こーまかんを釣ろう

『こーまかんを釣ろう』

※東方キャラが出ます。性格破綻してます。
※細かいことを気にしたら負けだって、けーねが言ってました。



紅白の装束を纏った楽園の巫女・博麗霊夢は、久方ぶりに釣り竿を手にしていた。

「さぁ、じゃんじゃん釣るわよ!」

高さ20mは有る湖畔の崖に腰かけ、釣り糸を垂らす、霊夢。
その顔にお気楽な色は無く、志気に燃えていた。

"……! ………!"

長く垂らされた釣り糸が風に吹かれてぶらんぶらんと揺れる。
だが、釣り糸の振り子は、風だけが原因では無かった。

釣り糸の先、湖面から1mほど上の中空で、
紐でぐるぐる巻きに固定され、その紐に釣り針を引っかけられた"餌役"が暴れていたのだ。

「ぬふぅー! おのれ霊夢! はかったな!」

釣り餌になっていたのは、博霊神社に居候している"ゆっくりれいむ"だった。
不敵で不遜な表情を浮かべたまま、れいむは霊夢へ抗議を続ける。

「よくもそんなことが言えたわね! うちにある食糧全部たいらげておいて!」

"ぐぅー"とお腹の虫を鳴らして、拳を握りしめる霊夢。
丸一日以上何も食べていない彼女は、ゆっくりれいむを使って"食べ物"へありつこうと考えていた。

「ふふふ、見てなさい……」
「おお、こわいこわい」

巫女らしからぬよこしまな笑みを浮かべる霊夢。
彼女とて、不思議饅頭生物であるゆっくりれいむで、魚を釣ろうとは思わない。
霊夢が狙っている獲物は、それよりもずっと大きい、そしてゆっくりれいむでなければ誘き寄せられない相手だった。

そして、そのターゲットは霊夢の狙い通り、湖畔をよったよった歩きながらやって来た。

"……計算通り"
まるで新世界の神のように、ニヤリと笑みを浮かべる霊夢。

昼前のこの時間、ターゲットがこの界隈で妖精達とよく遊んでいるのを霊夢は知っていた。
そして、そのターゲットがゆっくりれいむを見つけた時どのような行動に出るのかも……。

「うーうー♪ うぁっうぁっ☆」

柔らかそうでふとましい四肢を独特のリズムで揺らしながら、湖畔をやって来るターゲット。
身長は1m程も無い。桃とスミレの中間の色のおべべを纏い、背中からは小さな黒い羽が伸びている。
その姿こそ霊夢が狙う獲物……湖の対岸に位置する屋敷のアイドル・"ゆっくりれみりゃ"に違いなかった。

「ゆゆ! れみりあだよ! ゆっくりしていってね!」
「うぁっ♪ れーむぅー♪」

れいむは、霊夢に指示された通り、れみりゃへ向かって挨拶をする。
すると、れみりゃはふとましい下ぶくれスマイルを一層輝かせて、小さな羽をパタパタ動かし始めた。

「ぱたぱた~☆う~♪」

くちずさむ歌にあわせて、ふわりと浮き上がる、れみりゃの体。
そうしてれみりゃは、歩くのと変わらない速さで湖面上のれいむの下へ浮遊してくる。

「うーうー♪」
「ゆっくりしていってね!」

れみりゃは嬉しそうに中空のれいむを抱え、"なぁーでなぁーで♪"と頭を撫で始めた。
そして、実にゆっくりと、その時になってようやく、れいむが中空に釣られていることに気付くのだった。

「うー? これなぁーにぃー?」

遊び友だちのれいむから伸びた糸を見上げ、ひとさし指を口にあて、首を傾げるれみりゃ。
……と、同時に。合図を送るかのごとくれいむは叫んだ。

「ゆふふっ……かかったね! れみりあ!」
「うぁ!?」

れみりゃは驚き、その目が大きく見開かれる。
れみりゃの眼前には、あんぐり開かれたれいむの大口があった。

"ぱく!"

そんな擬音とともに閉ざされる、れいむの大口。
その口の中には、れみりゃのふくよかな手が咥えられていた。

「う、うわぁぁーー!!」

ぎゃー!と目を丸くするれみりゃ。
それから間もなくして、れみりゃはだぁーだぁー滝のような涙を流し始めた。

「うー! やだぁー! れみりゃのおててたべちゃだめぇー!」

への字口で叫ぶれみりゃへ向かって、れいむは「ゆふふ……」と不敵な視線を送る。
れみりゃの期待とは裏腹に、れいむの口が開かれることなく、しっかりれみりゃの手を咥えて離さない。

「れみりゃはたべものじゃないのぉー! はむはむしないでぇー!」

自分はこのまま食べられてしまうの?
そんな不安を抱いたまま、れみりゃの体は徐々に高度を増していく。

「……う~?」

羽を動かしてもいないのに、どんどん空へ近づいていく。
泣きべそをかいたまま、そんな状況を不思議に思うれみりゃ。

それから数秒後。
涙で滲むを視界の中に、いつのまかに大きなれいむ……即ち霊夢が立っていた。

「フィーッシュ! 肉まんゲットォー!」

霊夢はれみりゃを釣り上げ、早苗から教わった外の世界のかけ声を叫んでいた……。



   *   *   *



「う~♪ たかいたか~い♪」

れみりゃは、釣り糸の先でふとましい笑顔を取り戻してた。

体が紐でぐるぐる巻きにされ、身動きこそ取れなくなっていたが、
元々飛べるれみりゃにとって、よほど上空でも無い限り空中にいること自体は恐怖ではない。
むしろ背中から釣るされブラブラ空中を揺れるのは、まるでブランコのようでとってもゆっくりすることが出来た。

「いい気なもんね……」

霊夢は、れみりゃを新たな餌として、釣り竿を崖上で固定していた。
そうとも知らないれみりゃは、遊んでもらえてると思って御機嫌だ。

「う~♪ おねぇーさん、もっとぶらぶら~♪ あとぷっでぃ~ん☆たべたいのぉ~♪」

注文をつけるれみりゃに溜息を吐きながら、霊夢は岩で固定した釣り竿を揺らしてやる。

「ったく、注文の多い肉まんね。んなもんあったら私が食べてるっての」
「れみりあは、とってもゆっくりしているね! れいむももっとゆっくりしたいよ!」
「はいはい……あいつを使って大物が釣れたらね」

一方、崖の上の会話などつゆ知らぬれみりゃの周りには、小鳥が集まり出していた。
やがて、空中を漂う肉まんに興味を持ってか、その肩や頭の上には雀や鳩が足を下ろし始めた。

「うっうー♪ "ちゅんちゅん"も"ぽっぽー"も、おぜうさまがゆっくりさせてあげるぅー♪」

余裕満面のれみりゃ。
だが、その余裕も長くは続かなかった。

「う、うー?」

れみりゃの眼前に黒い影が迫り、体にとまっていた小鳥たちが一斉に飛散していく。
それは、湖畔を縄張りとする烏の一羽だった。

「うー! ゆっくりしなきゃだめぇー!」

小鳥たちを驚かせた烏へ向かって、ぷくぅーと頬を膨らませるれみりゃ。
だが、その威嚇によって、逆に烏の攻撃対象になってしまう。

「う、うぁ!?」

バタバタと大きな黒い羽をれみりゃの眼前で羽ばたかせる烏。
れみりゃはうっすら涙ぐみながらも、虚勢をはって対抗する。

「うー! ぶれぇーな"かぁーかぁー"はあっちいけぇー!」

しかし、身動きの取れないれみりゃの抗議などたかが知れたもの。
烏は警戒しながらも、逆にれみりゃを威嚇する。

「うぁ☆」

驚き、目を瞑るれみりゃ。
しかし、精一杯の勇気を振り絞って、あらん限りの叫びを返す。

「う~~! おぜうまはまけないのー! ぎゃおー! ぎゃおー!」

れみりゃの奥の手"ぎゃおー!たべちゃうぞー!"だ。
烏は、ぎゃおー!と叫ぶれみりゃの周囲を旋回しながら、徐々に距離をとって湖畔の森へと消えていった。

「……うっうー☆かったぁー♪」

烏の姿が遠くなるのを見て、れみりゃは空中で大きな尻を左右にぷりぷり揺らしだした。
ここが地上だったならば、間違いなく自慢の"のうさつ☆だんす"を踊るのところだ。

「あーぅあぅー♪ かぁーかぁーなんてぇー♪ かりしゅま☆おぜうさまてきじゃないも~ん♪」

下ぶくれ顔をさらに大きくして、得意満面のれみりゃ。

しかし、その時。
森から湖を目指して、黒い群体が飛翔を開始していた。その正体は何十羽という烏。
先ほどの烏は逃げたのではなく、無防備な状態で大きな肉まんがあることを知って、仲間を呼びに行ったにすぎなかった。

「うっ、うわぁぁぁぁーーーー!!」

群がる烏の大群を前にして、れみりゃは口をあんぐり開けたまま固まってしまう。
そこにもはや戦意など無く、れみりゃに残された手は泣いて助けを呼ぶことだけだった。

「おねぇーさぁーん! れぇーむぅー! たすけてぇぇー!!」

顔を崖の上へ向け、必死に助けを求めるれみりゃ。
しかし、そこにあったのは、何故かガッツポーズをしている霊夢の笑顔だった。

その笑顔を見て、ぞっとするれみりゃ。
れみりゃは、ここに来て霊夢が遊んでくれていたのではないことに、
自分が今とても危機的な状況にあることに気付くのだった。

「いたいのやだぁー! ゆっぐりー! ゆっぐりしたいよぉーー!」
「ふふふ、いいわよれみりゃ! 思い通り!」

無慈悲な烏と、無慈悲な巫女。
その鳴き声と、含み笑いに、れみりゃは恐怖した。

そして、力の限りを振り絞って、湖全体に響くかのような叫びをあげた。

「さぐやぁーー!! たすげでぇーー!! こぁいひとだぢがいるよぉぉーー!!!」

次の


瞬間


湖の


上では


確かに


時が


止まった。



「おぜうさまぁぁぁぁーーーーー!!!」



   *   *   *



「うっうー! しゃくやぁー☆」
「ああ、お嬢様、お嬢様ぁー! ご無事で何よりですー!」

黒い濡れ羽が散る湖面の上で、
咲夜はヌイグルミを抱きしめるようにむぎゅーとれみりゃを抱きしめていた。

「う~~! れみりゃ、こぁがたよぉ~~!」
「もう大丈夫ですよ。お嬢様には、この咲夜がついていますから」

喜びと安堵から、れみりゃは微笑みとベソを交互に繰り返す。
咲夜はれみりゃを抱きしめ、落ち着けるように背中をさすったり、頭を撫でてあげたりする。

「う~~♪ はぐはぐ~☆ぽかぽかぁ~♪」

咲夜の温もりを直に感じて、れみりゃは実にゆっくりとした表情を浮かべる。
咲夜もまた、れみりゃの肉まんボディ独特の温かさと匂いを全身で感じて幸福を覚えていた。

れみりゃと、咲夜。
互いがこの温もりを決して離すまいと固いハグをかわし続けていた……そんな時。
空気を読まない巫女の、欲深き叫びが、湖畔に響き渡った。

「フィーーッシュ!! しょーしゃなメイドをゲットォーーー!!」

肉まんお嬢様という大きな餌に、しっかりと食いついた"真の獲物"
霊夢はそれを確認するや否や、ゆっくりれいむと協力して、竿を思い切り引き上げた。

そして。

湖畔の崖の上。
ぶらーんと釣り糸に垂らされながら、瀟洒なメイドは凍てつくような視線を巫女へ向ける。

「……あなた、何してるの?」

霊夢とゆっくりれいむは、フフフと不敵な笑いを浮かべてから、声を揃えて高らかに言い放つのだった。

「「お願いします! 肉まんは返しますから、ご飯をください!!」」




おしまい。




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うわ、しょーもない。
何かをせかせか作ってる合間に、こそこそ書いた結果がこれだよ。

いろいろ頑張らねば……。

by ティガれみりゃの人
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  • れみりゃの可愛らしさに思わず頬がにやけました。この様なれみりゃは大好きです。
    乙でした! -- 名無しさん (2009-03-28 15:54:53)
  • 頭の中の咲夜さんとこの咲夜さんがピッタリかつれみりゃのかわいさに吹いた(笑) -- 名無しさん (2009-03-28 20:13:15)
  • 霊夢とゆっくりれいむのコンビいいなぁ
    喧嘩してもお茶と饅頭があればすぐ仲直りできそうな
    いい意味でさばさばとさっぱりした雰囲気 -- 名無しさん (2009-05-12 12:30:03)
  • あれ? はなのあなから あかいあせが ながれてくるぞ? -- 万年初心者 (2009-05-26 19:12:50)
  • てか咲夜釣り上げるってどんだけ糸丈夫なんだ -- 名無しさん (2009-06-01 21:09:23)
  • れみぃマジプリティ -- 名無しさん (2010-12-01 13:43:57)
  • おぜうま? -- 名無しさん (2012-04-05 14:30:42)
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最終更新:2012年04月05日 14:30