で、いつもより早く起きてお弁当を準備しているのが今。
「…………」
 そして、こっそりと近づいてくるのが霊夢。
「♪」
「ていや!!!」
 ぺちん
「ゆ!」
「弁当を今食ってどーする!!」
「ゆ~~~~!!」
「ほら、朝食はこっちに用意してあるよ」
「ゆゆ!! おに~~さんだいすき!!」
 はぁ、これが……。
 ……。
「よっし。用意できたな! それじゃあ出発だ!!」
「ゆっくり~~~♪」
 借りてきた車に乗り込み、エンジン始動。
 隣では、ゆっくり饅頭型専用のチャイルドシートに載った霊夢が楽しそうに外の景色を眺めている。
「ゆ~~おに~さんの運転かっこいからだいすき~~♪」
 当然だ、俺は二種を持ってるんだから。
「よーし。制限時速ギリギリで突っ走るから、心して乗ってろよー!!」
「ゆっくり~~♪」
 久しぶりのドライブは楽しい。
「ゆ~~はや~~い!!」
 住宅街の景色を抜けると、更に霊夢の歓声は大きくなって来た。
「すご~~い!! おに~~さんすごいよ~~~」
「ああ。そうだな」
「ゆっゆ~~~♪」
 今のうちにせいぜい楽しんでおけよ。
 将来そこは司書さんか薬売りさんの指定席になるんだからな!!
 お前は後ろの席で俺の子供と意思疎通のできない会話を楽しみやがれ!!
 更に暫く進んだ所で車を止める。
「ちょっと飲み物かって来る。お前は何が良い?」
「ふぇんたのおれんじ~~~」
「りょ~かい」
 俺の分のグレープ味も買って車に戻る。
 プルタブを開けてやり霊夢に手渡す。
「ゆ~~♪ つめたくておいし~~♪」
 う~~む。
 良く良く思うのだが、缶を上に上げて流し込む格好で咽ないのだろうか?
 それをおいてもこいつは良く食事中に喉かどこかに詰まらせるし。
 やっぱり昼間一人にさせるのは危険だよなァ。
「ゆ? おに~さん!! こぼれてるよ!!」
 なに?
「げ!! しまったティッシュ!! ティッシュ!!!」
 ……。
 ペットボトルを買い直し、やけ飲みした俺はその後も快調に車を進めていった。
 そして、本日の大目玉スポットその一へとやってきた。
「ゆ? なにここ?」
「トンネルだよ!! おっきなトンネル」
「ゆ!! まえにてれびでみたよ!!! なかはまっくらなんだよ!!」
「そうだ! しかもそれだけじゃなくて、このトンネルはスッゴク長いんだ」
「ゆ~~~♪」
 ふふ、目を輝かせて見てやがる。
「それじゃあ!! 入るぞ!!」
「ゆ~~~♪」
 いざ、トンネルの中へ進入する。
「すごいね~~!! まっくらだよ~~~!!」
「よし、ココで俺が昨日話せなかった怪談話を聞かせてやる」
「!! ゆーー!! いいよーー!! ゆっくりとんねるみてるよーー!!!」
「まぁ、そう言わずに」
「ゆっぐりさせでーーー!!!!!!」
 ――
「はーいごとーちゃーくっと。どうした霊夢?」
「ゆーー!! こわかったよ!!」
 果て、なにがだろ。
「まあ、この景色を見てみろ霊夢」
「ゆ? ゆゆーーー!!!!」
 山の山頂に聳える数多くの風力発電装置。
 その圧倒的な光景に、霊夢も言葉を失ったようだ。
「どうだ。すごいだろ?」
「すごい。すごいよおにーーさん!!!!!」
 こんなに喜んでる霊夢を見ると、やっぱりつれてきて良かったなァと思う。
「さて、お前のお待ちかねのお弁当の時間にしよう」
「ゆゆ!! おべんとうたべるよ!! いいけしきをみながらゆっくりたべようね!!」
 手ごろな場所を探してシートを敷く。
 その上に、作ってきた弁当を出して霊夢と一緒に食べ始める。
「ゆゆ!! おにーさんはまたかれーらいすをもってきたの?」
「おれは外で食うカレーが好きなんだよ。それにこれはハヤシライスだ!!」
「ゆ? ふーん」
 それっきり興味を無くしたのか、弁当のおにぎりを美味しそうにパクパク食べ続けるれ霊夢。
 おーおー、そんなに楽しそうに食べやがって。
 将来家族で来たときは、お前は子供が作ったあまり美味しくないおにぎりを食うんだぞ。
 でも安心しろ、他ならぬ俺の子供だからな、それなりに美味い飯は作るさ。

 ガサ!!

「ゆ!!」
「ん?」
 草がすれる音。
 その音のした方に目を向けると、そこには一匹のゆっくりがいた。
「……」
 ジーと、弁当と俺達の顔を見比べているゆっくり。
「食うか?」
「……!!!」
 嬉しそうに、首を縦に振って近づいてくる。
「ほら、中身は梅だからしょっぱいぞ」
「むしゃむしゃ!!」
 受け取ったおにぎりを、美味しそうに両手で掴んで食べ始めるゆっくり。
 そんなに急いで食べなくても、いやよっぽど腹が減ってたんだろうな。
 見たところ、野生種みたいだし。
「むしゃむしゃ!!」
 ちなみに、俺の梅おにぎりは、霊夢が喉に引っ掛けないように種を抜いてある。
「……ごっくん」
「うまかったか?」
「ゆー。うん!!」
「そうか、よかったな」
「おにーさんのおりょーりはとってもおいしいんだよ!!!」
 当たり前だ、俺は肉料理担当だぞ!!
「うー?」
 ほら、コイツも困ってんじゃないか。
「なんでもないよ。それより、お前今までここで生活してたのか?」
 また、首を立てに数回振る。
「そうか、食べ物はどうしてたんだ?」
「きのみ……とはっぱ」
「そうか。もう一個食えや」
「うん。むっしゃむっしゃ」
 そうだよなぁ、以前大狩が行われてから、野生のゆっくり何て殆どいない。
 居たとしても、余程の奴だもんな。
「ゆ~~おいしーでしょ?」
「うん」
 ちなみにこの霊夢は、元々謙虚で頭が良かったが、巣の奥で昼寝してて生き延びたらしい。
 全く、運が良いんだか、悪いんだか。
「おにーさん。ありがとーー」
 こっちのゆっくりもやっぱり頭が良いみたいだ。
 普通、捕食種のゆっくりはもうちょっと獰猛なもんだが、おまけに草木も食えるとは、生まれついたものか。
 それだったら、捕食種狩りで生き残れたのも頷ける。
 まぁ、こんな所で野生のゆっくりを見つけたら俺がする事は一つ。
「おーい。お前、俺のペットにならないか?」
「ゆ?」
「う?」
「おっと、ペットって言うのは分かるか?」
「うん」
「よし。偉いな、それで、俺のペットにならないか?」
「う? いいの? おかね……とか?」
「大丈夫だ、俺の将来の結婚資金貯金を月十万から七万にすれば、ゆっくりもう一人分の食事は事足りるさ」
「ゆゆ!! そんなにたべるの? そのこ?」
 お前だよ!!!!
「う~? ……」
 あーー黙っちまったか、霊夢より気が弱いなコイツ。
「それにな、この霊夢を昼間一人っきりにさせると、何時喉に食べ物を詰まらせてしまうか心配でな、もう一匹居ても良いかな、なんて思ってたんだよ」
「……」
「ま、もう直ぐ雨が降るみたいだし。俺と一緒に家に帰ろーぜ?」
「……うん!! おにーさん!!」
 よっし決まりだ。
「よし、それじゃあ雨が降る前に車に入るぞ!! まずはここの後片付けだ」
「ゆゆ!! おにーさんがんばってね!!!」
 ペチン
「ゆ!!」
「お前もやるの!」
「ゆーー!!」
「……はい」
「おっとサンキュ!!」
 空になったお弁当箱を俺に渡してくれた、いいねぇどこかのグーたら饅頭に見せてやりたいよ。
 まぁ、見てるけど。
「ゆ!! おにーさん!! あめだよ!! あめ!!!」
「ばっか!! 早く来い!! 車に乗るぞ!!」
「ゆ!!」
「うん」
 ポツリポツリと雨が降る中、急いで車に戻る俺たち。
 発電装置は霧にとけ、何とも幻想的な光景を描き上げる。
「そうだ霊夢。お前帰りは後ろな!!」
「ゆゆ!! どうして!!」
「そのゆっくりと一緒に後ろに乗ったほうがお前も楽しいだろ?」
「ゆ!! そうだね!! ひとりはさびしいもんね!!」
「ああ、直ぐにチャイルドシートを後ろにつけてやるから待ってろよ」
「ゆ!! そうだおにーさん!!」
「なんだよ?」
「あのゆっくりは、なんていうおなまえなの?」
「そうか、お前は見た事無かったな。あれはゆっくりフランだ」
「わかったよ!! ふらんだね!!!」

 ――

 帰りの車内。
 思った光景とは少し違うが、霊夢の隣には楽しそうに笑う家族が居る。
 霊夢を拾った時に、俺の琴線も緩んだのかなぁ?
「ゆっゆ~~♪ 早い早い♪」
「すごーい!! はやーーい!!」
 ま、俺の愛しのMyベビーが生まれたとき遊び相手は多いほうが良い。
 うん、絶対。
「そうだフラン。お前も俺の家に着たからには一緒に歌ってもらうぞ!!」
「う? うた?」
「そうだ、今から俺たちが歌うから、一緒に歌えよ!!」
「!! うん!! うたう!!!」
「よっし!! いくぞ! れいむ!!!」
 雨を弾きながら進む車内で、初めて三人で歌った歌は、Runnerだった。

  • 警戒心0過ぎるだろこいつら。
    それにしてもなんでこのオリ主こんなに偉そうなんだ? -- 名無しさん (2010-04-21 13:33:46)
  • それぞれの作品にはそれぞれの世界観が有るのですよ -- 名無しさん (2010-07-30 02:00:56)
  • 霊夢あぶねーぞ


    -- 名無しさん (2010-11-07 08:00:43)
  • かなり賢いふらんちゃんだね。
    捕食種なのにれいむを襲わず、金銭など人間の事情もわかるとは。
    おにいさんはいい人だし、みんな幸せになってね。 -- 名無しさん (2010-11-27 17:49:06)
  • 薬売りさんはわたさん!! -- 名無しさん (2012-08-11 15:27:35)
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最終更新:2012年08月11日 15:27