248 :名無しさん:2013/09/13(金) 21:00:08

AEUルートならありえる。
とある半島の戦勝国ルート。


欧州に現れし希代の政治家アドルフ・ヒトラーと、かつて共和主義革命によって欧州を追われた王侯貴族の末裔であるユーロブリタニア宗主オーガスタ・ヘンリ・ハイランドの歴史的会談。
それは長きに渡る欧州の対立が解消され、『一つの欧州』AEUという新たなる勢力が誕生した歴史的瞬間であった。

両者は永の対立を感じさせないほどの連携を見せ、自浄作用を失い汚職に塗れていた政財界を一新し、短期間の内に欧州経済を立て直していった。
先の見えない暗い毎日を歩いていた国民の生活水準も見違えるほど向上し、同じ国・地域であったとは思えない発展振りを見せる欧州の地を見ながら次第に誇りを取り戻していく。

「貴族達は自分たちへの復讐を考えていたのではなく、手を取り合って歩こうとしていたのだ」

「負けたのではない 勝った訳でもない 彼らも自分たちも皆が勝者なのだ」

街の酒場などでは欧州統合に不満を持っていた者達が誇りを取り戻したことで笑顔を見せ、男爵位や騎士候などの貴族階級の人間と混ざり合いビール片手に談笑していた。

「お偉いお貴族さまっても オレら一般人と同じなんだな」

「はははっ 当たり前じゃないか!元々我らは同じ地に住んでいた民族だ 腹を割って話し合えば何事も通じ合えるという物だ!」

あれだけ敵愾心を持っていた双方の壁も『一つの欧州』の元で消え去り、協力し合う事で生まれる力が社会を動かす原動力となり経済の低迷に喘いでいた街にも活気が戻っていった。


そして時は皇暦2045年8月。
大欧州となり誇りを取り戻したAEUは、統合前の混乱期を狙って動いた盗賊の手により奪われた地を取り戻すべく行動を開始。
これは単に政治家貴族だけによる独断専行ではなく、国民総ての望みであった。

「私と此処に居られるヴェランス大公は共に引退の時が迫っているが一つだけやり残したことがあるっ!」

テレビに映る白髪交じりの髪にやはり白い物が混じり始めているちょび髭がトレードマークのAEU初代総統アドルフ・ヒトラーが国民に問い掛ける。

「それは我々の家に土足で上がり込み図々しくも居座り続けて我が家の農作物を勝手に貪り喰っている盗人を追い出す事っ!」

249 :名無しさん:2013/09/13(金) 21:00:38
大きな身振りで盗人への怒りを国民に伝えるヒトラーの言葉をハイランドが引き継ぐ。

「この盗人は決して油断の出来る相手ではなくまた簡単に追い出せるほど弱くもない だが我々の家である南部シベリアを奪われたままで居るのは祖先にも そして皆にも顔向けが出来ない
 血が流れる事になろう 皆の生活に影響を及ぼす事もあろう だがどうか共にこの地に住まう家人として力を貸して欲しいっ!」

南東シベリアは巨大なサクラダイト鉱山が発見されて久しいが、本来その利益を享受すべきAEU国民には1ポンドすら手にする事ができない。
それは盗人が居座り続けているからに他ならず、彼らを追い出さない事には盗まれ続けるだけだ。

AEUに住む皆の物であるそれが盗まれ続ける現状を良しとしたくないと訴える両者の言葉は国民の心にしっかり届き、絶大な支持の元に第二次シベリア奪還戦争が開始される。

AEU四大騎士団と各州の正規軍がAEU・清軍事境界線を突破したのは翌9月下旬。
四大騎士団のジンクス。正規軍のユーロアレクサンダ。大空を舞う第5世代の猛禽類。シベリアの大地を走破する万にも達する戦車と装甲車。
その総てがかつての貧弱であったEUの時とは打って変わって清軍の夏候やジェンシーを含む機甲部隊を蹴散らし追い詰めていく。
失地回復に燃えるAEU軍の戦意は高く、弾幕を物ともせず敵陣に突撃を掛ける部隊もそこかしこにあり、この20年の間ただ安寧を貪っていた清国将兵では太刀打ちできる物では無かった。

清国にとって致命的だったのは大清連邦建国の父であり国民の高い支持を得てシベリア戦争を勝ち抜いた英雄、高亥が高齢を理由に引退していたこと。
実際の処は他の宦官達による謀略で引退に追い込まれたと見ている国民が大半であったが、その中核を成してきた指導者の不在は政治家と軍内部の腐敗を招き統一された行動を取れなくしていたのである。

この状況で東モンゴルの奪還を窺っていた中華連邦西モンゴル軍区の要請と、東の脅威を少しでも減少させたいと考えていた中華連邦中央政府が第二次シベリア戦争に介入。
思いも寄らぬ西からの攻勢に浮き足立った清中央は大宦官の支持でシベリア派遣軍から兵を引き抜き東モンゴルに回すという暴挙を行った。

ギリギリの処でAEUの攻勢を凌いでいた清国シベリア派遣軍は、戦力の不足で戦線を維持出来なくなり各地で壊走を始めた。
一部は自軍の数倍にもなる兵力を相手に奮闘していたが到底支えきれる物では無い。
そして最悪な事に『盟約に基づいて』と力と技術の名を持った二つの怪物国家までもがこのタイミングで参戦してきたのだ。
流石にAEUの様な大規模派兵ではなく側面支援的な物であったが、発表の日にヒトラー総統・ヴェランス大公・嶋田特使・オデュッセウス皇帝の四者が握手をする映像が流れたとき、清の命運は決したのかも知れない。

251 :名無しさん:2013/09/13(金) 21:01:25

わずか一月の間にシベリアと東モンゴルを失陥した清であったが、ここで更に重大な裏切り行為に直面してしまった。
なんと同盟国であった高麗共和国が一方的な同盟の破棄を通達して新義州から遼東半島に雪崩れ込んできたのである。

「永きにわたってシベリアを不法占拠し我が国を属国として事実上の植民地支配を行った清国に対する懲罰戦争である」

記者会見を開いた高麗の独裁者、李・承朝大統領はこのように述べ、自国の正当性を主張すると共にAEU・日本・ブリタニア・中華の側に立って参戦すると宣言。
寝耳に水だったのは各国首脳陣。高麗など端から相手にしていなかった処に一方的な味方宣言を行い東モンゴルとシベリアに兵を取られて碌な戦力の残っていなかった遼東半島をいきなり占領したのだから。
それに各国が知る限り清は高麗を植民地支配した事など無かったはず。

「やりましたな」

ブリタニアに立ち寄っていた処を欧州まで飛ぶのに乗せて貰った皇帝御座艦グレートブリタニアの会議室で、李の会見を視聴していた辻正信は、掛けていた眼鏡の曇りを吹きながらひとこと呟いた。

「恥を知らないとこうまで大胆な行動を取れるのか これはもう彼らの文化としか言えませんね」

「このような恥知らずな行為は貴族や騎士の誇りとは真逆で相容れませんっ まったくもって汚らわしいっ」

続く日本側の特使である嶋田とラウンズ引退後はクルシェフスキー領主として侯爵位を継承しながらも、その傍らで嶋田の騎士ナイト・オブ・ゼロとして常に彼の側で身を守り続ける夫人のモニカが思い思いの感想を口にする。
モニカに至ってはもう汚物でも見るように吐き捨てていた。ラウンズ時代から着ているマントの裾を掴んで怒りに手を振るわせているところをみるに、相当腸が煮えくりかえっているのであろう。
呼びもしないのに後から勝手に名乗り出て平気で味方を裏切るような李の行動は、誇りと忠義と信頼を第一とする彼女の生き方からして受け入れられないのは確実だ。

「ぶっちぎりのアホとか言われている李・承朝の面目躍如といったところですか これは降伏した後の清はエライ目に合いますよきっと」

日本は高麗をよく知っている。高麗人というのは一部の人間を除きねちっこくしつこい性格をしていると。
嶋田と結婚する前から日本に住んで彼らの口撃の的にされたこともあるモニカも同様に。

「自業自得とは言え連中にたかられる立場になってしまえばもうそれは鬱陶しいことこの上ないですからね」

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最終更新:2013年10月21日 11:42