『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第41話


 第8艦隊はイスカンダリウムを戦争に使えない物質に変換し、さらにイスカンダルに残されていた技術や資源を
片っ端から回収した後に地球に向けて発進した(ちなみに真田さんは過労で倒れ掛かった)。

「遥々、イスカンダルに来てスクラップや資源を回収。帰りは真珠湾攻撃の『飛龍』みたいに物資山積みか」

 司令官はそうぼやいたものの、成果は大きかった。
 これらを持ち帰った暁には地球の技術力を大幅に向上できることが期待できたし、スターシアが地球に移り住むことを
決めたので、スターシアを想うデスラーが率いるガミラスと再戦する危険を多少なりとも減らすことが出来た。
 さらに地球の大恩人であるスターシアを救出し地球に連れ帰るということで、防衛軍の地位向上も期待できる。
 何しろ移民すると言ってもスターシア一人。何万、何十万人もいるなら大問題だが、彼女一人なら問題は起こらないし
世論の受けも良い。

「まぁ連邦議会と防衛会議、それに議長や藤堂長官の仕事は増えるが……我慢してもらおう」

 このとき議長は衛星軌道でテスト中のアイルオブスカイを視察していたのだが、急に猛烈な寒気を覚えたと後に語っている。
 だが今後のことを考えている司令官と違って、ガミラス軍(停戦中だが)と対峙している他の人間は気が気でなかった。

「警戒は怠るな。コスモタイガー発進。直掩機は欠かすな」

 宇宙空母『グラーフ・ツェッペリン』では艦長がそう指示を出していた。
 勿論、表向きはデザリアム帝国を警戒してのことなのだが、実際にはガミラス軍の不意打ちを警戒してのことだった。
 確かに組織的に攻撃される可能性は低いが、一部の過激分子の攻撃がないとは言い切れなかった。何しろヤマトはかつて
ガミラス本星を壊滅させていたのだ。  
 自分達がガミラスを憎むように、自分達を憎んでいるガミラス人が居ないとは言い切れない……艦長はそう考えていた。

「それにしても、これがガミラスの本気か。停戦していなかったら大変なことになっていたな」

 ガミラス軍も各地の残党や植民惑星の生き残りを集めた。集結しつつある艦船の数は彼らの想定を超えている。
ボラー、ガミラスといった星間国家の力を防衛軍の宇宙戦士たちは改めて認識させられた。
 多数のガミラス艦に見送られて、第8艦隊は地球への帰途に着いた。



 地球人からすれば怨敵と言っても良い『デスラー』。
 だがその彼の思考はヤマトや地球への復讐よりもデザリアム帝国や反ガミラス連合に向けられていた。

「盗掘者と火事場泥棒共へ鉄槌を下すのが先だ」
「しかし総統、現状の戦力では……」
「判っているよ。タラン。まずはガミラスの再興だ。これは変わらない」

 デスラーはそういうと、戦闘空母の艦橋にあるスクリーンに星域図を表示させる。

「大マゼラン星雲、小マゼラン星雲。この2つの星雲には我々を受け入れる場所はないだろう」

 反ガミラス連合が形成されることから、周辺国は敵だらけであることは明らかだった。
 実際、ガミラス本星が健在なときは小マゼラン星雲にいくつも戦線を抱えていた。

「そこで我々は別銀河に本拠を求める。第一の候補としては銀河系だ」
「しかし総統、銀河系にはボラーが居ます。我々はもともとガトランティスと同盟を組んで奴らと敵対しました。
 今更、我々を見逃すでしょうか?」
「判っている。しかし他の銀河となると遠すぎるし、情報も少なすぎる。
 それにボラー連邦が巨大とは言え、銀河系全てを支配している訳ではあるまい。
 もしもそうなら、地球など当の昔に彼らの配下になっているはずだ」
「つまり辺境から調査していくと」
「そうだ。そしてまず仮の本星を設置する」
「仮の?」
「仮住まいとは言え、本星があるかどうかは重要だ。仮の本星は『ビーメラ星』とする。
 銀河系への前線基地があったバラン星にも近い故に、銀河系進出の拠点にも向いている。
 遊星爆弾による改造も短期間で出来るだろう。それに奴らは裏切り者だ。叩き潰すには十分な理由だ」

 ビーメラ星の親ガミラス(傀儡)政権は革命によって崩壊していた。

「直ちに用意しろ!」
「了解しました」


 ガミラスが新天地獲得に向けて動き出した頃、見るも無惨に艦隊を撃滅されたデザリアム帝国も動き出していた。

「聖総統閣下。残念ながら大マゼラン方面軍はほぼ壊滅した模様です。残存部隊が応援を求めているようですが」

 側近であるサーダの報告に、聖総統は動揺を見せることなく尋ねた。

「我が軍を打ち破ったのはどこの国だ?」
「地球、銀河系辺境にある星の艦隊のようです」
「地球だと? 確かガミラスを打ち破った国であったな」
「最近ではガトランティス帝国を打ち破ったとの情報もあります。加えてかの銀河系の大国と友誼を結んだとも」
「ふむ……」

 二重銀河を支配する暗黒星団帝国、いやデザリアム帝国の頂点に君臨する聖総統スカルダートは考え込むかの
ように暫く黙り込む。

「ふむ。徹底的に調査を行え。
 ガトランティス帝国とズォーダー大帝を打ち破っただけでなく、大きな後ろ盾を得たとなると一筋縄ではいかん。
 それと大マゼラン星雲だが、現状でこれ以上戦力を投入すれば他の戦線に悪影響が出る。
 大マゼラン方面については戦線を一旦縮小せよ」
「では、そのように」

 議長達にとって第三の試練となるデザリアム戦役の開幕が迫っていた。


『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第42話


 イスカンダルから帰還してきた第8艦隊からスターシアがネメシスに同乗していること、そしてスターシアが
イスカンダルを離れざるを得なかった理由が連邦政府に告げられると、連邦政府及び防衛会議は大混乱となった。
 新たな敵・デザリアム帝国の存在はそれほどまでに大きなショックを彼らに与えたのだ。

「騒いでいても話は進まん。
 とりあえず、サーシア殿下への墓参りとして、スターシア陛下が乗られているネメシスを火星に誘導。
 残りの艦はただちに月の防衛軍基地に帰還させる。物資や資源については細かい調査を月でした後に
 地球に持ち込むのが良いだろう」

 防衛会議の席での議長の提案はすぐに承認され、ネメシスと護衛のパトロール艦1隻、駆逐艦3隻の5隻は火星へ
向かい、残りの艦は月面の防衛軍基地に向かった。
 議長は必要な仕事を終えると、すぐに転生者たちとの密談を行った。尤も最近はレストランで密談をするよりは
連邦議会ビルの一室で行うのが主流になっていた。

「報告にあったとおり、いよいよデザリアム戦役が迫っている」

 議長は室内に入るや否や、そう告げる。

「幸い、デスラーとの間に暫定的ながら停戦を結ぶことが出来た。
 あとスターシア陛下を確保できたおかげで、彼女を仲介にすればある程度の交渉は可能になったと言えるだろう」

 これには財務次官が喜び、外交担当者はため息を漏らす。

「無駄な戦争が減らせるかもしれません。それにイスカンダルから得られたものも大きい」
「おかげでこちらの仕事は倍増ですが……まぁ仕方ないか」
「……まぁそのあたりは耐えて欲しい。
 問題はガミラスの横槍を恐れることなく、デザリアム戦役に専念できるということだ。尤もボラーの目があるが」
「ボラーを共に諌めてくれる国がないのが痛いですね」

 ボラー連邦は露骨に軍事演習を行い、さらに新型戦艦の建造も進めている。
 表向きはアンドロメダ星雲侵攻のためなのだが、実際には地球への牽制が含まれていることを彼らは察していた。
 地球連邦はこれに対応するために戦力増強に努める傍らで、ボラーの傘下の国家に接触していた。銀河系中心に
ある国々の中には、内心では反ボラーの国も少なくなかったが、実際に手を取り合えるかどうかは別だった。
 ボラーと地球では地力が違いすぎた。また方や超大国、方や漸く宇宙に進出した新興国。ブランドが桁違いだ。



「二重銀河を吹き飛ばせば銀河交差が起こる。それまでの我慢だ。
 まぁ戦力は充実している。原作ほど無様なことにはならないだろう」

 議長の言うとおり、防衛軍の戦力は大幅に拡充されていた。
 ヤマト、ムサシという2大戦艦に加え、タケミカヅチやアンドロメダ級5隻。8隻もの戦略指揮戦艦が揃っている。
 ガトランティス戦役で1隻も戦没することなかった主力戦艦もある。これに10万トン級の無人戦艦も加わる。
 まぁ主力戦艦の装甲はダンボールなので、正面から撃ち合うとなればどれだけ犠牲がでるかは判ったものではなったが。

「防衛拠点や哨戒網も充実しているから奇襲されることもない。重核子爆弾さえ対処できれば何とかなる」

 都市帝国の残骸、もとい下半分の小惑星は地球を守る最終防衛拠点となっている。
 コスモタイガー隊が配備されるだけでなく、ガミラスの冥王星基地にあった反射衛生砲を再現したものを搭載しており
防衛能力は高い。
 さらに遺棄されたガトランティス軍艦艇を資材にしてパトロール艦や哨戒機、各種索敵用機材が生産され、濃密な哨戒網が
太陽系に張り巡らされている。

「これだけあれば何とかなるでしょう。いや何とかしてもらわないと予算が無駄になる」

 財務次官の言葉に議長は頷く。

「判っている。まぁアイルオブスカイについては問題が多いが、迎撃や万が一の保険になるとなれば、そちらの不満も
 解消されるだろう」

 この言葉を聞いて前ヤマト艦長が思い出したかのように口を開く。

「エアフォースワンならぬ、コスモフォースワンと?」

 この言葉に誰もが納得する。幾ら勝算が高くなっているかと言って保険を用意するのは重要だった。

「しかしここまで充実すると敵が来ない可能性があるのでは?」


 外交担当者の言葉に一部の人間が凍りつく。
 だが議長が首を横に振ってそれを否定する。

「こちらを調査すればするほど、奴らは早期に地球を攻めようとするだろう。
 何しろこちらは天敵の波動エネルギーを使う文明だ。自分達の肉体を手に入れたいことも考慮すれば放置は出来ない。
 それに我々は太陽系の外に向けて膨張を続けている。ゆえに今のほうがまだ手薄と判断するだろう」

 シリウス、プロキオン、αケンタリウス等の新領土の防衛、それに地球と新領土を結ぶ輸送船団の護衛も防衛軍の任務であった。

「集団疎開を兼ねた移民計画も良いかも知れませんね」

 財務次官の言葉に誰もが頷く。
 特に復活編でブラックホールが来ることを知っている者からすれば、わざわざ他国の領土を間借りするなど御免被る事態だった。

「妨害がないうちに進めよう。銀河交差の混乱も利用できれば、SUSに対抗できる勢力を築ける」
「輸送船が大量に要りますね。やれやれ造船業界がまた儲けるのか」
「建設業界もだ。いやインフラ全般というべきか。しかしこうも忙しいと、潤いを与える娯楽産業も必要か」
「パンとサーカスを与えれば、市民は政府を支持しますからね」

 新たな儲け話に転生者たちは盛り上がる。軍隊と違って、投資すれば大きなリターンが期待できるのだ。
 掛け捨ての軍事予算より実入りが大きいと言える。

「レギュラー陣には見せられん様子だな」

 議長の言葉に財務次官は肩をすくめる仕草をする。

「汚い仕事をするのもモブの仕事ですよ。
 いっそのこと、我々のことは『舞台裏モブキャラ同盟』とでもしたらどうですかね」
「……開き直っているな。あとそのセンスはどうかと思うが」
「冗談の一つでも言わないと、やってられませんよ」

 こうして地球もデザリアム戦役に向けて着々と準備を進める。


『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第43話

 サーシアの墓参りを済ませたスターシアは、ネメシスに乗って地球に向かい、連邦首都メガロポリスに降り立った。
 スターシアは余り派手な歓迎は好まなかったのだが、連邦政府や司令官の懇願もあり、連邦にとって恥かしくない
セレモニーがひらかれた。
 地球最大の巨大戦艦であるタケミカヅチが、国家元首であるスターシアを迎えるための21発の礼砲が放つ。
 さらに軍楽隊による演奏が始まる。報道陣は数こそ少ないが、入場を許可された記者達はこぞってカメラをネメシスに
向けてシャッターチャンスを逃すまいとする。

「こんなに大規模な式典なんて……」

 ネメシスの艦橋で様子を見ていたスターシアは眉を顰める。
 これを見た司令官は深々と頭を下げて詫びた。

「真に申し訳ございませんが、必要なのです。
 地球人全員の大恩人であるイスカンダルの女王陛下を歓迎しないなど、連邦政府の威信と信用に関わります」
「……」
「陛下がこのような式典をお嫌いなのは判っております。ですが、どうかご容赦の程を」

 スターシアがネメシスから降りると防衛軍、連邦政府高官が次々に頭を下げて彼女に礼を言うと同時に地球への
移住を歓迎した。 

「このたび、地球にとっての大恩人である陛下をお迎えできたことを光栄に思います」

 連邦大統領の演説に始まって、連邦首相、主要政党政治家、防衛軍高官(議長と藤堂長官)の挨拶が入る。
 尤も長旅の陛下のためとして挨拶は非常に短いものであったが。


「陛下を迎賓館へ」
「了解しました」
「マスコミは国営放送を除いてシャットアウトしろ。これ以上陛下に心労は掛けれん」

 大統領の指示によってスターシアはメガロポリスにある迎賓館に向かった。
 一方、この様子を見ていたヤマトクルーはお疲れ気味のスターシアを見て、連邦政府のやり方に不満を抱く。

「もう少し静かに迎えれば良いのに」

 古代進の意見に何人かのヤマトクルーが頷く。
 これを近くで聞いていた(というか聞き耳を立てていた)議長は目をむく。

(こ、この連中は……)

 議長は少し心を落ち着かせると、ヤマトクルーに声を掛けた。

「ご、ご苦労だった。ヤマトの諸君」
「議長?」

 議長の姿を見た古代弟や島、南部などが慌てて相次いで敬礼する。

「ま、まぁ君達の気持ちも判らないでもない。陛下もお疲れなのだから」
「だったら」
「最後まで聞いてくれ。
 次々に侵略者を迎え撃たなければならない連邦政府としては、威信や求心力を高めるものが必要なのだ」
「それがこの式典だと?」
「そうだ。国民の士気を上げるためには重要だし、ボラーや他の国家へのメッセージにもなる。
 少なくとも地球はイスカンダルの女王陛下が身を預けるに十分と判断する力をもっていると思ってくれるだろう」
「それは利用しているというのでは?」
「確かにそういった面もあるだろう。
 だがデザリアム帝国なる侵略者さえ地球に来る可能性があるのだ。
 そして彼らがガトランティス帝国以上の軍団を持っていないとは断言できん」
「……」



「もしも地球が弱いと思われたら、その隙に付け込もうとする輩もいるかも知れない。それは防がなければならない。
 君達が強いことは十分承知している。頼りになることも。だが物量に物を言わせて全方位から地球を攻撃されたら堪らない。
 敵は分断し各個に撃破する。これは戦場の基本だ。諸君も訓練学校で習ったはずだ」

 島や南部は納得した顔をする。古代も少し不満そうだが文句は言わなかった。

「私達年寄りが非力だから、こうなった。それは申し訳ないと思っている。だからこそ、君達若い世代に期待している。
 これからも『頑張ってくれ』」

 議長はそういうと敬礼する。古代はこれを見て慌てて答礼すると同時に元気よく答える。

「勿論です。お任せください!」
(いや、君達が負けるとは思っていないさ。
 でもこちらが全力で、誠心誠意で処理すれば、何とかなる範囲で勝負をつけてもらうと非常に助かるんだ。
 って言っても判ってくれないだろうな~)

 議長が乾いた笑みを浮かべる理由など露も知らない古代弟だった。
 一方、古代守はこの式典の意味を察していた。

「土方さん。ボラーはどうでると思います?」
「私のような船乗りには判らん。だが地球という国家への箔が付くのは間違いないだろう」
「……第8艦隊司令や議長を見ると、これからの防衛軍は政治への理解も必要になるのが判ります」
「私もそうだ。今後のためにも訓練学校のカリキュラムを変更する必要がある。山南とも話をしてみる」
「時代の流れ……でしょうか」
「そうだな。だが君はまだ若い。頭の切り替えも早いだろう。議長が言うように次は君達、若者の時代だ」

 そういった後、土方の頭に有望な若者達の顔が浮かぶ。

「だが彼らが成長するまで、負けるわけにはいかん。私も沖田も次世代のためなら命を投げ出す覚悟だ」

 それは古い人間である土方の揺ぎ無い覚悟であった。


『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第44話


 デスラー率いるガミラス帝国残党はビーメラ星に無差別攻撃を敢行した。
 もはや嗜好品など嗜んでいられる余裕が無くなったガミラスにとって、この星を温存しておく意味などなかった。
 革命によって体制をひっくり返した者たちは、かつて自分達を支配していた主人が帰ってきたことさえ知る事無く
ガミラス軍が無慈悲に落としてくる遊星爆弾によって消し炭と化していく。

「何故、このようなことが……」

 漸く自由を勝ち取ったビーメラ星人たちは己の不幸を嘆くが、どうしようもなかった。
 弱かった。それゆえに彼らは滅ぶのだ。
 ヤマトクルーが何と言おうと、この世界は弱肉強食だった。

「所詮は通信機さえ使えない原始人と言うわけか。地球人とは比較にならん」

 デスラーはそう嘲笑する。だがすぐに表情を引き締める。

「ビーメラ星人の遺伝子情報は残っているのだろう?」
「はい。いずれ余裕ができれば、『家畜』として復元させるのも可能でしょう」

 タランは人類が考えている『人道』とはかけ離れた報告を平然と行う。だがそれを咎める者はいない。

「なら良い。今度は余計なことを考えることもなく、ただの食糧として生かしといてやろう。
 環境改造をした後は、すぐに『臨時』帝都建設を行う。準備を急げ」
「了解しました」

 降り注ぐ遊星爆弾によって吹き飛ばされ、直撃を免れても重度の放射能汚染によってビーメラ星人は次々に死に絶えていった。
 そして瓦礫と死体(又は肉片)の上にガミラス艦隊は降下し、かつてあった文明の痕跡を消し去って新たな文明を構築していく。

「これなら、数ヶ月で仮帝都は建設できるな」

 ビーメラ星が呆気なく死滅し、ガミラスの第二帝都(仮)が建設されつつある頃、銀河系調査のために派遣されたガミラス艦隊は
予期せぬ勢力と接触することになった。

「ガルマン民族だと?」
「はい。我々に非常に近い民族のようです」

 兵士の報告を聞いたガミラス艦隊司令官は逡巡した後、決断を下す。

「むむむ、銀河系辺境にそんな民族がいたとは。よし接触と調査を続けよ。ガミラス復興の手がかりになるやも知れない」

 ガミラス星人はもともと銀河系中心部から移民してきたガルマン民族の末裔だった。
つまりガミラス人は遠いご先祖様と遭遇したことになるのだ。勿論、接触当初は眉唾ものであったが各地でガルマン民族とガミラス人を
関係付ける証拠(主に遺跡)が発見されるにようになると、疑いを持つ者は急速に減っていた。
 だがすると次の問題が浮上した。そうガルマン民族の現状についてだ。

「ガルマン民族はボラー連邦の圧政下に置かれており、母星は完全に植民地化され市民は奴隷階級に落とされている。
 抵抗していた者たちは辺境に築いた拠点に逃れていたが、どれも消耗している……か」

 デスラーは眉を顰めた。
 何しろ彼にとって第一に復讐するべきはデザリアム帝国軍、そして火事場泥棒を働いた反ガミラス連合の者たちだ。
 ここで地球と付き合いがあるボラーと争えば、ヤマトを再び敵にしかねない。それは好ましくない。物事には順序というものがある。

「ガルマン民族を出来る限り脱出させよ。辺境地域には幾つか拠点がある。そこに収容するのだ。ただしボラー連邦に気付かれるな」

 こうしてガミラス帝国は銀河系中心部で零落していたガルマン民族を配下に加えていった。
 さらにこの件で、ガミラス人はガルマン民族の遺伝子情報から、自分達が放射能がない状態でも生きていける方法を発見した。
 こうしてガミラス人は放射能汚染なくして活動できるようになっていった。

「これなら新天地を獲得しやすくなる」

 デスラーは久しぶりに上機嫌だった。


 だがこの動きは、ボラー連邦軍によって察知されつつあった。

「ガミラス軍残党だと? 『ガトランティス』と同盟していたあの男が率いる軍勢か」

 側近からの報告にべムラーゼは苦い顔をする。何しろガトランティスと言ったらボラーの面子を潰した怨敵。
 そしてその同盟国となればボラーにとっては大敵だった。

「叩き潰せ。ガルマン民族とガミラス人が組むのなら、情け容赦はいらん! 本国艦隊も出して叩き潰すのだ!!」
「はい!」
「ああ、それと例の新型宇宙戦艦がロールアウトするころだと思うのだが」
「『スターレン』級ですか」
「あのテストを行いたまえ。実験には丁度良い相手だ。ガミラスはかつてヤマトに負けた。
 これを打ち破れば、少なくとも『スターレン』級がヤマトと互角以上に戦える船であることが証明できる。そうだろう?」
「ですが『スターレン』級はまだ初期タイプが6隻あるだけですが」
「構わん。6隻あれば十分だろう? ヤマトはただの1隻でガミラスを滅ぼし、白色彗星さえ砕いたのだ。
 それと互角以上の艦が6隻。これだけあればガミラスを完全に滅亡させても尚、お釣りが来るはずだ。そうだろう?」
「わ、判りました。『スターレン』級6隻を出撃させます」
「吉報を期待しているぞ」

 こうして超ヤマト級を目指して建造されたボラー連邦軍期待の超大型戦艦『スターレン』が発進していく。
 そのシルエットはボラーの艦とは異なり、むしろ地球の艦に近かった。
 大口径(56センチ)の砲を3連装5基(前後に2基、艦底に1基)に加え、中央には丸みを帯びた塔型の艦橋が備え付けられている。
 艦首には威力の強化とチャージ時間の短縮化を両立させた新型のボラー砲が搭載されており、艦底部には艦載機発進口が設置されている。
この他にも50門ものミサイル発射管があり、火力面ではアンドロメダどころかタケミカヅチを超えるものだった。
 加えて艦橋周辺には多数のセンサーやレーダーが設置され、高い索敵能力があることが判る。
 この排水量21万トンもの巨大戦艦、いや戦闘空母は関係者に見送られ、ガルマン民族とガミラス軍が居ると思われる宙域に向かった。

「我がボラーがその気になれば、ヤマトなど比較にならない戦艦を揃えられることを思い知るが良い」

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最終更新:2014年01月27日 17:39