726 :689:2013/11/28(木) 00:52:09
B地区の制圧任務を任されていたナイトオブファイブ親衛隊の指揮官は、同地区制圧後直属の上司であるナイトオブファイブ、カズシゲ・シマダに現状報告するため通信を繋げた。
「シマダ卿、B地区の制圧ほぼ完了致しました。現在は敵EU軍残存戦力の掃討作戦に移行しております」
「お疲れ様」
通信モニターに映る上司の表情は穏やかで平凡な青年その物。とてもブリタニアの黒き死神と称されている人物と同一人物とは思えない。
「シマダ卿、いやさカズシゲ様。そのご様子ではそちらも片付いたようですね」
その様子とは、穏やかな表情と口調のことだ。
戦闘中は普段とはまるで違う好戦的な性格に変わる上司だが、一度終息すると元々の穏やかな性格に戻る。
付き合いが長いから慣れたが最初の頃は色々勝手が分からずに疲れたものだ。
「うん終わり。やっぱり擬きが相手じゃ準備運動の代わりにもならないよ」
「それはあんた等ラウンズくらいですって!」
「あはは~やっぱりそう思う? 僕って実はスゴイ奴なのかなあ」
「凄くなかったらナイトオブファイブになんてなれませんよ。まったく、毎度毎度あんたの無自覚のせいで被害被る私の身にもなってください」
「うん・・・ま、それはさておき「さておくな!」さっき義叔母上がそっち行ったと思うけど、どんな具合?」
彼はよく公私混同をする。クルシェフスキー卿を義叔母上と呼ぶのがまさにそれ。
しかし、自らよりも年下の女性相手に平然と叔母呼ばわりするところだけは治した方が良いと思う。
女性から見てデリカシーの欠片もない男は嫌煙される。現に二十代も後半に来て未だ浮いた話一つ無いのだからそろそろ自覚を持った方がいい。
「僕は三男だから一生独身でも問題無いのさ」を言い訳にしているが、彼は曲がりなりにもブリタニアの重鎮シマダ公爵家に名を連ねているのだ。
それに相応しい立ち居振る舞いというものを身に付けるべきだろう。
「ええ、参られましたよ。お陰で想定していたよりも早く制圧を終えることができました」
と、そんな心の内はおくびにも出さずに報告を続けるところ、自分も彼との付き合いが長いツーカーの仲であると思う。
「伊達にラウンズの看板背負ってないからね。ジノ、アーニャ、ルキアーノは?」
「ナイトオブスリー、ナイトオブシックス、ナイトオブテンのお三方もC地区の制圧を完了させたそうですが・・・」
「ですが?」
「はあ、またナイトオブテン、ルキアーノ・ブラッドリー卿が味方を巻き込んでの戦闘を」
「またか・・・。この間も散々言い聞かせたんだけど全く反省してないな。アイツは脳みそ腐ってるのか?」
ナイトオブテン、ルキアーノ・ブラッドリー。人殺しの天才、ブリタニアの殺人貴、物騒な二つ名を数多く持つラウンズの問題人物。
上司の方が先任であるからこそ注意したり出来るが、そうでなければ同じラウンズの仲間相手にさえ挑発的行動を取り決闘騒ぎを起こしたりする厄介な男だ。
騎士としての実力は確かなだけに、その性格故の問題行動で評判を悪くしているのが勿体ない思う。
唯一、上司とだけは気さくな付き合いをしているが、他のラウンズには嫌われている。
「如何致します?」
「あとで注意しておくよ。一応全体の指揮権は僕にある訳だし責任者としての立場もあるからね。それにしてもめんどくさいなぁ、何で僕ばっかり問題処理させられるんだよ」
「まあそれがカズシゲ様のお仕事な訳ですから」
「僕のお仕事だって? 冗談じゃないよ~。僕は進んで苦労する叔父上のような強靱な精神の持ち主じゃないんだよ?」
「ぐちぐち仰っていても御自分のお立場は変わりませんよ。それにシマダ公爵はまあ、別次元の御方ですから」
「アーニャは無口だし、ジノは無駄に明るい楽天家だし、ルキアーノは問題ばっかり起こすし、ヴァルトシュタイン卿は僕に任せっきりにするし、なんでこうラウンズのメンバーは曲者ばっかりなんだよ。偶にはドロテアやノネットや義叔母上みたいな常識人と仕事がしたいよホント・・・はぁ~、」
「それは皇帝陛下に仰って下さい」
最終更新:2013年12月01日 12:35